百八十度ノ魔女裁判   作:ミズハ

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「筋が通っている」

「ヒロくん、キミの推理は全て状況証拠にすぎない!」

「のあもレイアちゃんとおんなじことをヒロちゃんに言うよ?結局、のあがシェリーちゃんを殺した証拠はなんにもないんだよね?」

 

「ここまでの裁判の流れを振り返れば、私とノア、どちらが犯人である可能性が高いのかは全員分かってくれると思うけどね」

 

「おじさんは、ココちゃんの暴露を聞いちゃったから、今のレイアちゃんたちのことは、ちょっと信じられないかも……裏で黙って、みんなで一人に罪を被せようとしてたなんて」

 

「ミリアちゃんがそんな発言をするなんて意外ね。でも、ヒロちゃんの推理に明確な根拠がないことは事実ではないかしら♡」

 

「もし根拠があるとするなら……ヒロちゃん、私に教えて頂戴」

 

「えー?そんなもの、ないよね?ヒーローちゃーーん♪」

 

 

(満面の笑みのノアから背筋が凍るような圧を感じる……気圧されてなるものか!)

(今ならノアに投票が集まる気もするが……先日までバルーンの話題で盛り上がっていたのは事実……少女たちもまだ、私に票を入れたい気持ちもあるはず)

(ノアはすっかり油断していたようだが、証拠は現場付近に残っていた……お前が犯人である明確な根拠を示して、この私刑染みた狂った裁判を終わらせる!)

 

「それでは、ノアが犯人だという証拠をマーゴ達に見せるとしよう……この写真を見てくれ。シェリーの事件現場付近の雑草には、赤い液体が乾いたと思わしき物体が付着していた」

 

「赤い液体?確か、メルちゃんが保管していた睡眠薬も赤い着色がしてたんじゃなかったっけ?それが零れたんじゃねーの?」

 

「いや……見て貰えば分かると思うが、この写真には引き摺られていたシェリーが近くに映っている。先ほどの私の推理を思い返して欲しい。睡眠薬のビンが使われていたのはビンが落ちていた場所だ。そこからノアがシェリーを引き摺ったのだから、この赤い物体は、睡眠薬とは関係がなかったんだよ」

 

「そ、そもそも……睡眠薬が落ちても、雑草はこんな風に変色しないと思います。これはなんというか、もっと濃い染料を無理やりつけたかのような……」

 

「そう……塗料なんだよ。ノアが部屋のお絵描きでずっと使っていた塗料の色、それはなんだったかな?」

 

「そうだ……!あてぃしたち全員で見てた……白と、赤の塗料だ……!」

 

「実際にゴミ箱の中には白と、赤の塗料しかなかった。おそらくノアは昨日の夕方、赤い塗料の絵を描いていたんだろう……そして、靴に塗料が付着したことに気付かずにシェリーの殺害に向かったんだ」

 

「確かに、ノアさんは昨日赤い部屋で絵を描いていましたわ!」

「……なるほど。城ケ崎ノアの魔法は壁、天井、床を染め上げる……そして、昨夜その色は赤だった。理屈は通っているわね」

 

「……シェリーちゃんの遺体の近くには、背丈が長めの雑草が生えていたわ。

つまり靴に付いていた塗料が、雑草に移った可能性はあるわね……シェリーちゃんの体を激しく操って夢中になっていたのなら、猶更気付かなくてもおかしくない……ええ、納得したわヒロちゃん。その方が、筋が通っているものね♡」

 

(……ついにマーゴにも私の言葉が届いた。明確な証拠を示せた以上、これでノアに勝ち目は……)

 

「……ふーん?でも、ヒロちゃんの言ってることおかしくないかな?……だってほら、のあの靴は今、赤く汚れてないよ?赤い塗料って、ヒロちゃんが、ノアを犯人に仕立て上げるためにわざとやったことじゃないのかな?」

 

(まだ粘るか、ノア……!だが……理論を最後まで組み立てて、終わりにする!)

 

「……なぜ、レイアは厨房で何度も調味料を盗んでいたんだろうな?自分の魔法の手がかりを残すだけだというのに」

 

「……そう言われてみると、おかしいですわね」

 

「それは……食堂の料理の味が酷い分、部屋に閉じこもっているノアくんに、少しでも美味しい料理を食べてもらおうと……!」

 

「確かに、最初はそれも理由だったかもしれない……だがそれは、言い換えれば、食堂の厨房から火が出るものを持ち出せた、ということでもある」

 

「……ウチが疑われる理由になった、火の跡……!」

 

「そうだ。看守の知能がどれほどかにもよるが、危険なガスを使わずに火を起こせて携帯できる、小型のカセットコンロか、マッチがあったかもしれないし……酸化ナトリウムである食塩を水に溶かしてノアが魔法を使えば、金属ナトリウムに戻せるかもしれないな……おそらくは事前に持ち出していた、そのうちのいずれかを使って、ノアは犯行後に自分の靴の汚れに気付き、中庭で、証拠となる赤い塗料がついた靴を燃やしたんだ」

 

「金属ナトリウム……水に濡れるとクーロン反応を起こして、爆発が起こる金属よね。

実は爆発のメカニズムが分かったのは、最近なのだけれど……確かにノアちゃんの力なら、酸化を元に戻せるかもしれないわ……もしそうなら、人間の科学ではできない奇跡よ……まさに、『魔法』ね♡」

 

(本当に絵にしか魔法が使えないのなら、私の推理が間違っている可能性はあるが……今回の論点は、そこではない)

 

「……これは十分な根拠だろう。ノアは中庭で犯行を行ったし、レイアはそれに手を貸していたんだ」

 

「……草に付いたちっちゃな跡なんて、赤い塗料じゃないもん!まだヒロちゃんとメルルちゃんの共犯なら、二人が示し合わせて嘘をついている可能性はあるんじゃないかな」

 

「いいや……終わりだ、ノア。みんな、この証拠を見てくれ……私は既に、焼却炉内の写真を撮っている。」

 

「ほ、本当ですか!?炉が動く土曜日は、明日でしたが……ヒロさんらしく、種類ごとに、綺麗に片付け整理されて置いてますね……あっ!?」

 

「……そう。今は、私たちが牢屋敷に来てから6日目。衣服……そして靴も、脱衣所で捨てるように規則がある。だが、ノアは風呂に2度しか入っていなかったようだ……他の少女たちの靴は10足あるにもかかわらず、ノアの靴は2足……片足分、足りないんだ」

 

「そんなの……ヒロちゃんが、他の子の衣服の下に、隠した可能性だって!」

 

「いいや……違うぞ城ケ崎。二階堂が焼却炉の中を覗いて写真を撮った時、ウチも気になって焼却炉の中を見たんだ……ウチもあん時は必死だったから、少し調べた。二階堂の言う通りだった。その時は、二階堂も衣服を種類別に分けていただけで、怪しい素振りをしてなかったことを確認してる……靴が片っぽねえことの意味は、ウチには分かってなかったけどな」

 

「アリサが犯人ではないという結論は、議論の序盤に出ている……終わりだよ、ノア」

 

「あ……あ……のあは、そんなの……」

 

「……まちたまえ!」

 

(……レイアか。どうして、そこまでしてノアを……)

 

「……ヒロくんだって、罪を犯していることには変わりないじゃないか!ここでノアくん、そして私を二人とも処刑して、全員、本当にそれでいいのかい?ヒロくん一人を処刑すれば、丸く収まることじゃないか!」

 

「うえええん!ノアは……死にたくない!死にたくないよ……!」

 

「なっ……!」

 

(ふざけるな……シェリーを理不尽に殺害しておいてそんなにも正しくないことを……許されていいはずがあるか!)

 

(落ち着け、こんなものは、単なる悪あがきだ……ここから巻き返すことなど……)

 

「嫌だ……嫌だ!わがはいを置いて《死ぬな》、ノア、レイア!」

 

(ぐっ……これは魔法か……こ、声が……頭に……!)

(アンアンのあの涙と取り乱しようからして、意図して発動した『洗脳』ではないかもしれない……だが、タイミングが悪すぎる!)

 

「そうだね……おじさんも、レイアちゃんとノアちゃんに死んで欲しくないよ……!」

「一つの裁判で、城ケ崎ノアと蓮見レイアの二人を処刑する……本当に、私たちはそれでいいのかしら……?」

 

(少しでも迷ってしまえば、皆の意識が、歪む!ふざけるな、ふざけるな……!罪を犯した人間が正しく裁かれないだと!?こんなものは裁判でもなんでもない!)

 

「……もういいよレイアちゃん。……ノアが殺したんだ」

 

(……!)

 

(なぜだ……不自然に思える。うつむいて泣き出しているから、表情と口の動きが分からないとはいえ……ノアの性格は……ここで諦めるような人間だったか?)

 

「そうか……ノアくんは耐えられなかったんだね。己の罪深さに」

 

「……のあは言ってない!殺したなんてこと、言ってないよ……!」

 

(ノアの様子もおかしい。錯乱状態……パニックに陥っているようだ)

 

「大丈夫だよノアくん……キミの罪は、私が半分背負ってあげるからね!」

 

「違う!違うよ、レイアちゃん!!」

 

「違わないこともないでしょう……レイアちゃん、守りたいなんて口先ばかり。一番大事な時に、ノアちゃんのことを見ていなかった。本当はノアちゃんのことなんて……どうでもいいんじゃないかしら♡」

 

「そんな……!私は、純粋にノアくんのことを守ろうと……!」

 

「……もういいよ、レイアちゃん」

 

「シェリーちゃんの死体でいっぱいお絵描きできて、のあは満足できたから」

 

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