Fate/Determination faith   作:桜花 如月

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8:甘美に狂う者

 

どう見ても普通じゃない雰囲気に思わず刀を抜き構える。

セイバーも同じく刀を構えて臨戦態勢をとる。

 

「いきなり戦闘態勢は酷いんじゃないかしら?」

「人を襲って、殺しておいて何を……!」

 

 

「話を聞きなさいよ、ったく……いい?私はただこの人、ランサーが好きで、好きだから彼のために()()()()()を繰り返しているだけで、そのためには魔力を誰かから奪うしかない、だから殺してる。それに私は聖杯戦争って物にはそこまで興味はないのよ」

「……は?」

 

言っていることが全く理解出来ない。

彼女の横にいるランサーのため?

必要なことだから?

関係ない人を殺して、それを当たり前としている、と?

 

「そんなの許されるわけないでしょ!?」

 

どこからどう見ても正気じゃないこの女は発言も狂っている。

そのくせ聖杯戦争には興味無い、なんて言い訳で許されると思っている。

 

「恋ってものは全て肯定される、恋路ってのは他人に口出しされるものじゃないのよ?それを口出しするってことは貴方……お前は魔の使いってことでしょう!?なら、邪魔するなら殺すわ!!───ランサー!」

「承知、気分は悪いがマスターの指示だ、ここで仕留めさせてもらう」

 

聞く耳を持たないうえに変な妄想に巻き込まれたようで戦闘態勢を取ったランサーとそのマスター。

セイバーが直ぐに間合いに入るがランサーの持つ二槍で防がれてしまう。

 

「さすがサーヴァント、そう簡単には行きませんか」

「それはこちらのセリフだ、セイバー。俺の攻撃を躱すか」

「その二槍を受ける訳には行かない気がするので……っ!」

 

 

ランサーとセイバーの戦闘が続く横で私はマスター同士対峙する。

彼女が放った魔弾──と呼ばれる魔力の弾──を避けながら対話を試みる。

 

「私の恋に口出しするなと言ってるでしょ!」

「……っ!何が恋……だ……っ!」

「私の王子様に、私の恋に、私に、恋路に……邪魔をするな!!!」

 

連続で放たれた魔弾を避けた先に瓦礫が降ってくる。

それを防ごうと強化の魔術を刀に使ったその瞬間を狙い追い討ちの魔弾が背中を直撃し、さらに周りに爆風が発生する。

 

「……が…っ!?」

 

爆風により飛び散った瓦礫が落ちてくるけど痛みで動けず、そのまま潰されてしまう。

そう思った瞬間。

 

「マスター……投げます!」

 

瓦礫を間一髪で防いだセイバーがランサーの攻撃が来る前に私を投げ飛ばした。

身体の痛みやセイバーの心配もあるけど、それよりも今は目の前のマスターをどうにかする。

 

「仕留めたと思ったんだけれど、しぶといわね」

「……一つ、聞かせて」

「なに?冥土の土産にでもするのかしら?」

 

頭から血が顔に流れてくる気配を感じながらも彼女の言葉に対する違和感を指摘する。

それは。

 

「あなた、本当にランサーに、……人に恋してるの?」

「……はい?」

 

恋というものが本当にどんなものなのかは知らない。

でも、彼女が言っている《恋》は普通の人がやるような、抱えるようなものではない、そんな気がする。

きっと、本物の恋というのはもっと甘酸っぱい、そんなものなんだと思う。

まぁ、私にはそんな気待ちを抱くことないんだろうけど。

とにかく、彼女はランサーに対して「そう思い込ませる」ことで王子様を作り出したんだと思う。

 

「……あなたは恋に恋をしている、そうでしょ」

「は……ぁ?」

 

困惑している、そんな様子は一瞬だけ。

すぐに魔力を指先に込めて私を睨む。

 

「ば、バカにするなぁぁぁ!!!お前に私の、私たちの何がわかる!!!!」

「……何もわからない、だからこそ──過ちを止める!」

 

 

──あなたの魔術なら、魔力で作られたものなら切れるんじゃない?

 

マリンに言われたことを思い出す。

あの時は必要ないだろうと気にしてなかった言葉だけど、今ならありがたい、そう思える言葉だ。

 

「ここだ──!」

 

放たれた魔弾を切り飛ばす。

激高した彼女が続けて何発も撃ってくるけどそれも全て切り飛ばして霧にする。

 

「……っ、ランサー!そっちはいいからこの小娘を……!」

 

魔弾を撃つのをやめた彼女めがけて突っ込もうとしたところ、セイバーと戦っていたランサーがこちらにきて槍を振り下ろす。

 

強化(ブースト)──」

 

一瞬でも防げば、そう思い使った魔術はランサーの槍とぶつかった瞬間に何故か消されてしまいそのまま私の刀は折れてしまう。

 

「うそ…っ!?」

 

避けるために下がろうとしても間に合わず、()()()()()()()()──剣をランサーは振り下ろす。

が、その剣が当たるよりもはやく、セイバーが間に入り攻撃は阻止される。

 

「ランサー、あなたの騎士道精神とやらは戦闘放棄していいものなんですか」

 

戦闘開始時は着ていなかった服──宝具の一つを展開したセイバーがランサーの槍をギリギリで防いでくれていた。

 

「マスターの命だ、少しは仕方ない」

「騎士道精神を語ってたくせに、他人の口出しで折れるんですね」

「……何が言いたい」

「ここからはお互い本気、そう言ってるだけです」

 

セイバーの雰囲気が明らかに変化した。

向こうもそれを感じ取ったのかランサーが一度距離を取り体勢を立て直し二槍を構える。

 

「騎士として、か……ならば名乗らねばな」

「えぇ、そうですね」

 

二人が向き合う。

真剣、その言葉だけがその場に広がっている。

 

「マスター、許可を」

「……許可?」

「ここで仕留めます」

 

静かに聞かれたそれは、セイバーの本気を含んでいた。

そして、その言葉の意味は先程の()()だろう。

 

「──勝って、セイバー。でも、ランサーのくせに剣を持ってる、何があるかわからないから気をつけて」

「ええ、もちろん」

 

私の許可を受けたセイバーは再びランサーに向かう。

ランサーを名乗っているのに、いつの間にか彼の手には剣が握られていた。

万が一の可能性を感じてセイバーにも警戒をさせた。

 

「話はついたか?」

「えぇ、これで決めると」

「そうか、ならば名乗ろう……俺は──ランサー:ディルムッド・オディナ、騎士道のもとお前を──」

「私は騎士では無いので、《技》で示しましょう」

 

ランサーの名乗り中に姿を消したセイバーは私よりはるか後ろに立ち刀を構える。

ズルいとか言うよりも早く、セイバーは地面を蹴り飛ばし一歩を踏み出す。

 

「セイバー、貴様──」

「悪いですが、真剣勝負と言ったのはそちらです!」

 

私の真横をすごいスピードで飛び二歩目。

騎士道とか説いてたのに、セイバーは容赦なく《それ》を使った。

 

「文句は私の同僚にいってください……獲った──!」

 

 

 

容赦なく放たれたセイバーの宝具──『無明三段突き』は不意をつかれたランサーを貫き、致命傷を与えた。

 

 

 

「……ら、ランサー……?」

「せ、セイバー今のはさすがに──」

 

困惑してる私たちを横目に、セイバーが膝をついた。

魔力を消費しないと言っていたのに様子のおかしいセイバーに近づくと彼女の足元には血が垂れていた。

 

「……すみません、マスター、これが私の…魔力消費の代わりに持つデメリットです」

 

セイバー──新撰組一番隊隊長・沖田総司。

それが彼女の真名であり正体。

そして、彼女の吐血は逸話を元にしたものだろう。

病弱、それによる行動への制限が今彼女を襲った、ということ。

 

「ランサーにも、悪いことをしました……が、限界なので」

「セイバー休んでて、後で聞く」

 

ものすごく辛そうにしているセイバーを瓦礫の少ない箇所に横になってもらい私は未だランサーを失ったことに対して受け入れられてない様子のマスターに話をしようと近づいた。

 

「おや、醜い器がこんな所に」

 

声をかける前に、彼女の前には先ほどの法師が立っていて、なにかしらの呪文を唱えていた。

そして、法師が消えた直後。

 

「な、なにこここれれれ──わ、たわた、し──わわた、しし──ガ───?」

 

ランサーのマスターだった女性は、原型を留めないほどの化け物へと変貌し、咆哮をあげた。





真名解放

セイバー:沖田総司
新撰組一番隊隊長、天才美少女剣士(自称)。
此度の聖杯戦争でもその能力は何一つ変わらず、鋭く早い剣技と()()()()を共に持って現界している。
どこかの世界とは違いその物が存在を示す羽織りはいつでも切り替え可能な状態(staynightのセイバーと似たようなもの)になっていて召喚時から持ち込んでいる(なんなら着ていた)
本人もいつ訪れるか分からない病弱による体調悪化を警戒しながら無理をし続けるマスターの身を守るために刀を持つ。

宝具
無明三段突き
宝具と言うが聖剣のような特別な力を持つものというよりは本人の技量が奥義に昇華されたもの。
目にもとならぬ速さで繰り出される沖田総司の洗練された剣技。
奥義故にタイミングを見計らう必要はあるが、本人曰くいつでも使えるし通常技と言っても過言では無い、とのこと。

浅葱色の羽織り
沖田総司、というより新撰組の正装であるだんだら模様が入った名前通りの服。
戦闘時に着用するがただ気合を入れるためだけのものではなくしっかりと本人の能力に変化をもたらす。
例えば普段の沖田総司の刀は「乞食清光(またの名を加州清光)」だが、この宝具を装備している間、彼女の愛刀とされた「菊一文字則宗」となる。




ランサー:ディルムッド・オディナ
フィオナ騎士団に属していた騎士のひとり。
二本の槍、もしくは二本の剣を扱うのを得意とされた人物であり、騎士道を遵守する性格だが、子度の聖杯戦争については()()()()が強く行動が悪い方向に向いてしまっている。
もちろん本人は抵抗しようとはしている、否──して()()

宝具
破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)
触れた対象の魔力を打ち消す能力を持つ。
玲香の強化魔術などを部分的に打ち消しただの刀にするが、魔力を帯びてないものに関しては特に効果を発揮しない。

必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)
傷つけた相手に回復不能の呪いのようなものを付与する効果を持つ。
だが、対セイバー戦ではこちらの槍を剣に持ち替えたため真価は発揮されていない。
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