先週末に投稿しようと思っていたら、忙しくって1週間経ってました。
お待たせしてしまいすみません。
あ、いきなりですがアンケート置きますので、よろしければ気軽に回答お願いします。
<前回までのあらすじ!>
突如として暴走してしまった蛇の魔人”沢渡”改め、蛇の魔女!
共に行動していたまどかはすぐさま標的にされてしまい、ピンチに!
そこへ颯爽と現れた特異課所属のウィッチハンター__姫野&ゴースト!
最初は善戦する二人だったが、蛇の魔女の持つ強力な魔法によって盤面がひっくり返ってしまう!
絶望的な状況に、姫野はゴーストを残して蛇の魔女に特攻を仕掛け、魔力全開による自爆でトドメを刺したかに思われた!
しかし、蛇の魔女は傷ついた体を”脱皮”によって脱ぎ捨て、傷一つない身体で再びまどかとゴーストの前に立ち塞がったのだった!
一方、その頃マキマは何をしていたのかというと______
見滝原中学校。
そこは、見滝原市全域で起こった大規模魔女災害の避難所として開放されていた。
元々ハザードマップなどで非常時における避難所の一つとして登録されていた中学校は、未曽有の事態に対して混乱しながらも急いで対応し、学校にいた生徒達だけでなく避難してきた地元住民も受け入れ、街にあふれかえった魔女達から身を隠していた。
しかし、人の負の感情を餌とする魔女達にとって、物理的障害は意味をなさない。むしろ多くの人間達が一か所に集中したことにより、近くを彷徨っていた魔女達は急速に集約していく恐怖、焦り、不安といった感情を敏感に察知。一斉に見滝原中学校へ殺到した。
まるでお菓子に集る蟻のように中学校へと雪崩れ込んできた魔女達。だが、彼女達はせっかく嗅ぎつけた獲物にありつくことはできなかった。
――――死。
彼女達は、その敷地内に足を踏み入れた瞬間に自身の身に降りかかるであろうその事象を、生物の本能として強く予感した。
――――あれは、絶対の支配者の”領地”だ。
――――そこに主の許可無く侵入すれば、逃れようのない裁きが待っている。
そう悟ってしまった魔女達は、見滝原中学校の校舎を目前にして綺麗なUターンを決め、そのまま脱兎のごとく逃げ出した。
その無様に逃げ出した魔女達の背中に、一人の女性が冷やかな視線を静かに向けていた。
公安対魔特異二課所属――マキマ。
彼女が己の権能を用いて守りを固めた見滝原中学校は、今この街において絶対の安全地帯と化していた。
<マキマ>
校舎入り口前に陣取っていた私は、逃げ帰っていく魔女達に手を出さず、その背中が見えなくなるまで静かに見送った。
本来なら、ウィッチハンターとして魔女を討伐或いは捕獲するべきなんだけど、今の私は見滝原中学校に避難してきた民間人の守護という仕事をしなくてはならない。現在、見滝原中学校は校舎と仮避難所として設置された体育館を含めた敷地全体を私の『支配』の能力で完全に覆っている状態になっている。
――――【
『支配』の能力を空間そのものに適用した私のオリジナル技である。指定した空間を「私の所有する領域である」と認識することで、独自の法則を空間内に設定することができる。
しかし、一見めちゃくちゃ強そうだし、某呪いと戦う有名な漫画と似た技のようにも聞こえるかもしれないけど、実はそこまでやりたい放題できるという訳でもない。この空間内で独自の法則を適用できるのは私自身だけであり、適用できる法則のほとんどは攻撃力上昇や俊敏性上昇みたいなバフしかない。空間内への侵入を拒んだり、逆に取り込んだりもできないし、相手を支配するのも「相手は自分より格下である」という認識がやっぱり必要だから、それを無視して支配することはできない。
じゃあなんで魔女達は【
それにしても、見滝原市全域に複数体の魔女同時出現に加えて、全てが暴走&過剰成長という異常個体のオンパレード。まさに前代未聞の大事件だ。こんなことは過去に起こったことは無いし、人為的に引き起こされない限り自然には起こりえない事象だ。
裏でこの状況を作り出した存在の正体は凡そ見当が付いている。街一つを破壊する規模の魔女の群れを強化し、一斉に現地へ転送させて暴走させるなんて、そんな大それたことをただの魔法少女の力では実現できるはずもない。こんなことができるのは”奴ら”か、それこそ私しかいない。
脳裏に無害を装った作り物めいた顔の害獣の姿が浮かび上がる。思わず「クソがッ」と汚い言葉が口から洩れてしまった。
(あぁ、ダメダメ。私は支配の悪魔のマキマさんなんだ。こんなことで簡単に感情を乱されちゃったら、”支配”の名が泣いちゃうよ。)
支配の悪魔――マキマさんはね……汚い言葉は吐かないんだ。
マキマさんは動揺なんかしないし、頭は超良いし、やること全部がかっこよくなきゃいけないんだ。
そう、今の私は支配の悪魔で、あのマキマさんなんだ。マキマさんは、感情すら持たない矮小な獣の小細工なんかで心を乱されるはずがない。
『マキマさん』はまさに『支配』そのものだった。『マキマさん』なら、どんなアクシデントが起こったとしても荒れ狂ったりしないし、冷静に盤面を見極めて被害を最小限に抑え、利益を最大限に得るための一手を見出すことができるはずだ。
だから私は迷わないし、失敗もしない。このめちゃくちゃな事件もすぐに収めて、奴らの首を私の鎖で縛りあげてやる。
些細な仕草にまで溢れてしまうような荒れ狂う感情を理性で抑え込み、この非常事態を早急に収めるための策を練り出す。恥ずかしながら、私はさっきまで避難者の保護や襲撃してくる魔女への対処、後は害獣どもへの怒りで頭がまともに回っていなかった。いずれも言い訳でしかないけれど、ここから挽回するための解決策を考えるのだ。
現在、街全体に溢れた魔女達は緊急出動したウィッチハンター達や魔女一斉消失の謎を調べていた調査隊が中心になって対処に当たっている。魔人達と結んでいる『支配』の繫がりも見滝原市に集中してきていることから、きっと本部からも続々と応援が届いているのだろう。このままいけば、この大規模な魔女災害も無事に収束へと向かうはずだ。
ただ、暴れている魔女一体一体のステータスが異常なまでに高いのが懸念点だ。そのせいで実力の釣り合っていないウィッチハンター達に少なくない被害が出ている。現に、この街にいたウィッチハンター達の何人かとの繫がりが既に消えてしまっている。私と契約者双方の同意無しに契約が自然消滅したと言うことは、契約者がこの世から消失した。即ち死亡したと言うことの何よりの証拠だ。
さすがに対処に当たっているウィッチハンター達が壊滅するという程の被害にはならないだろうけど、これ以上被害が大きくなる前に解決してしまいたい。
何より、これ以上
「人のモノに獣臭い手で触って、無事でいられると思わないことだよ、インキュベーター。」
どこかで見ているだろう害獣どもへそんな脅し文句を告げながら、懐の中にある重く硬い
この異例とも言える魔女災害を即座に鎮圧させられる方法は、実は既に私の手の中にある。
そして今なら、邪魔な一般人の目も無いし、避難も粗方済んでいるだろうから巻き添えにしてしまう可能性も低いはずだ。
条件は揃っていた。後は、私がこの手で
(やるなら、今だ。)
そう考え、スーツの内ポケットに隠していた
だけどそこに、予想だにしなかった侵入者が現れた。
「…………そこにいるのは誰かな?」
【
すると、振り向いた先――敷地に植えられた庭木の陰から一人の少女が現れた。その少女は1本の槍を肩に担いだ、真っ赤な衣装を纏った魔法少女だった。
私に居場所を見抜かれた魔法少女は観念した様子で姿を現したけど、その目には私に対する強い警戒と敵意が漲っていた。
「バレちゃあしょうがねえなぁ。アンタがキュゥべえの言っていたマキマってヤツか?」
「そう言う君は誰なのかな、お嬢さん?」
少女は私の方へと顔を向け、その幼さの残る顔に精一杯の不敵な笑みを浮かべながら、私に面と向かい合って口を開いた。
「あいにくと、アンタみたいな
「そう?なら、話は後でじっくり聞かせてもらおうかな?」
私の温度の消えた声が響いた直後、紅い魔法少女は油断無く槍を構えた。
(なるほど、立ち姿だけでも分かる。この子はベテランの魔法少女だ。そこには油断も慢心も存在していない。――――
――――これなら、多少やり過ぎても死にはしないかな?)
そんな冷酷な思考を回しながら、私は静かに腰を落として拳法家のように両手を構えた。
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<第三者視点>
様子見もそこそこに、両者どちらかはすぐに仕掛けるかと思われたが、どちらも依然変わりなく睨みあいを続けている。一定の距離を開けながらじりじりと立ち位置を変え、慎重に攻撃する隙を伺っていた。
赤服の魔法少女——もとい佐倉杏子は、ベテランの魔法少女であった。その上、近接戦において絶対の自信を持つ彼女は、普段であれば既に突撃を行っていてもおかしくはなかった。
だが、そんな彼女が突撃を躊躇する光景が彼女の目には移り込んでいた。
マキマの全身からユラリと立ち昇る、吐き気のするような悍ましい魔力。杏子が今まで戦ってきたどの魔女よりも濃密で混沌とした重い気配を前にして、彼女は背中を見せて逃げ出してしまいたい衝動に駆られてしまう。
(クソッ、聞いていた以上に化け物じゃねーか。キュゥべえの野郎、情報を出し渋りやがったな!)
杏子はキュゥべえから「マキマは魔女を自由自在に操る力を持っている」という情報を聞いていたが、それ以上の詳しい内容は伝えられていなかった。故に、戦いは魔女に頼りっぱなしでマキマ自身は後ろで指揮を執るような戦闘に不慣れなヤツなのかと杏子は考えていた。だがその推測に反し、マキマ本人もまた直接前に出て戦えるほどの戦闘力を有していた。
むしろ、「他者を操って戦わせる能力」なんてモノを持っている奴が、自身も近接戦が得意なバリバリの武闘派だなどと普通は思わないだろう。
槍を構える手にギュッと強い力がこもる。
杏子の頬を脂汗が一滴、流れ落ちた。
その直後、戦況が動いた。
ドンッと地面を蹴ったマキマが大きな一歩を踏み込み、杏子の懐の内へと一息に潜り込もうとする!
それに気づいた杏子はすぐさま横に跳んで回避することを選んだ。だが、彼女はその時になって自身に起こった異変にようやく気がついた。
(なんだコレ!?足が重い!?まるで、足が枷を嵌められて地面に括りつけられてるみてーだ!?)
足に力を動かそうとするが、彼女の脚はそこから一ミリも動かすことができなかった。
『気づかない内に、マキマに何かを仕掛けられた。』それに気づいた杏子だったが、その僅かな隙に付け込むようにマキマは既に拳を握り締めて間合いの内側に潜り込んできていた!
(クソッ、間に合わねぇ!!)
杏子は回避を諦め、槍を構えて防御の姿勢を取る。その瞬間、マキマの突き出した拳が槍の柄に当たり、その衝撃が杏子の手から腕へとビリビリと響く。彼女はその攻撃を耐え凌ごうと必死に踏ん張ったが、想像を軽く超えたその威力は杏子の体を大きく吹き飛ばした!
(つぅ!?なんて馬鹿力だ!?そのひょろい体のどこにこんなパワーが!?)
杏子は防御した槍を通して伝わった衝撃の強さに両腕が壊れそうになるのを感じつつ、クルクルと回転して衝撃を受け流し、そのまま地面に着地した。腕の感覚が無くなるほどにビリビリと痺れるようだが、拳が当たった瞬間に「受けきれねぇ!」と悟って下手に踏ん張らなかったのが幸をそうしたらしい。腕を回してちゃんと動くのを確認し、杏子はふぅと息を吐き出した。
次に視線を正面に戻すと、体勢を立て直した杏子と目が合ったマキマが「チッ」と舌打ちを零していた。
(おいおい、綺麗な顔してるくせに態度が悪いぜ。――――ま、それはさておき……。)
杏子は足をプラプラと振り、足首に感じていた奇妙な重みが消えていることを確認すると、マキマの方へ視線を向けた。
「今、あたしに何かしたか?」
「さぁ?気のせいじゃないかな。」
杏子の口にした疑問にマキマは曖昧な返事を返しただけだった。だが、その白々しい態度が逆に杏子に確信を与えた。
――――マキマには、自分には知覚できない何かを手札に持っている。
その事実を悟った杏子は一気に難易度が上がったこの戦いに眉を顰めるが、それでもなお戦意は衰えていないようだ。槍を構え直し、いつどんな攻撃が来ても良いように体勢を整えた。
マキマが再び開いた距離を詰める。杏子は迫ってくるマキマの一挙手一投足に鋭く注意を払いながら、今度こそ回避をしようと足を動かす。
だが、またしても足が地面から離れなくなった。
回避不可能。それを悟った瞬間、杏子は防御ではなく迎撃の姿勢を取った。槍の柄がガチンと硬質な音を立てて分離し、多節棍へと変化して彼女の手の中で自由自在に暴れ狂う。
(あたしの身に起こってるこのナニカが分からない以上、この戦いは終始
そんな考えを頭に思い浮かべる杏子は、打撃と斬撃の結界を前にしてマキマが突撃を止めて急停止したのを見つめ――――
――――直後に、マキマがグイッと何かを引っ張るように右手を動かした。
次の瞬間、杏子の視界が一瞬にしてブレた。
突然視界がノイズの走ったように不明瞭になり、全身にかかる圧力と引っ張られる力に意識が飛びそうになる。
(一体、あたしは何をされた!?)
あの瞬間に何が起こったのか理解できず、杏子は驚きと内臓が浮く感覚に思考がめちゃくちゃにされそうになる。
だが、手放してしまいそうな意識をなんとか繋ぎ止め、そして自分の脚に付いているモノを見て、彼女はさらに目を見開くことになった。
「なっ!?これは、鎖だと!?」
思わず驚きの声を上げた杏子の脚には、いつの間にか金属製の足枷が嵌められていた。それに繋がれた鎖は土を跳ね上げて地中から姿を現し、その先端をマキマの右手が掴んでいた。
マキマが右手に握る鎖を器用に動かし、それに連動するように空中に放り出された杏子の体もぐわんぐわんと無理矢理に振り回される。
(クソッ!人をおもちゃみてぇに!――――ぐあっ!?)
目が回り、どっちが上か下か分からなくなった頃に身体が強い力で一方向へ引っ張られ始めた。
そうして落ちる先にいるのは、言わずもがなマキマの上だ。
踏ん張りの効かない空中、鎖に振り回されて制御を失った肉体、そして方向感覚まで麻痺させられた佐倉杏子。
だが、――――
(舐めんじゃ、ねぇぞ!!)
身体が引っ張られる方へ彼女は強く睨みつけ、拳を腰溜めに構えるマキマの姿を捉えた。そして、マキマの拳が放たれようとした瞬間、杏子は空中で振り回されてもなお手を離さなかった槍を強く握りしめた。
「どりゃぁああ!!」
「ッ!」
マキマの拳と杏子の身体が直撃する寸前、杏子は槍の穂先をマキマに向けて突き出した!
ドンッと空気を叩く音が響く。杏子はその衝撃波を間近で受けながらも身を捻り、地面の上を転がって着地した。
すぐに顔を上げて状況を確認する杏子。その目に映ったのは、彼女のカウンターを受け、肘から先に綺麗な断面だけを残して消失したマキマの腕だった。肘から先を失った腕を天に突き上げたマキマの足下に、グチャッと切り落とされた拳が落ちる。
それは明確なダメージの表れであり、この戦いにおいて杏子が一歩リードしたことを意味するものだった。
ここに来るまで、魔女で溢れかえった街の惨状をその目で見てきた杏子は、無数の魔女を操る化け物相手にどこまで自身の力が通用するかと密かに不安を感じていた。だが、確かな一撃を与えられたという事実に彼女の口角が二ッと上がった。
「ふぅ、ちょっと危なかったかもな。だけど、今のは結構効いたんじゃ……ウソだろ?」
少し息を整えようと杏子はマキマに声をかけてみた。だが、改めて目を向けた先の光景を見て彼女は堪らず頬をひきつらせた。
その光景とは、マキマが落ちた自分の拳を拾い、血の噴き出る腕の切り口にグジュリと押し当て、繋がるはずのない手をぐっぱっと
何度か動作確認をして満足したらしいマキマの冷徹な瞳が杏子へ向く。杏子はその目を見た瞬間、背筋に氷柱を押し当てられたみたいな悪寒が襲った。
マキマが人に道を聞くような軽いテンションで首を傾げた。
「何かおかしかったかな?君たち魔法少女からしたら見慣れた光景だと思うけど?」
「……は?何言ってんの、アンタ。切り落とされた腕がそんな簡単にくっつくかっての。マジで、想像以上の化け物だな。」
「さっきから化け物化け物って、さすがに失礼じゃないかな?一体何が君にそう言わせるのかな?」
マキマは今度は構えず、杏子に向き直ってそう尋ねた。それが会話の意志を示しているのだと察した杏子もまた槍を降ろした。それでも息が乱れそうなドス黒いオーラを撒き散らすマキマから意識を逸らさぬように注意しながら、杏子は会話に応じた。
「何がって、アンタがそれを言うのか?やっぱり化け物とあたし達人間とじゃ価値観が違うのか?」
「私の感性は極めて一般的だよ。」
「一般的だって?よく言うよ。
「……何を言っているのかな?」
ゆらりとマキマから発せられるオーラのようなものに変化があったのを杏子は見逃さなかった。それを見て、どうやら自身の口にした言葉は図星だったようだと、杏子は考えた。
だが見当違いも甚だしい勘違いだと知らぬまま、明らかに動揺している様子のマキマにさらに畳みかけようと、杏子は更に言葉を続ける。
「まだとぼけるつもりか?あたしはアンタのことを全部知っているぜ。アンタはその
「……………。」
キュゥべえに声を掛けられて見滝原に向かう時に、杏子はマキマについての情報を一通り教えられていた。
曰く、マキマは
曰く、マキマはその力を正当性を持って使える立場を利用し、日本全国に網の目のごとく力を張り巡らせている。
曰く、マキマはおよそ30年前から歳を取っておらず、肉体の時間の経過が通常の人間とは明らかに異なっている。
他にも細々と教えられたことはあったが、この3つの情報は他に比べて明らかに怪しいと杏子は考えていた。だが、それらが今回の騒動とどうつながるのか、結局マキマの目的は何なのか、またその正体はといった問題は、彼女の憶測の域を出なかった。
しかし、答えが何であろうと関係はない。杏子はここに至るまでに遭遇した暴走状態の魔女やマキマの異常さを目の当たりにして、自身の身の丈に合わない仕事だと結論付けた。
つまるところ、彼女はこの場から逃げ出すための隙を窺っていた。そのために、マキマの精神にゆさぶりをかけ、冷静さを失ったところで逃げ出そうと考えていた。
「なあ、こんなことして一体何が目的なんだ?魔女に人間を襲わせて、何がしたかったんだ?人間が苦しむ姿を、特等席から眺めていたかったのか?」
「……………………………。」
杏子の捲し立てるような追及に対し、マキマはただ黙って聞き続ける。
そして、両者の口が閉じられ、一瞬の静寂が戻ってくる。そこでようやく動きを見せたマキマが口にしたのは、肯定でも否定でもなく――――
「……はぁぁぁぁぁ。」
――――地を這うように低く、重い溜息だった。
その瞬間、マキマの全身から発せられていた魔力が霞むほどのドス黒いナニカが杏子の目に映り込んだ。
溜息――それは肺の中の空気を大きく吐き出す行為。または胸に溜まった感情を吐き出す行為。
マキマはのストレスは既に臨界点スレスレにまで達していた。
早く本部と合流して魔女鎮圧の指揮を執るつもりが、学校に避難してきた人間達を保護しなくてならなくなり、思うように身動きが取れなくなってしまったことへの、ストレス。
そして、これまでの一般的な魔女よりも一回りか二回りほど強大な出処不明の複数個体の出現により、鎮圧に当たっている特異課に職員達にも被害が出始めていることへの、ストレス。
更に、この忙しいときに突然現れた見ず知らずの子供に自分こそが「この事件の真犯人である」と意味の分からない戯言を突き付けられたことへの、ストレス。
理性で冷静さを保とうとしていたマキマの悪魔としての本能は、当に限界を迎えていた。
つまり、マキマは我慢の限界だった。
マキマが一歩を前に踏み出す。それに合わせるように、杏子も一歩後ろに下がった。
マキマの控えめで綺麗な紅の差した唇が、不気味なほどに落ち着いた声で言葉を紡ぎ出す。
「違うよ。それは君の勝手な妄想だよ。私は人間だから、誰かが苦しむ姿を見て指をさして笑ったりなんかしないよ。」
「は、は?人間?ま、まだそんな嘘をつくっていうの?アンタは――――」
そこから先の言葉は、杏子の喉の奥へと引っ込んだ。
マキマの雰囲気がガラリと変わる。先程までの淡々としたものではなく、煮えたぎる怒りをそのまま周囲に撒き散らしている。感情の波を敏感に感じ取ることができる魔法少女には、マキマの周囲の光が歪んでいるように見えた。
「ねぇ、教えてくれるかな。誰が君にそんな妄言を吹き込んだの?凡そ見当はついてるけど、君の口から直接聞きたいな。」
「はぁ?それは――――」
「あぁ、今言わなくてもいいよ。君を捕まえた後で、いろいろじっくり聞かせてもらうから。その時に教えてね?」
「ヒッ……。」
杏子の喉から引き攣った声が漏れた。
ベテランの魔法少女であり、幾多の魔女を屠り、近接戦と槍の扱いには絶対の自信を持っていた佐倉杏子。
そんな彼女の心は、目の前に立つ純粋な
「ッ!!」
杏子は瞬時に踵を返し、全力で地面を蹴って駆け出した。隙を探すとか、魔法で誤魔化すとかの一切の小細工を省き、一秒でも早くこの場から逃げ出すための、全力の逃走。
あっという間に遠ざかっていく杏子の背中を、マキマは顔色一つ変えずに見ていた。
「逃げちゃうんだ。無駄なのに。」
マキマがそう言った直後、フッと残像を残してマキマの姿が掻き消える。
そして、あと少しで学校の敷地から出られるはずだった杏子の眼前に姿を現した。
「なっ!?――――ごはっ!?」
突然目の前に現れたマキマに反応できなかった杏子は、マキマの握りしめられた拳を無防備な腹に叩き込まれて来た道を戻された。
激しく地面に衝突し、ゴロゴロと転がる杏子。たった一撃を受けただけにも関わらず、その身には既に痛々しい傷がつけられていた。
だが、痛覚が常人よりも抑えられている魔法少女である彼女は、この程度で動けなくなったりはしない。痛む腹を押さえ、槍を杖代わりに全身を支えて起き上がった杏子の前に、マキマが悠々と歩いて近づいてくる。
「これで
そう言って杏子を見下ろすマキマ。そのさっきまで怒りで歪んでいたはずの目元は、心なしか愉快気に細められているように杏子には見えた。
『楽しんでいる。』それに気づいた杏子は、ギリッと奥歯を噛みしめた。
「この、化け物がぁ!!」
「……勘違いしないで欲しいなぁ。
――――私は悪魔だよ。」
マキマの射貫くような視線が、恐怖と怒りの混じった杏子の瞳と交錯した。
二人の戦いは、これで決着したと思われた。
しかし、混乱はまだ終わってはいなかった。
ドドドドドドドドドドドドッ!!!
まるで何百、何千という数の人間が一斉に走って来ているかのような地響きが見滝原中学校の敷地を揺らす。
新手の気配を感じ取ったマキマと杏子が、近づいてくる魔力の反応の方へと揃って目を向けた。
それは街を呑み込み、徘徊していた他の魔女をも取り込み、正面から学校の正門を砕いて押し入り、津波のごとく雪崩れ込んできた。
マキマ達の目の前に現れたのは、不定形の肉塊のような巨大な魔女。
その全身には、顔や体のパーツがバラバラに散りばめられており、どこが顔でどこが腕なのか、まるで見当が付かない。
いや、その魔女に顔や体といった区別は存在しないのだろう。なぜならば、気の遠くなるような、途方も無い”永遠”からしてみれば、そんな些細な区別など気にする必要はないからだ。
後に、その魔女は公安対魔特異課によってナンバリングされ、名前を与えられることになる。
――――――――【永遠の魔女】と。
――――――――決着ははるか遠い先へ。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もまたよろしくお願いします。
<突然の質問コーナー>
Q,【街の小さな密告者たち】とか【
A,「なんでそんなこと言うの!?これでもいろいろあった末に編み出したオリジナル技なんだけど!?確かに【チェンソーマン】の世界観には”技”なんて無かったけど、魔法少女の子たちには技名を考えている子が結構いるんだし、私もちょっとくらい考えたっていいじゃん!!」
by オリ主マキマ
というわけで、読んでくださっている皆さんはどう思われているのか、聞いて見たいなと思いアンケートを用意させていただきました。気軽に答えてくださると嬉しいです。
オリ主マキマがオリジナル技を使うのってアリ?
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いい。
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まあいい
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どっちでもいい
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あんまりよくない
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よくない