百八十度ノ魔女裁判   作:ミズハ

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「ちょっとまった」

 「ウチを疑って、疑念が晴れたと思ったら、次は死亡推定時刻がミスでした、消去方で二階堂か氷上が犯人です……?いい加減にしろよ蓮見!この裁判はてめえの遊び場なんかじゃねえ!」

 

 (アリサの堪忍袋の緒が切れようとしている……これまでの流れを考えれば当然だ)

 (私も、流石に苛立ちを抑えきれそうもない)

 

 「……アリサくんには気の毒だったと思う。キミが望むのなら、何度でも謝罪しよう……しかし皆、考えてみてくれ!」

 

 「ヒロくんならば、中庭でシェリーくんを騙し、不意をついて睡眠薬を飲ませて、容易く殺害できるだろう。それにヒロくんが犯人だとしたなら、シェリーくんを中庭で殺害した時間が就寝直前の30分前でなくても良い……もっと犯行に猶予ができる。だって、私に報告した内容が、そもそも嘘だということだからね」

 

 「メルルくんもシェリーくんと親しかったみたいだから、不意をつくことは同じく容易だ。アンアンくんの看護を医務室でずっとギリギリまで行っていたという言い訳を作れば、帰ってきたタイミングが遅くても不自然じゃない。この2人なら、十分に犯行は可能ではないかな?」

 

 「……ま、待って下さい!こんなのはなにかの間違いです!私は犯人じゃありませんし、きっとヒロさんもそうです!あんなに親しくしてくれたシェリーさんを、私かヒロさんが殺すだなんて……!」

 

 「しかし、私が昨夜見回っていた限りでは、他の少女たちはしっかり部屋に戻っていたようだった。そして部屋の相方が遅くまで戻っていなかったのなら、同室の少女が気付くはずだ。他に犯人候補はいない以上、犯人はヒロくんかメルルくんできまり……!」

 

 

 「ちょっとまった」

 

 

 「……え?」

 

 「どうしたレイア……みんなも、全員、不思議そうに私を見つめて」

 

 「いや、ヒロくんがそんな仕草をすると思わなかったものでね……どうしたんだい、手を前に突き出して。なんとなくだけれど……似合っていないよ。ヒロくんらしくなく見える」

 

 (レイア……そんな、嫌悪感を露わにした態度を、私に見せることができたのか)

 

 (……らしくないのは、きみの方じゃないか)

 

 (空気を変えたいと、咄嗟に出た行動だったが、なぜか場の空気が生温かいものへと変わった……これなら、真っ向からレイアを叩き潰せるかもしれない)

 

 「……なんのことかな?私は変わることなどないよ。今までも、これからもね……変わったのだとしたら……それはきみの方だ、レイア!」

 

 「……!」

 

 「レイア……きみはココとの雑談配信で、笑いあって冗談まで口にしていただろう。私が配信を目にした時は、意外な一面があると驚いたものだった……あの時にあったきみの余裕は、今はもう、どこかに消え失せてしまったようだけれどね」

 

 「……ヒロくんは、一体なにが言いたいのかな?」

 

 「そもそも、怪しい人物なら、私とメルルの他にもいるだろう……少なくとも、アンアンにもアリバイはない。犯行は可能だ。メルルから、体調は徐々に回復しているようだという話は全員聞いているだろう?」

 

 「あ、アンアンさんが……!?でも、確かに可能ではありますわ!」

 「【ちがう!わがはいではない!】」

 「アンアン、落ち着け……きみの名前を出してしまったが、私は今回の事件で強くきみを疑っているわけではない。良化してきているとはいえ、きみの体調がまだ悪い以上、殺害が困難であることは、私も理解している……私が伝えたいことは……」

 

 

 「この事件、レイアは思うがままに、都合のいい好きな人間を犯人に仕立て上げることができる立場ということだ!だからこそ、レイアはアンアンを犯人として挙げなかった……なぜならアンアンは、レイアと親しい一人なのだからね!」

 

 「「……!?」」

 

 (……ここまでの議論は無駄ではなかった。全員、驚愕しながらも私の意見に一定の説得力があることを認め、耳を傾けている)

 

 「ヒロくん、何を言っているんだい。私が犯人であるはずがない。不可能だと、状況と他の少女たちが証明してくれているだろう?」

 

 「みんな、前提条件を勘違いしているんだ……レイアが犯人でないことと、レイアが怪しいということ、それは全く別の問題だ」

 

 「……最初から、レイアが一番怪しいと思っていた。だから私は、捜査の時に皆を分散させたんだ」

 

 

 「昨夜、私から、シェリーと私が喧嘩をして、今シェリーが孤立しているという情報を得たのはレイアだ」

 「シェリーの死亡推定時刻を調べることができたのは、都合のいいことにレイア一人だけだった」

 「レイアには、最初から絶対的なアリバイがあった」

 「レイアは、昨夜全ての少女を動かせる立場だった」

 「そして、この牢屋敷のリーダーはレイア一人だけだ……レイアならその気になれば、他人のアリバイを作ることも、なくすように動くこともできるだろう……投票も、ほぼ過半数を押し付けることができる。皆をまとめあげてきたのだからな」

 

 「あ……!う……!」

 

 (レイア……どうした、そんなに顔を青くして、魚のように口をパクパクと動かして……無様だな……私と殴り合うことを選んだのは、お前だというのに!)

 

 「ここまで言えば、もう分かるだろう……」

 

 (一方的かもしれないが、思想も、能力も……私は、認めていた)

 (……こんなことにはならず、別の未来が、もしかしたらあったのかもしれない。だが)

 (こうなった以上は、容赦をするつもりはない)

 (お前のトリックだなんてとてもじゃないが言えない、くだらない茶番を続けるのは、そろそろ終わりにしてもらおう)

 

 「レイアは、シェリーを直接殺害した、実行犯ではないというだけだ」

 

 「蓮見レイアは、犯人と手を組んでいるのだからね」

 

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