Fate/Determination faith   作:桜花 如月

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プロローグ

 目の前には、地獄があった。

 跡形もなく崩れ去った建物、見たことのあるようなオブジェクト、それら全てが火の海に消えていく。

 

 地震だとか、単なる火災なんかでは無い、文字通り()()が起きたと告げる景色。

 その中心には人の影。

 刀を持ち、死体の山の頂点に立つ、()()()の姿。

 道を踏み外せばこうなると、直感がそう叫ぶ。

 私に気づいた()()は一切顔を変えずにこう呟く。

 

 ──私は、お前だ、と。

 


 

 外から響く、鳥の声で目を覚ます。

 カーテンから指す日差しがまだ完全に覚醒していない思考を揺らすようにギラギラと輝いている。

 そして、追い討ちのようにスマホのアラームが鳴り響く。

 

「うるさ……」

 

 寝る時に耳元に置いていたせいで爆音のアラーム音が炸裂した。

 昨日の自分を恨むような声を上げて体を起こして布団から起きる。

 カーテンを空ければ視界は良好……とは程遠い背の高い木々、日は差し込むとはいえ朝起きてこの視界は普通に寂しい。

 まぁ、山奥にある家だから仕方ないんだけど。

 

 そんなことを考えながら居間に移動して朝食を用意する。

 両親はいない、だから毎朝自分で用意するし片付けも自分でやる、もはや慣れたモーニングルーティンというやつ。

 一人で飯を食い片付ける、慣れれば意外とどうってことはない。いや嘘ついたちょっと寂しい。

 

 なんて一人芝居を空打ちしながら制服に着替え水色のパーカーを羽織ってカバンを肩にかけて準備を済ませ玄関に向かう。

 扉の前に立てかけてある()を背負って家を出る。

 

 


 

 通学路は山道を降り朝にしては閑散としている住宅街を抜けていく、そういうルート。

 そんな静かな住宅街を抜けた先に私の学校がある。

 毎日往復するのも大変だけど、街の構造上仕方ない。

 普通な女子高生ならともかく、余分に荷物を持ってると山道の往復って結構辛いんだよね。

 

「おはよー、玲香」

「あれ、家反対じゃなかった?」

 

 学校が目前に迫ったところで背後から両肩を叩かれた。

 振り向くと同じクラスで仲良くしてる暁 奏(あかつき かなで)だった、でもいつもは私と反対方向から来るはず……。

 

「いやー、それがさ? ガス爆発だとかでいつもの道と保険で使ってる道両方建物崩れちゃったらしくてさ」

「そんな物騒なことある?」

「あるから私がこうやって遠回りしてきたんだって」

 

 そりゃそうか、と相槌を打ちながら教室へ向かう。

 学校の施設は全く変化がないけど、すれ違ったり一緒に教室へ向かう人はやけに少ない。

 その違和感は私のクラスを見ても同じく。

 時間がまだ早いとはいえ教室にはクラスの半分程度しか生徒が居ない、私から真反対、窓際に席がある神代 敦也(かみしろ あつや)とその妹の(もみじ)も最近見ない。

 

「近頃物騒な話多いからだよ」

「物騒、か……」

 

 一番ガス爆発と縁のない場所に住んでるからなのか実感は全くないけど、最近何かとガス爆発だとか人の失踪事件だとかはよく耳にしてはいた。

 ニュースなんか見てもそういう話題っきりだ。

 

「物騒といえばさ、これ知ってる?」

「何この紙」

「え、玲香知らないの? 最近ずっと登校できてる生徒の中では有名な話だよ?」

 

 彼女が渡してきた紙には《涼夏市七不思議》と書いてあり、色々とツッコミどころの多い七つの要素がのっている。

 自転車乗りとかイケメンとか、単なるこの街の治安に乗じて発生した変質者なだけな気がするし、他もまるで信ぴょう性がない。

 

「こんなの信じてるの?」

「これを信じないの!?」

 

 悪魔召喚とか、どう見ても胡散臭いし先述した変質者もあるしでどう考えてもこれを信用しろという方が無理だ。

 もちろん純粋に楽しんでる気持ちを否定はしないけど、こんなオカルトチックな話、実際起きてる訳でもないだろうし、私は信じない。

 

「何見てるの?」

「あ、マリン! 聞いてよ玲香がさ……」

 

 談笑しているとドアから入ってきた友人──海野 尊(うみの みこと)(みんなからマリンって呼ばれてる)が朝からちょっと怪訝そうな顔をしながら質問してきた。

 私が見ていた七不思議の書かれた紙を一読すると大きくため息をついて紙を机に置く。

 

「玲香は信じてるの?」

「いや、まったく」

「マリンは!?」

「こんなの、不審者情報と単なる都市伝説の集まりでしょ」

 

 マリンはまたため息をついて「じゃ、授業始まるから」と席に向かっていく。

 彼女はいつもこんな感じの冷たい対応をするけど、今日はいつにも増して冷たい気がする。

 なにか触れちゃいけないことでもあったのか、と考えているとあくびをしながらこのクラスの担任、田淵先生が教室へ入ってくる。

 

「じゃ、また後でね奏」

「ほいよ〜」

 

 予鈴も鳴ったから私とマリンはそれぞれの席に着く。

 

「眠……あー、HR始めるぞ〜」

 

 気だるそうにHRを進める先生は連絡事項等を伝えた後に教室全体を見渡すと「やっぱ少ないな」とこぼした。

 登校してから割と時間が経ってるはずなのに私たちのクラスは奏とマリンを含めても半分からほぼ増えていない。

 先述した通り頻発してるガス爆発や老朽化した建物の崩壊等でこの街の治安は最悪だ。

 そんな状況だと精神的に辛くなるのも理解出来るし万全な状態で登校出来る人の方が少ないのも納得できる。

 もちろん、私も()()()ではないんだけど、それはさておき。

 

「毎日のように言ってるがここ最近やけに治安が悪い、それ故に今日から半日授業期間になる、とはいえ遊び呆けないように」

 

 そう告げられて歓喜の声よりも不安の声があがる。

 ざわつく生徒たちに向けて「静粛に」と先生が両手を叩き一気に静まると残った連絡事項を伝えてHRが終わった。

 

 

 それから数時間真面目に授業を受けあっという間に半日が過ぎ帰りのHRも簡単な話で終わった。

 これで帰る、というところで先生に呼び止められた。

 

「お前が一番危険なとこに住んでるからもっかい注意しとこうと思ってな」

「心配しすぎです、()()も持つこと許可されてるので」

 

 壁に寄りかかり心配してくれた先生に対し背負ってる()を指さす。

 本来は別の用途で貰ったとある物が入ってるためよほどのことが無い限りは身の安全は保証される。

 というのに

 

「そういう油断がな……まぁ、聞かないか」

「よくご存知で、ほんとに命の危険があったらちゃんと身を守るので心配しなくていいです」

 

 先生の心配は止まらず、それでいて何故か呆れた顔をされたのを横目に軽く挨拶して荷物を持ち直し帰路に着く。

 

 

 数十分後、自宅のある山の麓まで何事もなく歩いてきたところで足を止めた。

 

 今の治安だから納得だけどあまりにも周辺に人の気配がしない。

 もちろんこんな山に登る人がいるかと言われたらそこまでだけど、今のこの雰囲気はそんなものじゃない。

 

 警戒しながら山を登ると行く時にはなかった倒木などが至る所にある。

 そして奥に進むにつれ人どころか、生物の気配も全くしない。

 嫌な予感がする、はやく──

 

 そう思った矢先、背後に突然気配が現れた。

 

「──っ!?」

 

 巨大な影から振り下ろされたこれまた巨大な()()を間一髪で避けて後ずさる。

 木々の間から差し込む陽の光が照らし出したのは私の3倍近いサイズの巨大な蜘蛛──のようなにか。

 

「なにこいつ……!?」

 

 そう零すけど答えはもちろん帰ってこない。

 むしろ、返答の代わりと言わんばかりにその胴体に付いている巨大な腕──鎌?──を振り下ろし私を狙う。

 

 このままにげてても埒が明かない。

 ある程度距離を離したところで背負っている袋を地面に突き刺し中身を取り出す。

 

 ──コツは一つ。

 ──()()()()すること。

 

「──抜刀。──強化、開始(ブースト・セット)

 

 袋から取り出した《刀》を鞘から抜くと同時に自分の中に刻まれた()()を開くイメージを全身へ回す。

 未熟、何もかも歪だけど、それでも──。

 

「簡単に死ぬわけにはいかない」

 

 私の《魔術》を感知したのか蜘蛛の動きも加速し鎌を振り下ろしてくる。

 受け止める、なんて芸当は不可能、だから身体に刻んだ魔術で避けに徹する、それが無理なら──

 

「……っ!」

 

 大蜘蛛は私が避けに専念しようとしたことに勘づいたのか二歩先に鎌を振り下ろした。

 間一髪避けたものの倒木に足を取られバランスを崩してしまい倒れかけてる私に向けて鎌が横払いされてしまう。

 刀でガードしたものの受けきれずに近くの大木まで吹き飛ばされてしまい、衝突の勢いで魔術も解け刀も遠くに飛ばされてしまった。

 

(まずい……け、ど……)

 

 立ち上がろうと身体に力を入れても両腕には全く力が入らず、全身を強打したせいで視界も眩むし思考もまともに働かない。

 好機と見たのか大蜘蛛はカチカチと音を立てながら私にじわじわと近づいてくる。

 

(死ぬ、か……)

 

 どんどん近づいてくる大蜘蛛の鳴らす音すら遠ざかっていく中でそんなことが過ぎる。

 こんな化け物、私が太刀打ち出来るわけ無いことはわかっていた、それでも逃げるだけなんて嫌だった、だから刀を抜いた。

 なら、この結果は仕方ない。

 そう、死ぬのは──

 

(嫌、だ)

 

 無下にしておいて言うことじゃないけど、一度拾われた命をこんな形で、こんな奴に負ける形でもう一度失うなんて。

 そんなのは──

 

「──死んでも御免だ……!」

 

 その言葉と同時に、私の視界は眩く光り目の前振り下ろされていたはずの大蜘蛛の鎌は本体ごとどこかに弾き飛ばされた。

 物凄い衝撃が発生したことにより起きた砂埃が収まっていくとそこにはひとつの人影がある。

 

「……だ、れ?」

 

 薄れ行く意識の中、晴れた砂埃から現れた()()に問う。

 掠れた私の声に気づいたようで振り向いた少女は手を差し伸べながらこう言った。

 

 

「──サーヴァント《セイバー》、召喚に応じ参りました、あなたが私のマスター……ですか?」

 




きっとそれは、必然の出会い。




以下人物等説明
────────

冷夏市(りょうかし)
山と海に挟まれた少し規模の大きいプチ都会
玲香が住んでいる家のある大見山と都市開発で建っていたビル等が数年前から廃墟として残っている脚立山が向かい合わせの形で街を囲んでいる
名前の通り夏でもかなり涼しく、冬は寒い



山崎玲香(やまざきれいか)(高校二年生)
黒髪ショートボブに赤い瞳、ファッションセンスはあまりない。
とある事件をきっかけに魔術師(魔術使い)となる
使用魔術は強化(ブースト)
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