ある夜、玄治は秘密裏に伯爵夫人に呼ばれ、珍しく支配人室ではなく指令室に通される。
「珍しいですね、ライラック伯爵夫人。俺を指令室の方に呼ぶなんて」
「それほどあんたには秘密裏にやってほしいことがある」
そこで夫人はメルに玄治にある資料を手渡し、そこには巴里の怪盗、ロベリア・カルリーニについてまとめられていた。
「彼女を捕まえてほしい」
「・・・なるほど、彼女なら確かに十分な霊力を期待できる。
しかし、彼女をこちらに引き込む案はおありで?」
「流石ドクトル、話が速いよ。勿論、報酬も保険も考えてある。
しかしまずは、彼女と話し合いの場を設けないといけないんだ。あんたの手腕なら怪盗の一人捕まえるのなんて簡単だろう?」
「怪我をさせないなら手段は問わない、でよろしいか?」
「あぁ、何をしてくれてもかまわないよ。
警察には善意の協力者として、この仮面をかぶって実行しておくれ」
「わかりました」
仮面舞踏会で使うような目元を隠した豪華な仮面を受け取りながら、玄治は何をしようかと思考を巡らす。
「次の犯行予告をしているのはここだ。
そのタイミングを狙って、彼女を捕まえてほしい」
「準備がいいですね、俺が一度で成功させるかはわからないというのに」
「成功させるよ、あんたは。花組のためなんだからね」
「フッ、信頼されたものです」
「あぁ信じているとも。
だから、あんたも私達の信頼にこたえておくれ」
「善処しますよ。では、失礼」
「なんだ、なんなんだよあいつは!」
ある屋敷に盗みに入ろうとしていた筈のロベリアは今、何者かに追われていた。静かに、しかし確実に近づいてくるそれに対して、ロベリアが対抗しなかったわけではない。
だが、いくら能力を発揮して火を放っても避けられ、手首に巻いている鎖を振り回しても手にした棒一本に弾かれる。かといってこちらに応戦するのではなく、自分を捕まえようと手を伸ばしてくるのである。
黒くて速い、その上にとんでもなく強い奴に追われることを生まれて初めて体験するロベリアは純粋に恐怖し、その恐怖ごと必死に振り払おうとしているのだ。
「はぁ、はぁ・・・ ここまでくれば」
「よう、追いかけっこは終わりか。ロベリア・カルリーニ」
「なんで追いついてきやがんだよ! あんた、一体何者だい? 誰に雇われた?」
「・・・」
ロベリアの問いかけに真っ黒な服のそいつは無言を保ち、その場から一瞬で消える。
「・・・上か!」
「残念、後ろだ」
「なっ!?」
そこでロベリアの意識は途切れ、捕縛される。
その日、ロベリアは初めて敗北したのだ。
グラン・マによって全員が指令室に集められ、隊員候補リストを渡され、ロベリアの加入についての話をされ、一時間後にはサンテ刑務所へ向かうとなって解散という流れになった時大神がシーに呼び止められた。
「大神さん、ちょっとドクトル貴水についていいですか?」
「またかい? 玄治が何か・・・ 「何かなんてもんじゃないですよぉ!」 うわっ、ど、どうしたんだい? シーくん」
シーの剣幕にその場にいた他の面々も立ち止まり、一緒に話を聞こうと席に座りなおした。
「メルが貴族の方に言い寄られて困ってるからって自分のお気に入りとか言って貴族を追い払うとか、もっと他に守り方あったと思うんですけどぉ!」
「なんだと?」 「え?」 「えぇー!」
グリシーヌが眉間に皺をよせ、エリカは顔を赤らめ、コクリコは素で驚いてる。
「えっと・・・ そうなのかい? メルくん」
「はい、その日はどうも貴族の方がしつこくて秘書室まで来てしまって、ちょうど居合わせたドクトル貴水が助け舟を出してくださったんです」
怒りが収まらないとばかりにシーがバンッと机を叩き、大神が肩をすくめる。
「ドクトル貴水って、女たらしなんですか?」
「いや、むしろ捕えて逃がさないようにされてる側っていうか」
「いずれにせよ不埒な男なのだな、ドクトル貴水は」
快く思ってないことを顔に出すグリシーヌに、エリカは純粋な顔をしてニコニコと告げる。
「でもタカミさんはその貴族の人からメルさんを守ってくれたんですね、やっぱり良い人ですよ」
「そうなんです。ドクトル貴水は私のことを気遣って助けてくれただけで、その・・・ 下心も何もありませんよ、婚約者の方だっていらっしゃるんですから」
どこか寂しそうにいうメルにその場にいるエリカ以外が何かを察して二人は怒り、一人は冷や汗をかき、コクリコは真面目な顔をして言う。
「でも、そういうのって良くないよ。
大切な人がいるのに他の人に思わせぶりなことをするって」
「コクリコの言う通りだ。
それにドクトル自身の立場を利用した守り方のつもりだろうが、それは諸刃の剣だ。悪用されなければいいがな」
コクリコの言葉がぐっさりと大神にも突き刺さり、グリシーヌの言葉にはメルが慌てる。
「それはドクトル貴水に迷惑がかかる、ということでしょうか?」
「いやそうではない。だが・・・ もしもの時は私がブルーメールの名と同じシャノワールで働く仲間として力になることを誓おう」
「そんなグリシーヌ様、恐れ多いです」
「気にするな、私達は仲間だ。
しかし、ドクトル貴水には機会があれば物申しておこう」
止めても聞かないとばかりのグリシーヌが怒りながら指令室を出ていき、それに続くようにエリカ達もメルも部屋を出て行くが、シーはまだ残っていた。
「私が怒ってるのは、メルにはある気持ちが芝居を打ったドクトル貴水にまったくないことですよぉ」
「・・・玄治はどうしても自分に向けられた好意や気遣い、優しさに対して鈍いんだ。ここ一年はだいぶ改善されてたんだけどね」
「そんな理由とかはどうでもいいんですよぉ、傍で見ている私にとっては親友の気持ちがないものにされるのが嫌なんです」
「それは・・・ そうだよなぁ」
苦笑いする大神の顔を見て、シーは目を丸くしてから笑った。
「あー、わかった。
大神さんとドクトル貴水ってそういうところ似た者同士なんですね」
「えっ・・・ あぁ、そうかもしれない。
でも玄治の方が俺よりも覚悟が決まってるよ」
「いーえー、相手に思わせぶりなことをしたり、その苦笑の仕方とかそっくりですよぉ」
シーがそう言って指令室を出ていき、大神も後を追いかけて指令室を出て行った。
大神が玄治のことで指令室にて問い詰められている頃、玄治は公園でパンの食べ比べをしつつ鳩たちを手懐けていた。
「よしよし、いい子だな。お前達」
群れていく鳩達に手から餌をやっていると馴れ馴れしく肩に乗ってきた奴を降ろそうと玄治が左肩を見れば、そこには鳩ではないのが乗っていた。
「エサ、ヨコセ」
目元はアイマスクのような形に白く、全体はグレー、がっちりと玄治の肩を押さえる足は鳩のそれではない。
「寄こせじゃないだろ」
「ゴハン、チョーダイ」
「よし、やろう」
鳩にまいてた豆をやればつつくので、玄治は『なんだっけ、コレ。オウム?』と思いつつとりあえず動物に詳しいコクリコに話を聞きに行こうと動き出せば、ちょうどシャノワールの方からコクリコがやってきた。
「あれ? おじちゃん、その子どうしたの?」
「いや、今ここで鳩に食事やってたら突然肩に乗ってきて・・・ こいつ、なんて鳥か知らないか?」
「その子はオウムの仲間のヨウムっていう鳥で、アフリカとかに住んでるんだよ。
ご飯は種とか果物、頭がよくて人の言葉を覚えることも出来るんだよ」
そう言って近くに寄ってきたコクリコが『おいで』と腕に誘えば、すぐさま腕へと移り顔を寄せる。よく見ると尾羽だけペンキでわざとつけたように赤くなっており、その大きさはコクリコと比べることで40センチ弱とかなり大きいことがわかる。
「君、どこから来たの? 迷子かな?」
「・・・ナヲナノレ!」
「あぁ僕はコクリコ、あっちは」
「俺は貴水玄治だ。お前の名前は?」
「ナイ!」
「そうか・・・」
「どうする? 僕とくる? 君みたいにいろんな子がいるから大丈夫だよ」
そう誘ってくるコクリコを一度見てからその鳥は玄治に視線を戻し、玄治もじっとヨウムを見ていた。
「俺とくるか?」
そう言って腕を差し出せば自然と玄治の肩に戻り、肩の上で機嫌がいいとばかりゆらゆら踊るようにしている。
「そうだな、お前の名前はアル・・・ アルセーヌだ」
「アル? オレ、アル!」
「そうだ、俺の傍にいるんだったら逞しくなってもらわなきゃな」
「いい名前だね、おじちゃん。
アルくん、よかったね」
「よかったらいろいろ教えてくれ、とりあえず果物とナッツは常備するようにする」
「野菜も食べるから本人に教わりつつ一緒に生活していくといいよ。
それじゃまたね、おじちゃん、アルくん」
「あぁ、またな」
とりあえずアルの識別のために一度自宅に戻り、シルスウス鋼を加工してアルセーヌの足に合う輪を作ってやる。そこにアルセーヌの名と貴水の名を彫り込み仕上げに簡単なヨウムの模様を描いていく。
「よしっ。アル、来い」
腕を出せばすぐに乗ってきて、素直に足を差し出してくる。
「お前、本当に賢いな。
じゃぁ俺の宝物も覚えてくれないか」
足に足輪をつけてやり、ポケットから懐中時計を出して開く。
「俺を好きだって言ってくれる、心の底から愛してる存在だ」
そう言って指さして順に名前を押してやると繰り返すようにアルも名前を口にし、玄治は肩にいるアルセーヌにも頭を寄せる。
「俺はこの四人のいるべき場所に必ず帰る、俺の帰るべき場所なんだ。
俺はお前のそんな場所になりたい、お前と家族になりたいんだ。アル」
「カゾク」
「そうだ、家族だ。
俺がいる場所に、四人がいる場所にお前の帰る場所がある。そう覚えてくれ」
「カエルバショ」
肩で頷くアルセーヌにナッツをやりつつ、適当な木材で止まり木を作ってやる。
「鳥籠はどうする?」
「イラヌ!」
「おぅ、武士なのか? お前」
「シンシ!」
「マジかよ」
一階用の止まり木と地下用の止まり木を用意してから、一度一階に戻る。
「タカミさーん、入ってもいいですかー?」
「は!?」
扉を叩く音に素で驚く玄治に、かまわず扉を叩く音はどんどん大きくなる。
「ちょ、ちょっと待て」
「ダレ?」
「アルも一緒に来い。この街のシスターでダンサーのエリカだ」
「エリカ!」
玄治の左肩を自分の居場所と決めたらしいアルセーヌは、ガタガタ鳴る扉を警戒する。
「タカミさんのお家、発見しちゃいました」
「いやなんでわかった? 大神もこの家は知らない筈なんだが?」
「えへっ、親切な人達に聞いて回りました。
今日はお礼を言いたくて」
玄治がうっすら恐怖を覚えつつ、エリカを招き入れつつ客間に通して茶を入れてやる。
「その子はどうしたんですか?」
「あぁ、俺と一緒に来るっていうから一緒に住むことにした。名前は「アルセーヌ!」、アルって呼んでやってくれ」
紹介してる間に自分で名乗り上げたので、愛称も紹介する。
「アルくんですね、覚えました」
「それで礼って? 俺、何かした覚えがないんだが?」
「いえ、タカミさんが私に懺悔をやってくれるからか神父様に褒められたんです! 他の方の懺悔の時もタカミさんの時みたいにお話しするとうまくいって、私それがすっごく嬉しくて・・・」
よほど嬉しかったのか満面の笑みで伝えてくるエリカに、玄治は微笑ましくなって頭を撫でる。
「それは俺が何かしたわけじゃない、お前がちゃんと人の話を聞いて明るく励ましてくれたり、考え方を教えてくれたからだろ。
お前は人に愛されてるし、人を楽しくする素敵な才能にあふれてる、お前はもっと自分に自信を持っていいんだ」
そこでエリカは頬を染め、目を丸くしてくる。
「タカミさん、やっぱり女たらしさんなんですね」
「お前、どこでそんな言葉覚えた? やっぱりって発言元は誰だ? 大神か?」
「秘密です」
シーッと口元に指を立てるエリカに玄治が仕方ないと溜息をついて言及を諦め、とりあえず紅茶を口にする。
「ヒミツ! ヒミツ!」
アルがエリカの発言を繰り返し、玄治の頭の上に移動して羽根を広げる。
「エリカ、エリカ」
「え? 私に翼はないですよ?」
アルの真似して両腕を広げ、自分の背中を見ようとするエリカに玄治が笑う。
「多分十字架の真似だろ。な? アル」
「エリカ!」
頭をゆらゆらとしながらご機嫌なアルに、エリカも納得したように手を叩く。
「なるほど!
あっ、そろそろ私出掛けなきゃいけないんでした。これで失礼しますね!」
「あぁ、またな」
「はいっ! また!」
来た時と同じように嵐のように去っていくエリカを見送って、玄治はほっと一息つく。
「・・・アル、もしかしてお前、霊力が見えてるのか?」
「エリカ! ハネ! アル!」
「そうか・・・ あいつに羽があるのか」
不意に天使の姿のあやめが脳裏をよぎり、ふっと笑う。
「似ているのは髪色ぐらいだってのに、なんでだろうな?」
「エリカ、トリ?」
「鳥ではないな、エリカはエリカだ」
アルの発言に真面目に返していれば、小型キネマトロンに通信が入ったため扉を閉めて確認する。
『名画切り裂き事件を調査せよ』との文字に、アルを見る。
「アル、ついてくるか?」
「ウン!」
「建物の中には入れないぞ、その時はどうしてる?」
「トンデル」
「お、おぅ、そうか。呼んだら戻って来いよ?」
「ウン」
ご機嫌とばかりに玄治の肩でステップを踏むアルに戸惑いつつ、スーツに穴が開くのだけ恐れる。
「お前がそこを気に入ったなら、肩にガードつけないとな」
調査をしつつ皮やら糸などの裁縫道具を買うことを決めながら街へと歩き出す。大神は今頃刑務所へと向かっている頃かと思いながら、美術館巡りを兼ねた捜査に行くかと相棒を連れてのんきな調査を始めるのであった。
大神達がロベリアに会い、話し合いの場を設けつつも一度は断られ、大神が何故か刑務所で生活することになっている頃、玄治はシャノワールに訪れていた。
(しかし、大神はメイドの次は刑務所生活・・・ 巴里での日々は刺激的過ぎて笑えないな)
メイド姿の大神を思い出して苦笑いしつつ、人のいない一階客席に座ってみる。首を傾げるアルに『シャノワールだ、ダンスが見れる』というと玄治の肩でご機嫌なステップを踏んだ。
「ハハッ、うまいうまい」
「シャーッ」
「お、すまん、ナポレオン。居たんだな」
「シャーッ」
男である玄治に近づくなとばかりに不機嫌を露にし、さらに肩にいるアルに対しても威嚇する。
「アル、お前男判定受けたな」
「ワガハイハアルセーヌデアル! ナヲナノレ!」
「だとよ、ナポレオン」
「フッシャー!」
アルに教えた名乗り上げにナポレオンは不機嫌全開で返していると、ナポレオンの声が聞こえたのかメルがやってきた。
「ドクトル貴水、いらっしゃってたんですね」
「あぁすまない、許可なくこいつを入れてしまって」
「ワガハイハアルセーヌデアル! ナヲナノレ!」
一瞬だけメルが驚くが、すぐに目元を緩ませてアルに礼を取る。
「メル・レゾンと申します。
いらっしゃいませ、アルセーヌ様」
「ウム!」
機嫌が良くしたアルがさらにご機嫌なステップを踏み、玄治の耳に『ゴニョゴニョ』という。
「先日はお疲れ様でした。お怪我がなくてよかったです」
「いや大したことはしてないさ、これまでのことを考えれば人間相手だから楽なもんさ」
そう笑う玄治に真面目な顔のメルが同じ席に腰かけた。
「ドクトル貴水は様々な経験をなさっているとお聞きしています。女性経験も豊富なのですか?」
「女性経験はまったくないさ。
俺が社交界に出たのはここ数年だし、想いに気づかされたのは去年の終わりのことだよ」
「えっ?」
「なんだ、この間の芝居で手馴れてるとでも思われたか?」
「いえ・・・ その」
驚いた様子のメルに、玄治は気を悪くした様子も見せずに笑う。
「慣れてないさ、いつだって俺を支えてくれた人に鈍くなってた心を気づかされたんだ。
俺は弱いくせに一人で何でもやろうとするから、いつだって助けられて、守られて、支えられて、共に戦ってくれた・・・ そんな相手が俺へと向けてくれる感情に気づくのに三年、いや出会いを考えたらそれ以上かかったんだから鈍いよな」
「そう、なんですね・・・」
「俺はそんなに大した人間じゃないのにな」
「そんなことはありません!」
自嘲して笑う玄治の言葉をメルはすぐに否定して立ち上がり、玄治は少しだけ驚く。
「ドクトル貴水は、お優しいです。
いつだって冷静に、花組のために飛び出していける・・・ そんなところがとても危うくて、見ている側が心配になってしまうくらい」
「ハハッ、それ婚約者達にも言われたよ。
でもごめんな、それでも俺は変えられない。これは俺の信念だからな」
そこで玄治は立ち上がり、支配人室へと向かってしまう。
「・・・それもわかってしまうんです、あなたを見ていると」
そうつぶやいたメルの声は玄治の耳には届かなかった。
『ロベリアを見張ってほしい』というグラン・マからの依頼が来たため、玄治はルーブル美術館を見張る大神達をさらに遠くから見張っていた。
「ゲンジ、ナンカヘン」
「お前、やっぱり霊力とかを感じてるのか?」
首を傾げるアルに真偽はわからないが、遠目から事態が動くのを見ている。
そして、事態は動き出す。
蠍のようなツインテールの怪人が大神達に蠍をけしかけ、何故かロベリアにだけが蠍が行かない。それに加えてロベリアも何やら蠍とやり取りをして笑いだす。
「そろそろ動くか」
愛刀を手に怪人の背中に向かって動き出そうとした瞬間、大神がロベリアに一喝し、刀を抜こうとする。
「・・・こりゃ俺、出番なさそうだな」
「ダレ?」
「あいつは大神一郎、俺の大事な弟分だ」
「オーガミ! オーガミ!」
大神の一喝にロベリアが手をあげて何かを言い、蠍の怪人は美術館の中へと消えていく。大神達も光武へ乗るために指令室に戻る姿を見守りながら、玄治は一人で美術館の状況を送り付けていく。
「さて、こんなもんか。
通路の美術品か、高級品の美術品か、大神達はどっちをやるんだろうな」
「ゲンジ、カエル?」
「そうだな、帰るか。
ロベリアにはまだ顔を会わせない方がいいだろう、大神が俺と繋がってるとわかったら不信感しか抱かない」
顔を隠していたとはいえロベリアともなれば身のこなしで予想を立ててきてもおかしくはない。なんならこうした情報を誰かが与えてると知ったら、そいつが自分を捕まえたと思っていてもおかしくはないだろう。
「まだ俺は、あいつらにとってどこにでも現れる謎の存在くらいがちょうどいい」
「ゲンジ、ネムイ!」
「わかったわかった。帰ったらすぐ休もうな、アル」
あれやこれやと考えながら、アルセーヌに引っ張られるように家路につくのであった。
いつまでも覚めない夢 でも 本当はわかってる
私が本当に見たかった夢は・・・ その夢はもう 叶わないのに
私は今日も彼の居る場所へ行ってしまう
次回 『黒衣の花嫁』
愛の御旗のもとに
北大路花火 お前が本当に望んでいた未来はなんだった?!