Fate/Determination faith 作:桜花 如月
身体が熱い。
燃えるような、というか多分、本当に燃えている、そんな熱さが身を襲う。
目の前には、
「
そう語りかけてくる。
まわりにはいつの間にか大量の死体が積み重なり私を囲む。
新撰組の羽織りを来た目の前にいる**は刀を抜くと私の首元に押し付ける。
抵抗しようと身体を動かしても全く微動だにせず。
───死ね。
それだけを口にした少女の刀が振り下ろされる。
そして、私は───
「───うわぁぁ!?」
「うっ!?……起きましたか、マスター」
目を覚ますと、横にセイバーが座っていて、大きな声を出したことでビックリしていた。
夢とは思えないような物を見てしまった私の心臓は物凄く早く動き冷や汗もかいている。
そっと首を触るけどちゃんと繋がっているし身体にも問題はない。
いや、問題ない……?なんで……?
「セイバー、私──」
「そこはちゃんと説明します。まずランサー……ディルムッドとやらは私が倒した後消滅しました、それでそのマスター……あの方はマスターが倒しました」
「うん、そうだったよね……」
無我夢中で、全く思考が働いてなかったけど、手に感触が残っている。
私があの女性の首を斬った。
つまりは、私が……
「マスター」
「……わかってる、こうなることはわかってた」
身を守るための刀は、殺すための刀にもなる。
そんなことは、戦うと決めた時点でわかっていたことだ。
そしてそれを当たり前のことだと受け入れてしまえば、私は本当に道を踏み外して元に戻れなくなるんだろう。
それこそ、夢で見たあの景色のように──
「……それで、マリンは?」
「また偵察に行くと出かけましたよ」
ここ数日、ずっとマリンに昼間の偵察を任せてる気がする。
なんなら昨日はボロボロになってたのに、また街に出ているけど、何をしてるのかは分からない。
……まぁ、考えすぎても意味ない、か。
「それでマスター、今日ですが」
「特訓、はちょっと休みたいかな……まだ本調子にはなれないから」
「そうですね、私もその状態で無理やりやらせるほど鬼じゃないので。それでは何を?」
昨日、死にかけた──実際多分一瞬死んだ──時に魔力を全部出し尽くして無理矢理体を動かした。
生きていること自体が賭けだったけど、ただでさえ全力で動けないのに後遺症なのかちょっと体に力が入らなくなってしまっている。
それはそうとセイバー……沖田総司ならやりかねない、というのは黙っておこう。
「昨日の戦闘で刀折られちゃったから、新しいのを探そうかなって」
「予備の刀でも?」
「うん、ちょっとね」
そういうと私は立ち上がる。
少しクラっと目眩がしたけど無理やり体を動かして外へ出て少し歩く。
自宅から少し離れた位置にある古びた小屋、その扉をこじ開ける。
中は倉庫になっていて、そこにはとある人がいざと言う時のために用意した──らしい──刀が数本置かれていた。
「これは……ちゃんと手入れされているうえにそこらの刀よりまともな造りですね」
刀を主な武器にしているセイバーがそういうとなれば本当にここにある刀はだいぶしっかりとした物ということなんだろう。
あの人がなんでこんなものを用意していたのかは、今となっては分からない。
「これは私の……人生を変えた人が用意したものなんだ」
「それは、聞いてもいいことですか?」
「うん、セイバーにはいずれ話さないといけないことでもあるから」
それは、私が一度
死んで、魔術師としての力を持って『山崎玲香』の人生を再び──新たに歩み始めた、ある事件の、私が知る限りの断片的な記憶。
私は、至って普通の女の子で。
魔術とはなんの関係もない、聖杯戦争のせの字も知らないありきたりな一般家庭で育った女の子、だった。
でも2年前、私は、私の家族は殺された。
今思えば詰んでいたんだろうと、そう思うけど。
ある日、ピクニックに出かけていた私と両親は突然現れた怪物に襲われそうになり咄嗟に逃げて、気づけば山奥へ迷い込んでいた。
一息ついたら下山しよう、なんて話をしながら休憩していた両親が突然ゾンビのようになり私を伸びた爪や近くにあった石などで襲ってきて、どうしようもなく抵抗もできず死ぬ、そう思っていたら二人は急に別方向へ向かっていきそして、山を登ってきた女性
でも、両親は瞬きする間に殺されて。
両親を止めようと追っていた私も、多分『同じ』だと思われたのか、心臓を刀に貫かれて、死んだ。
そう、死んだはず、だった。
でも私は、何故か生きていて、目の前には私を刺し殺した女性が
安堵、謝罪、感謝、罪悪感、困惑──それらがごちゃ混ぜになったような声で私に声をかけてきた
私は両親と違い、**になっていなかった、とか
**は**を諦める、とか
何も理解できない、それどころか何も見ようともしなかった私にはなんの用語かわからないことをブツブツと呟いて
──お前は私が育てる、殺戮者のせめてもの償いとして。
それだけははっきりと聞こえた。
女性は「
そう名乗り、両親も居場所も全てを無くした私の親代わりとして私の面倒を見てくれて、色々と生きる術も教えてくれた。
ただ、麻里さんの寿命は長くなかった。
だからと私に刀の簡単な使い方、魔術を使うこと、魔力のコントロール、そして──《《私に移植した》魔術回路の開き方》を全て叩き込んでくれた。
そんな人だったから、私は麻里さんを師匠であり親である人として今も尊敬している。
話は逸れたけど、これが簡単な私の生い立ち。
魔術師として、魔術を使える者としての人生を始めることになったきっかけ。
もちろん私の知らないところで何かしらの策略が働いていたとか、そういうのがあるかもしれないけど、それを知る術はない。
それとここだけの話だけどな
■には、蘇生されたことによる後遺症が多く残っている。
そもそも、■には──が無い。
正確には、「■の」は無い、というべきか。
その影響で激しく動くとセイバーほどでは無いけど動けなくなる。
まぁ、そんな高頻度で起きることは無いけど。
「マスター、あなたは──」
「これが私、山崎玲香」
殺されたのも、今ここで聖杯戦争なんてものに参加しているのも、全て私。
冷静だと、冷酷だと言われても仕方ないよね
私は魔術師として生きる、そう決めた。
いや
決まってしまったから。
「大丈夫だよセイバー、私は──私たちは負けない」
「マスターがそう言うなら、私はそれを信じます」
セイバーがまだなにか言おうとした気がするけど、それが何なのかは分からない。
簡単に、そして私が把握している範囲のことを話し終えて新たな刀を引っさげて外に出たその瞬間だった。
セイバーが突然戦闘態勢になり、私の目の前で刀を振るう。
そしてその後、真っ二つになった矢とそこに括り付けられている「なにか」が目の前に落ちた。
「これは……矢文?」
「えぇ、そうかと」
恐る恐る開くと、やけに丁寧な文字で『海の近くにあるカフェにセイバーとふたりだけで来い』と書かれている。
わざわざこんなものを送ってきたのは、罠にはめる為なのか、目的は分からない。
それはそうと、矢を撃たれたのは紛れもない事実だから警戒するしかないんだろうけど、これを撃った主は予想がつく。
「ふたりだけ、ね……行こう、セイバー」
「えぇ、そうですね」
マリンを呼び戻す時間は惜しいし矢文送って来るほどだからマリンを連れて行ったら何されるか分からない。
罠だとしても、私とセイバーならなんとかなる、多分。
そしてまだ完治してない私と既にケロッとしているセイバーは指定のカフェについた。
そこはまだ聖杯戦争の影響が来てないからか一切爪痕もなく普通に営業している少し古い雰囲気の落ち着ける店で、その奥で私たちに手招きをしてくる人が座っている。
私たちが席の前に立つと、眼鏡の位置を調整しながらこう言った。
「久しぶり、セイバー。それに……玲香さん」
と。