Fate/Determination faith 作:桜花 如月
「久しぶりだね、セイバー。それと山崎玲香さん」
端の席に座る銀髪セミロングの女性がそう口にした。
その隣には獣の耳が生えた緑髪の女性が座って私たちを怪訝な顔で見てくる。
「久しぶりというのは先日の城での件と受け取っていいんですかね」
「それはアーチャーと、ね。私が言ってるのは
「2年前……」
セイバーは獣耳の女性に向けて警戒の目を向けて城──幽霊城のことだと思う──の事だと聞くと首を横に振り別の日だと否定した。
「説明の前に自己紹介だね、私は『夏目 湊』。察しの通り聖杯戦争に参加しているマスター、サーヴァントはアーチャー」
マスターと名乗った女性──湊は三画しっかり残ってる線対称の令呪を見せてきた。
そして横にいる獣耳がサーヴァント、アーチャーだと説明してくれたけど、それでも謎は残る。
「自己紹介ありがとう、それでなんで私たちのことを知ってて、私たちをここに呼んだの?」
「ほら見ろマスター、最初の挨拶で警戒されただろ」
「覚えてるかの確認だってば……じゃあ改めて、説明を──」
湊はアーチャーに叱られつつも説明を続けようとした。
その時、セイバーが何かを感じ取り刀を抜いて直後、私にも《それ》を感じ取ることができて刀に手をかける。
「やっぱり罠ですか」
「いいや、これは想定外!」
「メガネクイッ、してる場合じゃないぞマスター!」
私たちの座っている席の壁が破壊され、そこからは数日前私を襲った大蜘蛛よりもさらに大きく両腕の鎌のような部分がさらに鋭くなった怪物が現れた。
湊の罠かと思ったけど、反応といいセイバーからの質問への返答といい、どうやら本当に想定外というやつらしい。
「あれはバーサーカー、
「サーヴァントなの!?……とりあえず一般人を!」
「玲香は優しいんだね、さすがは
「……え?」
状況が一気に変わってる中、目の前の大蜘蛛がサーヴァントだとか他にも気になることを言ってるけど、それ以上に知っている名前につい動きを止めてしまう。
麻里さんのことを何故、湊が知っているのか。
「私のせいだけどぼーっとしない!──《燃え上がれ》!」
思考を巡らせている隙を狙われて大蜘蛛──バーサーカーの鎌が目の前に迫っていた。
私を突き飛ばした湊が右目を光らせると突然バーサーカーが炎上し動きを止めた。
「あとの時間稼ぎは任せたわ!行くわよ、玲香」
「う、うん……みなさんこちらに!」
状況を把握しきれていないままセイバーたちに戦闘を任せて巻き込まれた一般人の避難誘導に移る。
店員含めた全員を離れた場所へと連れていく道中、ようやく落ち着いた私は湊に質問を投げる。
「なんで私たちを呼んだの?」
「私の目的は、この聖杯戦争を終わらせること。それをするために唯一協力してくれそうなマスターがあなただった」
「それで、私たちを知ってるのは?」
「私は、魔術師の弟子としてこの地で行われていた聖杯戦争に片足突っ込んでたの、そこでセイバーのマスターをしていたのが」
「麻里さん、ってこと」
納得までは出来ないし、全部嘘かもしれない。
でも、あの化け物を炎上させるだけの魔術を使えるのにこうしてサーヴァントと離れてる私を襲わないってのを考えれば少し信用してもいいのかも、と思ってしまう。
それに、聖杯戦争を終わらせたいというのは私も同じ気持ちだ。
「私からもひとつ聞きたいんだけど、あなたと一緒にいる魔術師、あの子は誰?」
「友達の情報は売らないよ、いくら麻里さんの弟子だとしても」
「……そ、ならこれだけ読んどいて」
湊からの質問を拒否すると小さくため息を吐きながらメモ用紙を渡してきた。
そこには
・サーヴァントが多重召喚されている
・サーヴァントは倒したとしても消滅するわけではなく数日経つと再召喚される(ただし再召喚時の記憶はリセットされる)
と、あくまで仮説と殴り書きされた雑なメモだった。
「セイバーとバーサーカー、多分アーチャーも同じように再召喚を繰り返してる」
「だからさっき変なこと言ってたんだ」
「そう、私は死に戻りって適当に呼んでる」
一般人を安全な場所まで誘導してカフェに戻る途中で湊がメモに関しての補足をする。
何度も再召喚とやらを繰り返している、ということは私が参加するよりも前からずっと、この戦争が続いていたということ。
そうなれば、それだけの被害もあったということだろう。
「終わらないこの聖杯戦争を終わらせるのが私の目的ってわけ」
「わかった、そういうことにしとく」
彼女の目的は理解した。
さらに質問をしようとしたところで湊が手で私の歩みを止めた。
いつの間にかカフェ──のあった場所──に着いていたようで、セイバーが吐血している様子だけど、バーサーカーを追い詰めている状態になっている。
そして、バーサーカーとセイバーたちの間に、昨日会った法師が立っていた。
「おや、また会いましたか」
「お前は……!」
「汝、以前会った時には無かった気配だが、何をしでかした」
「
どうやら、アーチャーと法師は顔見知りのようだけど、法師は質問を笑って誤魔化す。
明らかに何かを隠してる様子だけど、そんなことを気にしているうちにバーサーカーが霊体化して姿を消してしまう。
「井上、あなたのマスターは何してるのよ」
「井上……あぁ、あの
「……そう、わかったわ」
湊は質問を終えると私に「セイバーに指示を」と耳打ちしてきた。
無言で頷きセイバーに声をかけると意図をすぐに読んだのかアーチャーと共に法師に攻撃を仕掛ける。
だが、法師は血を吐くこともなく不敵に笑いながら消えていった。
「手応えがなかったですね」
「あれはあいつの特技、式神とやらだろうな」
ずっと戦闘態勢だったため一旦休憩を取るとセイバー達が納得の言ってない顔をしていた。
どう見ても前に会ったことのある法師そのものだった気がするけど、あれ自体式神というものだったのかもしれない。
「そんなことより、セイバー大丈夫なの?」
「えぇ、一時的に動きが鈍るだけですので、それより玲香はそこのマスターとやらに聞けることを聞きましょう」
「ずっと警戒されてるわね、まぁ仕方ないか」
全壊したカフェの中に何とか残っていた机と椅子を並べて座った湊は少し息を吐くと指を鳴らす。
すると、周囲の音が全く無くなり静寂が訪れた。
「遮音結界ってやつね、効果は短いから端的に話すわ」
当たり前のように知らない技術を披露した湊は一つずつ自分の持っている情報を語り始めた。
「まず、アーチャーの真名を教えとくわ」
「え、いいの?」
「そりゃ、私たちはセイバーの真名知ってるんだし、それくらいはするわよ」
たしかに、とセイバーが頷く。
マリンが言うには、真名自体が弱点になり敗北に繋がるものだと言っていた。
それを開示するというのは、向こうは私を信頼している、ということになる。
「アーチャー、この子は《アタランテ》、これが真名よ」
「アタランテ……って、アルゴー船の一員だっけ」
「……まぁその認識でいい」
アーチャー……アタランテに微妙な顔をされた気がするけど、意識を湊の方に戻す。
残念ながらバーサーカーの正体はわからない、と申し訳なさそうにしているとアーチャーが小突いてさっさと話せと言わんばかりの目を向けている。
「……改めて、私たちと協力関係を結んで欲しいの」
「協力、ね……」
多重召喚だとかその他この聖杯戦争に関することや、真名を教えてくれたりとか情報を与えてくれた。
でも、それだけで完全に信用するというのはさすがに難しい。
「まぁすぐにYesと言われるとは思ってなかったわ、答えは後日でもいいから、とりあえずは倉庫でも探って私を信頼するか決めてくれればいいわ」
私の迷いを見透かしたのか湊はまたメモを渡しながら倉庫を見ろと言った。
遮音結界を解くと立ち上がり背伸びをした後湊は先ほど避難させた人たちの安全を確認しに行くと立ち去ろうとした。
「待ってください、最後にひとつ」
「ん〜?」
「何故マスターと私だけに来いと指示を出したんです」
「あなたたちと一緒にいる子を私は信頼してないから、ただそれだけよ」
呼び止めたセイバーの質問に対しそれだけ答えるとそのまま湊は立ち去っていく。
渡されたメモには、携帯の番号だけが記載されていた。
「良かったのかマスター」
「得体の知れないものだから、下手なことは言えないわよ」
避難させた人たち全員の無事を確認して記憶操作を施し街外へ行くようにと指示し終えた湊は帰り道、アーチャーとそう話していた。
それは、彼女のそばにいる
「あの家には、あの家の結界に入れるはずのない魔術師を下手に刺激出来ないわ」
それだけじゃないだろ、とアーチャーが言ったがそれに対しての返事は無く、湊は無言で帰路に着いた。
アーチャー陣営
マスター
使用魔術:??
年齢:20歳
玲香とセイバー(沖田総司)を一方的に知る人物
本人曰く師匠の弟子をしており
アーチャー
真名:アタランテ
宝具:????
夏目のサーヴァントで初日に幽霊城に入ろうとしたセイバーを妨害した弓使い
アルゴー船の一員であり狩人として様々なことに長けている
子供には甘い
謎の法師(キャスター)
真名:????
ここ数話で起きたことの大半を占める元凶。
七不思議のひとつ、自転車男はこいつのせい