百八十度ノ魔女裁判   作:ミズハ

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ようやく魔女裁判です
裁判中は、地の文を控えるようにします
また、原作のように一章の犯人に対しては厳しめなので事前に警告しておきます


第一章魔女裁判開始

 少女全員がゴクチョーの知らせを受けて裁判所に向かう途中で、メルルが私に近づいて耳打ちしてきた。

 

 「ヒ、ヒロさん……私裁判なんて怖くて、辛くて……きっとまともに意見を言ったり反論をしたりすることなんて、できないと思います……だ、だから……ヒロさんの、サポート、させて下さいっ」

 

 震えながらも、息を荒げて気丈に私に提案してくるメルル。だが、私はそうするわけにいかない事情があった。

 

 「……いや、メルル。きみは、裁判でしっかり自分の意見を述べることを考えた方がいい。きみの視野の広さや頭脳を私は信頼している……私たちは、十分単独でも戦えるはずだ。それに……今回の私たちの裁判、おそらく非常に困難なものになる」

 

 私のどこか見透かしたような思わせぶりな言葉に、メルルは目を丸くした。

 

 「もしかして、ヒロさんは、既に犯人が……」

 「……裁判所に着いたようだ」

 

 私はメルルとの会話を切り上げて、裁判所に足を踏み入れた。

 

 視界に入ってくるのは大広間、13の証言台、中央にある処刑台と、そこまで罪人を運ぶための人が一人乗れる程度の台座。

 ステンドグラスの窓の光が、外からわずかに漏れ出しておりどこか神秘的な雰囲気が感じられる。

 私を含む、少女たち全員が決められた位置の証言台に立つと、ゴクチョーが口を開いた。

 

 「今から、殺人事件の犯人が誰であるのかを皆さんで推理し、投票する議論を行います。

猶予時間は一時間です。特定が完了した際は、全員で犯人だと思われる人物にお手元の電子機器で投票をお願いします。その後、最多数の票を獲得した人間が処刑されます」

 

 「……犯人当てを失敗した場合は、どうなる?」

 「特になにも。ペナルティなどはありませんよ、かわいそうですからね。ただし、みなさん。犯人だと思った人物にしっかりと投票はお願いしますよ」

 

  ゴクチョーは私の問いかけに、冤罪による処刑を肯定してみせる。

 

 (……やはり、そうか。ならば、犯人処刑のためには過半数の票を集めなければならない……やれるさ。やってみせるとも。私にしかできないことだ)

 

 私は改めて、覚悟を決めることができた。

 

 ヒロ、ハンナ、マーゴ、ナノカ、アリサ、レイア、ノア、ココ、アンアン、メルル、ミリア。

 この計11名による、魔女裁判が開廷された。

 

 

 

 (……シェリーの、魔女裁判。色々と思う所があるが、感情は後回しだ……今は、できる限り裁判の流れに気を配ろう。正しく議論進行ができたならば、犯人を追い詰めるタイミングは、必ずおとずれるはずだ)

 

 「さて、誰がシェリーくんを殺害したのか……それを突き止めなくてはならないな」

 「ウチには、おめえが一番怪しく思えるけどな」

 「……全く、心外だねアリサくん。あらぬ疑いをかけてくるのはやめてもらえないだろうか」

 

(いきなりこの二人が火花を散らしている……無理もないことか。さて、どうしたものか……)

 

 「お二人とも、少し待ってくださいませんこと!」

 「うわ、びっくりした!どうしたのハンナちゃん?」

 「1時間も議論なんてしなくても、今回の事件、犯人は誰から見ても明らかではなくて?」

 「マジ?……あてぃしは全然分からんのだけども、だれなん?」

 

 「犯人はマーゴさん。貴方ではありません?」

 

 「……へえ♡どうやらハンナちゃん、自信満々みたいね。根拠を教えて貰えるかしら」

 

 

 「わたくしたちが死体を見つけた時、シェリーさんの上半身の衣服は、剥ぎ取られていました」

 

 「……そうね。正直橘シェリーの死体は悪趣味だと思ったわ」

 

 「わざわざそのようなことをした意味……犯人はシェリーさんのか、体に興味があったからに違いありません!」

 

 「そして出会った時から私達をずっと、いやらしい目で見続けているのはマーゴさん!あなたを除いて他に居ません!あなたが犯人ですわ!」

 

 「……あら、そうなの。知らなかったわ。でも、そもそも私の他にもシェリーちゃんに魅力を感じている子、いるかもしれないわよ♡可愛い女の子たちは、見ているだけで目の保養になるもの♡」

 

 「は、はれんちですわー!」

 

 「……おじさんはそんな子いないと思うな!きっとハンナちゃんの気のせいだよ!うんうん!」

 

 (ハンナ……気合が入っているのはいいが、安直すぎだ。場が白けてしまっている)

 (ここは彼女の論を否定して、議論を前に進めるとしよう)

 

 「正しい議論をしよう……犯人がシェリーの体に興味があったから衣服を脱がした……その可能性は低いだろうね」

 「ど、どうしてですの?」

 

 「メルルが死体を調べてくれただろう。あの時、シェリーの露出していた部分は湿っておらず、衣服の中の他の場所にも異変もなかった。そうだね?」

 「は、はい……!死体の状況が不審だったので、死体を確認する時に体の隅々まで調べましたが、違和感は感じませんでした。犯人がそういう目的なら……も……もっと、シェリーさんの死体は乱れていると思うんです」

 「……ハンナ。マーゴを疑う気持ちは分かるが、他に明確な根拠を示した方がいい。そうでなければ、他の人間の賛同は得られないよ」

 「うぐっ!」

 

 「つっても、他の奴らより怪しいのは事実かもな」

 「あら……心外よ。全く心当たりがなくて、犯人に八つ当たりしたいぐらいだわ♡」

 「……犯人が、マーゴくんに罪を着せようとした偽装工作の線もあるんじゃないかな。

いずれにせよ、今この段階での安直な推理は危険だよ」

 「おっしゃる通りですわ!」

 

 (ハンナ……皆から否定されたとはいえ、この程度のことで泣き顔になっても困るのだが)

 

 「……それにしても、レイアちゃんとアリサちゃんは互いを疑っているようだけれど、本当にそれは正しいのかしら」

 「【どういうことだ?】」

 「それはね……前提条件が違うんじゃないかって話。シェリーちゃんは自殺したかもしれない……そういうことよ」

 

 「シェリーちゃんの死体の状況をよく思い出して欲しいのだけれど……拳を壁に何度も打ち付けて、悲惨な血まみれの壁画を作っていたわ」

 「牢屋敷でシェリーちゃんの明確な友達は、私の知る限りではヒロちゃんとメルルちゃんしかいなかったようだし、他の子からは明確に疎まれていた。彼女が牢屋敷の中で孤独を感じて内心追い詰められていてもおかしくないでしょう」

 

 「精神が追い詰められたシェリーちゃんは医務室から睡眠薬を盗み、中庭で飲みほした。そして自ら衣服を破り、壁に、拳を何度も叩きつけたの♡自らの存在を、そして怪力の魔法というアイデンティティを魅せ付け、誇示し、皆に遺作として残すために♡」

 

 「のあ、シェリーちゃんのことかわいそうだと思うな……」

 

 「分かんねえけどよ……あいつが自殺なんかするタマか?」

 

 (マーゴの推理……一見筋が通っているように見えるが、穴があるな)

 (私が知っている情報を、直接ぶつけてみよう)

 

 「中庭でシェリーが睡眠薬を飲みほした……?いやいや、そんなことはありえないよ」

 「……っ!へえ♡どうしてヒロちゃんはそう思うのかしら」

 「私は睡眠薬を飲んだ際、どのような症状が現れるのかについて、詳しくメルルから聞いているんだ……再度すまないがメルル、説明してくれるかな」

 

 「は、はい……!睡眠薬を大量に経口摂取してしまった場合、まずその場で意識がなくなります。そしてそのまま放置してしまった場合、一時間程度で死亡してしまうはずなんです」

 「うげっ、もうそんなの毒薬じゃん。なんでそんな危険な薬が医務室にあるんだよ!」

 「メルルも何回も頭を抱えていたから仕方ないだろう……だそうだよ、マーゴ」

 

 「なるほど。確かに現場付近で残されたビンは空だったわ。つまりヒロちゃんはこう言いたいのね。ビンの近くでシェリーちゃんが昏倒していない以上、自殺とは考えられないんじゃないかって」

 

 「……でもそれは、先ほどの推測を少し訂正すればいいだけの話に思えるわ。

もう少しだけ、私の推理に付き合って貰えないかしら♡」

 

 (やはりマーゴ……そう簡単には引いてくれないか)

 (だが、間違った推測の上に間違った推測を重ねても、真実からは遠ざかっていくだけ)

 (正しくない論理に正しくない議論……正してみせよう、その全てを!)

 

 「こう考えてみたらどうかしら?シェリーちゃんは、ビンの中身を飲んだのではなかった……口に含んだまま衣服を脱ぎ棄て壁際で拳を叩きつけて暴れたのよ」

 

 「睡眠薬……いえ、最早毒薬と言っていいそれを口に含んだまま死の間際にシェリーちゃんが奏でるダンス……!それがあの現場の状況の真相だったの」

 

 「……私と宝生マーゴ、二階堂ヒロは現場を見ているわ。確かに、宝生マーゴの推理に矛盾はないわね」

 

 「ヒロちゃんは私の意見を否定しているみたいだけど、他に私の推理を否定する根拠はあるのかしら♡」

 

 (マーゴ……愉悦の笑みを深めているようだ)

 (現場をしっかりみていなかった他の少女達には、分からない情報だろうな……しかし、私にはマーゴに反論できる根拠がある)

 

 「いいやマーゴ……この事件は明確な他殺なんだ。きみの推理を否定する根拠は存在している」

 「……っ!」

 「この写真を見てくれ」

 

 「……これは!シェリーさんの死体の太ももの裏が擦れて、裂けていますわ!」

 「それだけじゃない……シェリーの遺体付近の雑草は、道を作るように倒れている。ビンがあった、犯行現場と思われる所には草が少なかったから、そこからシェリーの体が移動したことには気づかなかったのだろうね」

 「あら!本当ね……確かにこれは、人の手がシェリーちゃんの体に加わったように見えるわ」

 

 「つまり、どういうことなの?のあはよく分からないんだけど」

 

 「これはね……シェリーちゃんの体を動かした人物の存在が証明されたということ。

それは明確に、殺人者が居たことを示しているわ」

 「確かに、ここまでの状況を整理してみると、シェリーくんが一人で行ったことだとは考えずらいようだね」

 

 「……そう、いるのよ。私たちの中に、シェリーちゃんを殺した犯人がね♡」

 「うぐっ!やっぱしそうなのかよ!もー勘弁してほしいんだけど!」

 「覚悟は、できていますわよ!真相を明らかにしないままでは終われませんわ!」

 

 「ええ、話し合いましょう……みんなの心の中身を見せて頂戴♡」

 

 (ここまでの裁判……一見、あまり話し合いは進んでいないように思える)

 (だが、これも必要な工程だった。不可能な推理を除外していけば……その先に真相が待っているからだ)

 (必要なのはタイミングの見極めと、求心力)

 (そのために……私は他の少女たちの推理を利用する。肯定し、否定し、誘導する!)

 

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