呪術廻戦で万にチート転生   作:VISP

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初手黒幕とエンカウント


第四話 北を選ぶとはこういう事

 さくさくと周辺一帯の安全を確保していく。

 あの蜂型式神は平安時代に設計した中でもかなり便利な雑魚狩り専門の式神であり、自信作の一つだ。

 現実のオオスズメバチを参考としており、サイズは約30cmで高い機動性とサイズの割に高い防御力と強力な毒針と顎を併せ持つ。

 総合性能こそ2級程度で頭打ちなのだが、こいつの真価は単体性能ではない。

 自律型と直接操作を切り替え可能な上に呪霊や呪詛師を捕食、或いは大気中の呪力を収集し、それらを燃料として稼働、何だったら産卵して数を増やす事が出来るのだ。

 だから何体か作って放置しておくと勝手に増えていくし、餌を求めて広範囲を移動していく。

 平安の世で自律モードで放っておいたらうっかり100体にまで増え、朝廷に囲われていた不良呪術師を呪詛師認定して多数食い殺したために朝廷からお叱りを受けた曰く付きの式神だ。

 まぁ現代だと非術師の割合が呪術師に比べて遙かに多く、この蜂式神の標的になりうる呪術師を発見したら先ず私に報告してから判断するように設定しているので、早々被害者は出ないと思う。

 呪力及び前世の記憶に覚醒した現在、ちまちまと呪力を蜂型式神に注ぎ続けながら、今後はどうするかと頭を悩ませる。

 

 「高専だっけか、この時代の陰陽寮みたいなのは。」

 

 接触すべきか、せざるべきか。

 或いは接触するにしても何時にすべきか。

 高等部から入学できるし、その後も多方面でのサポートを受けられる。

 しかし、呪術総監部なるご老人方の指示を受ける羽目になる。

 平安の世でも朝廷の雇われ呪術師であったが、こちらは輪を掛けて陰湿そうだというのが仙台市で活動中の高専所属呪術師達の会話からも聞き取れる。

 蜂型式神は呪力を抑え、索敵を密にする事で一転して偵察用ドローン代わりも熟す事が出来る。

 

 「さてさてどうすべき・・・うん?」

 

 蜂型式神の一体が、とある女性の姿を捉えた。

 呪術師の女性だが・・・問題はその頭部にあった。

 額を横切る特徴的な縫い目に、知らず息が止まった。

 

 「え、羂索?」

 

 式神の視界の先で、縫い目の女性が目を丸くして、驚きで固まっている。

 次いでこちらに向けて手を振ってくる、にっこり笑顔で。

 おっまえマジかよ。

  

 「えぇ・・・今平安から何年経ってると思ってんだよ・・・千年だぞ千年。」

 

 平安に都が出来る以前から生きていた、他者の肉体を乗っ取る術式を持った呪術師。

 最悪の愉快犯にしてマッドな研究者気質の塊であり、その根本は「果てなき可能性を持つ人間への賛歌」である。

 要は甘粕みたいな「人間万歳!」勢なので、逆に努力しない・しても結果が出ない人間を毛嫌いしている。

 今日まででどれだけ累計で被害者が出てるのかちょっと見当も付かない。

 

 「・・・面倒だしこっちからの接触は止めとくか。」

 

 そう判断すると同時、羂索を見つけた蜂型式神を自壊させる。

 残穢すら残さない証拠隠滅だが、多分ちょっと時間稼ぐしか意味はない。

 あの好奇心の塊を相手するのは自分だけだとキツい。

 平安の頃もねーねーなんでなんでと頻りに自分に質問を続けてきたあの性格から、今度はどうなるか分かったものではない。

 

 「でも無理なんだろーなー。」

 

 あいつの陰湿さ、ねちっこさを知る者の一人として、この程度であいつが諦める訳がないと分かっている。

 なので取り敢えず、正面からブチコロできる準備をしつつ、あいつが来そうな場所に行ってみよう。

 

 「やぁやぁやぁ!久しいね万元気してたかい!まさかまた君と会う日が来るとはねぇ!」

 

 三日後、自宅付近の公園に出かけた際、母がトイレに行った隙に額に縫い目のある女性がテンション激高のまま話しかけてきた。

 

 「そっちこそ、相変わらずみたいだね羂索。何か最後に会った時よりテンション高いね君?」

 「そりゃね!千年も生きてれば多少は退屈や飽きが来るものだけど、旧い知人との再会はそりゃテンション上がるさ!」

 

 そうやって捲し立てる羂索。

 話を聞くと、あの蜂型式神はかなり高度な代物であり、あれを自作できる者も術式として保有する者も見た事が無いそうだ。

 おまけに自分のよく知る呪力で稼働しているとなればいてもたってもいられなくなったらしい。

 

 「それで一体どうしてこの時代に転生しているんだい?何か仕込みでもしてたの?」

 「それが全く心当たりが無かったりする。」

 「ふん?」

 「私は死後、魂の岐路とでも言うべき場所にいた。その際、楽な道じゃなく再び困難を選んだ。」

 

 一度目があったのだ、二度目三度目が無いとは言えない。

 だったらせめて、自分の意志で選びたかった。

 それなら最低限心構えが出来るし、呪術が使えるならある程度何も無い場所でも自活できる程度には平安で修行も出来ていた。

 

 「この時代、君にとっては平安よりも馴染み深いんだろう?そのせいじゃないのかい?」

 「何だ、タイムスリップや転生の概念も学んでたか?・・・まぁ馴染み深くはあるが、昔の私は非術師だったし否とは言えんが・・・何かそれだけだと弱い気がするんだよな。」

 

 さらりと未来の時間軸からの転生を肯定しながら、万は頭を悩ませる。

 この時代に、しかも羂索の近くにピンポイントで転生する等と都合が良すぎる。

 確実に何者かの意思があるように見える。

 それが神仏の采配か、呪いや縁によるものかはさて置き、この時代での生活もまた一筋縄にはいかないようだ。

 

 「うーん、調べようがないから一先ず置いとくとしよう。それで今後はどうする予定なんだい?」

 「折角飯が美味くて快適な時代に生まれたんだ。周囲の安全確保を優先するよ。そっちは何か予定はあるのか?」

 「まぁ色々★ 上手くいけば昔馴染みとも会えるかもね♥」

 「敢えて聞かないでおくぞ。全く悪巧み好きは相変わらずか・・・。」

 「君の予定は分かったし、こっちからは可能な限り干渉しないようにするよ。それで良いかな?」

 「助かる。一応高専とやらには進む予定だが、何か注意事項とかはあるか?」

 「んー天元の同化が近いんだよね。その妨害をする予定だからそれだけは邪魔してほしくないかな。」

 「分かった。その代わり、こっちに変な干渉はするなよ。」

 「OKOK!あ、でも偶にご飯食べたくなったらそっちに行かせてもらうよ。」

 「せめてアポ取れ。後材料費な。」

 

 そんなこんなで懐かしい古馴染みとの再会は終わった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 「いやはや、まさか彼女がねぇ。」

 

 ちょっとした悪ふざけをした後、羂索は今の塒への帰路に就きながら万について考えていた。

 平安最強の呪術師については議論の余地は無い。

 呪いの王とも怖れられた宿儺こそが最強だ。

 しかし、最優の呪術師となれば話は別だ。

 平安時代最強の構築術式の使い手にして、最優の呪術師と称えられた女性。

 女に人権が無く、戦いに向かない術式と未来の記憶を持つが故に現代に比べて余りにも不便で不快な平安時代であっても挫けず前を向いて生き抜いた彼女。

 多くの美味な農作物や家畜を育て、その調理法を発明し、世に広めた女性として貴族や呪術師以外にも広く知られていた。

 斯く言う羂索もまたそのご相伴に与る事が頻繁にあった。

 ぶっちゃけ彼女が死亡してからは明確に食事の質が下がったので少々辛い時期もあったのだが、それはさておき。

 呪術的な彼女の功績と言えば構築術式の反転や拡張術式の発見、何よりも数多の呪具の生産にこそある。

 通常の工程のものもあるが、多くは構築術式を用いたものであり、彼女の作った刀状の量産型一級呪具が多数市場に並んでいた。

 その数、羂索が把握している限りでは千を超える。

 術式こそ無かったものの高い耐久性と殺傷能力、何より片手でも両手でも扱えるが故の素直な使いやすさから呪術師の間で人気を博した。

 売りに出されたり献上された呪具はどれも使用者への気配りに満ちて使い易い事からやはりどれも人気で、更に羂索の知る限り個人で10を超える特級呪具を作成した唯一の人物でもある。

 構造を理解して出力する頭脳と膨大な呪力あってこそのものと言えど、真に大したものであると羂索は思う。

 特に5領の鎧は純粋な防具としてのみならず呪力の貯蓄・呪力の運用能力向上・呪力の反転化・自己修復といった複数の効果を併せ持つ数少ない呪具だ。

 残りの5つもどれも素晴らしい代物であり、現在もそれらは人手に渡りながらも現存、運用され続けている。

 だが、その後の構築術式の使い手は誰も彼もパッとしなかった。

 少なくとも羂索の意識を割く様な者は生まれなかった。

 第二の万を期待して残した資料を与えても、誰一人として万と同じ領域へ至る者はいなかった。

 残念でならないが、ここに来てまさか当の本人が転生してくるという望外の幸運に恵まれた。

 

 「いいね、楽しくなってきた★」

 

 何より、あの宿儺に執着されている人物だ。

 裏梅との主従関係ではない、唯一の完全に対等な友と言える者。

 宿儺を妬まず、畏れず、否定せず、恨まず、その異形を只ありのまま受け入れた上で吐き出された呪詛を防ぐ所か殴り返し、文字通り死ぬまで友として正面から付き合い続けた女性。

 恐らくだが、この世で唯一宿儺の空虚を埋められる者。

 そんな大駒が現れるとは、今回は本当にツキが回ってきている!

 

 「役者は揃いつつある。もう待ちきれないなぁ。」

 

 にたりと、端正な美貌を歪ませて、千年を超えた時を生きる呪詛師は嗤った。

 

 




母がトイレから帰ってからの一幕

ママ「え、あ、何方ですか!?」
羂索「あ、万穂ちゃんのお母さんですか?すみません、子供一人じゃ危ないと思って一緒にお喋りしてたんですよ。ねー?」
万「うん!ありがとおねーちゃん!」
ママ「そうでしたか・・・申し訳ありませんでした。流石にトイレ行ってる間位と思ってたんですけど・・・。」
羂索「近頃物騒ですから気をつけないといけませんよ。」

万(徐ろにマッマの隣で羂索に向け変顔)

羂索「プフッ」
ママ「え、どうしたんですか?」
羂索(無言で万を指差す)
万(全力の変顔)
ママ「ぷっふ!w ちょw駄目でしょw」
羂索「そうだよ。変顔はもっとこう!」←全力じゃないけど結構な変顔
ママ・万「「ぶほぉあ!wwwww」」

勝者、羂索
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