「私と契約して魔法少女になりなさい」   作:NARです。

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こんにちは、NARです。
今回も見に来てくださり、ありがとうございます。誤字報告も助かっています。
毎回ここで長々と喋るのもあれなので、今日はこれくらいにして、本編へどうぞ。


特異課見学に行こう! 前編

見滝原市に住まう魔法少女達と公安対魔特異課による会合から数日後。

子供たちは趣味や買い物、友人との約束などで、学業に疲れた自分へのご褒美として週末を有意義に過ごしていた。

そんな中、マキマと姫野を通じて特異課との繋がりを得た魔法少女達は、マキマが提案した『公安対魔特異課魔法少女見学コース』なるものに参加しようとマキマの家¹に集まることになっていた。

今回、見学参加者として集まったのは契約を結んだ魔法少女²として参加する巴マミと協力者である暁美ほむら、そして付き添いの鹿目まどかの3人である。

通常ならば、当事者であるマミとほむらだけの参加でも十分だったのだが、お菓子の魔女との戦いからマミの様子が気になっていたまどかが参加を申し出てきたために、このメンバーとなった。

そしてお分かりの通り、この場に美樹さやかの姿は無い。彼女もまた、まどかのように心の傷ついたマミを心配している一人であったのだが、外せない用事があったために不参加となったわけだ。

 

そうして、さやかは途中までまどかと共に道を歩き、マミとほむらの二人に合流するべく駆けていった友人の背中を見送った。

残された彼女は、手に持っていた音符マークのあしらわれた手提げかばんに一瞬だけ目を向け、まどかが走って行った方とは別の道へと歩き出した。

 

 

 

「恭介、いる?」

「さやか?今日も来てくれたのか。」

 

ノックをして中にいる人物へと声を掛けたさやかに、若干驚きのこもった声が応えた。

期待していた声が聞こえ、さやかがスライド式のドアを開けた先に広がるのは、清潔感のある病院の個室。さやかはその中へと足を踏み入れ、窓際に据え付けられたベッドに横たわっている少年_上条恭介へと明るく声を掛けた。

 

「おはよ、恭介。調子はどう?」

「そうだね……今日は少し気分がいいかな。」

 

そんな簡単な挨拶をした二人だったが、さやかがベッドの近くに椅子を持ってきて座ったところで「それにしても」と恭介が疑問の声を漏らした。

 

「今日は学校は休みの日だろ?朝から態々、僕の見舞いに来てくれたのか?」

「ま、まあね!あたしも今日は()だったし!そういう訳で、恭介が独りで寂しくしてないかな~と思って、こうしてさやかちゃんが来てあげたわけですよ!」

「そうなのか。わざわざ僕なんかのために、ありがとう。」

 

僅かに赤くなった顔を悟られまいと取り繕うさやかだったが、「ありがとう」と礼を言った恭介の表情を見て、いつもの快活さも徐々に鳴りを潜めていった。

さやかに感謝を告げる恭介の顔には笑みが浮かんでいたが、そこには隠し切れない負の感情が滲んでいた。

さやかは、他人の機微に対して鈍感であるという自覚があった。そんな彼女でも、恭介から滲み出ているドロドロとしたものの気配を敏感に感じ取っていた。

故に、彼女は持ち前の明るさを発揮しつつ、気が落ち込んでいる様子の恭介を刺激しすぎないように気を掛けながら、持っていた手提げかばんを持ち出した。

 

「恭介、今日も恭介が好きそうな音楽のCD、持ってきたよ。」

「本当かい?嬉しいな。」

 

さやかは手提げかばんから取り出したCDを恭介に差し出した。

恭介がCDに収録されている曲名を眺めている間に、さやかは手元でイヤホンと再生機の準備をする。その際、チラッと視線をベッドの方へ向けると、陰鬱な気配を纏っていた恭介の目はCDに釘付けになって微かに輝いていた。

さやかはそんな思い人の様子を見てホッと胸を撫で下ろすと何事もなかったかのようにパッと表情を切り替え、恭介から受け取ったCDとイヤホン、再生機を組み合わせて音楽鑑賞の準備を整える。

恭介はさやかからイヤホンを受け取り、それを両耳に嵌めてスイッチを入れた。

 

「………………。」

「………………。」

 

しばらく、無音の時間が続く。

しかし、恭介の嵌めているイヤホンからは絶え間なく音楽が聞こえてくる。目を閉じ、脳へと染みわたるような感覚を味わうように恭介は聞き入っている。

それを傍から眺めているさやかもまた、聞こえないはずの音楽を楽しんでいるかのような、穏やかな顔で恭介の横顔を見つめていた。

 

それは一見、悲劇によって才能を奪われた少年と、そんな思い人を傍で支える少女の、心安らぐ幸せな一時のように映ったことだろう。

 

 

 

しかし、そう感じていたのはさやかだけだったのかもしれない。

 

いつも見舞いに来る幼馴染からCDを渡され、少年は鼓膜を打つ音楽に胸を躍らせ、それに手を伸ばそうとして、ようやく思い出すのだ。

 

 

 

___自分の手はもう、この素敵な音楽を奏でることはできないのだと。

 

 

 

窓際_ちょうどさやかから見えにくい位置にある置物のような左手が、人知れずすすり泣いているかのように揺れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

___________

 

___________

 

___________

 

 

 

 

 

 

 

<暁美ほむら>

 

公安対魔特異課魔法少女見学コース、当日。

集合場所と言われていたマキマの借りた部屋があるマンション前へとやって来た私は、ほぼ同じタイミングで来ていた巴マミと気まずい時間を過ごしていた。

別に、今さらわだかまりがあるという訳ではない。それは彼女だって同じのはずで、さっきから話しかけたそうにチラチラとこちらを窺う視線を確かに感じている。

ならなんでそんな空気になっているのかと言うと……答えは単純。つい最近までバチバチに睨み合っていた者同士とあって、気安く会話をするには難しいほどの深い溝が、私たちの間に未だに残っているのだ。

この溝は、決して埋められない隔たりではない。『敵』という認識が互いに無くなった今、後は交流を重ねていくことで地道に距離を縮めていくことができるはず。

だからと言って、一度開いた大きな溝はそんなすぐに埋められるわけではない。さらに、私はこれまでの経験上で誰かとコミュニケーションを取ろうとして成功した試しが無く³、巴マミは魔法少女以外に交流が少ないとあって、そもそも会話をどう切り出せばいいかも分からない状態になっているのだ。

 

しかし、いつまでもこうしてウジウジしているわけにもいかない。

結果を変えるには、行動を起こさないといけないことは、私が一番よく知っているのだから!

 

(落ち着きなさい、暁美ほむら。たかが雑談の一つや二つ、できなくてどうするというの?この程度の困難、私に越えられない道理は無いわ!)

 

とりあえず、天気の話からでも始めていくわ。きっかけさえあれば、後は自然に会話は続いて行くはずよ。

そうと決まれば、私は一度大きく深呼吸をし、己を奮い立たせて巴マミへと振り返った。

 

「「今日は__あっ」」

 

その瞬間、私と巴マミの声が偶然にも重なった。そして声が被ったことで続く言葉が喉に引っ掛かり、お互いに口を開けたまま固まってしまった。

 

「えっ……と、どうかしたかしら、暁美さん?」

「あなたこそ、何か言いかけていたようだけど……。」

「私は別に大したことじゃないから!全然大丈夫よ!」

「そ、そう……今日は、いい天気ね。」

「そ、そうね……絶好の見学日和、だと思うわ。」

「私も、そう思うわ。」

 

「「………………。」」

 

(会話が、続かないッ…………。)

 

おかしい、こんなにもコミュニケーションというのは難しいものだったかしら!?この後になんて話を続ければいいか分からないし、声も喉をつっかえて上手く口から出すことができない!?

私は、歳の近い相手とコミュニケーションを取ることすらできないというの?

 

(いえ、まだよ。私はこれまでにいくつもの困難にぶつかってきた。それに比べれば、この状況に対処することくらい、どうってことないわ!)

 

人との会話が難しい?そんなのより魔女と戦う方が危険だし、苦しい思いだって何倍もするもの。今更怖気づく私ではないわ。

そう、私は魔法少女_暁美ほむら。まどかの友達にして、彼女を残酷な未来から救う者。

どんな困難にだって、打ち勝って見せるわ!

 

私はもう一度自分にそう言い聞かせ、再びこの戦いに身を投じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<マキマ>

 

(なんか面白可愛いことしてる女の子がいるんですけど!)

 

マンションの前で果敢にマミちゃんとの会話に挑んで、その度に何とも言えない空気になっているほむらちゃんがいる。

家の自室で準備をしていた私は、その光景をネズミの視界を借りて眺めているのだけど、まあこれが可愛いこと!

ほむらちゃんとマミちゃんがお互いに話そうとして声が被っちゃって、もじもじしたまま会話が途切れる度に、戦場に赴く兵士のような覚悟の決まった顔をして、またマミちゃんに話しかけに行って声が被っちゃうというのをさっきからずっと繰り返している。

君たち、実は仲良いでしょ!

 

(まさか、まどかちゃんが合流するまでずっとチャレンジするつもりなのかな?いいね、続けてどうぞ!)

 

なんて考えていたら、部屋の中に魔力が渦巻くのを察知。直後にボワンッと煙が発生し、中からイナリちゃんが現れた!

 

「カワイイの気を察知!それ行かん!」

「ちょい待ち!」

 

人んちの中に不法侵入をかました上に女の子達の覗きをしに行こうとするイナリちゃんを『支配の鎖』で拘束!

脳天を通り抜けた鎖の力に縛られ、イナリちゃんの身体はあと一歩ドアノブに届かない位置で石のように固まった。

 

「離せ、マキマ!私は行かねばならない!このどんな宝石よりも貴重な時間を、一秒たりとも無駄にはできないのだぁッ!!」

「今日は一段とキャラ崩壊してるね、イナリちゃん。だけどごめんね、今日はスケジュールを前もって決めてあるから、イナリちゃんの乱入で場を乱されるわけにはいかないんだ!」

「スケジュールがなんだ!言っただろう!?今この瞬間以上に価値のある時間は無いと!!」

「おわっ!?(精神)力強!?」

 

『支配の鎖』に拘束されているというのに、『カワイイ女の子を眺めたい』という欲望が私の力を上回ろうとしている!?

だけど残念!私は『支配』の名を冠する悪魔で、『契約』上は君のご主人様なんだ!君の暴走を制御できない道理は無いのだよ!

 

しかし、このままでは埒が明かない。そこで、私はイナリちゃん特攻の()()()を発動することを決意した。

『支配の鎖』を手繰り寄せ、ギリギリと身体を動かそうと藻掻くイナリちゃんを手元まで引き寄せる。

そして、私は固まって動けないままのイナリちゃんをこちらに振り向かせ、そっと抱きしめた。

胸の中で「おっふ」と変な声を漏らして抵抗を弱めたイナリちゃんの耳元に唇を近づける。

 

「ごめんね、イナリちゃん。ここは私の言うことを聞いてほしいな。」

「無、無駄だぞ、マキマ。毎回これで、私が言うことを、聞くと思うな。しかも今回、お前は私に借りがあるのだしな!」

「そうだね。だからイナリちゃん、今日は君に一つサプライズがあってね。後で思念を送って教えてあげようと思っていたんだけど、今ここで話してあげる。」

 

私の息が狐耳にかかる度にビクビクと身体を痙攣させるイナリちゃんが疑問と期待のこもった眼差しで見上げてくる。

それに微笑み返しながら、またイナリちゃんの狐耳に向けて囁く。

 

「今日の特異課魔法少女見学コースなんだけど、子供たちの案内をする私の補佐をイナリちゃんにお願いしたいなって思ってるんだ。」

「な、なんだと?それは、まさか!」

「そう、今日一日中、まどかちゃん達と一緒にいられるってこと。」

「今日一日中、まどかちゃん達と一緒にいられる……。」

「そういうことだから、イナリちゃんには私がまどかちゃん達を連れていくまで本部で待っていてほしいなって思ってるんだ。

 

___どうかな、私のお願い、聞いてくれる?」

 

トドメに、今までで一番吐息多めでイナリちゃんの狐耳に向かって囁く。

「お”っ!?」と、またしても変な声を出したイナリちゃんは腰が抜けているようで、ぎゅっと私の服の袖を握って耐えていた。

ブルブルと小刻みに震えていたイナリちゃんは、すっかり茹で上がった顔を上げて、フッと笑って見せた。

 

「し、し仕方ないな!マキマにそこまでお願いされたら、私も、聞かないわけには、いかないしな~!よし、お前たちが来るまで、我慢しているとしよう!」

「ありがとう、イナリちゃん。大好きだよ。」

 

イナリちゃんが撃ちn……快諾してくれたのを確認して、最後にふぅ~と息を吹きかけた。

私の対イナリちゃん専用必殺技【口説き落としASMR】を骨の髄まで食らわされたイナリちゃんは、「ふにゃあぁ。」と蕩けるような声を出しながらボワンッと煙となって消えた。

 

ふぅ、なんとかイナリちゃんには帰ってもらうことができた。これでスケジュール通りに特異課見学を進められそうだね。

 

__っと、まどかちゃんがもう近くにまで来てるね。

じゃ、そろそろ私もみんなを出迎えに行くとしようかな。

 

イナリちゃんに握られて皺の寄ったスーツを直すと、マンション前に集まった3人の子供たちを迎えに行くべく、私は玄関の外へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

<暁美ほむら>

 

「二人とも、お待たせ~!」

 

待ち時間の間、巴マミとの何度目かの会話を繰り返していた時、向こうからこちらに向かって走ってくるまどかの姿が見えた。

全員揃ったことでようやく二人っきりの時間から解放され、私はふぅと肺に溜まっていた息を吐き出した。我ながら、巴マミと良いコミュニケーションができたんじゃないかしら?

「なんか二人とも疲れてる?」と首を傾げているまどかに「何でもない」と告げ、さあマキマの家に向かおうとなったところで、私達に合流する影がもう一つ増えた。

 

「おはよう、三人とも。朝早くから偉いね。今日は来てくれて嬉しいよ。」

 

声がした方に振り向けば、マンションから出てきたマキマが私達に向かって手を振りながら歩いて来ていた。どうやら出迎えに来てくれたらしい。

 

「おはよう、マキマ。」

「お、おはようございます!マキマ先生。」

「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」

「うん、任せて。今日はみんなに私達の職場を見せてあげるよ。」

 

マキマは相変わらずの柔らかな笑みを浮かべると、挨拶もそこそこに私達を連れてマキマの借りている部屋の前にまでやって来た。

マキマがガチャリと開けた扉の向こうは、やはり庶民的なマンションの雰囲気とはかけ離れた広くて綺麗な玄関が現れた。このチグハグの光景を見るのは今回で二度目だが、やはり慣れるにはまだ時間がかかりそうだ。

私達は先に中に入ったマキマに続いて扉を潜り、その瞬間に以前来た時と同じ”違和感”が肌を撫でていく。

さて、当日のスケジュールについてはザックリと事前に説明されていたが、私達はまだ東京にあるという特異課の本部に着いていない。それどころかまだ出発すらしていない状態だ。

にも拘らず、こうしてマキマの家の中に招いたということは、ここで何かすることでもあるというのかしら?

その疑問を私が口に出す前に、私達が中に入ってくるのを靴を履いたまま待っていたマキマが「それじゃあ皆、Uターンして外に出ようか。」と言い出した。

その意味不明な発言に私達は揃ってキョトンと首を傾げてしまった。

 

「え?また外に出るんですか?」

「そうだよ。ま、騙されたと思ってついて来て。」

 

まどかの質問に簡潔に答えつつ、今入って来たばかりのドアに近づくマキマ。

そして、今度はその扉が内側から開かれた。

 

しかし、扉の先にあったのは妙に空が近くに感じるコンクリートの地面の上だった。

おかしい、この扉の先にあるのは見滝原の街を眺められるマンションの通路があるはずだ。しかし、扉の先には全く異なる風景が広がっている。

どうやらどこかの屋上らしい。一体何が起こったのかを把握できないでいると、マキマが「さあさあ行って!」と私達の背中を押して扉の外へと押し出した。

そうして外に出された私達の目の前に、予想だにしない光景が飛び込んできた。

 

 

森のように乱立し、空へと向かって建つビル群。

網の目のように張り巡らされた道路を走るたくさんの車。

道を埋め尽くすかのような、大量の人の姿。

そして、この都市の象徴とも言える赤い電波塔。

 

 

開発が進んでいる見滝原でも見ないような、たくさんのモノで溢れた大都市が広がっていた。

 

「こ、ここって……。」

「もしかして、()()?」

「正解!ようこそ、日本の中枢都市、東京へ!」

 

(……もう驚かないと思っていたけれど、これはさすがに予想外だったわね。)

 

まさか、二つの都市間を扉一つ跨ぐだけで移動してしまうなんて……。

タネは明らかにこの玄関扉なんでしょうけど、転移系の魔法でも掛けられていたのかしら?

まったく、この協力者は本当にサプライズが大好きね。

 

なんとなく理解してきたマキマの愉快な性格にため息をついている傍らで、目の前に広がる大都市を見たまま、まどかと巴マミはて呆然としているようだ。

そんな私達にマキマが声を掛け、下へと降りて駐車場へと向かう。ここからは車で移動するらしい。

見えてきた黒塗りの車の傍には、もはやお馴染みとなった眼帯を付けた大人の魔法少女_姫野先輩が待っていた。

 

「おはよう、子供たち!マキマさんのサプライズにはびっくりした?」

「は、はい。私達、一体いつの間に移動したんですか?」

「それについては後で説明してあげるよ。とりあえず車に乗ろっか。」

 

マキマと姫野先輩に促され、私達は車の後部座席に三人並んで座った。

全員が乗ったのを確認した姫野先輩が車を発進させ、東京の街へと走り出した。

 

「うわ~、スゴイなぁ。」

「見滝原も開発が進んではいるけれど、やっぱり東京の方がすごいわね。」

「そう言えば、ほむらちゃんは確か、東京から来たんだっけ。」

「えぇ、そうね。」

「じゃあ、ほむらちゃんにとっては里帰りみたいな感じなのかな?」

「東京を里って言っていいのか分からないけど、まあ、そんな感じかしら?まさか、こんな形で帰ってくることになるなんて思わなかったけど。」

「確かに、私もこんないきなり来ることになるなんて、思わなかったわ。」

「私も。」

 

私達は流れていく窓の外の景色を3人で覗き込みながら、そんな他愛のない話をしていたのだった。

 

しかししばらくして、私達を乗せた車が突然左折し、広かった道路から人気の無い路地裏へと入って行った。

先程までの明るい街並みとは打って変わり、一気に日が落ちたかのような暗い道を静かに進む。周りを高い建物に囲まれていて、妙な息苦しささえ感じるようだ。

新鮮な街の風景に盛り上がっていた私達も、自然と口を噤んで暗い車内で身を寄せ合った。

それから車は何度も曲がり角で進路を変え続けたため、我慢できなくなった私は前に座るマキマ達へと迫った。

 

「マキマ、私達は今、どこに向かっているの?」

「どこって、きちんと前以て連絡したでしょ?『公安対魔特異課の本部を案内するから来てね』って。」

「えぇ、確かにそうだったわ。……でも、本当にこんなところにあるの?」

「あるよ。……ほら、入り口が見えてきた。」

「……は?」

 

そう言ってマキマが指さした先は、ただの()()()()()だった。薄汚れた壁とゴミ袋が積み上げられているだけの、ただの行き止まり。どこにも入り口らしきものなんて見当たらない。

その異常な発言によって、不気味な雰囲気になんとか堪えていたまどかが遂に恐怖を覚え、隣に座る巴マミへと縋りついた。

 

「マ、マキマ先生。どこにも入り口なんて見当たりませんよ。道、間違えているとかじゃ、ないんですか?」

「ううん、間違いなくここだよ。……姫野ちゃん。」

「は~い、それじゃ皆、()()に備えてね!」

「「「!?」」」

 

姫野先輩がそう忠告をした直後、私達を乗せた車は速度を上げ、行き止まりの壁に向かって直進し始めた!?

 

「くっ、正気なの!?」

 

このままでは車が壁に激突して大変なことになってしまう。私達魔法少女はともかく、ただの人間の少女でしかないまどかは危険すぎる!

急ぎ魔法少女に変身し、時間停止の魔法を行使しようと試みる。しかし、車の速さは思ったよりも早く、変身を終えた時には壁はすぐ目の前にまで迫っていた!

 

(間に合わない!?せめて、まどかだけでも__!)

 

巴マミと抱き締め合って恐怖に震えるまどかを、私は身を呈して守ろうとした___その時だった。

 

 

車が壁に激突する寸前に、巨大な()()()()が現れたのが見えた気がした。

 

「__ッ!!!」

 

それを確かめる間もなく、私はまどかに覆い被さったまま、身を固くして衝撃に備えた。

しかし___

 

(………………なんとも、ない?)

 

何時まで経っても、全身を叩きつけるような衝撃や痛みは襲ってこなかった。だけどその代わり、全身を包み込むような温かい魔力の感触が感じられた。

それはまどかや巴マミも同じだったようで、固く閉じていた目を開けて周りの様子を見渡し始めた。

そして、「えっ!?」と驚きの声を二人が上げ、私も目を見開く彼女達と同じ方へと顔を向けた。

 

そして、私の目に映り込んだ景色に、東京の街を見た時とは比較にならない”衝撃”を受けた。

 

 

 

 

「ようこそ、ここが私達ウィッチハンターの本拠地、公安対魔特異課本部

 

___私達は君たちを歓迎するよ。」

 

 

 

 

綺麗な蒼空を遠くに映した、空一面を覆う巨大な天窓の下。

周囲を霧に覆われた若葉の茂った大地が、そこに広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑の大地を割るように伸びる一本の道を車が進む。

この空間の中心には人工的な建築物が建っており、おそらくあれが公安対魔特異課の本拠地なのだろう。

しかしそれよりも気になるのは、この異様な空間についてだ。

私は巴マミと目を合わせた。どうやら彼女も気づいているらしい。

 

___ここは、()()()()()の中だ。

 

しかも、この結界内に漂うわずかに温く感じる魔力は、マキマの家の玄関を超える瞬間に感じたあの違和感とよく似ている。

 

「マキマ、この空間は___」

「どうやら二人とも、気づいているみたいだね。そう、君たちの思っている通り、ここは魔女の結界内だよ。正確には、ウチの魔人ちゃんの構築した結界内だけど。」

「特異課の本部は、まじy……魔人の結界内にあるの?」

「そうだよ。」

「はぇ~~、魔人さんの結界の中に、本部が……。」

 

まどかが魂の抜けたようなぼんやりとした表情で結界の中の景色を見回していた。

私と巴マミは、揃ってマキマの座席を後ろから小突いた。

 

「マキマ、サプライズにも限度ってものがあるわよ。」

「そうですよ、マキマ先生!そもそも私、車にはあまりいい思い出が__」

「えっ、あ、あ~~そうなんだ。ごめん、二人とも。ちょっと調子に乗っちゃってたみたい……。」

「あ~あ、マキマさんが女の子を泣かせちゃった。」

「泣かせッ!?ごめん!本当にごめんね!次からは気を付けるから……って、ああ!?まどかちゃんが抜け殻みたいになっちゃってる!?」

 

私達の文句と姫野先輩の追撃により、マキマはさっきまでの『すべて計画通り』などと考えてそうな自信たっぷりの表情から慌てふためき、シートベルト限界に引っ張りながら振り返って私達へと謝罪した。

 

(はぁ、本当、勘弁してほしいわ。)

 

マキマには「考えるならもう少し平和なサプライズにしてほしい」と内心愚痴りながら、マキマのせいで溜まった余計な疲れを吐き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

___公安対魔特異課本部 正面入口前

 

「……おぉ!見えてきたぞ!マキマと魔法少女達だ!まどかもいるぞ!」

「落ち着いてください、イナリ様!まずはこの私が()()()として、皆様をご案内して差し上げるんですから!」

¹
※市内で借りているマンションの部屋

²
※厳密にはこれから現地で正式な手続きをする

³
※コミュ障だというは自覚はない

※即ちボッチ

※お菓子の魔女戦の時のお願い

※魔性の女上司バージョン 他にもいくつかシチュエーションがある

※一言二言喋って終わりの短すぎるものだが

※マミも隣で同じように深呼吸をしている




____少女達を待つ謎のメイド、その正体は?

<マキマメモ その11>
マキマのサプライズ癖は同僚たちの間でも有名。隙あらば誰かを驚かせようと画策しており、特に何かしらの記念の日には手の凝ったサプライズを用意する。
しかし、驚かせたい、お祝いしたい、喜んで欲しいといった思いが空回りしてしまい、今回のように悲しませてしまったり、不快にさせてしまったりすることがある。
その度にマキマは反省するのだが、サプライズ自体は頑なにやめるつもりはない。
なぜならそれが、彼女が『彼女』であるために必要なことだから。

ちなみに、マキマは一度ソレが原因で先生とマジバトルにまで発展したことがある。
その時は「1日従順な犬になる」ことで許してもらえた。



今回も読んでくださり、ありがとうございます。
さて、覚えていらっしゃる方、そうでない方にも連絡ですが、次回でクイズ【オリ主マキマが使った魔人の能力は?】は締め切ります。あと答え合わせもします。

※相方であるもう一人の師匠は魔人たちを侍らせてどっか行った

オリ主マキマが使った魔人の能力は?

  • 天使くん、ちゃん?
  • 実は地獄
  • 面食い狐
  • 未来サイコー!
  • ばん(銃)
  • 幽霊の全部
  • 蛇、丸呑み
  • 暴力さん
  • まさかのチェンソー
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