たくさんの方々に読んでいただけて、嬉しい限りです!これからも自分なりのペースではありますが、この二次小説を書いていきたいなと思います。
感想もありがとうございます!読んでいただいた方々の反応が直に見れて、とても嬉しいです!
それでは、本編へどうぞ。
<マキマ>
魔法少女と魔女の関係性について、その真実を語った。
場は一時混乱したけれど、想定内ではあった。魔女の正体を聞かされた魔法少女はみんな、その事実を受け止めきれなくて暴走してしまう子がほとんどだからね。
最初、ほむらちゃんにマミちゃんへのスカウトを止められたときは、ほむらちゃんもまたそれを危惧していたからだと思うけど、なんとか落ち着いてくれたみたいだからよかったよかった。
さて、そろそろ話を次の段階に持っていくとしようか。
「それじゃあ、今から本題に入らせてもらうよ。」
私がそう切り出すと、マミちゃんだけでなくまどかちゃんとさやかちゃんも背筋を伸ばした。
「マミちゃん、私たちは君に、魔法少女として特異課へのスカウトをしたいと考えています。この提案、受けてくれますか?」
「特異課へのスカウト……それはつまり、私に魔法少女として、一緒に戦ってほしいってことですか?」
「そういうことになるね。」
私が肯定すると、マミちゃんは表情を曇らせ、静かに俯いた。
「……ごめんなさい。今は私、魔法少女として戦うことはできないかもしれないわ。」
「……理由を聞いても?」
「魔女と戦うのが、怖くなってしまったんです。」
マミちゃんは僅か数十分前の出来事を思い出しているのだろう。
自身の存在を確かめるように肩を掻き抱き、その小さな体を震えさせている。
「魔女との戦いで危ない目にあったことは、これまで何度もあったわ。でも、あれほど死を間近に感じたのは初めてだった。あの瞬間を思い出す度、手足に力が入らなくなって、何もできなくなるの……。」
マミちゃんはそう言って、自身の心の内を語った。
「だろうね。」と私は内心で頷いた。
だって、そうなるように私が
『魔女という存在が恐ろしい』『誰かに守ってほしい』
そうした死の恐怖に怯え、自分よりも強大な存在に助けを求めている子供に、守護者として私が手を差し伸べる。
____私の下に来れば、君をあらゆる危険から守ってあげる。
そう言えば、誰かに守ってほしいと考えている子供たちは、差し出された私の手に救いを感じて飛びついてくる。
無駄に長い話し合いを何度も重ねる必要もなく、すんなりと私の庇護下に入ることを受け入れてくれるのだ。
マミちゃんは強い魔法少女だ。平時なら、私の提案を容易く受けるようなことはしないだろうし、さやかちゃんがそうだったようにキュゥべえから妙なことを吹き込まれて、最悪敵対関係にまで発展してしまう可能性もありえた。
だから、マミちゃんには死の恐怖を実感してもらう必要があった。
マミちゃんが死に直面するギリギリの瞬間まで助けに入らず、子供たちを守りながら魔女を圧倒できるだけの力があることを示し、最後に自分の行く末には絶望しか残っていないことを教えてあげる。
作戦はうまくいった。
マミちゃんは、しばらく魔法少女として戦えなくなるほどの傷を心に負った。
そんな彼女が、私の手を取るのは時間の問題だった。
(まあ、だとしてもやりすぎだなぁとは思ってるんだけどねぇ…………。)
恐怖に耐えようとしているマミちゃんを見ながら、私も唇を噛み締めてチクチクと刺す胸の痛みに耐える。
私だって、本当はこんな方法はとりたくなんだよぉ!でも支配の悪魔として、この方法が一番手っ取り早くて確実だってわかっちゃうんだもん!!
それに!キュゥべえに魔法少女にさせられた子達って!良くも悪くも自我が強すぎるというか!自分の力を過信している
「大人の助けなんていらねー」っていう子が結構多いから!スムーズに話を進めるためにもこうするしかないんだよぉ!!
(だから姫野ちゃんとほむらちゃん!そんな人を悪の黒幕みたいに見るのはやめてよぉ!!)
実際間違ってないけどさぁ!でもファミレスでこの作戦を話した時、二人とも何も反対意見言わなかったじゃん!!
誰か一人に責任を押し付けるのは良くないと思います!
だから共犯だよ!私たちは!!
私が姫野ちゃんとほむらちゃんをキッ!!!と睨みつけると、姫野ちゃんは明後日の方向を向いて口笛を吹いた。ほむらちゃんは何食わぬ顔で紅茶を味わっている。
このッ!下手な誤魔化し方しやがって!今度の飲み会で姫野ちゃんだけ禁酒命令出してやろうかな~!?
ほむらちゃんは、そうだなぁ……。
とりあえず笑顔の練習と称して、その可愛いお顔をコネコネさせてもらおっかな!
(フフフ、この私__支配の悪魔から逃れられると思わないことだね、二人とも!)
…………………………。
……いけないいけない、取り乱しちゃった。
(一先ず、話を戻そうか。)
つい暴走しかけた頭を深呼吸をして落ち着かせ、再度マミちゃんに向き直る。
「大丈夫だよ、マミちゃん。たとえ君が戦えなくなっちゃったとしても、それならそれで君に提案があるんだ。」
「……その提案とは?」
「特異課からの生活支援を受けないか、っていう話だよ。」
一度カップを手に取って紅茶で喉を潤し、続きを話し始める。
「さっきも言ったけど、私たちの仕事は一般社会を魔女の脅威から守るだけじゃなく、何らかの理由で戦えなくなっちゃった魔法少女を保護することも含まれているんだ。」
「どうしてそんなことを?」
「魔法少女が魔女化する原因は、なにも戦闘時に魔力が尽きてソウルジェムが濁るなんていう限定的な話じゃない。ソウルジェムは魔法少女の感情の起伏に敏感でね、負の感情に晒されると途端に穢れが発生するんだ。日常生活で溜まっていく穢れの量は微々たるものではあるけれど、グリーフシードで浄化しなければいずれ完全に濁り切って、最期には魔法少女は魔女化する。」
私がソウルジェムに発生する穢れについて説明すると、マミちゃんは自身のソウルジェムに視線を落とした。
マミちゃんは震える声でポツリと呟いた。
「じゃあ、私はどうすれば…………。」
「そこでこの子達の出番というわけだよ。」
私はゴーストちゃんとイナリちゃんの2人を近くに呼んで、両隣に座らせた。
「この子達『魔人』は、君たち魔法少女のソウルジェムに発生した穢れを吸い出すことができるんだ。さっきゴーストちゃんがマミちゃんにやってあげたみたいにね。」
「!」
「…………。」
私の説明を聞いて、目を見開いたマミちゃんがゴーストちゃんの方を見た。目が合ったゴーストちゃん__目は瞑っているけど__は、若干俯きながらもマミちゃんに向かって手を振った。
その時、じっと黙って話を聞いていたまどかちゃんが、ふと疑問に思ったという様子で遠慮がちに手を挙げた。
「あの、さっきから気になってたんですけど、魔人ってなんなんですか?」
「私も、それ気になってたんだよね。魔女とは違う存在なの?」
まどかちゃんの質問に続いて、さやかちゃんも首を傾げて尋ねてくる。
私はそれに対して「いい質問だね」と頷いた。
「魔人っていうのは、私たち特異課のウィッチハンターが捕まえて、
「戦えなくなってしまった魔法少女の支援というのは、その魔人ちゃん達に日々溜まっていくソウルジェムの穢れを吸い取ってもらったり、近隣で出現する魔女と代わりに戦ってもらったりするというものなんだ。」
「それは……、何もかもを魔人の方達に助けてもらうってことですか?」
「そうなるね。」
「……そこまでしてもらっても、私が返せるものは無いと思います。」
「そんなのマミちゃんが気にする必要なんてないよ。言ったでしょ?これは私たちの仕事で、君たち魔法少女が健全な生活を送れるように支援するのが私たちの役目なんだから。」
「ね、二人とも?」と両隣に座るゴーストちゃんとイナリちゃんに振る。
ゴーストちゃんは控えめながらも口元に小さな笑みを浮かべて頷き、イナリちゃんは平らな胸を張って尊大に頷いて見せた。
今特異課にいる全ての魔人ちゃんたちも、今のマミちゃんと同じか、それ以上の絶望や恐怖をその身に刻み込んでいる。
だからこそ、この先に生まれてくる魔法少女が少しでも幸せな未来を歩けるようにと、自分たちのように不幸な運命を辿ることが無いようにと、彼女達は惜しげも無くその力を未来の子供たちのために使う。
そこには、一度は手放してしまったはずの未来への希望が、確かに存在していた。
マミちゃんはまだ、タダで助けてもらうということに後ろめたさを感じているみたいだ。だけどゴーストちゃんとイナリちゃんの微笑みが励ましとなったのか、マミちゃんは頬を緩めて小さく頷いてくれた。
「分かりました。そのお話、よろしくお願いしたいと思います。」
「うん。任せて、マミちゃん。」
マミちゃんが深々と頭を下げてそう言った。
そして、次に顔を上げた時、真剣な表情でマミちゃんは続けた。
「……あの、もし私が、もう一度魔法少女として戦えるようになったら、その時は私にも仕事を手伝わせてもらえませんか?」
「!……そうだなぁ。じゃあもしマミちゃんがもう1回戦えるようになったら、特異課の協力者として力を貸してもらおうかな。」
「___ッ、はい!ありがとうございます!」
マミちゃんは晴れやかな笑みを浮かべると、力強く頷いて見せた。
まだ完全に立ち直れたわけではないようだけど、それでも笑顔を見せられるだけの元気は戻ってきたようだった。
そんなマミちゃんの笑顔を眺めながら、頭の冷静な部分が密かにマミちゃんの性質を分析する。
(本当に真面目な子だなぁ。よく今まで魔法少女として生きてこれたなと思うくらいに……。)
ほむらちゃんが魔法少女の真実を彼女に打ち明けるのを危険視していたのも、納得の真面目さだ。ずっと自分の中でため込み続けて、いつかとんでもない爆発の仕方をしてしまうんじゃないかと思ってしまう。それくらい彼女の善性は、キュゥべえが生み出した魔法少女という存在としての生き方に噛み合っていないように感じた。
(その点、ほむらちゃんは魔法少女としての生き方に適合しているように見えるなぁ。この子達と歳は変わらないはずなのに……。)
いくら平凡という言葉から限りなく遠い存在である魔法少女とはいえ、その中身はどこにでもいる普通の女の子でしかないはずだ。
まして、魔法少女になった子の内、キュゥべえの甘い囁きに何の疑いも無く契約を結んでしまうような、無害な笑みの下に隠されている闇を知らない子供たちがほとんどを占める中でも、ほむらちゃんは極めて現実的で大人びた思考を持っているように見える。
僅か十年余りの短い人生で、彼女は一体どんな経験を積んできたと言うのだろうか?
(いつか、この子の本音っていうものを直接聞いてみたいな。)
チラッとほむらちゃんの姿を視界の端に映しながら、私はそう思った。
…………が、その隣に座る姫野ちゃんの姿が一緒に映り込んだことで、ある未来の可能性が突如、脳裏を過った。
(それはそうと、もうあと10年くらい経ったら、ほむらちゃんも姫野ちゃんみたいに図太い大人になっちゃいそうだなぁ……。)
今からちょうど、一月前の同じ時間帯。
任務でうっかり私に攻撃を当てそうになって殺しかけて、「今日私が全部奢るんで許してくださ~い(きゅるん♡)」と言って姫野ちゃんが許しを乞うてきた時のことを思い出す。
(とてもほむらちゃんが同じセリフを同じポーズで言うような未来は想像できないなぁ。でもそれはそれで見てみたい気もするなぁ。)
まあ、きっとかわいいから許してあげるけどさ。
その時の姫野ちゃんはどうしたのかって?許してあげようとしたら強烈なチューしてきやがったから、その場で指導と称して関節技をキメてあげたよ。
そして、その店は出禁になった。あのお店、おいしかったのに…………。
独りでそんな感傷に浸っていた時だった。
突然、どこからともなく「きゅるるる〜」と可愛い腹の虫の鳴く音が響いた。
音の出処に向かって、その場の全員の視線が集まる。
みんなの視線が交わった先は、マミちゃん____ではなく、その隣のまどかちゃんだった。
まどかちゃんは顔を耳まで赤くして、恥ずかしそうに口を開いた。
「す、すみません。マミさんの話が一件落着したみたいだったから、なんだか、気持ちが緩んじゃった、みたいで……えへへ。」
「いや、マミさんじゃなくてアンタがお腹鳴らすんかい!」
さやかちゃんがビシッとまどかちゃんにツッコミを入れた。
二人のやり取りのおかげで、部屋の空気がより一層緩んだ気がする。思わずといった様子で、皆から揃ってクスクスと笑みが漏れた。その中には、いつも難しい顔をしていたほむらちゃんも一緒になって笑っていた。
私は振り返って壁掛けの時計を確認した。
思ったより話し込んでいたようで、ちょうどいいぐらいの時間になっていた。よそのお家では、お父さんお母さんが晩御飯の準備をしている頃だろう。
そうとなればせっかくだ。
私は机を囲んでいる皆に一つ提案をしてみることにした。
「もう時間も遅くなってきたし、よかったらウチでご飯食べていかない?」
「えっ!?そんな、悪いですよ!」
「遠慮しなくていいよ!今日は大事な話もたくさんしたし、皆それなりに疲れちゃってるでしょ?必要な話だったとはいえ、心労を掛けちゃったのは事実だから、ここは私の料理でみんなの心を温めさせてほしいな、なんて!」
「い、いいのかな?あたし達、付き添いみたいなもんだし、ずっと話聞いてるだけだったけど。」
「全然いいよ!それに、君たちにとっても重要な話ではあったし、これはちゃんと私達の話を聞いてくれたご褒美ってことで!」
「あ、もちろん親御さんが良いよって言ってくれたらだけど」と付け加えれば、まどかちゃんとさやかちゃんが携帯を取り出して確認をし始めた。
そして二人とも許可が出たらしく、少しの申し訳なさと期待の籠った瞳を私に向けて頷いてくれた。
マミちゃんも「ありがとうございます」と礼を言って参加の意思を示してくれた。
「ほむらちゃんもどう?」と尋ねれば、少し間を置いた後に「……食べてくわ」と言ってくれた。
耳を赤くしたままそっぽを向いているほむらちゃんの頭を思わずなでなでしつつ、席を立った。
「みんな、アレルギーとか苦手なモノとかってあるかな?」
「大丈夫です。」「アタシも~。」
「私も大丈夫です。」「問題ないわ。」
うんうん、みんな好き嫌いが無くってえらいねぇ。
それじゃ、今日のメニューはアレにしようかな~。
「オッケー!それじゃ準備してくるから、ちょっと待っててね~。」
私は今晩のメニューを頭に思い浮かべながら、その場を後にしたのだった。
<暁美ほむら>
(なんとか話は纏まったわね。)
私はフカフカのソファで寛ぎながら、先程までの話し合いの様子を振り返る。
一時は危うい瞬間があったものの、マキマが上手く場を収めてくれたおかげで話し合いは順調に進み、無事に巴マミを特異課の庇護下に引き込むことができた。
しかも、ここまでの流れのほとんどがマキマの作戦通りだというのが驚きね。巴マミの心を弱らせ、より大きな存在の加護を求めるように誘導し、そのまま彼女の強固な信頼を獲得する。これら全てがマッチポンプによるものという訳ではないけれど、作戦の概要を知らされていた身としては、実は前以て準備していたのではないかと疑ってしまうくらいに事はスムーズに運んだ。
(まったく……恐ろしい女ね、あなたは。)
味方である内は、これほど頼もしい存在は他にはいないだろう。
だけど、もし彼女が敵に回ったらと思うと……考えるだけで、ゾッとするわね。
(まあ、あのマキマが今更敵になるなんてことはないでしょうけど……。)
物思いに耽っていた思考を戻して、カーペットの上に座り込む3人の様子を見る。
まどか、巴マミ、美樹さやかという順番で座って身を寄せ合い、巴マミの広げている冊子を興味深そうに眺めている。
その表紙に印刷されているタイトルは、ポップな字体で___
『ようこそ!公安対魔特異課へ!~特異課ってどんな所?~』だ。
これはマキマがキッチンへ消える前に、「コレあげるから読んでみるといいよ」と、どこからともなく取り出したものだ。中のページには、公安対魔特異課がどのような組織なのかについて、ポップな字体の文字やイラスト、写真などを使って機密に触れない範囲を分かりやすく解説してある。¹
また、難解な用語や専門的な部分は、マキマキという見覚えのありすぎるデフォルメキャラと、ポチタという額からチェンソーが飛び出た犬(?)が子供向け絵本みたいな会話で分かりやすく説明してくれるという親切設計だ。
「随分と中身に詳しいな」ですって?
私も同じものを渡されたからよ。²
時々、対象年齢を間違えているのか合っているのか分からなくなるデザインにモヤモヤすることはある。
だけど、特異課のことを簡単にまとめて理解するにはちょうどいい情報源でもあるわ。
しかも、このパンフレット……特異課の中を見学する時のしおりとしても使えるのだ。
まさに至れり尽くせりね。
その時、不意に顔を上げた美樹さやかと目が合った。
「…………。」
「…………。」
お互いの間に気まずい沈黙が流れる。
私たちの異変を察したらしいまどかと巴マミまで揃って顔を上げたために、何を言えばいいのか分からなくなってしまった。
ぎゅっと握りしめた手の中に汗が溜まる。
せっかく話がまとまったのよ。今まで、私一人ではどうしようもなかったはずの私たちの関係が、初めて良い方向に変わっていっている。
それなのに、もしここで私が不用意な発言をして、全てが振出しに戻ってしまうようなことにでもなってしまったら……。
「……、あ、…………えっ、と……。」
「転校生、あたしはアンタに謝らないといけない。」
「え……。」
言葉を喉で詰まらせ、声にならない空気を吐き出すことしかできていなかったとき、美樹さやかが突然そんなことを言い出した。
予想だにしていなかった彼女の発言に耳を疑っている間にも、美樹さやかは言葉をつづけた。
「あたしさ、ずっとアンタは悪い魔法少女なんじゃないかって思ってた。銃なんて危ない物を持ってたり、突き放すみたいな喋り方するし、全然笑わないし……一体何を考えてるのか、分からなかった。」
「でも、それは分からなかったんじゃなくて、あたしがアンタのことを分かろうとしなかったからなんじゃないかって思ったんだ。実際、蓋を開けてみたら思ってたのと全然違って、アンタとマキマ先生は私たちのために動いてくれてたって知って……あたし、何も確かめずにずっと間違ったことを信じようとしてたんだって気づいたんだ。」
「美樹さやか……。」
「キュゥべえがさ、アンタとマキマ先生が手を組んで何かを企んでいるってアタシに言ってきたとき、根拠なんて何も無いのにアンタとマキマ先生が何か悪いことをするんじゃないかって前提で疑っちゃってたんだ。あんなに生徒思いの先生のことまで、実は悪者なんじゃないかって簡単に思いこんじゃって……。ホント、最低だよね、あたし。」
「……別に、あなたは間違ってはいないわよ。」
自嘲する美樹さやかの言葉を聞いていると、私の口から勝手にそんな言葉が零れだした。
それに自分自身で驚きつつも、一度出てしまった言葉は止まらない。
罅割れた瓶から水がこぼれ出ていくように、私の口はその続きをぽつぽつと語り出した。
「私が、あなたたちにきつく当っていたのは事実よ。それは、私にはやらなくちゃいけないことがあって、そのためにはああするしかなかったから。……目的のためなら私は……美樹さやか、あなたがどうなろうと知ったことではないと思っていたわ。」
「でも」と、伏せていた顔を上げて、美樹さやかの透き通るような青い瞳と目を合わせた。
その顔に、今まで出会ってきた何人もの『美樹さやか』の顔が重なる。だけど、怒りや疑惑に歪んでいた彼女たちと『今』の美樹さやかの顔は、まるで別人かと思うほどに違っていた。
(美樹さやか。あなたは、そういう顔をしていたのね。)
初めて見る、いや
「今は、あなたのことも、助けられたらいいなって、思っているわ。」
「……そっか。」
美樹さやかはなぜか、何とも言えないような表情をして目線を逸らしてしまった。
マズイことを言ってしまったかと思ったけれど、今更さっきの言葉を否定する気にもなれなかった。
だって、今までの時間軸にも、確かにあったのだ。
数多のすれ違いの中にも、ここにいる4人ともう1人で、一緒にケーキを食べて、笑っていた時間が……。
(ずっとまどかのことしか見ていなかったはずなのに、視界に美樹さやかが飛び込んできたものだから、きっと思い出してしまったのね。)
そんなことを思いつつ、この後のことについて考える。
結局、言うべきでなかったことまで言ってしまった。そのせいで、部屋の空気は完全に静まり返ってしまった。
せっかくマキマが全てをうまくまとめてくれたというのに……私は何をやっているのかしら。
そうして軽はずみな自分の行いに失望していた、その時だった。
ボフンっとソファが誰かを受け止めるような感触が伝わり隣に目を向けると、そこには頬を淡く染めた美樹さやかがいた。
彼女は後ろに手を付いてニッと笑い、口を開いた。
「んじゃま、私たちはお互い様だったってことで。ここは手打ちにしておきましょうかね!」
「……えっと、それであなたはいいの?」
「いいじゃん。お互い、腹を割って話せたんだからさ。」
「……私はまだ、あなたたちに隠していることがあるわ。それにきっと、この先も教えることはないと思う。」
「いいよ。だって、アンタのその隠し事は、何か悪さしようって感じのじゃないんでしょ?」
「えぇ、まあ。」
「なら問題ないでしょ!大丈夫、あたしもみんなに隠してることはあるからさ。それもまた、お互いさまってね。」
そう言って快活に笑う美樹さやかの顔は、ほんのり赤く色づいているように見えた。
それは窓から差し込む夕日のせいだろうか、それとも心境の変化故か。
だけどそんなことはどうでもよかった。
なぜなら私もきっと、美樹さやかほどでなくとも、笑っていたような気がするから。
(それはそうと、あなたの言う隠し事³は私達だけじゃなく全クラスメイトの知るところだろうから。お互いさまではないわよ、美樹さやか。)
これは言わぬが花と言うやつだろう。
私は口にしかけたその言葉を、何とか飲み下すことに成功したのだった。
そこへ、ガチャリと部屋の扉の開く音が聞こえた。
「おまたせ~、今日の晩御飯はオムライスだよ~……っと、あれ、もしかしなくてもお邪魔だった?」
「ん”ん”ッ、別に問題ないわ、マキマ。」
「いいや、もう少し時間をおいてから入ってくるべきだったぞ、マキマ!せっかく美少女二人が和解し、互いに微笑み合うという至高の空間が出来上がっていたというのに!」
「妙に静かだなぁって思ってたけど、イナリちゃん、そんなこと考えてたんだ……。」
「鹿目まどか、もう一回イナリちゃんと呼んでくれないか?」
「ダメよ、まどか。その変態狐の言うことを聞いちゃダメ。」
「ねぇ、アンタのこと、これからはほむらって呼んでも……って聞いてないし!?」
「マキマさーん、冷蔵庫にビールってある?」
「ダメだよ姫野ちゃん。私の家では絶対に飲ませないからね?」
「マキマ先生、配膳手伝いますね。」
「……わ、私も!」
「ありがとう、マミちゃん、ゴーストちゃん。ほら、姫野ちゃんも手伝え。」
「まさかの命令形。」
途端にワイワイと騒がしくなる室内。
各々の席に配られたマキマお手製のオムライスに舌鼓を打ちつつ、私たちはお喋りに興じた。
私はまどかと美樹さやかの隣に座り、今度の休日にどこかへ遊びに行かないかと誘われた。そこへイナリと姫野先輩が突撃してきて、10本以上の腕を召還したゴーストに連行されていくといった珍事も起きた。
巴マミはマキマに本格派のオムライスの作り方について教えてもらっていたり、マキマに頭を撫でてもらっていたりして、傷ついていた心をゆっくりと癒していた。
そしてマキマは、この部屋にいる全員を見渡して、とても満足そうに笑っていた。
それは私も同じで、久方ぶりの満ち足りた時間だったと思うのだった。
「ごちそうさまでした、マキマ先生。」
「また明日も学校で!」
「お邪魔しました。」
まどか、美樹さやか、巴マミの3人はそう言って別れの挨拶をして帰路に就いた。
日もすっかり落ちてしまったため、帰りは姫野先輩が車で送っていくらしい。最低限の身嗜みを整えた姫野先輩が、玄関を出た3人を追って外へ出ていこうとする。
「ごめんね、姫野ちゃん。3人のこと、よろしくね。」
「任せてくださいよ、マキマさん。その代わり、帰ってきたら一杯飲ませてくださいね?」
「まだ居座るつもりか君。そのまま家に直帰しなさい。これは上司命令です。」
「え~~~~。」
「え~~~~、じゃないの。」
「しょうがないな~」とブツブツ文句を言う姫野先輩の姿が扉の向こうへ消える。
ちなみに、姫野先輩とバディのゴーストは彼女について行き、イナリは「帰って寝る」と言ってボワンっと煙を残して消えた。
つまり、部屋に残っているのは、私とマキマの二人だけということだ。
帰る3人と姫野先輩を見送ったマキマが、「それで」と口火を切った。
「聞きたいことって何かな、ほむらちゃん?」
先程までの喧騒が嘘のように静まり返った部屋の中で、マキマの声が響く。
日が落ちて暗闇に覆われた外の世界が窓から覗き、まるで私がこれから聞こうとしていることが触れてはいけないものだと物語っているようだった。
それでも、私は彼女に聞かなければならない。
一度深く息を吸い、胸の中に居座っている緊張と恐怖を共に吐き出す。
そして、顔を上げた私はマキマの同心円状の瞳を見つめ、彼女に向かって問いかけた。
「マキマ、そろそろ私に教えてくれないかしら。
____あなたの、正体について。」
___時を操る少女、イレギュラーの正体を問う。
マキマメモ その9
オリ主マキマは支配の悪魔として、状況に合わせた効率的な支配の仕方が手に取るようにわかる。その際、対象者や周囲に与える被害や精神的な影響などは基本的に無視されている。それをなんとか元人間としての”心”で制御し、ギリギリ問題のない範囲に留めて計画を実行に移している。
そのため、今回の巴マミに対して立てた作戦のように、もしも真実を知られたら相手から非難を浴びせられても仕方がないような手段を取ることがある。
しかし、強硬手段ではあるが結果的には良い方向に進むため、大人になってから知った姫野のような魔法少女や一部のウィッチハンターはマキマのやり方を受け入れており、それとは別にして、『腹黒マキマ』と言って弄っている。
オリ主マキマが使った魔人の能力は?
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天使くん、ちゃん?
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実は地獄
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面食い狐
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未来サイコー!
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ばん(銃)
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幽霊の全部
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蛇、丸呑み
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暴力さん
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まさかのチェンソー