黒服と会った翌日、通学路を歩き登校していると入学式で見たオッドアイピンク髪ロリと梔子先輩、そして周りには倒れ伏すヘルメット団が十に満たない程…大体察することはできたが、ここは本人の口から聞いてみよう。
「梔子先輩、おはようございます。…これは一体どういう状況ですか?」
「あ!おはようレクト君。これはね…」
「そこの梔子ユメ会長が昨日夜遅くまで署名運動を続けて襲撃を受けたのにも関わらず、今日も無警戒に歩いていたのでまた襲撃を受けた、それだけです」
「そんなことしてたんですか梔子先輩…」
「ひぃん…あ、紹介するねレクト君!この子は小鳥遊ホシノちゃん!昨日言った生徒会に誘ってる子で、とっても強いんだ!」
「なるほど、この子が。…俺は龍塚レクト、生徒会所属だ。とりあえず、梔子先輩を二度も助けてくれてありがとう」
「…別に、目に入ったから助けたに過ぎません。そう何度も助けてもらえると思われては困ります。あと、私は生徒会になんて入りませんから」
なるほど。確かに梔子先輩が昨日言った通り刺々しい雰囲気はある。だが、善性が滲み出ているな。もちろん梔子先輩程のお人よしじゃないが、人の持つ良心なんて個性みたいなもんだろう。優しさをどう出すかなんて人それぞれだ。
「何をニヤニヤしてるんですか、気持ち悪い」
…華の女子高生からストレートに言われる「気持ち悪い」は結構心に来るな。
地味にショックを受けているとナビルーが口を開いた。何故だろう、少し嫌な予感がする。
「相棒の言いたいことは俺でもわかるぜ!最近俺も知ったんだけどホシノみたいな奴をツンデレって言うんだろ?」
ブチッ
そう擬音が聞こえるほどホシノの表情が無と怒りの混じったものとなりこちらに銃口を向けてくる。慌てたナビルーは急いで俺の背にしがみつき隠れ、梔子先輩が急いでホシノに抱き着き拘束する。
…本当に撃つ気じゃないよな?俺はともかくナビルーが耐えられるかわかんないんだけど。意外とマキリノワのブレス直撃しても大丈夫だったし銃弾くらいなら耐えるか?いや、そういう問題ではない。ナビルーに銃弾が当たる事が問題だ。ナビルーは戦闘要員じゃねえ!
「待て小鳥遊、ナビルーはちょっと口が軽いしお調子者だが本当にいいやつなんだ。お前にツンデレって言ったのも決して悪意も他意もないというか事故みたいなもので「コロス…」…よし、ナビルー逃げよう」
「おう!」
「ごめんなさい梔子先輩!後は頼みます!」
「えぇ!?レクト君!?」
俺はとうとう発砲された弾丸をライダーの動体視力で避けながらフィジギフ並みの身体能力を遺憾なく発揮してその場から逃げおおせた。梔子先輩には後で何か甘いものでも持っていこう。そうと決まれば今日はアビドスから脱出だぜ!登校?小鳥遊達と一緒の目的地にどうして今日行かなきゃいけないんですか?
走ってる途中で人気のないところでレウスを呼び出し、横並びになった瞬間ナビルーと一緒に飛び乗る。アビドス高校の制服を着たままだと一瞬で身バレするので脱いで青電主装備改に身を包み、氷妖イヴェリアも懐(?)にしまって黒龍弓に取り換えれば外出用ライダー装備のできあがりだ。兜もあるからかっこいいロボ市民だと思われなくもない…はず。ただ、この変装には一つ問題がある。
俺がこの世界に来てからつけてる初代の絆石、外れねえんだよなあ…
つまり、絆石に気づかれたら一発で全てが瓦解します。なんなら声でもバレます。ガバガバじゃねえか。
そもそも正体を隠す必要はあるのか疑問だが、ライダー自体がこの世界では異端なのでバレない方がいいのは多分そうだ。人は未知のものを恐れる。ただ…なんというか。俺のレウス含めた6体のオトモン達は外に出たがっているのを感じる。恐らくレウス達は俺が呼んでいない間この世界とはどこか別の空間にいて、そこではあんまり暴れられないのだと思うが…こうやって外に出してあげないとストレスが溜まりそうだ。別の空間だと思ったのは謎の空間の割れ目から出てきたり帰ったりしてるのを見てしまったからだ。俺達もアレ入れるんだろうか。
ともかく、この一週間ちょっとで呼び出せるかのテストも兼ねて全員砂漠のど真ん中で呼び出して運動させたりはしたが、まあ足りないよね。モンスターやぞ。これを解決するためにもいずれはライダーというか俺の存在が大々的に認められるようにならないといけないとは思うが、今はそれをやるにしてもあまりに俺達がこの世界を知らなさすぎる。
だから今トリニティに向かってるのは実地調査とレウスのストレス発散を兼ねた無駄のない完璧な正当性のある外出なわけだ。
「ねぇねぇ、君誰?ロボットじゃないでしょ?どこの生徒?あ、そこのドラゴン撫でても良い?…わぁ~、硬い鱗なのになんだかあったかい!そこのちょっと変な猫ちゃんはなんて名前なの?」
…わんぱくな我儘お嬢様といった感じの生徒に捕まるのは予想外だったが。いやマジで誰なんだコイツ。周りの生徒は遠巻きに見てるだけだったのに、コイツはこっちを見た瞬間近寄ってきてこのペースだ。しかもまたピンク髪。頭ピンク(語弊)は小鳥遊だけで十分だ。
「へぇ~、ナビルーって言うんだ。普通の猫が喋るなんて珍しいね?二足方向だし。あ、そうだ!この近くに美味しいケーキ屋さんがあるんだけど、一緒に行かない?今なら御馳走しちゃうけどな~」
「…お前、俺の兜外したいだけだろ」
「バレちゃった☆でも、私があなたに興味があるのは本当だよ?今声を聴いて確信したけど、あなた男子生徒でしょ?きっとキヴォトスで唯一だよそんなの。あと、私は”お前”じゃなくて聖園ミカって名前があるの。次からはそっちで呼んでよね」
どうしよう。正直この聖園とやらの神秘がずば抜けて高いのは見りゃわかる。だから今この瞬間にレウスに飛び乗って逃げ出そうにも尻尾とかを掴まれて追いかけられる可能性は十分あるんだよな。それで怪我するのは俺か聖園か…はたまたナビルーか。
ダメだな、危険な選択はできない。大人しく連れていかれるか。
「レウス、一旦帰ってくれるか。…ごめんな」
空へと旅立ち消えるレウスを見送り聖園へと向き直る。
「じゃあ、行くか」
「やっとその気になってくれたね。安心して、さっきの言葉に嘘はないよ。ちょっとお話したいだけ」
そう言って少し歩き連れ込まれたのは個室のあるケーキ屋。…個室のあるケーキ屋とか初めてなんだけど。流石はトリニティ…ケーキ屋一つでもスケールが違う。
個室に入りお望み通り兜まで取ったのに始まったのは俺への質問攻めかと思いきや、聖園と”ナギちゃん”なるもののエピソードをマシンガンのように話された。いや、俺はどういう反応をすればいいんだ。わからない…助けてくれナビルー。…ダメだコイツもケーキに夢中だ。バクバク食ってやがる。
まあただ、地頭が良いのかエピソードトークとしての話の仕方というのが上手くできており、決してつまらなくはなかった。思わず合いの手を入れてしまうくらいには。
「それでナギちゃんがさ~…ってちょっと待って、今何時?」
「12時半過ぎ」
「あぁ!?今日13時からナギちゃんと予定あるんだった!?急がなきゃ!レクト君、モモトーク交換して!」
「はいよ」
「お題は払っとくから、またね!」
「あ、いや自分で払う…行っちまった。ナビルーは寝てるし、今日は帰るか」
糖分はバカ食いした後すぐに寝たナビルーの虫歯を心配しながら、俺は帰路へついた。
「それでナギちゃん、龍塚レクトって生徒の事何かわかった?」
「あぁ、ミカさんでしたか。先日言ってた男子生徒の事ですね。…結論から言うと、連邦生徒会の認知してる生徒にそのような者はいませんでした」
「…え?」
「