後進みません
小鳥遊が俺の監視という名目で生徒会の活動についてくるようになった。ただついてくるだけじゃなく自分なりに手伝いをしているのでもはやこいつも生徒会でいいのではないだろうか。というかそのうち絶対生徒会に入ると常々思っているので俺は書記を希望し無事その役職に就いた。俺が編纂者になるんだッ!…でももし万が一俺が生徒会長の任を引き継ぐとなったとき、あのクソダサい生徒会長手帳は使いたくない。梔子先輩があのノートを今年中に埋め尽くし、新しいのを買うタイミングで介入するしかないだろう。副会長となるであろう小鳥遊にあの手帳を引き継がせるのも酷だ。めっちゃ嫌がってたし。梔子先輩が小鳥遊は魚が好きって言ってたし、ガノトトスのシールでも作ったら喜ぶだろうか。…それで小鳥遊が亜空間タックルを習得したらいやだな。やめておこう。
今日は俺は梔子先輩や小鳥遊と別行動をとり、砂と埃が溜まった資料室に来ている。アビドスを襲う砂嵐は未だ収まっていないっぽいしな。この校舎もいつまで使えるかわからない。今のうちに調べられるものは調べておかないと。
この前見た砂嵐の中に居た巨大な蛇のような影。あれが見間違いではないのであれば、この砂漠には砂嵐を発生させている巨大な生物が存在していると推測できる。これだけの自然災害を起こせる古龍にも匹敵する何か。それがいる限り、アビドスは決して復興することはない。
「…あった。巨大な蛇のような機械との交戦記録」
「俺にも見せてくれ!」
ナビルーと一緒に何年前かもわからない古い書類を読み進めていく。恐らく、当時のアビドスは今ほど深刻な状態でもなく未だ巨大な自治区として機能していた時期だろう。多少の縮小はあるだろうが。そしてその規模の学園の戦力の大部分を動かしての交戦結果が…
「3度に渡り、軽微なダメージを与えたのみにとどまり敗北…砂嵐の発生原因は彼の大型機械によるものと推定したが、以降の戦闘は無意味と判断。…こんなの、古龍と何ら変わらないじゃないか」
装甲は銃弾では傷が付かないほど硬く、戦車砲や対物ライフルでも僅かに凹みが出来る程度。それに対し奴の攻撃は一撃一撃が普通の戦闘員を気絶させるほどに威力が高く、ミサイルやビームまで放ちそれにあたった者は良くて重症だったそうだ。
「地形を変え、天候までも操り災害を起こす…確かに、手ごわい相手だな」
「しかもここには機械って書いてある。モンスターが生きるために力を振るってるわけじゃない。誰かがこれを作り、そして災害を起こさせてるんだ」
「どうする?今からでも倒しに行くか?」
「…いや、前回は向こうがたまたま近くに来たが、そう簡単に会える訳じゃないだろう。見てくれナビルー、ここに対象は常に動き回っており、遭遇に二月かかったって書いてある。当時のアビドスのマンパワーを使ってこれだ。いくら俺達が機動力に優れるとは言っても、そう簡単に会えるとは思えない。確かに早く何とかした方がいいのは確かだが、実際に街が砂嵐に飲まれるのであれば、その時に姿を現すはずだ。そこを叩こう」
「わかったぜ相棒」
ナビルーと相談を終えると、不意に資料室の扉が開く。
「どこにいるかと思ったらこんなところに居たんですか。資料室に眠ってる情報なんて大したことないですよ。もうすぐ夜になります。さっさと帰ってください」
「あいよ。わざわざ探しに来てくれてありがとな、小鳥遊」
「…早く帰ってくれないと鍵をかけれないので仕方なくです」
「なあ相棒、やっぱホシノってツンデレってやつじゃないか?」
「しーっ、世の中には言わない方がいいこともあるんだよ」
俺は持ってた資料をもとの場所に戻し、ナビルーを連れて部屋を出る。
「そういえば、まだ生徒会じゃないのに何で小鳥遊が施錠をしてるんだ?」
「もう生徒会だからです」
「ほー、そうなのか。…ん?随分早かったな」
「あなたの言う通りになったのは癪ですが、先程ユメ先輩に加入届を出してきました。これからもあなた達と一緒にいるなら、その方が都合がよさそうだったので」
全く、素直じゃないなコイツは。思ったより正式加入が早かったのは単に梔子先輩の善性が強すぎたんだろう。
「じゃあ、改めてよろしくな、小鳥遊」
「よろしくな!ホシノ!」
「…あなた達、呼び方統一しませんか?」
小鳥遊にそう言われ、俺はナビルーと顔を見合わせる。確かに、俺は苗字呼びでナビルーは名前呼びだ。文化圏の違いだろうか。
「一応言っておきますが、キヴォトスでは苗字で呼ぶ方が異端ですよ」
「…マジか」
いやでもいきなり名前で呼ぶのはハードル高くないか?…それが前世の価値観だからってやつか。仕方がない、郷に入っては郷に従えだ。その代わり…
「仕方ないな。それならホシノ、俺の事もそろそろ名前で呼んでくれていいんじゃないか?」
「うるさいですね。もうカギ閉めるんでさっさと帰ってください」
「はーい。ナビルー、帰ろう」
「おう!じゃあなホシノ!」
ホシノは何も言わず確認のためか資料室に入って行った。さっさと帰れって言われたしな。大人しく帰るか。
「全く、生徒会の仕事をほっぽり出してまで何を調べていたのやら…これですか。…巨大な蛇のような機械との交戦記録?」
「これは!?…はぁ。こんなのを調べて隠れて何をしようって言うんですか、レクト」