異世界生活   作:ぜいにくまん

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「知らない天井だ」

 

言ってみたかっただけ。どうみても日本の自分の部屋ではない。

早く寝過ぎたため、まだ外は薄暗い。しかし村全体の活動は既に始まってきている感覚がある。

 

起きるか。

 

 

酒場二階の部屋を借りていた。

一階で既に作業中だった店主に挨拶し、水が欲しい旨を伝える。

顔を洗いたかったのだ。

 

外の井戸を使えと言われたので向かう。

比較的スッキリしたが、風呂に入りたい…。

我慢するしかないなー。町まで行けばせめて公衆浴場はないだろうか。

生活のためにも金を稼ぐ必要がある。

昨日聞いていた掲示板を見に行くことにした。

 

 

乱雑に依頼の紙が貼ってある。なになにー?

物々交換を求めるものがいくつかある。村人同士で融通しあってるのかな。

ゴブリン退治の依頼があったので村長に話を聞きに行く。

 

 

「助かります。数は多くないようですが、狩人が森で痕跡を見かけたようで。村で対処できるか悩んでいたところでした。狩人を呼んでまいりますね」

 

 

 

狩人と森に踏み入る。

それなりに人が出入りしているためか、歩きにくいと感じるほど未開ってわけでもない。

ステータスを開いてみる。別画面に面白そうな項目を見つけていた。

 

魔物図鑑

 

ゲームっぽすぎて笑える。念じるとゴブリンの項目が表示された。

 

 

〔人間の子供程の体格。群れで行動する。簡単な道具を使う程度の知能を有する。繁殖力が高く、人や家畜から数を増やす。ドロップ:銅貨〕

 

 

ほうほう。めちゃくちゃキモい生命体だな。

ドロップ品とかあるのか。しかもお金っぽい。RPGみたいだなー。

 

「この辺りでゴブリンの足跡を見つけた。おそらく7、8匹くらいはいると思う。もう少し少なければ村の男だけでも対処できそうなんだが」

 

「なるほど。ちなみに、ゴブリンって弓とか使えます?」

 

弓も触ったことあるけど苦手だった。俺より上手かったら泣きそう。

 

「そんなに賢くねえと思うが。木の棒か、せいぜい拾った剣くらいじゃねえかな」

 

よかった。距離があれば安全そう。

雨で痕跡は消えかかっているようだが、狩人が先導して行く方向に探索して行く。

臭そうだし、感覚強めたら匂いとかで探せないかな?

感覚を強めてみると、慣れない感覚に不快感が凄い。

というか色々クサイ。キツすぎる。

ただ、狩人の示す方向に複数の匂いを発する存在がいる事を認識できていた。

めちゃくちゃ便利だけどしんどい。あまり使いたくないなー。犬になったみたいで面白いけど。

手頃な石を拾いながら足を進めて行くと、醜悪な化け物達の姿が見え始めた。

目を凝らすとクッキリと浮かぶ。全部で9匹。7匹が地べたで横になって寝ており、2匹が座りながら小動物の骨のようなものをしゃぶっている。

自分が右を狙うと身振りで示せば、狩人が弓を手に頷いた。じっくり狙いを定めはじめたのを確認し、こちらも借りていたナイフを構える。

子供みたいな体格の分、比率で頭が大きく狙いやすい。音もなく投げたナイフは狙った側頭部にストンと突き刺さった。

狩人の弓も見事に頭を撃ち抜く。2匹とも他の化け物と同じように地べたに倒れた。

1匹がそれで目覚めたようで、身体を起こし始めた。上半身を起こしてキョロキョロし始め、弓を構えた狩人を視界に入れて動きが止まったところを矢が射抜く。上手いなーさすが狩人。

無事仕留めたようだが、短く鳴き声を上げられたためか他のゴブリン達も目覚めたようだ。立ち上がってこちらを認識する頃には矢がもう1匹を始末した。残り5。

完全に臨戦態勢に入った化け物達が、鳴き声をあげながら向かってくる。拾った石を思いっきり投げつけた。甲高い悲鳴のようなものを上げ転ぶ化け物。ソイツに蹴躓いてもう1匹がコケた。

残った3匹にも次々と石をぶち当てて動きを止めると、矢がそのうちの1匹を仕留めた。4。

剣を抜く。巻き込まれてコケたヤツが、直撃した石の痛みで呻いてるヤツらをぬいて一番前まで来ている。

うーん醜い。小さいけどキモい化け物が全力疾走でこちらへ向かってくるのはなかなかの迫力だが、真っ直ぐ向かってくるだけなので簡単に首を突いた。3。

呻きながら木の棒をふってくるのを剣で払い、首を薙いだ。2。

飛びかかってきた化け物をかわすが、腕を掴まれた。噛みつこうとするゴブリン。キモい。

柄尻で顔面を強打し、腹に膝を叩き込んだ。うずくまるゴブリンの首を落とす。1。

最後の1匹に目をやれば狩人の矢が射抜いたところだった。0。

 

ふー、と、深く息をついて剣を納めた。ドキドキしたけど全然やれそうで良かった。

 

「作戦通りだな!いやー強いねえ兄さん!」

「いやいや、いい援護でしたよ!そちらこそいい腕でした。やっぱり遠距離攻撃強いわー」

 

狩人と笑い合う。ヒリヒリとした命のやり取りの後でお互い妙にテンションが高くなっていた。

死体に目をやると、俺が剣で仕留めたゴブリンの側に銅貨が突然現れた。おお、これがドロップ。投げナイフで仕留めたヤツの側にもドロップしていたので、俺が仕留めた4匹は全てドロップしていたが、狩人が仕留めた5匹のうち、銅貨を落としていたのは2匹だけだった。

しょっぱくね。ドロップ率アップってのをONにした効果はよく分かったが。

 

「運がいいな兄さん!俺が仕留めたヤツのドロップは貰ってもいいのか?作戦たてたのも体張ったのも兄さんだしそっちの総取りで俺は文句ねえが」

「むしろ山分けしましょうよ。はい、1枚どうぞ。成功報酬も半分こって事で」

 

狩人は少々気まずそうだ。

 

「悪いなぁ兄さん。でも成功報酬はそっちの全取りでいいんだぜ。俺にはその分、村から貰えるもんがあるしよお」

「黙ってもらっておけば俺にはわからないのにいい人じゃん。まあまあ。一緒に命かけた仲間じゃないですか。喜びは分け合いましょうよ」

「ありがてえな。よし、今夜も村で過ごすんだろ?酒は俺が持つからよ。一緒に飲もうぜ」

「ああ〜いいっすね〜」

 

2人でゲラゲラ笑いながら村に帰った。

 

 

「兄さんは町に帰っちまうのかい?村長も言ってたが、いつまでだって居てくれていいんだぜ。あんたの腕なら、酒場の部屋じゃなくって新しく家建てるのも村人は大歓迎だろうよ。年頃の娘もいる。あの娘とかどうよ。村の娘にしちゃけっこう見れたもんだろ?」

 

報告を聞いた村長は俺を取り込みにきてるらしい。昨日はいなかった若い娘を給仕に送り込んできていた。けっこう可愛い。狩人や村長から活躍を聞かされているようで、俺をみる目には好意的なものしか感じなかった。ぶっちゃけ抱ける目してた。

 

「うーん。それも悪くないんだけど。もうちょっとあちこち見て回りたいかなー」

 

狩人とはすっかり仲良くなっていた。腰を落ち着けるのも悪くないかなと思えるくらいには馴染み始めていたが、町も近いらしいしそっちにも行ってみたい。

 

「そうか。寂しくなるが、あんたの腕ならそれもいいだろうな。…まあそれはそれとしてよ。気に入らないってんじゃなけりゃ、今夜抱いてやれよ。ガキができても気にすんな。強い男の子供なら村としても大歓迎だ。たまに顔見にきてやればいい。そんときゃまた飲もうや」

 

そういう事なら遠慮なく。命のやり取りで昂ってるのもあるし。普通に可愛いので抱けるもんなら抱きたいわ。

やらしいニヤケ顔の狩人を見送り、潤んだ目でこちらをみる娘の耳元で口説く。頬を染めて軽く頷いた娘の腰を抱いて部屋に連れ込んだ。

たっぷりと悦ばせながら一晩楽しみ、すっかりこちらへ懸想した表情を向ける娘に見送られながら村を出発した。

ちょっと惜しかったかなーと思いつつ、抱きたくなったらまた来ればいいかなどと思い直した。ゲスい。

 

山分けした報酬でも、町で一月くらいは暮らせる金額はあるそうだ。

色々装備を整えたいし、ダンジョンってのも入ってみたい。

しばらくは町を拠点にして行動することになりそうだ。

 

いい女もいそうだし。

 

 

 

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