Fate/Determination faith   作:桜花 如月

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6.動き出す歯車

 

《side:??》

 

 

少女は夢を見ていた。

それは、女の子なら誰しもが抱くであろう『白馬の王子様』というものに助けられ、その生涯を共に過ごすという、幻想。

大人になり、ある程度現実との区別がつくようになっても、その夢だけは抱き続けていた。

 

でも、そんな夢物語、叶うわけはない。

 

 


 

どうして?

そんな問いに答える人はいない。

人間、死ぬ間際なんて思考を働かせることはできない。

ただほんの少しだけ自由に生きようと夢を見ていただけなのに。

目の前には、大きな蜘蛛。

ファンタジーの世界では毒を吐いて獲物を溶かしてそうな、化け物と呼ばれるやつ。

 

あぁ、わたしには

救いは

 

 

「危ない!」

 

そんな声が聞こえた。

最期に、王子様の幻聴なんて、そんな……

 

「……え?」

 

目の前にいたはずの蜘蛛の化け物は吹き飛んで、その代わりに目の前には二振りの武器を持つ青年。

 

「大丈夫ですか?」

 

夢じゃない。

とても、現実的な。

いつも夢見ていた、あの光景。

まるで、おとぎ話のお姫様と王子様のような

 

 

「わ、わたしは……何も返せないですよ」

「なにも見返りは求めない……ですが、貴方は……魔術師か?」

 

緊張のあまり変なことを口走ったけど、目の前の王子様は苦笑いだけで許してくれた。

そして、わたしが魔術を使えることを見抜いている。

 

「そ、そうだけど……なんですか?」

 

まさか、身を……?

 

「私は今、マスター不在の身故、貴方にマスターになってもらいすぐにでも聖杯戦争に参加してもらおうかと」

「聖杯……戦争?」

 

勝手に想像しておきながら要求が違うことに少し落胆してしまったけど、聖杯戦争というのはどこかで見聞きした気がする。

 

「女性を危険な目に合わせるのは騎士としては避けるべきなのは理解しているのだが──」

「……いいわ」

「今、なんと?」

「聖杯戦争がどんなものかあまり知らないけど、わたしを助けてくれたんだから、その要求を受けるわ」

 

危険を顧みずにわたしを助けてくれた王子様の力になれるのであれば、戦争だとしてもわたしは参加する。

 

「ならば、改めて聖杯戦争についても説明を」

 

 

一通り聖杯戦争の説明を受けきったわたしは彼……ランサーと契約を結び正式に参加。

 

「わたしは鬼桐 桃(おにきり もも)、よろしくね、ランサー?」

 

まるで、ある日見た英雄譚のような話の進み方がわたしの胸を高鳴らせてくれる。

 

 

 

 

 

 

悲鳴。

あぁ、わたしは最高に気持ちいい。

血。

やめろと、助けてくれと懇願する声。

あぁ、とてもいい。

 

「助かったわ、ランサー」

 

自分の親()()()()()を踏みにじり感謝を伝える。

そこに、躊躇いはない。

後悔もない。

聖杯戦争を、王子様と生き残るための必要な犠牲だから、ね。

 

 

「サーヴァントにはその……魔力補給には行為以外に魂喰いというものもあるわよね、ランサー?」

 

その声は、とても弾んでいた。

 

 

 


 

《side:???》

 

ため息。

あの人に呼ばれた時は大体面倒なことを頼まれる。

 

「はぁ……なんでこんな時に不在なのよ」

『ま、まぁ仕方ないですよ』

「そうは言うけど、というか貴方は行かないの?」

『……拙は、お留守番です、何かあったときは駆けつけてくれと言われてますが』

「あなたも大変ね」

 

私、マリー・ジュエリットは私を呼び出した人の指示に従いとある街に来ていた。

本来来ることなんてない、極東の地にて魔術的な動きがあると聞いて来てみたらどうやら本当に良くないことが起きてるようで、あの人の察し能力はさすがと言わざるを得ない。

だとしても私が来る必要あるのかしら?

 

『師匠が頼める人材いないと言ってたので……』

「わかってるわよ、少なくともあの人の周りで動けるまともな奴は私ぐらいだってのは」

 

それはそうとよりによって別の場所で大事になってる時にわざわざ手を出す必要はないでしょ

 

そんな愚痴ばかりが口からこぼれてしまう。

電話相手もよくまぁ私を指名してくれたものよね

 

「でも触媒が無いんじゃ意味ないのだけど」

『それが、師匠が言うには……出しゃばるなと』

「──はい?」

『なので、待機してタイミングを見てくれ、と』

「なら尚更私じゃなくていいわよねぇ!?」

 

電話先にキレることでは無いけど、その指示は聞き捨てならない。

というか立場としてはルーラーでも召喚して様子見るぐらいはしといた方がいいんだけど、それすらダメという

聖杯戦争を管理できる英霊ぐらいは味方につけたかったんだけれど、何を考えてるのかしらあの人は……

 

『落ち着いたら連絡すると言ってたので、頑張って下さい……』

「……わかった、わかったからそんなに申し訳なさそうにしなくていいわよ」

 

私がキレたいのは電話してる彼女の師匠の方。

別件で行けないからって来たのにこんなに制約付けられるとほんとやってられないわね。

 

 

「まぁ、しばらくは傍観者になるわ」

『気をつけてください、マリーさん』

「そういうあなたも()()の面倒事任せるわ」

 

それだけ言い残し電話を切る。

 

「……さて、どうなる事やら」

 

私の目的はただ一つ。

この狂いに狂った、誰かが引き起こした《歪みの聖杯戦争》を終わらせること。

時計塔、《エルメロイ教室》の代理人として、ね。






二つの影が、動き(狂い)だす。


人物Data

鬼桐 桃(自称ピーチ)
性別:女 年齢:28
使用魔術:不明
サーヴァント、ランサーのマスターになった女性。
幼き日に見た御伽噺に強すぎる影響を受け目に映る全てを何かと理由付けしながらメルヘンに置き換えようとする癖があり、暴走すれば誰も止められない。
その腐りきった思考の先には必ず自分優先の世界が広がる。

サーヴァント・ランサー
真名:???
蜘蛛型の魔獣に襲われていた桃を助けた(何故か)マスターを持たずにいたサーヴァント。
二本の武器をそれぞれに持つ。


マリー・ジュエリット
性別:女 年齢:20代後半
使用魔術:不明

出自、目的:不明
()():???
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