「どうしてだ、どうしてわからない? 貴水博士」
最奥に着いた花組を出迎えた京極は嘆くように玄治に問いかける。
が、その問いかけに対して玄治とさくらは同時に構えて霊力を集める。
「「破邪剣征」」
玄治の銀の霊力とさくらの桜色の霊力が重なり合い、霊力が風となって舞い上がる。
「「桜花放心!!」」
「なっ!?」
二色の花吹雪が京極を襲い、どうにか新皇の両腕で防ごうとするが霊力が龍の姿を成して喰らいついて離れない。
「玄治兄さん、霊力はもちそうですか?」
「はっ、心配すんな。
天武が壊れるほど溢れるエネルギーのおかげか、この武蔵の中ならいくらでもぶっ放せる」
「なら、もう少し頑張ってくださいね!」
「お前、ホント俺には厳しいよな。任せろ!」
「「おおおぉぉぉーーー!」」
二人がもう一度刀を振り下ろせば喰らいついた龍の大きさが増し、その牙が新皇の両腕にひびを入れ、ついには噛み砕いてみせた。
「玄治、さくらくん、よくやってくれた!
あとは任せろ!」
カタツムリのような形をした新皇の貝部分に狙いを定める。
が、玄治を口説こうとする京極は未だ玄治へと熱のこもった視線を向けたままである。
「おのれ! おのれ!! 何故、何故私の側につかない?! 貴水博士!
今ならまだ間に合う、私と共に真の帝都を築けばあなたの大切な師も生き返らせることが出来る!
いいや、それだけではない! 山崎によって与えられた『貴水玄治』という偽りの名ではなく本当のあなたを取り戻すことすら可能なのだぞ!?
あなたは! 正しくあなたの生を取り戻すべきなのだ!」
が、相対した玄治は『はぁ』と大きなため息をついて見せた。
「つまりお前は、お前にとって都合のいい『誰か』に俺をしたいわけだな。
だが、生憎俺は貴水玄治なんでね」
そう言ってニヤリと笑って、京極に見せつけるように手を開いた。
「お前の理想なんざ知ったこっちゃないし、貴水玄治になる前の俺なんか知らない。
お前のいう偽りなんてどこにも存在しやしないさ」
「玄治の言う通りだ。
京極、お前は真の帝都なんて言って結局は自分での支配を望んでいるだけだ」
玄治の言葉を大神が引き継ぎ、さくらも強く頷く。
「人々の命を弄び、自分の欲望のために封印を解放しようとする身勝手を私達は許さない!」
「黙れ! 虫けらが!
浅慮な貴様らには理解できぬ我らの崇高なる理想に口を挟むな!」
「いいえ、黙らないわ。
京極、あなたに今の帝都の平和を奪わせない!」
玄治の隣にマリアが並び、その後に続くように花組全員が並び立つ。
そうして全員の力が新皇の殻を砕き、京極は再びよろけながらも叫ぶ。
「博士! あなたの知識があればあちらの世界の力の制御すら夢ではない! 降魔などという下級などではない! 名のついた上級の存在・・・ 否! 王にすらこの手が届くのだ!」
「あちらの世界? 京極、お前何を知っている?」
ようやく自分の言葉に玄治が興味を示したことを好機と思ったのか、京極はさらに語ろうとしたその瞬間
《京極、貴様はしゃべりすぎた》
「なっ・・・ 体が! 新皇、待て! 私の言うことを・・・!」
《所詮貴様も、虫けらか》
「なんだ? 内部で何が起きてる?」
「玄治! 危険だ!」
近寄ろうとした玄治を大神が止めれば、それ以上京極の声は聞こえず、先ほど聞こえた声に花組も戸惑いをみせるが警戒を怠ることはない。
《我が名は新皇、かの世界とこの世界を繋ぐ門を守りし者なり》
「かの世界・・・? 人の負の感情が降魔を生み出してきたんじゃないのか?」
京極ではない何者か、おそらくは新皇から語られた言葉に玄治は驚きと戸惑いを隠せなかった。
《貴様らの憎しみ、怒り、悲しみが我々をより強くこちらに引き寄せる。
かつては封印が我々を押さえたが、今飲み込んだ男のように守り人の一族から我々を支配できると考える傲慢な者も現れ、あちらとこちらの狭間は薄くなってゆく。
鍵の一族も、扉の一族ももはや形骸。いまやこの世界は風前の灯火であった。貴様らさえ現れなければ》
(鍵? 扉? 裏御三家とは違うのか? わからないことが多すぎる。
だが、もしこいつの言っていることが全て真実なら・・・)
《だが、人の欲望が尽きぬ以上必ず理想を継ぐ者は現れる。
そして、その日のために我は貴様らを道連れにしてやろう!》
「大神! でかいのが来るぞ!」
「皆、力を貸してくれ!」
最大の一撃が来ることを理解し、大神に皆の霊力を集めて迎え撃つ。
「お父様の意志は私が継ぎます!」
「平和を奪うのは許さない!」
「私達には待ってくれている人がいます!」
「人の幸せが街を作るんだ!」
「皆を傷つけるものは許さないんだからー!」
「人を不幸にする道具はいらんのや!」
「愛を嘲る者は愛によって滅びまーす!」
「信じあう仲間の力を思い知れ」
「俺達はたくさんの願いを背負っているんだ! お前らなんかに負けるわけにはいかないんだよ!」
思い思いの叫びを口にし、大神がそれを背負って刀を引き抜く。
「何度現れようとも、何度起きようとも守ってみせる! 俺達が正義だ!!」
絶対正義帝国華撃団、悪ヲ蹴散ラシ正義ヲ示セ。
多くの霊力を纏い虹色の光を放つ二刀が新皇を両断し、大神が無事着地したことで花組に歓声がわく。
「お前ら、戻るまで気を抜くなよ。
それに俺達は武蔵の制御基板をぶっ壊してるんだ。崩れるのも時間の問題だ」
玄治が言うが早いか武蔵は崩壊を始め、全員が轟雷号へと走ろうとするがどう考えても間に合わない。だが、大神は諦めない。
「皆、諦めるな! 俺達は一人じゃない!」
そう叫ぶと同時に皆に緊急通信が入る。
『えぇその通りよ、大神隊長』
ラチェットの通信が終わるか否かでミカサが武蔵に突っ込んできて、ラチェットの通信を米田が引き継いだ。
『あんまり遅いから迎えに来てやったぞ』
そして、扉が開けば優しい笑みをこぼしたかえでがいう。
「おかえりなさい」
全員が無事ミカサに入り、地上へと降りていく中、ミカサ艦内では花組をねぎらいながら玄治、マリア、レニはまっすぐラチェット、かすみの元に・・・ 否、互いに集まりあって顔を会わせる。
あちこちボロボロになっている玄治を見て、かすみの目がわずかに潤み、ラチェットが悔しそうにするが、言葉を飲み込んで二人は笑顔で告げる。
「おかえりなさい、皆さん」
「無事でよかった」
対する三人も表情をやわらげ、ホッとしたような笑顔を零した。
「今帰ったわ、二人とも」
「ただいま、ラチェット、かすみさん」
マリアとレニの言葉を待ってから、玄治も肩の力が抜けたのか少し足をふらつかせ、その場で膝をつく。
当然四人が慌てるが、当の玄治は笑っていて、周囲が困惑する。
「悪い悪い、気を張ってたのがぜーんぶ抜けちまったみたいだ。
普段はあんなに霊力なんざ使わないし、いろいろあったからな。情けなさ過ぎて様にならねーな」
「情けないことなんてありませんよ、玄治さん。
よくご無事で」
「五体満足で帰ってきてくれただけで十分すぎるわ、あなたはいつも無茶をするから」
「その辺りはマリアとレニ、大神達のおかげだよ。
それに、一馬さんが守ってくれたからな」
そこでようやく自分がまだ言ってないことがあることを思い出し、二人へと微笑んだ。
「ただいま、二人とも。
また怪我して帰ってきて悪いな」
そこで二人が堪えきれなくなって玄治に抱き着き、玄治は尻餅をついた。そして背後からも、マリアとレニが玄治にピタリと抱き着いた。
「ハハッ、なんかいいな。こーいうの」
家族のように寄り添い合う五人を他の面々が温かく見守っていたが、最初にしびれを切らしたのはすみれだった。
「ちょいと貴さん、いつまでも家族団欒を見せつけてないでくださる?」
「じゃないと、玄治兄さん達は置いていつものあれやっちゃいますよ?」
「そーだ! そーだー! 早くこっちおいでよー!」
「ドットーレも気を抜いてる暇なんてありませんからねー」
「そうそう、この後宴会なんだからな。料理つくってもらわなきゃ困るぜ」
「それからウチと光武と天武のメンテもな」
玄治に対して一切容赦のない面々に玄治の笑みが苦笑いに代わり、大神も声をかけてくる。
「玄治、やろう」
「あぁ、やるか」
マリア達の手を借りて立ち上がり、大神と声を合わせて言う。
「「勝利のポーズ」」
『決めっ!』
月組を除いたフルメンバーが揃った勝利のポーズに大地が震え、帝都の空に平和の訪れを告げた。
公演も終わってやっと休みか・・・ 戦い後も何のかんので休めないよなぁ 俺達って
玄治 そんなこと言うなよ 帝都の笑顔を運ぶのも俺達花組の役目だろ?
そうだぞそうだぞ 大神ぃ 玄治ぃ 俺がお前達にいつも笑顔を運んでるみたいにな
いや それはない
次回 『帝都の休日』
太正桜に浪漫の嵐!
さて 少しくらいは皆でのんびり出来るといいがな