気付いたら原っぱにいた。
突然の大自然。手に持ったコンビニ袋が風でガサガサ音を立てる。
「おい」
いきなり見知らぬ場所に突っ立っていることに混乱していると、声が聞こえた。
首を向けると、男が3人。外国人だ。なんかすごい恰好してる。映画でしか見ないような服装というか、剣持ってるんだけど。
「おまえ、いつからそこにいた?さっきまで俺たちだけだったはずだが」
どうやらお相手も混乱しているらしい。日本語上手ですね。
「えっと。自分もなにがなにやら。あの、何かの撮影中でしたか?」
映画でも近所で撮影してたのかな。ていうか夢かこれ。
「まあいい。持ってるモンだしな」
カツアゲしてきた。帯剣してるやつに恐喝されるのは初めてだぞ。
随分と面白い夢だな。
のろのろと距離をつめてきたハナヅラにコンビニ袋を振り当てた。
炭酸を犠牲に、袋に入っている500m缶は相手の鼻血を出させることに成功した。
間髪いれず腹目掛けて横蹴りをぶち込む。モロに入って後ろに倒れた。剣を取り落とす。
2人目に向かって突進。慌てて武器を抜こうとする相手の服を掴み、足を払って地面に叩きつけた。
受け身を取れず背中を強打した男。こいつはもういい。
3人目に目を向ける。既に得物を抜いていたが、こちらを警戒、というより怯えた様子で間合いをとっている。
最初の男の剣を拾って構えた。木刀なんかと違ってやりづらいなー。
フェイントをかけると大袈裟に剣を立てて受けようとした。
隙だらけの首を突き、あっさり決着はついた。
うわ。血すご。夢なのにグロすぎる。臭いやば。
顔を顰めて他2人を確認すると、最初の男は蹴りが効いていつつも立ち上がっている。
投げた男は呻きながら蹲ったままだ。思いっきり投げたし骨折れたかも。
立ち上がった男に剣を向けると、両手を上げながら声を上げた。
「降参、降参だ。助けてくれ」
斬ってもよかったが、夢にしてもゴア表現が凄まじいのでちょっと萎えていた。そろそろ目を覚ましたい。
「いいよ。ちなみにここどこ?」
「ああ、ありがてえ。ここは、村近くだ。イーラは反対方向だな」
うん。何一つわからん。説明下手すぎない??夢なのに聞いてる自分もおかしいけど…って、死んだやつの荷物を剥ぎ始めた。
引くわー…
「じゃあ、俺は行くぜ。すまなかったな兄さん」
「いや生きてるヤツほっといて行くなよ。嘘でしょ」
死んでるやつもほっといていいとは思わないけど…ドライっすね…。
「あ、ああ…コイツも見逃してくれるのか」
「えっと…取り敢えず、介抱しようか」
死体の側はアレ過ぎるので、怪我人を運ばせて別の場所へ移動した。
そこで怪我の具合を見てみる。やっぱ折れてるねアバラ。ヒビくらいだと思うけど。多分。
「骨イっちゃってるねー。しばらく大人しくしてないと駄目だね」
夢なのに何マジになってんだろ。
「そうか…なあ。ポーション譲っては…くれねえよな」
カツアゲニキが恐る恐る聞いてくる。
ポーションってゲームとかの回復するやつ?
「残念ながら持ってないねー。回復魔法とか使えないの?」
「使えるように見えるか?」
皮肉気に笑うニキ。ふざけたのに合わせてくるじゃん。
ノリいいねキミ。
「君たちはアレか。追い剥ぎ?盗賊ってやつ?この仕事長いの?」
「そりゃ、盗賊だが…数ヶ月くらい…」
まだ駆け出しか〜。骨折れ君はどうなの。
「ソイツは組んだばかりだ。村の酒場でタチの悪い飲み方してたんで誘ったんだ。ステータス見た時はまだ盗賊じゃなかったから、初仕事で兄さんに出逢っちまったワケだな」
「ステータス?なるほど、まだOJTだったんだなー」
盗賊にもOJTの時期はあるよな。何考えてんだ俺。
「おーじえい、なんだ?都言葉か?兄さんめちゃくちゃ身綺麗だし、貴族だよな?いや貴族サマですよね?」
「違うけど。スウェットの貴族とかウケる。敬語もいいよ別に今更。それよりステータスっての何?」
「ステータスは、ステータスだが…見せろってことか?ステータス開示」
駆け出し盗賊の手首付近にシステムウインドウみたいなのが出てきた。
おー。ゲームっぽい。名前の横にレベルとか盗賊とか書いてある。パーティもあるんだ。アバラ折れた男の名前かなこっちは。
俺もできるかな?ステータス開示。おー、出てきた。
カザマ ユウ Lv1 パーティ なし
剣
格闘
長柄
短刀
投擲
「おっ、おお…技能すげえな…。レベル1ってホントかよ。魔物倒してねえのにあんな強いのか。やっぱり貴族ってのはめちゃくちゃ修練してんのか」
「貴族じゃないけど。修練はまあ、道場で。技能っていうのこれ?キミのはどこに書いてあんの」
盗賊くんには剣とか短刀とか見当たらない。
技能にのるほどの腕はねえよ…と言って項垂れた。
なんかごめん。
「ところでさ。これ夢だよね」
「ハッ。夢だったら良かったんだがな。家名持ちの貴族に狩られるとは悪い夢だ」
「まあそんな落ち込むなよ。人生色々だよな。突然異世界来ちゃったりとか。あとマモノって何?」
「ハハハ!箱入りにも程があんだろ!魔物は魔物さ。異世界から来たバケモン共だよ。ダンジョンからわいてきてんのか住みついてんのかは知らねえけど」
「へーダンジョンもあるんだ。しかも異世界からかー。物知りだねキミ。ダンジョンってどんなとこ?」
「俺たちでも知ってるジョーシキですよ貴族サマ。魔物と宝のつまった異世界の入り口。イーラにもあるぞ。失敗すれば死ぬか盗賊になる。俺みたいにな」
「ふーん。ところで食べ物ある?」
「水なら。イーラまでたいした距離じゃないから準備してねえ。腹減ってるなら村の方が近いぞ兄さん」
じゃあそうするか。最後にもう一つだけ。
「お金全部ちょうだい」
「だよな…」
割とすぐに村は見つかった。小さな村だ。
中世って感じだ。の、のどかー…
「すみません、食事できるところ教えていただけませんか?それから泊まれるところも」
「いらっしゃい旅人さん。あそこが酒場。宿屋なんてないけど酒場で頼んだらいいよ」
第一村人に礼を言って酒場に向かう。異国情緒に溢れてるなー。
適当に注文した食事は、まあ食えなくはないレベルだった。
味の薄いスープ?ポトフ?
酒場の前に掲示板があってそこに依頼なんかが貼り出してあるから仕事も出来るらしい。
今日はもう、休みたい。
部屋も借りてベッドに倒れ込んだ。
もういい加減現実なのは気付いている。人も殺した。
ただ衝撃が大きすぎて麻痺してるのか、あまり気に病むことはない。
ゲームっぽいシステムだよな?なんかチートとかないんかね。
仰向けに寝転がり右手を上げる。ステータスをもう一度見たいな。
と、考えた途端ウインドウが現れた。言葉に出さなくても見れるんだな。
別画面とかあるかな。別ページに変われーと思考すると本当に別画面が表示された。ウケる。
コンフィグぽい、項目が複数並んでいる。
言語の加護という欄がトグルスイッチON状態だった。話せてるの、これのおかげかな?
最初からONとかユーザビリティ溢れてるじゃん…。
健康の加護とかっていうのまである。即ONにした。
視覚、聴覚、嗅覚の項目がある。
バー設定になっており、それぞれ真ん中を示していた。
試しに視覚のバーを最大になるよう念じると、どんどん視界がクッキリしてくるように感じる。逆に疲れるなこれ。
調節ON/OFFのスイッチがあり、ON状態にすると集中した時だけ効果が出ることがわかった。便利設定だ…。
strとかconって項目は、パラメータかなんかか?
強化率とあり、それぞれデフォルトで1.0から2.0まで調整出来るようだ。
シンプルに性能上がりそうなので2.0にしてみる。
試しに譲っていただいた剣を持ってみるが、別に力の強さが変わった気はしないような…?よくわからない。
獲得経験値倍率なんて項目もある。当然最大だ…!
一通り有利そうな設定に変更したところで眠気が襲ってくる。
起きた時は自分の部屋でありますように。