百八十度ノ魔女裁判   作:ミズハ

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反撃開始

 「つじつまは合いますが……そんな、レイアさんがだなんて……!」

 「……流石に驚いたわね。本当なのかしら……?」

 

 「……」

 

 (レイア……私が、自分の身可愛さにメルルを犠牲にするとでも思ったのか?この事件の犯人たちへの宣戦布告は、もう済ませているというのに)

 

 (確かに、分の悪い賭けだ。この暴露が失敗すれば私が処刑されかねないだろう……だがな、私はもう覚悟を決めているんだよ)

 

 (私に居場所を作ってくれたシェリーが死んで、その冤罪が私の命を救ってくれたメルルに降りかかる……?そんなことを起こしてしまうとするのならば、最早私に生きる価値などありはしない)

 

 (ゴクチョーのルール通りに実行犯のみ処刑されるとするのならば、おそらくお前が処刑されることはない……だが、私は今からお前をリーダーから引きずり降ろさせてもらう!)

 

 「レイアは昨日の夜、私からシェリーが一人になったという機会を聞き出した。

そして、殺害するチャンスがきたと犯人に伝えたんだよ。

……シェリーは私と行動をすることが多かったから、睡眠薬を盗んで機会を伺っていたレイアと、組んでいた実行犯は行動に移すことができていなかった……焦りもあったんだろうね。だから私に多少怪しまれるリスクを負ってでも、殺害を強行することを選んだ」

 

 「レイアに完璧なアリバイがある以上、レイアが協力者の犯人を庇えば実行犯も疑われることはない……この事件の真相は、そんな単純なものだったんだ」

 

 (とりあえずは真相を暴露してみたが……レイア……どう出る?)

 

 「ふ……ふふ……!」

 

 (……!)

 

 「いやーごめんね、ヒロくんがあまりにも見当はずれな推理をするものだから、笑ってしまったよ。私が犯人と共犯だなんて、三流小説家でも思いつかない筋書きだ。

仮に私に主演の打診があったとしても、格が落ちてしまうから断るだろうね!」

 

 「そもそも、共犯なんていうヒロくんの前提条件自体に無理があると思わないかい?それを言ってしまえばヒロくんと、被害者であるシェリーくんが共犯だったなら、現場に不可解な点があってもおかしくはない。それにヒロくんとメルルくんとシェリーくんの三人が手を組んで今回の犯行に及んだのならば、三人がかりでなんでもできるはずだ!」

 

 「ヒロくん……わかるかな?この場で二人以上での共犯を疑うというのは、そういうことなんだよ!」

 

 「キミはきっとまだ、この牢屋敷での友達が少ないから、心のどこかでリーダーの私に嫉妬しているんだ……大丈夫だよヒロくん。キミの心の寂しさは、私が受け止めてあげるからね」

 

 (……まだ、薄気味悪い仮面のような笑みを浮かべる余裕があるか)

 

 (レイアの言っていること……この主張は一見、暴論に見えるが、この狂った魔女裁判という状況ではそうとも言えない)

 (少女同士の共犯関係を疑うということは、二名以上を敵に回すということ……しかも、その相手は牢屋敷の人間関係全体を掌握しかかっていたレイアだ)

 

 (共犯の疑いを向けることすら容易ではなく、最初から犯人が分かっていたとしても勝ち目が薄い戦い……だが、かすかだが、まだ勝算がないわけではない)

 

 

 「……ウチは……二階堂の推理にも一理あるんじゃねえかと思うけどな」

 

 

 「……勘違いすんなよ、二階堂の意見を鵜呑みにしてる訳じゃねえ……ただ、この裁判に限っては、蓮見の言い分の方が無茶苦茶なことぐらいはウチにも分かる」

 

 「そもそも、蓮見……てめえが昨日の夜に見回っていたのなら、橘がウチの部屋に戻ってねえことにも気付けたんじゃねえのか?」

 

 「……それは!シェリーくんとアリサくんは、階段から一番近い部屋だっただろう!?私が気付かなくても無理はないじゃないか……!」

 

 「……無理はない……?レイアは、私がシェリーと喧嘩していたのを知っていたのに、それほどシェリーのことを気にしなかったというのかい?それこそリーダーのレイアらしくないんじゃないかな?」

 

 「随分と、都合のいい所だけみてるんだな……!全員の安全を守るための見回りだったらしいのによ……!」

 

 (やはり……アリサはレイアに反発する!)

 

 (これは純粋な共闘という訳ではないが、敵の敵が、一時的に味方になった形だ……そもそもアリサは、理不尽な容疑をレイアたちに向けられていた……肝心のレイアが真っ先に疑いから外れ、安全地帯から容疑をかけ続けてくる……アリサが、この状況を気に入らないのも無理もないことだろう)

 

 「そ……そもそも、普通に考えて、どうしてレイアさんは、シェリーさんが昨日の夜に死亡したのか、今日の朝に死亡したのかが分からないんですか……?レイアさん、死体に詳しくて、死亡推定時刻が割り出せるんですよね……?私はそこまで詳しくありませんが、役作りで細かな死亡時間についてを調べている、知識のあるらしいレイアさんが、一晩分の死体の時間のずれが分からないなんて……そんなことがあり得るんでしょうか……?」

 

 (……メルル……驚いた、言動から聡いとは思っていたが、敵の弱点を淡々と詰めていくような、恐ろしい言い回しをしている)

 

 (……これは……あまり敵にまわしたくはないな)

 

 「そんなことを言われてもね……!私もキミも素人なんだ。シェリーくんの死体は出血多量で死亡した疑いもある。今は春だし、牢屋敷の外は魔法の影響で、気候が頻繁に変化し続けている……死体の温度による特定もしづらい。多少、死亡推定時刻を間違ってしまうことは、仕方がないことだろう?」

 

  (それは無理があるのではないか……?)

 

 「そ……それは無理がありませんか……?それならそのことを、レイアさんははっきりみんなに伝えるべきだったと思うんです……それなのに……私からは、これまでの裁判で、レイアさんが死亡推定時刻をうやむやにして、容疑者を自らの手で作り出しているみたいに見えました……なんとなく、ですけど」

 

 「……少なくとも、レイアはしばらくの間、アリサを犯人に仕立て上げるつもりだった……そして、それができなくなったから、容疑を私とメルルに向けた……私の目にもそう映ったよ」

 

 「そ、そんなことは……!」

 

 (私が発言する前にメルルも動いている……どうやらレイア……羊と思っていたら、虎の尾を踏んでしまったようだな)

 

 (それにしても……裁判前あれだけ気弱だったメルルがこうも変わるとは思わなかった。裁判前に、別々の意思で行動することを促していて良かったな)

 (人間、自分の命がかかれば馬力も出るか)

 

 「レイア……誰か一人に疑いを向けること、それ自体は容易い……だが、それは、その相手からの信頼を失うということでもある……それが、君が私達にしたことだ」

 

 (……これで、私を含め3名以上が共犯の疑いに賛同したことになる。これは種火だ……まだ小さなこれを、大きく燃え上がらなければならない……まだ先は長いが、楔を打ち込むことはできたといえるだろう)

 

 「ふざけるな……!

 

 「(アンアンか……!?これは……!声が、脳内に響く……!)

 

 「頭が、ガンガンしますわー!」

 「おじさんも、ぼーっとするよー」

 「ミリアさんも、お酒に酔ったみたいになってますわ!」

 

 「ヒロ……!よくもわがはいとの約束を破ったな!お前は最初から、裁判が終わった後、レイアやわがはいとの再度の話し合いをする気なんて、なかったんだ!」

 

 (くっ……私の心の中を、罪悪感を……アンアンの言葉がかき乱してくる……これが『洗脳』の魔法か!)

 

 (だが……私の意思は、この程度では揺るがない!)

 

 「そうだ……私はレイアと犯人の油断を誘うために、君たちに嘘をついた……だがね、私から言わせてもらうとするのならば、それはあまりにも一方的な言い分だ……!」

 

 「うるさい!

 

 「先にシェリーを殺したのもレイア達で、この裁判で私達に容疑を向けてきたのもレイアだ……むしろこれまで我慢してきたことに、感謝してほしいぐらいだよ……私には最早レイアに対する義理なんて、ありはしない!」

 

 

 「うるさい……うるさい!わがはいの話を……聞け!

 

 

 「レイアが実行犯と、共犯しているだと……!?馬鹿も休み休み言え!」

 

 「共犯関係になると言っても、皆のリーダーを共犯関係にすることは、犯人が命綱を他人に預けるということ……犯人の側に大きなリスクがあるだろう……!そんなこと、ありえない!」

 

 「そもそもお前はレイアの主張に全く反論できていないではないか……!犯行が行われたのは就寝前の30分間……昨夜部屋から抜け出したりしたら、同室の少女が気付くはずだ!」

 

 「その条件に当てはまらないのは、お前とメルルだけだ……ならばそこに、レイアが共犯する余地なんてない!」

 

 (アンアン、気付いていないのか……それとも、目を逸らそうとしているのか……)

 

 (……いずれにせよ犯人を指摘する、機は熟した)

 

 「アンアン……昨夜に犯行が可能なのは、私とメルルだけではない。それは、きみもよく知っているはずだ」

 

 「!」

 

 「皆、シェリーの死体を見て、何か感じることはなかっただろうか?私は一目見て印象に残った……上半身の衣服を剥ぎ取られ、壁に拳の血の華を咲かせている死体は裸婦画……そう、絵のようで……とても綺麗で、美しいとね」

 

 「アンアンが医務室にいたから、同室の君は誰にも警戒されることはなく、自由に動くことができたんだ」

 

 

 「……そうだろう、ノア」

 

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