Fate/Determination faith 作:桜花 如月
side:夏目 湊
私は、魔術師としては異端者だった。
代々受け継がれてきた魔術を遺伝することもなく、私は両眼に魔眼を持ってこの世に産まれてきた。
それは、魔術師という括りでみればまだまともだっただろう。
でも、《夏目の魔術師》としては、受け継がれる魔術を私の代で終わらせるということを意味しているもので、両親からすれば異端者だと、不要な存在だと、私はまともな扱いを受けることすらなかった。
そして、学生という身で私は家を飛び出し、行く宛てもなく彷徨って、ある日立ち寄った街で弟子という形で魔術師に拾われた。
その魔術師が望楼麻里、前回の聖杯戦争でセイバーのマスターとなった女性。
あの人に拾われてから私は魔眼を使うための特訓とその他の基礎的な魔術を使えるように教えを受けた。
そして、それから少し時が経ち。
二年前
冷夏市のとある山
「だーかーら、何度言えばわかるんだ?」
「それは師匠も同じでしょう」
「私は刀の手入れあるんだから、飯はいいって」
「私は食べますが」
「勝手にしろ、私は食べない」
聖杯戦争の最中ではあったものの、戦闘もなく普通に平和に過ごしていた。
とは言いつつ、その日は朝飯を食べるかどうかで言い争っていたんだけど。
「いざと言う時のためにも食べてください」
「っさいな……置いとけ」
「素直じゃないですね」
師匠のサーヴァント、沖田さんは私に最初こそ冷たかったけど最近はそんなに怪訝な対応をしなくなってむしろ二人で師匠の頑固さを崩そうと試行錯誤するくらいの仲になっている。
そんな三人でご飯を食べて作戦会議を行って、いざ出発というタイミングで重苦しい空気と嫌な気配が街中に突如蔓延した。
「やけに大人しいと思えば、なにか仕掛けたか……!」
「行きましょうマスター、ミナトはここに……」
「私も行きます!」
「……仕方ない、行くぞ!」
師匠は手入れしたての刀を腰に添えて走り出す。
私はセイバーに抱えられながら周囲を確認すると、街中に妙なものが散見された。
「ゾンビ……いや、その程度のものではないか」
「死霊という訳でも無さそうですが……突破します!」
いつの間にか私たちを囲っていたゾンビ……?のような人たちを私を投げ飛ばしたセイバーが一気に切り伏せた。
それに合わせるように師匠も刀を振るい数を減らしていく。
正体不明の人型──というか人──の集団を抜けて街へと降りていく、その道中。
(生きている)人の気配がする、そう言った師匠が道を外れて森の奥へと進んでいきそしてそこにはパッと見家族の三人がいた。
私たちに気づいた男女二人がフラフラとこちらに歩いてくるのを見た師匠は小さく何かをつぶやくと一気にその二体の首を切り飛ばした。
残った子が同じようにフラフラと二つの死体に近づいて手を伸ばした。
そして、師匠はその子の心臓を貫いた。
ただ、その判断が罠だということに気づいた時には手遅れだった。
「──な、なん……」
何かを訴えようとした──そもそも、先程の男女とは違い《ただの人間だった》少女は口と刺された部分から血を流し、その場に力なく倒れ込んだ。
「──下衆め」
師匠は静かにそう呟いた。
あとから判明したことだけど、街中に出没したゾンビのような人達はサーヴァント、バーサーカーが持っていた『生きている人間を狂わせる』能力により生み出された《生きた人間》たちだった。
つまり、先程の子の両親は、その術により操られていて、どういう訳か少女だけは無事だったけどその判別をつけることはできず、師匠は手にかけてしまった、ということ。
「両親は無理だが、この子だけは」
「何をする気です」
「私の魔術回路を移植して、お前の《宝具》を借りる」
「それをすればあなたは……」
少女が流した血で地面に魔法陣を師匠は止まる気もなく書き始め何をするのか私に説明した。
魔術回路の移植、それは魔術師の中でも危険だと言われている、ほぼ不可能に近い技術だ。
それも、師匠がやろうとしているのは単に一部を渡すだけという簡単なものでも無い、そう感じさせる雰囲気がある。
「この子を殺した責任は私にある、セイバーと湊には迷惑をかけるがこれしかないんだ」
「成功するかも分からないんですよ!?」
「なら、この無関係な少女を見捨てろと?」
「……そ、それは」
「時間は無い、セイバー頼んだ」
魔術回路の移植は血の繋がった魔術師ならともかく、血の繋がっていない関係では拒否反応だとかで共倒れする可能性もある。
それを理解しているであろう師匠の覚悟は変わらず、私には止められないところまで行っていた。
少女の手を握り目を閉じた師匠の体に魔術回路が浮かび上がり、それが少女の体へと伸びていく。
呻き声に苦しむ様子を見せながらも、一切止めることなく師匠は移植を続け、そして──
「───ぁ、っ、ぅ……」
少女の、そんな声が小さく漏れると同時に少女の身体に師匠にあった魔術回路が浮かび上がった。
「……セイバー、宝具を渡してくれ」
休むこともせず師匠はセイバーが取り出した宝具を受け取る。
「奇跡を起こす。どうなるかはわからないけどな──」
そしてそれから数日後。
魔術師としての力を失ったとはいえセイバーが残っていたため何事もなく勝ち進んで聖杯戦争は終焉を迎えた。
その後、師匠の家に助けた少女──山崎玲香と言うらしい──が匿われてから、私は師匠のために弟子を卒業した。
それからどうなったのかは分からなかったけど、送られてきた手紙で師匠が移植の後遺症で少しずつ衰退しているということと玲香に魔術のことを教えたということだけ伝えられた。
そしてその後、定期的に来ていた手紙が来なくなって、師匠の死を悟った。
あれから玲香がどう過ごしているのか、何をしているのかを知ることはなかったけど、同じ地で不審な事故が多発しているという情報を得た私は再び冷夏市へと足を踏み入れて、ある事情でアーチャーと契約し、再度起こった聖杯戦争に参加して玲香と再会した。
師匠が命をかけて助けた、山崎玲香という少女を導く。
それが私、異端者と呼ばれた魔術師、夏目湊の目的だ。
夏目湊の魔術
左右の眼にそれぞれ種類の違う魔眼を宿している。
右目が《炎上》
左目が《静止》
(一部例外を除き)見たものを文字通り燃やし静止させることが出来、どちらかのみの使用も可能
別種の魔眼を持っているためオッドアイである
普段は魔眼を通さない眼鏡を着用することで事故を防いでいる
望楼 麻里
使用魔術:強化
セイバーと同じように刀を主として扱い聖杯戦争を戦った女性
湊、玲香の師匠であるが教えているのは基礎的なことだけ
玲香に自身の全てを移したことによる老衰で一年ほど経過した時には亡くなった