「私と契約して魔法少女になりなさい」   作:NARです。

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感想やご指摘、ありがとうございます。創作の励みになっております。

それでは早速ですが、本編へどうぞ。


パーティが始まるよ

<暁美ほむら>

 

まどかと一緒に巴さんのお見舞いにやって来た。

まどかが巴さんの部屋のインターホンを押すと、すぐに中からドタドタと足音がし、ガチャッと玄関の扉が開いた。

 

「まどかお姉ちゃん!ほむらお姉ちゃん!いらっしゃいなのです!マミが中で待っているのです!」

 

そう言って私達を出迎えたのは、お菓子の魔人である百江なぎさだった。

迎え入れられた私とまどかは百江なぎさについて行き、部屋の中へ入る。

巴さんの部屋は相変わらずおしゃれなデザインをしていた。どことなくマキマの家の内装と似ている雰囲気があるが、女子が好きそうなデザインの家具や小物がいくつか見られた。

所謂、『可愛い』と称される物が置かれた女子中学生の部屋がそこにあった。

 

部屋に置かれていたガラス製のテーブルには既にお茶の用意がされており、以下にも準備万端といった様子で巴さんが待っていた。

 

「いらっしゃい、二人とも。来てくれてありがとう。」

「お邪魔します、マミさん。あの、これ、私達からのお見舞いのリンゴです。」

「ありがとう、鹿目さん、暁美さん。じゃあ、早速リンゴを切って出しちゃおうかしら。」

 

巴さんはまどかからリンゴの入った袋を受け取ると、キッチンへと持って行った。私達も何か手伝うべきかと思ったけれど、百江なぎさに腕を引っ張られて席に案内された。

やがて、私たちが持ってきたリンゴをウサギの形にカットして盛った皿を巴さんが運んできた。百江なぎさが全員分のお茶をティーカップに注ぎ、暖かな湯気がカップから立ち昇る。どうやら、このお茶はついさっき作ったばかりの出来立てであるらしい。

まどかが不思議そうに巴さんに尋ねた。

 

「あの、もしかして私たちが来ること、知ってました?」

「えぇ、沢渡さんがなぎさに連絡をしてくれていたらしくてね。二人がウチに来る前に準備しておいたの。」

 

どうやら、沢渡が気を利かせて事前に私たちの訪問を百江なぎさに伝えていたらしい。

まどかは納得した様子で頷くと、カバンの中にいる沢渡の小蛇に微笑んだ。

 

「そうだったんだ。ありがとう、沢渡ちゃん。」

『別に……お礼言われるほどじゃないし。』

「素直じゃないわね。」

『アンタにだけは言われたくないんだけど。』

 

余計なことを言った沢渡を思わず睨むと、向こうも『あ”~ん?』とガラの悪い表情でガンを飛ばしてきた。表情の読みにくい爬虫類の顔のはずなのに、眉間を寄せた顔で「不満です」と言いたげな感情を全面的に押し出して来ていた。

 

『こういうのをブーメランって言うって、知ってる?』

「…………。」

 

……やっぱり巴さんの入れてくれた紅茶はおいしいわねー。

 

『無視すんな。』

「ふふ、そっちも上手くやっているようね。」

「あはは……契約したのは私なんだけどね……。」

 

私達の攻防を見て巴さんは楽しそうに笑っていた。どうやら、巴さんの心は順調に落ち着いてきているらしい。良い傾向ね。

困ったように苦笑いを浮かべていたまどかは、巴さんとその隣に座っている百江なぎさを見て口を開いた。

 

「まだ一緒に住み始めたばかりではありますけど、マミさんとなぎさちゃんの方はどんな感じですか?」

「そうね……なんだか、妹ができたような感じね。」

 

巴さんからの口からどんな評価が出てくるのかとソワソワしていた百江なぎさは、頭上に「!?」を浮かべて目を見開いた。

私が「どういうことかしら?」と尋ねると、巴さんは穏やかに話し始めた。

 

「なぎさは色々と私のことを助けようとして、洗濯物を代わりに片付けようとしてくれたり、ご飯を作ってくれたりするんだけど、どうしてもちょっと上手くいかなくて、結局私と一緒にやろうってなっちゃうのよね。でもそうやって一生懸命に頑張っている姿を見ていると、もし私に妹がいたらこんな感じなのかなって、ほっこりしちゃって。」

 

そう語った巴さんだったが、隣でソレを聞いていた百江なぎさはシュンと下を向いて凹んでしまった。

 

「うぅ、なぎさはまだまだ未熟なのです。もっとマミにいっぱい頼ってもらえるような、立派な人間になりたいのです!」

「大丈夫よ、なぎさ。私は十分助けられているから。あなたが傍にいてくれるおかげで、私はとても安心できるの。」

「マミ……。」

 

巴さんはそう言って、百江なぎさの頭を優しく撫でた。

百江なぎさはくすぐったそうに目を細め、巴さんのことを見上げた。その瞳には安心や嬉しさが入り混じっているように見えた気がした。

 

「___でも、もう魔女の姿に変身するのはやめてね?なぎさに悪気が無かったのは分かっているけど。」

「あ、あれはなぎさが考えなしだったのです。ごめんなさいなのです……。」

 

だが、巴さんの口から出た思わぬ一撃に、百江なぎさは錆びついたブリキのような動きで気まずそうに頷いた。

なんでも、学校に行けなくて寂しそうにしていた巴さんの心を温めようとして、百江なぎさはあの小さな人形のような姿に変身して寄り添おうとしたらしい。本人的には人形の愛らしさで巴さんの心に働きかけようという算段だったらしいけれど、がっつり巴さんのトラウマを刺激してしまって部屋の中で魔法が暴走するという事件が発生したそうな……。魔女の結界内でもないのに、よく大事にならずに済んだものだと、変なところに感心してしまった。

 

とにかく、巴さんと百江なぎさはまだまだお互いに歩み寄る必要がありそうだけど、変に気を遣ったり言い争ったりということにはならなそうで、そこは安心できそうね。

最初は、当事者同士を一緒に住まわせて本当に大丈夫なのかという疑念はあったけれど、どうやら私の杞憂だったようね。

 

そんなことを考えながら、私とまどかはまるで本当の姉妹のようにじゃれ合う二人を見つめ、密かに胸を撫で下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しました。」

「ううん、今日は来てくれて嬉しかったわ。またいつでも遊びに来てね。」

「えぇ。それじゃ、また。」

「おやすみなのです~!」

 

私とまどかは玄関に立つ巴さんと百江なぎさに手を振り、帰路に就いた。

空を見上げれば、赤く色づいた空の向こうで太陽がビルの立ち並ぶ街の中へと沈んでいこうとしていた。お喋りに夢中になって、今が何時だとかまったく気にしていなかった。一人暮らしの私はともかく、家族のいるまどかは早く帰らないと心配させてしまうでしょう。

 

私とまどかは真っ赤な夕日に照らされた道を並んで歩いた。

不意に、まどかがとても安心したような表情でぽつりと呟いた。

 

「マミさん、元気そうでよかったね。なぎさちゃんとも上手くやれているみたいだし、何も心配はいらなそうだね。」

「……そうね、彼女はとても幸運だったと思うわ。」

「幸運?」

「…………えぇ、巴さんは幸運だった。本当なら、彼女はあの時死んでいただろうから。」

 

(また、私は余計なことを……。)

 

つい口を滑らせてしまった言葉だったけれど、今更誤魔化すには不自然が過ぎる。

だけど「やってしまった」と思うよりも、まどかに「聞いてほしい」という感情が先行して、私の口は続きを語り出した。

 

「巴さんはあの時、絶体絶命の状況だった。もし、あの場にマキマがいなかったら、彼女は魔女に食われて死んでいた。死体も結界の中に残されたままになって、巴さんは誰にもその結末を知られないまま、この世界から巴マミという人間がいたこと自体、忘れ去られるところだった……。それが、巴さんが辿ったかもしれない、魔法少女にとっては普通の__ごくありふれた死だった。」

「それが、ほむらちゃんが見てきた、魔法少女の最期ってこと?」

「……えぇ、そうよ。」

 

私が肯定すると、まどかは悲しそうに俯いた。目尻には涙まで浮かんでいる。

だけど、今私が語ったのは、さっきも言ったように巴さんが辿ったかもしれない「もしも」の結末だ。実際には、マキマ率いる特異課¹が介入したことで、巴さんの運命は大きく変わり、あそこで死ぬことなく今日まで生き続けている。そう、巴さんは死んでいないのだ。

にもかかわらず、まどかが涙を堪えているのは、きっと魔法少女の定められた運命を哀れに思ったから。彼女は話を聞いただけだというのに、本気で悲しんでいるのだ。

いや、それだけではないかもしれない。もしかすると、まどかは今までに死んでいった他の魔法少女のことも思って泣いているのかもしれない。もしくは、巴さんが死んで彼女の元いた場所が無くなってしまった世界を想像してしまったのかもしれない。巴さんの死を目の当たりにしていない彼女が、果たしてそこまで思い至るだろうかと首を捻るが……優しすぎる彼女の事だ、あり得ない話ではない。

 

その優しさは、まどかの美点であり、その身を蝕む毒だ。

行き過ぎた優しさは、いずれ自分を、ひいては世界を滅ぼしかねない。

 

 

そして、その可能性は未だに彼女の内に残っている。

 

 

まどかは巴さんの死を目の当たりにしなかった。即ち、魔法少女の抱える悲惨さを本当に意味で理解していないのだ。その上、今は近くにマキマという保険がある。誰かの役に立ちたいという願いを持つまどかが、「マキマの助けを当てにして容易に魔法少女の宿命を背負い込もうとする」とは考えにくいけれど、彼女の中で魔法少女になることへのハードルが下がっていてもおかしくはない。

 

だから、まどかには知ってもらわなくてはならない。魔法少女の残酷な結末を。「魔法少女になりたくない」と思わせるほどの嫌悪を、感じてもらわなければ……。

 

(まどか、あなたはただこれからもずっと、普通の女の子として生きていけばいいの。無理に誰かの役に立とうとしなくていい。それで誰かに責められるなんてことも無い。あるはずがない。もし誰かがあなたを『役立たず』と責めるなら、私が許さない。私はあなたにずっと、等身大のあなたでいてほしい。だから___)

 

「__だから、まどか、あなたは魔法少女になんか____」

「でも!」

 

その瞬間、私の言葉は全てを伝えきる前に、まどかの声にかき消された。

突然大きな声を出したまどかに驚き、足を止めて振り返る。

すると、顔を上げたまどかと目が合った。

まどかは、笑っていた。流れた悲しみの痕は目元に残っていたけれど、それを打ち消そうとする輝きが彼女の顔に宿っていた。

まどかは私の目を見て、口を開いた。

 

「でも、マミさんも、なぎさちゃんも、みんな生きてる。」

「そ、そうね。でも、だからと言ってこれからも大丈夫とは限らな__」

「大丈夫だよ。だって、みんながいるんだもん。一人なんかじゃない。みんなで助け合えば、きっと大丈夫だよ!」

 

そう前向きに力説するまどかに、思わず面食らってしまう。

この時間軸で出会った目の前のまどかは、臆病で大人しい性格の女の子だったはずだ。だけど、今のまどかはまるで、私が最初の時間軸で初めて出会ったときのまどかと似ているような……。

突然、ポンッと過去の記憶からまどかが飛び出してきたような衝撃で呆然としていると、まどかはさらに言葉を続けた。

 

「ほむらちゃん、私ね、大人になったら特異課で働こうと思ってるんだ。」

「ッ!?まどか、あなたまさか、魔法少女になるって言いだすつもりじゃ__」

「ううん、違うよ。私は魔法少女としてじゃなくて、普通の人間として働こうと思ってるんだ。それで、魔法少女や魔人、ウィッチハンターの人たちが安全に仕事ができるようにサポートするの。」

「そ、そういうこと……。いや、だとしても危険よ。あなたがそんな危ない仕事をする必要なんて__」

「ほむらちゃん、これは必要だとかそんなんじゃなくて、私がやりたいと思ったからなんだ。この間の特異課見学で、いろんなことを私は知れた。本当は、私もほむらちゃんやマキマ先生と一緒に戦いたいなって思ったんだけど、誰かの役に立てることってそれだけじゃないって気づいたの。」

 

「それにね、私、新しい夢を見つけたんだ。」

 

まどかはそう言って私の隣にまで駆け寄ってきた。その横顔には、希望に満ちた笑みを浮かべていた。

 

「私、特異課に就職したら、世界中にいる魔法少女に会いに行きたいんだ。それで、困っている子たちを見つけて、一緒にお話をするの。そしてみんなが安心して生きていけるように全力で手助けする。それが、私の夢なんだ!」

 

「ほむらちゃん。ほむらちゃんには、夢はある?」

「私の、夢?」

「うん、願い事じゃなくて、自分で叶えたい夢。」

「私、は……。」

 

___まどかを救う。

それが、今まで抱いてきた私の”願い”。

だけど、その先にある”夢”は、考えたことも無かった。

 

「……分からないわ。私に夢なんて、無いかもしれない。」

「そっか。それじゃあ、一緒に考えようよ!ほむらちゃんの将来の夢!」

 

まどかはそう言うと、空を見上げた。

「ほむらちゃんはスポーツ万能だし、勉強もできるから、何でもできそうだよね。」と言って、本人を差し置いて私の将来を勝手に考え始めたまどか。その桃色の瞳には、藍色に染まり出した空ではなく、大人になった私の姿が映っているのかもしれない。

その時、お互いに隣り合うほどに近づいたことでまどかの顔が見えやすくなり、まどかが妙に必死になっているのが表情から分かった。

 

もしかして、私が暗い話をし始めたから、前向きな話で励まそうとしている?

 

それに気づいた途端、私は自身の情けなさにため息が漏れた。

 

まどかは魔法少女に待ち受ける残酷な運命を知らない。

だけど、今はまだ真の意味で理解していなかったとしても、まどかは既に前を向き、向き合うことを考えていた。そして、先の見えない未来に不安を感じている私に手を差し伸べようとしている。

 

私は、まどかを助けられるのは自分しかいないと思っていたけれど……まさか、そのまどかに手を差し伸べられるなんて。

 

(でも、まあ、これはこれでいいかもしれないわね。)

 

まどかの言う通り、私たちは一人じゃない。それも片手で数えられる程度じゃなく、マキマや姫野先輩、そして魔人達のいる公安対魔特異課が付いている。

一人では無理でも、みんなで立ち向かえばなんとかなるかもしれない。そんな根拠の薄い希望的観測でしかないけれど、たまにはそんな都合のいい未来に縋ってみてもいいかもしれない。

そう思いながら、まどかの話に私も乗っかることにした。

「ほむらちゃんは運動神経がいいし、野球選手とかどうかな?」「なぜ野球選手……さやかの持っていたバットに引っ張られてない?」と、さっきまでの重い雰囲気はどこへやら。

二人でただのお喋りに興じながら、夕焼けの道を歩くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どるん!

 

どるん!!

 

どるるるるるるるるるるるるるる!!!

 

 

 

「?……ねぇ、ほむらちゃん、なんか変な音が聞こえて___」

 

 

次の瞬間、身を叩くような突風が通り過ぎ、世界が塗り替えられた。

同時に、グンッと身体に強烈な圧力が掛かる。

 

(ぐぅっ!?これは、まず、い!!)

「きゃあ!?」

「ッ、まどか!!」

 

私はすぐに魔法少女へと変身し、時間を止めた。そして、まどかの全身に魔法を付与し、衝撃に弱い人間の肉体の強度を底上げした。

魔法少女の魔法は、少女の祈りが具現化したもの。固有の魔法ともなるとキュゥべえとの契約時に叶えられた願いの影響を強く受けるけれど、簡単な魔法であればどの魔法少女でも使うことができる。

停止していた時間が再び進み出し、体に掛かる圧力が和らいだまどかは激しく咳き込んだ。

 

「げほっ!けほっ!……ッ、ほむら、ちゃん。一体、何が……。」

「まどか、私から離れないで。」

 

 

球状の結界を構築する、高速で動くアスファルト。

 

足場の代わりにアスファルトの上を走行し、独りでに走る車やバイク。

 

そして、その中心で錆びついたブリキのようにギギギと不快な音を鳴らす、機械仕掛けの怪物。

 

間違いない、ここは__!

 

 

「ここは___魔女の結界の中よ!」

 

 

 

 

 

 

____________

____________

____________

 

 

 

 

 

 

 

 

『マキマさん!緊急事態です!!』

 

『二日前に姿を消した魔女達が、見滝原全域で一斉に出現しました!!』

 

 

 

 

よい子はお家に帰る時間 わるい子はお外で宴の時間 ♪

 

さあ 君も一緒に踊ろうよ 今からパーティが始まるよ ♪

 

朝まで寝るのはもったいない 一緒に朝まで踊り明かそう ♪

 

帰っちゃうなんてつまらない 一緒にずっと遊ぼうよ ♪

 

 

¹
正確には特異4課





___街に夜がやって来た。



【反省】
前書きと後書きについて、今後は必要なこと以外書かないことに決めました。
なぜなら、文字で書きこむとなると余計なことまで喋りそうになるからです。
なので、これまでの発言に関しては、機嫌を損なわれてしまった方には申し訳ありません。無視していただけると助かります。

最後に一言。
難産でした。早く戦闘描写書きたい。
あと、ノリと勢いで書いてる部分多いけど大丈夫かな……。
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