百八十度ノ魔女裁判   作:ミズハ

25 / 25
手放した未練

「のあには分かるよ。ヒロちゃん、疑われていたから、のあの足音を聞いたって嘘ついたんだよね?」

 

「……!」

 

(気取られたのか、単なるハッタリか……どちらにせよ、こうも堂々と指摘されると皆の心象が変わってくるかもしれない。厄介だな)

 

「みんな、ヒロちゃんの強引な暴論を信じすぎてないかな?例えばヒロちゃんがテレポーテーションの魔法が使えれば、調味料も盗んでレイアちゃんに疑いを被せることもできるし、シェリーちゃんの場所にすぐ行けるよね。犯行も簡単なんじゃないかな」

 

「それに、ヒロちゃんはレイアちゃんがのあを庇ってるって思ってるみたいだけど……のあからはヒロちゃんも、メルルちゃんを庇ってるように見えるな。普段から仲がいい人を庇ってるのは、お互い様だよね?」

 

「……うー、難しいですわ……。それも、そうですわね……」

「判断材料が少なくなってきたわね……。どちらの発言にも裏付けがないことには変わりないわ」

 

(……流石に、五分には押し返してきたか)

 

「そうね、それじゃあ……ハンナちゃんやナノカちゃんはまだ迷っているし、昨夜一人になれて、シェリーちゃんが一人になった情報を掴んでいた人物が犯人であることは確かなみたいだから……事件現場でヒロちゃん、メルルちゃん、ノアちゃんの誰かが犯行を行ったと仮定して、その場合どうなるかという論点で裁判を続けましょうか。何か手がかりが発見できるかもしれないもの♡三人とも、文句はないかしら?」

 

(理にかなっているな……話し合う議題も、それなら少なくなる。これからは正面からの殴り合いだ)

 

「問題ないよ。私も同じ提案をしようと思っていたぐらいだ」

「は、はい……私とヒロさんが犯行を行っていないことを、証明します」

「……うん!のあは悪いことしてないから、もちろん大丈夫!」

 

「それじゃあ、話し合いましょう。貴方たちの心の内側を、私にさらけ出して頂戴♡」

 

「容疑者は、ヒロくんとメルルくんとノアくんの中からに絞られた……シェリーくんと仲がいいヒロくんとメルルくんなら、不意をついてシェリーくんに睡眠薬を飲ませることもできるだろうね」

 

「……蓮見はそう言ってるけどな。城ケ崎だって橘と仲は悪くなかったはずだ」

 

「……シェリーは元々、『バルーン』のファンのようだったし、私と行動していない時には、絵を見るためにノアの部屋に顔を出していたようだった。シェリーが私の次に、牢屋敷の中で親しかった人物はメルルか、もしかしたらノアだったのかもしれない……そして、ノアが犯人だったのなら、入り口の扉とは正反対の壁際でシェリーの死体が見つかったことも説明がつく。単に壁に絵を描くと言って、おびき寄せればいいのだから」

 

「そ、それならシェリーさんの、ヒロさんに向けた手紙が書きかけだった理由にも説明がつきますね……!ノアさんに呼びかけられたら、ヒロさんへの手紙を書くことを中断するかもしれません」

 

(風向きはこちらに傾きつつある。ノアが犯人である根拠も揃ってきた、これなら……)

 

 

「でもねー、そもそも、のあには中庭でシェリーちゃんを殺すなんてできないと思うな」

 

(……!)

 

「のあにもちゃんと、しっかりした根拠があるよ?みんな……のあのお話、聞いてくれる?」

 

 

「中庭で一番シェリーちゃんを殺害できそうだったのは、やっぱりヒロちゃんじゃないかな?だってのあはそんなに力は強くないし、メルルちゃんもそう見えるよ。でもヒロちゃんは、力が強い上に、武器を持った看守さんとも最初は互角だったみたいだよね?」

 

「そうだね……もし看守に再生能力がなければ、ヒロくんがとどめをさして、私たちはここを脱出できたかもしれないくらいだった」

 

「現場には、睡眠薬のビンの他には武器になるものはなかったよね?だから……のあには不意打ちをしたところで、怪力の魔法を持ったシェリーちゃんの動きを封じることなんてできなかったんだよ」

 

「そもそもノアちゃんにはシェリーちゃんを殺害する手段はない……シンプルだけれど、真理ではあるわね♡」

 

「じゃあやっぱり、ヒロっちかメルちゃんのどっちかが犯人ってこと……!?あてぃしだまされてた!?」

 

「……ウチよりも余程タチ悪くねえか沢渡。てめえの発言ぐらい責任持てよ」

 

「……ココくんは、色々ともう少し反省したまえ!」

 

「あてぃし行き場ないじゃん!ヒロっち、恨むからなー!」

 

(……助けを求められてしまった)

(……思い切りよく裏切りすぎて内情を暴露した結果、勝手に窮地に陥っているココは放っておくとして)

 

(私が望む正しい結末に、近づくとしよう)

 

「いいや違うね……ノアは、シェリーの動きを簡単に封じることができたんだ……それも私よりも簡単に、皮膚に触れるだけでね」

 

「ふ、触れるだけで……!?どうやってですの!?」

 

「人間の体は、60%が水分でできている……そして、ノアの魔法はなんだったのか、君たちは知っている筈だ。それは……液体操作の魔法。ノアは魔法を使ってシェリーの体液を操った。そしてシェリーを身動きができない状態に陥らせることで、安全に睡眠薬を飲ませることに成功したんだ」

 

「……そんなの、無理だもん!だって、のあはお絵描きじゃないと液体の操作はできないんだよ!」

 

 

「……じゃあ、それを証明することはできるのかな?疑わしいと思うけれどね」

 

「う……!」

 

(ノアは、殆ど自分の部屋から出てきていない。少女たちも、ノアが液体を自由自在に操って絵を描く所は見ていても、そのような制約は知らないはずだ)

 

(それに、仮にノアの意見が正しかったとしても問題はない)

 

「……ヒロくん、それは『悪魔の証明』ではないのかな?魔法の制約の証明だなんて。

私も液体操作なんて利便性の高すぎる魔法には、何かしらの制約が課せられていてもおかしくないと思うのだけれど」

 

「仮にノアが事実を語っていたとしても、辻褄は合うよ。ノアは血管でも使って、シェリーの体内に絵を描けばいい……体の中ならば、ある程度お絵描きで遊んだ所でバレないだろうな!」

 

「ヒッ……!」

 

(怯えているな……今のノアには、私が悪鬼羅刹にでも見えるのだろう)

(だがその激情を止める気は、私にはさらさらない!)

 

「睡眠薬のビンが落ちていた足元の地面には、シェリーが爪を立てた跡が残っていた……死体が発見された壁際の地面には爪痕がなかったから、きっとそれが意識のあるシェリーが行った、ノアに対する最後の抵抗だったんだろう」

 

「流れとしてはこうだ。シェリーを壁際におびき寄せたノアは、何かしらの手段で不意をつき、皮膚に触れた。そして……おそらく鉄分か、赤血球……とにかくシェリーの血液中の何かを操ったノアは、体を自由に動かせなくなり抵抗がまともにできなくなったシェリーの口に蓋を開けた睡眠薬を咥えさせて、飲ませた」

 

「しばらくしてシェリーの意識が完全に失われたことを確認したノアは、シェリーの上半身の衣服を脱がしにかかった。それには二つの理由があった。一つは上半身の皮膚に触れて、シェリーの肉体の水分全体を、操りやすくするため……そしてもう一つも、最終的にシェリーの死体を美しい裸婦に変えると自身に暗示をかけることで、更にシェリーを『モノ』として操りやすくしたためだ」

 

「な…なるほど!これまでの裁判の流れだと、シェリーさんが強力な睡眠薬を飲まされていたのに、犯人に引き摺られた後にも、壁に沢山拳の跡があるのが変だと思ってたんです!じゃあシェリーさんの拳が裂けていたのは、ノアさんの魔法だったんですね……!」

 

「壁までシェリーを引き摺ったのがノア自身なのか魔法なのかは分からないが……とにかく、ノアはシェリーの体を壁際に到着させた後、魔法でシェリーの拳を、地面や壁に叩きつけさせた……その時に、シェリーの両腕の肘も反動に耐え切れず裂けたんだ。その後は放っておいても致命傷だったが、ノアはきっと、メルルのようにある程度死体から情報を得ることができる人間がレイア以外に居る可能性も考慮して、死亡推定時刻をずらすために、限界ギリギリまでシェリーを生存させたんだろう……違和感は多少残ってしまったが、体内の水分を操ることでメルルの違和感を覆い隠したんだ」

 

「……げろぉ。うっぷ」

「……ひでえことしやがる」

 

「ノア、なにか反論はあるかな?」

「……ヒロちゃんの方こそ、血の拳の跡がシェリーちゃんの犯人への抵抗じゃなくて、のあの魔法のせいだっていう証拠はあるのかな?」

 

「ああ、あるとも……ハンナから、興味深い証言を耳にした。シェリーの怪力の魔法はとても強いそうで、岩や煉瓦も砕けるものだそうだと」

「そうですわね!この耳ではっきりシェリーさんの自慢話をお聞きしましたわ!」

「しかしシェリーの背後の、血の拳が多数付けられていた壁は、砕けたどころか、罅一つ入っていなかった……当然だ。だってあの拳の跡を作った者は怪力の魔法を使ったシェリーではなく、ノアだったのだからね」

 

「……の、のあは……!」

 

「そもそも、最初から死体の状況はおかしいと思わなかったか?自殺の線は先ほど消えているというのに、なぜシェリーが沢山背後の壁を殴りつける必要がある?……シェリーの普段の性格と、現場の見た目の派手さに騙されていた者も多かったかもしれないが、被害者が取る行動としては不自然だろう。だからね……現場の惨状は、犯人が一人で作り上げたものだったんだ」

 

「……少なくとも、橘シェリーが壁に血を付けた訳ではないことは理解したわ。

そうなると、確かに城ケ崎ノアが一番怪しいわね」

 

(ノアが犯人であるという根拠を、明確に示せた。レイア達の集団の結束も削ぎ落した。後は証拠を出して、全て終わらせよう。そして私も未練に別れを告げよう……)

 

「ヒロくん、それでもキミが言っていることは全て状況証拠にすぎない!ノアくんが犯人だと断言できる根拠は何もないはずだ!ヒロくんの方こそ、誰かと手を組んでるんだ!正しいのはヒロくんじゃない……私だ!」

「のあはシェリーちゃんのこと、大好きだったんだよ?のあは犯人じゃない!嘘をついてる犯人は、ヒロちゃんの方だよね?」

 

(こんなにも壊れてしまった、今朝とても温かかった会議の時間に感じたはずの……ほのかな未練に)

 




~BGM24~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

パーペトレイターズ・ギルト(作者:【自爆】)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

またの名を、激鬱エマ。▼何故か未来の記憶を持ったエマが、自身の存在しない罪を償おうとする話。▼軽い性格改変があります。


総合評価:1772/評価:9.05/連載:12話/更新日時:2026年05月26日(火) 04:15 小説情報

従順少女ノ魔女裁判(作者:夏目)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

【感覚操作】の魔法を持つ少女・尾形(おがた)トウカは、目を覚ますと見知らぬ牢屋敷に拉致されていた。▼ トウカをはじめとした14人の少女に、不気味なフクロウ・ゴクチョーが淡々と告げる。「面倒なことに、そのうち囚人間で【殺人事件】が起こる」と──。▼ 魔法のせいで嫌でも感じ取る凄惨な事件の気配。冷え切った関係。嫌疑の視線。秘めた怒り。潜めた息遣い……。トウカは直…


総合評価:2105/評価:9.28/連載:21話/更新日時:2026年04月10日(金) 19:01 小説情報

洗脳少女ノ魔女裁判(作者:山手エビフライ)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

もし、夏目アンアンが学校に通っていて、エマと同じクラスで、彼女たちと友人関係だったら?▼そんな世界線での本編を妄想し、書き始めた作品です。▼初めてのネットへの小説の投稿故に不定期投稿だったり、文章に拙い部分もあるかもしれませんが、ご了承ください。▼本作のアンアンは原作とは設定が違う為、原作とは大きな乖離があります。▼また、本作は最初の時点で魔法少女ノ魔女裁判…


総合評価:327/評価:8.7/連載:8話/更新日時:2026年03月04日(水) 06:00 小説情報

ヒロ!みんなは任せた!俺はユキとメルルを!!(作者:guruukulu)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

原作知識を持った男がTS転生して、少女たち(主にユキとメルル)を救うお話。▼なお、彼は良家出身の京都弁糸目お姉さんとする。


総合評価:761/評価:8.48/連載:6話/更新日時:2026年03月28日(土) 22:55 小説情報

そっくりさんノ牢屋敷生活(作者:蒼天 極)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

 氷上カレンが目を覚ますと、そこは牢獄。▼ どうやら魔女因子に適合してしまったらしく、魔女になる危険性があるため牢屋敷に隔離されたらしい。▼ 結果、牢屋敷で生活する事になったカレンだが、そこにはメルルと言う同じ苗字の見た目そっくりな少女がいて……?▼ これはどこぞの黒幕と双子と勘違いされるくらいに似てる少女、氷上カレンが牢屋敷での余生を全力でエンジョイするお…


総合評価:518/評価:8.12/連載:11話/更新日時:2026年05月10日(日) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>