Fate/Determination faith 作:桜花 如月
人
法師が起こした何かは未だにランサーのマスターだったモノを変貌させていき、禍々しく醜いモノへと形を成す。
「マスター、逃げ、て──かはっ……」
目を覚ましたセイバーはまだ動けそうになくむしろ悪化して再び血を吐いてしまっている。
セイバーを抱えて逃げたとしてもどう見ても逃げ切れるような簡単な相手じゃないだろうし、なによりこのまま逃げたらこいつは街中で暴れて無関係な人達を傷つけるだろう。
回復するまで避難したところで、どれくらいで動けるかもわからないし、セイバーに頼りきりだからこうなってしまったわけで。
「は、ハハ……はhahaA──みなsあい、このスガタ……これデ、おま、おまえを──ランサーの仇を……!」
「──ランサーはもういない、あなたはもう、戦う必要なんて……」
まだ話せる、そう思い会話を試みるけど一方的に言葉を並べるだけでコレは私の言葉は全く聞いていない様子で手──醜く変化した腕を振り回し周囲を薙ぎ払う。
「見た目以上に速い……っ!」
巨大になった身体を全くデメリットにしないような速さの攻撃が狙いを定めずに全方位に繰り出されている。
もう、仇が目の前にいることすらまともに見えていない様子。
「止まって!暴れる必要もな──」
「黙れダマレだまれぇぇぇ!!!」
「──っ!?」
これ以上の被害を出さないためにも止めようと刀を構え近づいたその瞬間、地面が抉られた衝撃で発生した砂埃により視界が塞がれてしまう。
その隙を逃すほど理性がない訳ではなかったようで、爪が飛び出た腕でそのまま攻撃をモロに受けてしまった。
「バカね……ぇ!」
「マスター……!」
吹き飛ばされセイバーの真横へと倒れ込む。
たった一撃、防御も出来ずに攻撃を受けてしまった。
習ったことも、覚悟も全てを打ち砕かれ、敗北した、ということ。
私は、負けた。
もう、手は、身体は起きることも出来ない。
魔術も、剣技も、何ひとつ使うこともせず、負けた。
約束した。
あの日、身を守るための技として貰ったものもあった。
なのに、全て無駄にしてしまう。
私には、勝てる相手じゃなかった、ただそれだけの事。
あぁ、私は──。
「無様に死んだわねぇ──さぁセイバー、あなたハ、どんなスガタをみせテくれrrrrrrぁぁ──!」
「……玲香、あな、たは──」
横で倒れている少女に語りかける。
そうしているうちにも、化け物は距離を詰めてトドメを刺そうと狙いを向けている。
少女だけは、なんとしてでも生かすと、そう手を伸ばす。
が、その手は
「──、──!」
声にならない何かを叫んだ目の前にいる少女に届かず。
「──」
何も感じない。
音も、匂いも、何も感じない。
心臓の鼓動も、魔力の流れも、その全てが私には感じ取れない、生きているのかすら、自分には理解出来ない
「──、───」
言葉を出しても、音にならない。
口の中が、身体の至る所から血が流れている、それだけはわかる。
自分でも矛盾しているのはわかってる。
そんなことは、どうでもいい。
目の前には、あの化け物の気配。
あぁ、そうか……そんなことか。
目を開けて、身体を動かせ
私は、まだ
生きて、刀を振ることができる
なら、お前は
「──お前を、殺す」
やっと出た言葉は、刀と共に化け物へと向かう。
「一撃で死ねばよカッたのに、しぶとイな」
「……」
思考は清々しいほどに晴れ、耳障りな化け物の声は届かない。
ケタケタと笑うこの化け物は、私に勝てると余裕を見せて隙だらけ。
「──
強化の魔術を発動し距離を詰める。
すると化け物は再び私を吹き飛ばそうと巨大な腕を振り回し倒そうとしてくる、それを避けて腕に刃折れの刀を突き刺す。
痛いだのと叫ぶが無視して再度距離を取る。
「よくモ、お前──!」
「……っ、邪魔──!」
ワンパターンな攻撃を繰り返しながらも魔弾をどさくさに紛れて放つ。
刃折れながらも鋭さだけは変わらないため魔弾をはじき飛ばして再び距離を詰める。
「なんなのよアンタ──わた、わたたttttしはhhか、ぺkkkkk──!」
「どこまで腐るつもりなの……!?」
ついに言葉すらまともに話せなくなるほどに理性も化け物に呑まれている。
もう、止めるしかない。
それは。
──わかってる。
たまに見るような、夢の景色と同じ結末に進むことになるかもしれない。
それでも。
私は、その覚悟もできている。
聖杯戦争に参加したその時点で、いつかはやらなきゃ行けないことだと
「わたわたssss、わttしが──お前の、おま、えの──四肢を抉り、コロ、ころrrして───貢ぐ……あの、人……王子、さま、に……」
「そんなこと、させない」
もう、いいんだ。
躊躇いは捨てる、それは、刀を持った時点で諦めたことだ。
「──私の全てで、あなたを殺す」
「やっteみせ、roよ、クソガキぃぃぃぃぃ!!!!」
巨大な腕が迫る。
避けることはしない。
「──
その一言と共に、体内の魔力が全身を駆け巡る感覚に襲われ、視界が揺れる。
「──ぁ、──、──」
思考は動かない。
ただ、目の前にある影を無心で落とす。
刀は、刃折れていたはずの刃は、少女の魔力によりその姿を取り戻し、折れる以前よりも鋭く、重い刀身を宿して、獲物を狩る。
何かが聞こえる、叫び声のような、なにか。
「マスター、それは──!」
セイバーの声が、鮮明に聞こえる。
彼女が立っている世界は、こう見えているのかな。
わからないけど、今はただ。
「──ふざけ、るなぁぁぁ!!!」
ノイズが晴れる。
五月蝿い声が、邪魔な音が血を流す目に、脳に響く。
「──死んで」
ただ、それだけを呟いて。
セイバーに教わった《技》を。
──人斬り抜刀斎、河上彦斎。または私の同僚……斎藤一みたいな、そういう技なら、あなたでも
そう、言ってたっけ。
見よう見まねで、全く鋭さもない剣技だけど。
「無明・閃」
空を切るその一閃は
少女の全てを使ったその技は
化け物と成ったモノの首を切り落とした。
「───っぁ……」
化け物の死を感じ取り空気が軽くなった瞬間、少女の纏った魔力の流れが消え、刀も刃折れの姿へと戻った。
そして、少女はその場に力なく倒れ、動かない。
玲香が編み出した強化魔術の究極系。
自信の持つ魔力をサーヴァントへの供給分を除いたほぼ全てを使うことによる捨て身の技。
ボロボロの身体を無理やり平常時と同じような身体能力を取り戻すことや
刃折れた刀の刀身を元の姿に戻したうえで鋭さをさらにあげることも可能
ただし使用後の本人は魔力切れを起こしたうえで元の身体になりさらに
《無明・閃》
沖田総司の特訓で使えるようになった玲香オリジナルの剣技。
連撃よりも一撃の重さをメインとした技のため文字通り一撃必殺を狙うものとなる
が、玲香の常時ステータスでは限界があるためこの技を使う時は最低でも強化魔術を使用しないと扱えない。が発動の最低条件なため本人が負傷しているなどで万全じゃない場合は解放まで使わないと全力は出せない。
つまり本来は流星一条と同じく自爆技に近いもの、本人の技量次第ではある