【完結】恋とノイズと残響と   作:ひーたむ

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1、隣の席の天使

 

 

 

 

「ね、ね、音楽とか聞くの?」

 

可愛い声に反応すると、隣の席の伊地知さんが僕に話しかけていた。

一瞬固まってしまう僕。

だって僕は、あまり女子と話すのが得意じゃない……というか、人と話すこと全般が割と苦手だ。

中学の頃にちょっとした事件があって……ってそんなこと語るのはやめておこう。

だから僕は、つい、そっけない態度をとった。

 

「え、別に、そんなに聞かないけど」

 

言ってからちょっと後悔。

すっげー偉そうな感じの返事だったかも。

そもそも、伊地知さんは男女問わず人気がある。

可愛くて明るくてほのぼのした雰囲気で、僕が隣の席に決まった時も他の男子たちから羨望の目で見られていたぐらいだ。

いや、それを考えると、親しくしすぎない方がいいぐらいなのかもしれないけど。

やっかまれると嫌だし……。

とか考えていると。

僕のそんなうじうじとした思考なんて吹き飛ばすような明るい声で、伊地知さんが言った。

 

「え、そうなの? イヤホン出してるから好きなのかと思っちゃった」

「あ、そういうことか」

 

机の上に出していたイヤホンを手に取る。

これは単に、声優さんのラジオを聞こうかと思っていただけ。

若干、おたく趣味なのだ。

とはいえ、それを表明するのも恥ずかしいしな。

 

「英語のリスニングの復習しとこうかと」

「え、偉いね!?」

 

本気で驚かれてしまった。

 

「ちぇーっ、もし服部君が音楽聞くなら、おすすめとか訊きたかったのになー」

 

伊地知さんが唇を尖らせる。

そんな仕草も可愛い。

っていうか、伊地知さん、音楽の話がしたかったのか。

 

「音楽が好きなの?」

 

思わず問いかける。

 

「うん!」

 

元気いっぱいに身を乗り出してきた。

 

「いろいろ聞くよ。日本の中心だけど、ロック系とか、エモ系とか、ちょっとパンキッシュなのとかも!」

「へぇ」

 

とはいえ、僕は詳しくないからなぁ。

頭の中で、これまでに聞いたバンドを反芻してみる。

そういえば、親父が好きで家にCD置いてたのがあったな。

 

「ちょっと古いけど、ムーンライダースなら聞いたことあるよ」

「あ、それ、リョウが聞いてた」

「え、そうなんだ」

 

リョウってのは、伊地知さんと仲がいい女の子。

名字は山田さんだったかな。

なんか無口でクールな子ってイメージだけど、古い音楽が好きなのかな。

 

「伊地知さんはそのバンド好き?」

「うーん、そんなにかなぁ」

 

正直だ。

 

「私は、こういうの聞いてる!」

 

そう言って、彼女のワイヤレスイヤホンを差し出してくる。

え、これ、聞けってこと?

僕の耳に入れていいのか?

 

「?? どうしたの?」

「い、いや、なんでもない」

 

変にキョドるのも不自然だよな?

僕はイヤホンを受け取り、それを耳に入れた。

明るくて疾走感のある音楽が流れてくる。

なんだろう、青空に風が吹くような感じ。

特にドラムの音がパワフルですがすがしい。

良いな。

普通に良い。

女の子に聞かせてもらったからとかじゃなくて、普通にすごく気に入ってしまった。

一曲最後まで聞き終えて、僕はイヤホンを外した。

 

「ど、どうかな?」

 

ちょっと不安げに伊地知さんが聞いてくる。

 

「すごく良かった。ドラムの音が迫力あって、聞いていて気持ちよかった」

 

僕がそう言うと、彼女は顔を輝かせた。

 

「ほんと!?」

 

さっき以上に身を乗り出してくる。

て、テンション高いな。

 

「いやぁ、服部君、聞く耳あるね! そうなんだよ、この曲ってドラムの人の音が特にカッコよくって~」

「それ、わかる」

 

そんな会話をしていると。

 

「おーい、静まれぇ!」

 

ガラッと教室の扉を開けて、国語のアラカン先生(荒木貫太郎だから僕たちはそう呼んでいる)が入ってきた。

 

「ね、ね、放課後、もっとお話ししようよ」

 

伊地知さんが、小声でささやいた。

他意はないはずなんだけど、僕は少しドキッとしてしまった。

 

 

 

 

 

(続く)

 








少しでも、虹夏ちゃんが可愛く書けていたら良いのですが……。
全22話ほどを予定していて、出来る限り2~3日ごとに投稿いたします。


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