サクラ大戦 貴水玄治物語   作:無月

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⑳武蔵突入 金剛撃破

 休憩が終わると皆が再度指令室に集合し、米田の口から降魔の群れを突破する方法であり魔を封じる手段『二剣二刀の儀』について語られる。

 華撃団の前身である対降魔部隊が剣の伝承者を集められた組織であったこと、かつては四人で儀式を行っても力及ばず降魔を祓うことが出来なかったこと。儀式が失敗したために一馬が命をかけて魔を封じたのだと伝えられた。

 

「大神、さくら、お前らにその儀式を任せるぜ」

 

「っ・・・ はいっ!」

 

「任せてください」

 

 米田の指名に大神とさくらも覚悟を決めた顔で受けるが、すぐにへらっと米田は笑う。

 

「なーに、不安になるこたぁねぇさ。いつも通りやりゃ出来る、お前らなら大丈夫だ」

 

 そう言って大神に自分の神刀滅却を託し、それぞれが出陣のために準備に動いて艦橋にて花組を激励するために薔薇組と風組、そして隊員見習いである野々村つぼみも勢揃いする。

 かえでが大神にいろいろと語りかけるのを見守りながら、玄治は風組と薔薇組、そしてつぼみの方へと足を進めた。

 

「貴水先生、頑張ってください!

 私もスマイルスマイルで皆さんのこと、待ってますから!」

 

「よしよし、無理すんなよ。

 学園の友達にいろいろ自慢するんだって気持ちぐらいでいろ」

 

「先生ったらまたそんなこと言ってー。またすみれさん達に怒られちゃいますよ?」

 

「何やっても怒られるからな、俺。あんまり気にしないことにしてる」

 

「もう、そういうところですってばー」

 

 臨時講師として学園生と交流があるらしい玄治がつぼみと仲睦まじくしてると、隣にいる由里と椿の視線が刺さる。

 

「だから、そーいうところだってば貴水さん」

 

「貴水さん、学園で良い先生なんですね!」

 

「かすみ、ラチェットさん、あれはいいの? 学園で初恋泥棒してる可能性が浮上したわよ?」

 

「ふふっ、自分が山崎さんに教わったことを後進に残したくて仕方がないんですって」

 

「玄治は霊力関係に関しては原理や性質には知識が深いし、霊力量によって有効的な戦闘方法を生徒個人個人に合わせて伸ばしていくのも上手いわ。加えて蒸気機構や霊力機構についても特化しているものだから、霊力を持たない技術を求める者達からも弟子入りの声が絶えない。けれど弟子をじっくり育てている暇がないほど彼は忙しい」

 

「だから講師として様々なことを誰かに伝えられるのが嬉しいなんて・・・ 玄治さんったら子どもみたい目をキラキラさせていたら、止められないわ」

 

「あーはいはい、ご馳走様」

 

 生き生きとする想い人を語るラチェットとかすみの顔はとても嬉しそうで、予想していないなかった惚気をくらった由里は溜息を零す。傍で聞いていた椿も二人の惚気に充てられてほんのり頬を赤らめ、『恋って凄いんですね』とつぶやいた。

 

「かすみ、ラチェット」

 

 つぼみと話していた玄治がこちらへと声を向けてきて、玄治の傍には当たり前にようにマリアとレニも並んでいた。

 

「行ってくる」

 

 まるで買い物を行ってくるかのような軽い口ぶりの玄治に二人が微笑み、マリアとレニも笑った。

 

「玄治、買い物に行くんじゃないのよ?」

 

「わかってるさ、でも買い物だろうと戦いだろうと俺達が帰ってくる場所はここだ。

 帝国劇場であり、華撃団の皆がいる場所であり、俺達五人が揃ってるここ(・・)が俺達の帰る場所だから、帰ってきたらいつも通り『おかえり』で出迎えてくれよ」

 

 それは過去がなく、故郷がなく、家族がいなかった玄治なりの我儘。そして、『治に居て乱を忘れず』と同様に乱にありながらも平穏を、日常を忘れないように意識した行動だった。

 

「それならまず送り出さないといけないわね。

 いってらっしゃい、早く帰ってくるのよ」

 

「お気をつけて」

 

 だから送り出す二人もまた同じように返した。

 どうやら大神達との話を終え神剣白羽鳥を渡し終えたらしいかえでが玄治の前で止まり、その肩に手を置いた。

 

「ちゃんと帰ってくるのよ、玄治くん。

 私達みたいな想いはもうたくさんだわ」

 

「えぇ。

 帰ってきたらあやめさん達の墓参りにでも行きましょう、いろいろと報告しないとですから」

 

 玄治の発言にかえでもクスクスと笑いだし、手を伸ばして玄治の頭を撫でる。

 

「それはいいわね、きっといろいろと驚くわ。

 私も姉さんと義兄さんが守った大切な子が立派になったことを伝えたいもの」

 

「じゃぁ俺はあの日の志と夢を、正しく受け継いだ奴らの話をしないとですね」

 

 互いに笑って離れ、全員が轟雷号に乗り込み、武蔵内部へと突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 武蔵内部へと侵入すれば待っていたとばかりに金剛が待ち構えており、玄治は心底嫌そうに顔をしかめる。そんな玄治を見つけた瞬間、金剛は目を見開いて突進してくる。

 

「貴水ぃ! 大神ぃ! 俺はこの日を待ってたぜ!!

 お前らとまた殺しあう、この日をなぁ!」

 

「俺は全く待ってない、つまらないお前を片付けなきゃいけないのが心底面倒だ」

 

「玄治・・・ もう少し歯に衣着せた方が・・・」

 

「俺、あいつ嫌い」

 

「珍しくドットーレと意見が合いましたー! 明日は雨ですねー」

 

 軽口をたたきながら花組は戦闘態勢に入り、大神の指示のもと展開していく。

 

「大体、お前らのことは初めから気に入らねぇ!

 女に戦わせて、後ろで見てるようなお前らがなぁ! 何よりお前らは水狐を殺した!」

 

 あれやこれやとまくし立てる金剛の最後の言葉に、玄治がキレた。

 

「あぁ? お前、今なんつった?」

 

 神威がこれまで見たどの時よりも軽快な動きをし、大神の光武を足場にして金剛の機体へと飛び蹴りを叩きこんで肩を抑え込むようにして踏みつける。

 

「サキを、水狐を殺したのはお前らだ。

 あの日、水狐から情報が漏れることを恐れた京極が機体を爆破しやがった。

 お前は弱い、何も知らない。だから、俺達に負けるんだよ」

 

「玄治! よせ!!」

 

「好きだなんて嘯いてるお前が戦いのことしか考えてないことを、あいつは気づいてたんだよ」

 

 さくらや大神と同じ刀を刺突するように構えたが、金剛によって蹴り飛ばされ、玄治は大きく舌打ちする。

 

「マリア!」 「勿論!」

 

 玄治がどいた金剛へとマリアの銃弾が飛び、マリアが次いでレニを呼ぶ。

 

「レニ!」 「了解!」

 

 金剛にマリアの銃弾を避けられたところに、レニの槍が飛び込んでいった。

 

「ぐぁ・・・ あぁ、何故、なんでお前はそんなに強い? お前らは負けない?」

 

(答えたところで、お前にわかるもんかよ)

 玄治はそう吐き捨てるのをこらえつつ、冷めた目で金剛を見る。が、そんな玄治を押しのけて大神は金剛をまっすぐ視線を向ける。

 

「金剛、お前は一つ勘違いしてるよ」

 

「勘違い?」

 

「俺達が負けないのは強いからじゃない、一人じゃないからだ」

 

 そう言った大神の背には玄治を含め花組の面々が並び立つ。

 

「一人じゃないから守りたくて、守りたいと思ったから皆で頑張れて・・・ 強く見えるのかもしれない」

 

「そんな強さ認めねぇ! いいか大神、強さってのはなぁ!」

 

 そう叫びながら金剛は火に包まれ始め、それでも金剛は叫ぶ。

 

「俺は、俺一人の身の強さを誇りたい! 俺は俺に後悔なんてしてねぇ! 俺は間違ってなんかいないんだぁ!!」

 

 そうして火に包まれながら、武蔵から落ちていった。

 

「最後の最後まで、胸糞悪いやつだ」

 

「玄治、気持ちはわかるけれど言葉を慎みなさい」

 

「悪かったよ・・・」

 

 つい言葉を吐き捨てた玄治にマリアの注意が飛び、それぞれが轟雷号へと戻っていく中、玄治は金剛が落ちて行った場所を見ながら玄治は言いようのないため息を零した。

 

「お前は人になれたじゃないかよ・・・ お前も、サキも・・・

 どうして、どうしてなんだ・・・」

 

 言いようのない虚しさが溢れて、言葉を止めることは出来なかった。

 五行衆のもしもの未来を考えることをやめることは、出来なかった。

 だが、そんな未来はここにはなく、だからこそ後悔しか残らなかった。それが現実だった。

 

「玄治、行こう」

 

「あぁ、今行く」

 

 大神に声をかけられ、それに応じた玄治はもう振り返ることはなかった。

 

「これ以上先は最深部になって通信が厳しくなる。

 これが最後の通信になりますが、皆で無事に帰還します」

 

『おうよ、行ってこい。俺達もお前らを信じてるからな。しっかりやってこい』

 

 とても最後になるかもしれない通信とは思えないほど飄々とした米田の返事に誰ともなく笑顔になり、画面越しに頷いて皆で声を揃える。

 

『了解!』

 




二剣二刀の儀 か・・・
玄治 本当に俺とさくらくんでいいのか? 俺より玄治の方が・・・
俺の霊力じゃ二剣二刀を扱えない だから先生は俺に自ら剣を打ってくれたんだ
お前とさくらなら絶対に成功する 自信をもってやれ
次回 『二剣二刀の儀』
太正桜に浪漫の嵐!
先生 一馬さん あやめさん 見ていてください
二人が無事やりとげるところを
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