Fate/Determination faith   作:桜花 如月

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4.長けたもの

《Side:玲香》

 

セイバーが幽霊城に向かった直後。

私とマリンは周囲を警戒しながら待機していた。

 

「玲香、あなたセイバーと魔力念話とか出来ないの?」

「なにそれ」

「……ほんとに何も知らないのね」

 

念話?とやらに関して正直に応えると目に見えてわかるような呆れ顔をため息をつきながらされてしまう。

小馬鹿にされてる気がしてさすがの私も少し傷つく。

 

「仕方ないでしょ、自分の魔術ですら精一杯で知識なんてないんだから」

「ならセイバーの気配を探るのも無理ってこと?」

「そんな芸当も無理だね」

 

再びため息をつくと何やら独り言をぶつぶつと口にする。

セイバーとの繋がりは何となく感じるけどどこにいるか、どんなことをしてるかまでは把握出来ない。

魔術師だのマスターだのという立場だからってそんなに知識はない、それは私がいちばん理解してる。

 

「なら遠視は出来るんじゃない?あなたの魔術、身体の強化でしょ?」

「そんな便利な性能じゃないよ、少なくとも眼に使ったところで視力は上がらないと思う」

 

私の魔術、《強化》は任意の物…例えば手足やさっきみたいに瓦礫へと使うことができる。

ただ私の出来る使い方は限られてて本領発揮とまではいかない。

今も目の前にある窓を文字通りの強化ガラスに変質させる程度しか扱えない。

 

「じゃあ、セイバーの様子は私が見るわ」

「え、マリンはそんなこと出来るの?」

「昨日も言ったけど、私は《特殊》なの」

「特殊……なにが?」

 

セイバーが今どうなってるかを知れるなら、そう思ってマリンの種を聞こうとしたけど急に表情が暗くなりどう見ても話してくれそうにない雰囲気になってしまう。

 

「……わかった、それじゃ私は周りの警戒を──」

 

深い詮索をする空気でもないため完全に脱力していた意識を再び引き締めて一歩下がろうとしたその時。

窓ガラス、そして天井が崩れ周囲をなにかに囲まれてしまう。

 

 

「マリン!」

「油断した……敵襲よ」

「そんな落ち着いてることある!?」

 

もしかしてさっきの暗い顔はこれを察して……なんて考える暇もなく何者か──蝙蝠をはじめとした大量の獣がとめどなく崩れた場所から入り込んでくる。

流れ込んでくる一匹一匹はそんなに強くないように感じるけど、何より数が多いし体当たりだけでもかなり鬱陶しい。

 

「マリン、戦えるの!?」

「本当は嫌よ、でもこの数をあなたに任せるわけにはいかないでしょ、だから──時間を稼ぎなさい」

「すっごい雑!だけど……任された!」

 

強化を発動して攻撃を防ぎつつ向かってくる奴から片っ端に切り捨てていく。

セイバーのような素早い切込みは出来ないし精度も悪い、けどこの獣たちに対してはある程度戦える。

問題はマリンの《準備》がいつ終わるのかわからないということ、そして強化を使い続けられる時間にも限界があるということ。

どう考えも私の負担がデカすぎるけど任された以上は応えるしかない。

 

「……せやぁ!」

 

マリンが何かを呟き続けているためそれを妨害されない為にもマリンへと向かうやつがいないかにも集中を割く。

刀だけでは間に合わないと判断し彼女に当たらないようにガラスの破片や瓦礫を投げつつ応戦していると開いた天井から一際大きい気配が降りてきた。

 

「……っ」

 

蝙蝠やそれ以外とは明らかに違う、言わばこの集団の頭──まるで妖のような禍々しい気配。

街中で遭遇した人型の獣に比べれば強くないかもしれないけど、今セイバーはいないし何より私はあの獣にも歯が立たなかった。

勝てる……のかな……

 

「……いや、勝つ!」

 

「その意気よ、ただ──」

 

時間切れよ、という声とともにマリンの手元から謎の光が放たれる。

既に日が落ちて暗いというのもありあまりにも眩しい光に目をつぶり落ち着いたところで目を開けると妖(仮)がいた箇所には炎のサークルだけが残っていた。

 

「マリン、今の──」

「まだ雑魚が残ってる、悪いけどその対処は任せるわ」

 

かなり強力な魔術だったからかマリンは膝をついて動けなくなっていた。

彼女の言うとおり倒しきれなかったのか追加で出現したのか、どちらにせよ周りに蝙蝠達がふよふよしている。

 

マリンがいちばんの大物を消し飛ばしてくれたお陰でかなり気が楽になったため深呼吸し再び強化の魔術を使う。

が、頭痛と共に身体の力が抜けていく。

 

「──っ、……ま、だ──!」

 

街中での人型獣との戦闘からほぼ魔力回復をする暇もなかったうえでここでもオンオフを切り替えすぎたせいでただでさえ脆い身体が悲鳴をあげる。

口内に血の感覚があるけどそんなこと気にせずに無理やり身体を動かす。

 

「───は……ぁ…っ!」

 

ここは戦場。

マリンが厄介な相手を倒してくれた以上、私が残りをどうにかしないといけない。

意識が薄れかかるのを何とか繋げつつ刀を振るう。

あと少し、身体を動かせばいいだけ。

そう、あと少し───

 

 

油断しなければ

 

自分の身体を動かすことに集中しすぎて、マリンが報告してくれると甘えて、背後の気配に気づけない。

 

 

「───せんぱい」

 

その一言でやっと《何か》を感じ振り返る。

が、間に合わず左腕に攻撃を受けてしまう。

 

「……っ、マリ……ン……!」

 

既に限界が近い身体でマリンの腕を掴み窓の外へと飛び出す。

後ろにいた《何者か》の声も少し聞こえた気がしたけどそんなことを考えるだけの力もなく宙に浮く。

 

──令呪というのは言わば絶対命令権、たとえ遠くにいても呼び寄せることができるしその逆も出来るわ

 

落下しはじめたところでマリンの言葉を思い出す。

薄れゆく意識の中マリンの罵詈雑言を聞きつつ力を令呪に込める。

 

「──きて、セイバー……!」

 

 

令呪が赤い光を放つとただでさえ減っている魔力を消費する感覚とともに目の前にセイバーが現れたことを感じた。

 

「……着地…」

 

それだけを口にして私の意識は闇に沈んで行った。

 

 

 


 

《Side:???》

 

明らかに異物とも取れる魔力の残滓を背後に魔術を解いた少女が吹き抜けになった窓の残骸から下を覗いていた。

 

「撤退した……か」

 

その声は呆れとも安堵とも取れるものだった。

 

『追わなくていいの?今なら使い魔ぐらいは……』

「ダメよ、あなたも感じたでしょ」

 

残り続ける炎のサークルは明らかにそこらの魔術師には扱えないはずのもの。

近くを飛ぶ蝙蝠から放たれる声に答えながら少女は去っていく三人を見下ろす。

 

『魔術がこんなにも残り続けるって相当イカれた魔術を使う人、だよね?』

「わからない……だって今のは……」

 

少女の言葉は突然吹いた強風にかき消され、会話相手にも届くことはなかった。





新規説明


幽霊城の使い魔
前話でセイバーとアーチャーの前に立ちはだかった複数種の動物や獣。
玲香の直感では蝙蝠達もただのそこら辺にいる蝙蝠では無いらしく、魔術的な何かを受けている
戦闘力はある程度戦えるマスターならどうにか出来る程度(個体による)


マリンの魔術:?????
本人も話したがらない、大型の獣なら消し飛ばせる威力のあるもの
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