そうして、あたいらはそれぞれ無事三週間を過ごして帝劇に帰ってきた。
あたいはあたいで熊をも倒す暴れ牛殺しを達成した後、近隣住民の祝いの席にもてなされたりしたけど、それはまぁ別の話だな。
特訓しろって言ったのに欠片も特訓しようとしなかったすみれに帰って早々文句を言って一戦交えて、帰還した全員でサロンに集まった。
そしたらまー、全員顔も、雰囲気も、恰好も全然ちげーんだ。
気配からして研ぎ澄まされたマリアに、あたいですら感じとれるほど霊力が上がってるアイリス。
青い顔をして震える隊長に、そんな隊長に刀を構えて這いよるさくら。
相変わらずド派手で新しい着物を着たすみれに、目元に隈つけて変な笑いを浮かべてる紅蘭。
「あぁ皆、強くなったな」
「いや、その感想はおかしいだろ」
あたいの背後からやってきた支配人がそんなこと言うけど、あたいは訳が分からず首を傾げる。
「どー見ても、具体的に強くなってんのがマリアとアイリスだけじゃねーか」
「まっ、見てわかるのは二人だけだよな。
ほい支配人、土産」
支配人に倒した牛で作った干し肉を渡しながら、爺に干し肉って駄目だったかとか考えちまう。
「で、隊長はどうしたんだ?
さくらに詰め寄られて青い顔してるだけじゃねーよな?」
「あー・・・
あいつはこの三週間、マリアに追いかけまわされたんだよ。銃の的としてな。
そのせいか帰ってすぐに『俺、的が撃たれるのを見ると庇いたくなるんです。支配人』とか言いやがって・・・
マリア見るたびに意識を向けるようになっちまったみてーでな」
「うわ・・・
マリア、何やってんだよ・・・」
的にされりゃ、打たれちまう的に仲間意識を持っちまうか。
「で? さくらに詰め寄られてんのは?」
「あー、そりゃあれだ。
マリアと二人っきりで三週間もいたからな」
「は? マリアに嫉妬とかねーだろ。
マリア、玄さん一筋だし」
さくらの様子の原因がわかってもむしろわかんねーよ。マリア、玄さん以外見てねーじゃん。
「そりゃわかってるだろうが、大神はそうじゃねぇだろ」
「あー・・・ 隊長だしな」
そうなると、他の連中の様子は言われなくてもわかる。
アイリスは成長期だし、すみれの奴は資金集めするっつってたし、紅蘭は徹夜でもしたんだろ。
つーか、そう考えっと紅蘭が一番の手柄じゃねーか。あとぜってぇ言ってやんねーけど、すみれも。
「てか、わかったなら大神助けてやれよ」
「そりゃそーと、腹減ったな。
玄さんいねーから、適当に作るかー」
支配人がなんか言ってっけど、あたいは自分の言葉にかぶせて聞こえなかったふりをする。
「アイリス、飯作るけど何食いたい?」
「え? じゃぁ、カレー!」
「あー、カレーか。
それは隊長が生きてたら頼んでくれ」
「え? お兄ちゃん?
あっ・・・」
リクエストを出したアイリスに隊長のことを言えば、状況を見てすぐに察したようだ。
流石にアイリスじゃ、まださくらのあれは止めらんねーだろ。
おっ、でもなんだかんだで説得できたみてーで、こっちに来るな。
「な、何とか無事さくらくんを説得しました・・・」
支配人によぼよぼと報告する隊長はやつれてるっぽいけど、こんくらいなら平気だろ。
「じゃ、隊長。
カレー作ってくれ」
「カンナ、まずは状況確認じゃないか!?
久し振りに全員揃ったんだし、もっと話し合いとかあるだろう!」
青ざめたり、焦ったりしてたわりには元気いっぱいに声を出す隊長。
なんだ、まだまだ余裕じゃねーか。
「そやでぇ、カンナはん。
勝手に出ていったくせに宿題として神武の原案置いてった馬鹿兄の想像も、光武の原型しか残さんかった馬鹿お師匠さんをも超えたウチの最高傑作の話を聞けやぁ」
「そうですわ!
それを作り上げるためにこの私がどれほどの苦労をしたかを聞いたのち、私に感謝しなさいな」
「それより聞いてください、カンナさん!
大神さんったら、訓練と称して三週間もマリアさんと二人っきりに・・・!」
「だから、一緒にいたって的にされてたんだよ?」
あたいを逃がさないとでもいうように腰辺りに引っ付いてくる紅蘭にちっとびびっけど、そんなことかまってらんね。つーか、どっちの話を聞いてもあたいじゃよくわかんねーし。マリア、玄さんしか興味ねーし。
「そんなことより、飯だ飯」
『そんなこと!?』
あたいの言ったことにマリアを除いた皆がおどろいってっけど、知らね。
「お兄ちゃん、カレーまだ?」
「アイリスまで!?」
あたいが飯に動こうとすると、マリアがそれを遮った。
「おふざけはここまでにしておくとして・・・」
「え?」
あたい、別にふざけてねーんだけど。
「まずは皆で重要なことを話しあいましょう」
「そうですね、マリアさん。
帝都のげ・・・「玄治が今どこで何をしてるかよ」 え?」
場の空気を換えるように切り出したマリアにさくらが真面目な顔で頷いて、まともなことを言ってたのにマリアがとんでもない割り込み方をした。
「ちょっ、マリア!?」
「自分のこと、第一かーい」
マリアらしくない発言に隊長も紅蘭も突っ込むが、マリアの目は本気だった。
「私達がいなかった三週間、不自然なほどに降魔の大きな動きはなかったわ。
それはつまり、玄治が関連している可能性がある。
なら、彼の動きを最初に確認することはおかしなことではないでしょう?」
わー、正論でうまく固めてやがるけど、私情八割だろうがよ。
純粋なさくらとか、単純な隊長とかは信じちまってるけど、他の奴らの目は誤魔化せねーぞ?
「で、だから俺が来たんだが、オメーら気づいてるよな?」
支配人がそう切り出せば、全員が当然とばかりに頷いて体ごと支配人の方へと向ける。
「あやめくんも風組も今は別件で動いてるから、俺が来た。
そしたら、大神。
オメーは帰還早々にさくらと修羅場してんだから、笑っちまうよな」
にやにやと笑って隊長をからかう支配人に、さくらと隊長が顔を赤くしてる。ホント、この二人はからかうとおもしれーよな。
「で、だ。マリアの言うことも間違いじゃねぇ。
オメーらが留守の間、降魔は確かに大規模な動きはなかったが帝都にちょくちょく現れてやがった。
だが、報告を受けて俺達が帝都を画面に写す時には、既に降魔が斬られた後だけがその場に残されていた」
それだけで玄さんがやったんだろうって、予想がつく。
降魔共は死体なんて残さねーで、気色悪い体液だけが残るからな。
「玄治はたった一人で無茶してるのね・・・」
「だが、あいつのおかげで帝都には何一つ被害が出てねぇ。
その分、叉丹共と同じであいつがどこにいるかも不明のままだ」
被害がねーのはいいことなのに、玄さんの居場所もつかめない。
こういうのは嫌だ、どうすればいいかわからない状態なんてもやもやしやがる。
「そっか・・・ じゃ、とりあえず皆で飯食おうぜ。
腹が減っては・・・」
あたいが言葉を言いかけた瞬間に鳴り響く警報。
久しぶりに聞くそれのタイミングの悪さに、あたいは舌打ちした。
「腹ごしらえは戦いの後ですわね? カンナさん」
「チッ! 許さねーからな!! 降魔!」
「皆、行くぞ! 特訓の成果を見せてやれ!!
帝国華撃団、出撃!」
隊長の号令の元、あたい達は出撃していった。
戦闘中は新しい機体・神武について紅蘭が超盛り上がっていろいろ話してたけど、霊力をあげる装置がどーのこーの、個人に合わせてどーのこーの、神武作ろうとした時に玄さんの机の上にあった書類がどうこう言ってたが、あたいにはよくわかんなかった。
とりあえず、あたい達は皆強くなって、機体も強くなった。
だから、黄昏の三騎士の猪野郎も楽に勝ったってことさ。
あの日々を忘れない あの日を忘れられるわけがない
でも けして足は止めない
だって私にはあの人が残したあの子がいて あの人達が守ってくれた帝都を守ると決めた
私が何であったとしても 帝国華撃団の副司令 藤枝あやめなのだから
次回 『あやめ死す 殺女覚醒』
太正桜に浪漫の嵐!
ありがとう 大神くん