「私と契約して魔法少女になりなさい」   作:NARです。

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明けましておめでとうございます。2026年になりました。
年末直前に投稿し始めたせいで「2025年はどうでしたか?」とか「僕の一年はこうでした」とか、気安くお話しできるほどの気持ちが整っておりませんので、今年最初の後悔はソレですね。
さらには「今年も」と言えるような状態ではない感じになってしまっていますので........

どうぞ今年”から”よろしくお願いします。
第一目標は、エタらないこと。
第二目標は、後々考えようと思う。
でやっていきたいなと思っています。

NARでした。


秘密の個人面談 その2

〈暁美ほむら〉

 

キュゥべえの始末に失敗し、まどか達との間に大きな溝を作るだけで終わったその後…………。

 

私は家に帰ろうとしていたところを、突然現れたマキマに見つかり、そのまま話し合いをしようという流れになって場所を移した。

 

そして現在、私達は近くにあったファミレスで向かい合って席に着いていた。

 

「好きな物頼んでいいよ。」

「ありがとう、ございます。」

 

マキマから渡されたメニュー表を覗くふりをしながら、ちらっと向かいに座るマキマの様子を伺う。

 

……今すぐ何かをしてくるという訳ではなさそうね。まあ、ファミレスなんて人目のつく場所を選んだあたり、本当に話がしたいだけなのかもしれない。

それでもやっぱり、彼女の身体から滲み出ている複雑な色を見せる魔女の気配のせいで、嫌な汗を背中が伝う。公衆の面前だからといって、油断をするわけにはいかないわ。

 

「…………いいな、ハンバーグ。あ、オムライスも美味しそうだなぁ」

 

ちょっと待って、そんなガッツリ食べるつもりなの?今から大事な話をするんじゃなかったの?

 

「……ん?どうしたの暁美さん。注文する物決まった?」

「あ、えっと、……コーヒーで。」

「……それだけ?もっと頼んでいいよ?私がお金出すから。」

「いやそうじゃなくて……私達、話をするためにここに来た、んですよね?」

「そうだよ。」

 

マキマは「今更何を」と言いたげに首を傾げている。

 

いやだから、これから大事な話をするのに、呑気に食事をする暇なんて無いはずだって言っているのだけど…………。

 

「とりあえず注文は後にして、早く話をしましょう。」

「ああ、うん、そうだね。」

 

マキマはメニュー表を置いて頷くと、店員を呼んでコーヒーを2つだけ頼んでから、ようやく私に向き直った。

 

「それじゃあ、まずどこから話そうかな。あ、聞きたいことがあったらそれを言ってくれてもいいよ。ちゃんと答えるから。」

「それなら……あなたの正体について教えてください。……あなたは魔法少女なの?それとも、人間に擬態した魔女なの?」

 

私は膝の上に置いた両手をギュッと握りしめながら、ずっと気になっていたことを口にした。

 

今も彼女の身体から絶え間なく漏れ出ている、いくつもの魔女の気配。

普通の人間なら致死量をとっくに超えているレベルで、たとえ魔法少女だったとしても廃人になるだけで済むかどうかという危険な濃度。

そんなものを背負って平然としている人間がいて気にならないはずもなく、キュゥべえを追いかけている間もずっと頭の片隅で疼いていた疑問だった。

 

この質問はまさに、マキマの核心に触れる一撃だったはず。返答次第ではどうなるかも分からない。それでも、私は覚悟を決めてマキマの目を見つめ返し、その答えを待った。

しかし、当の本人は顔をしわくちゃに寄せて何かを堪えるような、なんとも言えない表情を晒していた。

 

「それ、アレだよね。私の体から漏れ出てる瘴気?魔力?とにかくそういうのを見て怪しく思ったって感じだよね?」

「え、えぇ。」

「だよね〜……。」

 

ガックリと顔を俯かせるマキマ。

しばらくして、マキマは顔を上げるとしおしおになりながら口を開いた。

 

「えっとね……とりあえず暁美さんの質問に答えるけど、私は魔法少女でなければ魔女でもないよ。」

「まさか、人間だというつもりですか?それほどの呪いを背負ってもなお生きていられる人間がいるはずないわ。」

「そうだね、暁美さんの言うことは正しいよ。だけど、私はソウルジェムを持っていないし、グリーフシードも持っていないから、どちらでもないんだ。まあ、今ここで魔女じゃないことを証明することはできないから、信じてもらえなくても仕方がないけれど。」

 

マキマは眉尻を下げて困り顔でそう言った。

 

「なら、仮にあなたの言っていることが本当だとして、あなたの正体は何だというの?ただの人間でないということは、既に自明であるはず。納得のいく答えをいただけないかしら。」

「う~ん、それなんだけどね……今ここで教えてあげることはできないかな。」

「……なぜ?私の質問に答えてくれるのではなかったの?」

「そうなんだけど……その質問は()()にかかわるから、今の時点では明かせないことなんだよね。」

 

()()……?そんな言い方をするということは即ち、マキマは何かしらの組織に所属しているということかしら。それも、同じ町に住む魔法少女同士が助け合うために結成するチームのような集まりではなく、それよりも規律や構成が厳格に定められているような、より本格的な組織……。

 

(その点について、もっと深堀してみるべきかしら……いえ、それよりも先に、はっきりさせておきたいことがあるわ。)

 

私はマキマの後ろにいるであろう存在について考えるのを一時中断し、次に気になっていたことをマキマに問い詰めた。

 

「なら、次の質問に答えてほしいのだけれど、あなたの目的は一体何?どういうつもりで、私に接触してきたのかしら?」

「それなら答えてあげられるよ。私の目的は、この町に住んでいる魔法少女をスカウトすること。つまり、君をウチに勧誘したいと思って見滝原市に来たんだ。」

 

スカウト……ということは、マキマが何かしらの組織に所属しているというのはほぼ確実ね。

だけど、それは一体どんな組織なの?何を目的としていて、何を理由に私をスカウトしに来たの?

というか、私はこの時間軸では見滝原中学校に転校してきたばかりの転校生……つまり、今日この町に住み始めたばかりの新参者。その上、時間遡行の影響で昨日まではベッドで寝た切りだった普通の少女が、今日突然魔法少女に変身するという因果の噛み合っていない状態にあるのが今の私。

そんな私をどうして事前に察知することができたというの?

 

(分からない、この女は一体どうやって……?)

 

あまりに実態が見えなさ過ぎて、さらには噛み合わない情報の渦に流され、混乱してしまう。

すると、今まで静観していたマキマが徐に声をかけてきた。

 

「混乱しているみたいだね。」

「……えぇ、まあ。」

「なんだか可哀そうだから、うん、言えることはもう全部言っちゃおうかな。」

 

マキマはそう言うと姿勢を正し、私の目をまっすぐと見て言った。

 

「もう気づいていると思うけど、私の教師という肩書は見滝原中学校に潜入するための表向きの身分なんだ。

 

 

私の本当の肩書は、公安対魔特異4課所属のウィッチハンター……簡単に言うと魔女狩り専門のお巡りさんなんだ。」

 

 

「は……警、察?」

「そう、警察。」

「……うそでしょ?」

「本当だよ。」

 

ちょっと待って……本当に?

魔法少女しか戦うことができない魔女を、警察が?

有り得ない……魔女と戦うことができるのは魔法少女だけのはず。魔女の瘴気に耐えられないただの人間が戦えるはずがないし、魔法を使えない生身の身体でどうやって魔女を倒すというの?

 

「信じられない、って顔してるね。」

「……当然よ。魔女と戦えるのは魔法少女だけ。ただの人間が戦えるはずがないわ。」

「その通りだね。だけどそれにはちょっとした()()()()があってね。どんなカラクリかは詳しく言えないけれど、特異課では人間のウィッチハンターとスカウトした魔法少女の共同で社会の安全を魔女の脅威から守っているんだ。それが私たち特異課の主な仕事だね。だけど、魔女対策以外にももう一つ、大事な仕事があるんだ。」

 

マキマはそこまで言うと、さっき運ばれてきたコーヒーで喉を潤し、一泊置いてから再び口を開いた。

 

「それは、君たち魔法少女の”支援”だよ。」

「”支援”?」

「そう。魔法少女は魔法の力を使って魔女と戦うことができるけれど、その力も無限じゃない。消耗した魔力を補給するために、魔女が落とすグリーフシードでソウルジェムの穢れを吸い出さないといけない。だけど、グリーフシードは魔女を倒さないと手に入らないから安定して補給できないし、戦闘が苦手な子ともなればグリーフシードを手に入れられなくてじわじわと消耗していくしかない。そんな子たちを助けるために、特異課ではグリーフシードの配給を行っているんだ。」

「グリーフシードの配給!?そんなの、一体どうやって……。」

「そんな怖い顔をしないで。何も人間を餌にしてグリーフシードを孕む魔女を作っているわけじゃないよ。これも()()にかかわることだから、どうやっているのかは話せないけどね。」

 

マキマはそこで口を閉じ、またコーヒーに口をつけて一呼吸を置いた。

 

「さて、ここまでざっと特異課ってところがどういうところなのかについて説明したけれど、なんとなく理解してもらえたかな?」

「……まだ完全に信じることはできないけれど、まあ……。」

「そっか。けど仕方ないよね。いきなりこんなことをつらつらと説明されても、直ぐに受け入れるのは難しいよね。」

「だけど、どうして私にスカウトを持ちかけてきたのかは分かったわ。要するに、魔法少女である私の活動を支援することと、私をあなたたちの魔女対策の戦力として取り込むこと。この二つがあなたの狙いという訳ね。」

「概ねその通りだね。」

 

マキマはそう言って、ニコリとほほ笑んで私の顔を覗き込んだ。

 

「それで、どうかな?暁美さんは、私のスカウトを受けてくれるかな?」

「…………。」

 

机に視線を落とし、しばし考え込む。

マキマが開示した公安対魔特異課という組織の目的、そして私に話を持ち掛けてきた理由。語られた言葉だけを鵜呑みにするのであれば、悪くはない提案だと思う。むしろ、今まで私一人で戦ってきたよりも十分な戦力が味方に付くと考えれば、断る理由などどこにも無い。

ただ、今の時点では不明な点が多く存在するというのも無視できない。魔法少女でもないただの人間がどうやって魔女と戦うのか、魔法少女の生命線であるグリーフシードの配給をどうやって実現させているのか、公安対魔特異課の戦力がどれほどのものなのか、そしてマキマの正体は何なのか…………。

これらの不確定要素がある以上、安易にマキマの手を取ることはできない。

 

私は首を横に振って、マキマの勧誘を断った。

 

「ごめんなさい。今すぐに決めることはできないわ。」

「……そっか。」

 

マキマは短くそう呟いて、視線を下に落とした。

 

 

 

 

「そんな暁美さんに耳寄りの情報があるんだけどね。」

 

…………ん?

なにか、流れが変わった?

 

「暁美さんみたいに今すぐ決めきれない子や、もう少し特異課のことを知ってから決めたいって子のために、こうゆうのを用意してあるんだ。」

 

マキマはそう言って、懐から一枚の紙を取り出してこちらに差し出してきた。

促されるままに手に取って見ると、そこにはこう書かれていた。

 

「”公安対魔特異課 職業体験コース”……?」

 

なんか、どこかの金髪縦ロール魔法少女が似たようなことを言っていたような……。

何とも言えない気持ちでそのチラシを眺めていると、マキマが徐に口を開いた。

 

「ウチがどんな仕事をしているのか、職場の雰囲気がどんな感じなのかを直で知ってもらうために不定期で行っている職業体験コースだよ。大人になった魔法少女も働いているから、社会人になった先輩魔法少女の話も聴いて将来の進路を考えることもできる……暁美さんにとってもいい機会だと思うよ。」

 

「どうかな?」と首を傾げて聞いてくるマキマの姿が視界に映り込む。

フワフワとしていてポップなデザインのフォントが並ぶチラシと、心なしかそわそわしているように見えるマキマを交互に見比べる。

思わず、はぁと溜息が漏れ出た。

 

(……なんだか、今までこの女を警戒していたのが、バカらしく思えてきたわ。)

 

急に湧いてきた疲れを溜息と共に吐き出して全てを空っぽにすると、こちらの様子を窺っていたマキマに向き直った。

 

「分かったわ。この職業体験コース、参加させてもらうわ。」

「本当に!?分かった、すぐに手配するね!いつ頃がいいとかあるかな?」

「えっと、じゃあ、明日の放課後がいいわ。」

「え、明日でいいの?いや、こっちとしては早い内に出来るならそれに越したことは無いのだけれど……。」

「明日、今日取り逃した魔女を狩りに行こうと思っていて……そこで、あなた達のやり方というものを見ておきたいと思って。」

「……なるほどね。分かった。それじゃあ、明日の放課後に職員室に来てもらえるかな。」

「分かったわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簡単に話し合いを終えた後、電話をしに席を外していたマキマが戻ってきた。

 

「お待たせ、暁美さん。」

「いえ、私は大丈夫、です。」

「……ありがとう、暁美さん。」

「え?」

 

唐突に礼を言われて、思わず呆けた声を漏らして顔を上げた。

目が合ったマキマは、その纏う雰囲気からは想像もできないほどに柔らかな笑みを浮かべていた。

 

「この世界には、私達が知らないだけで数多くの魔法少女がいて、みんなそれぞれの想いを胸に魔女と戦っている。だけど、たった一度の希望のために全てを投げ捨てた彼女達が、真の意味で救われる日は来ない。」

 

マキマの目がスッと細められる。その瞳は、私を通してどこか遠くを見ているようだった。

 

「私達はそんな彼女達の人生に、少しでも幸福がありますようにと手を差し伸べている。それでも、全てを諦めてしまった彼女達を救うのはあまりにも難しい。あと一歩早く間に合っていたらと思ったことがどれだけあったか……。」

 

「だから、こうやって話を聞いてくれただけでも、私はとても嬉しいんだ。」

 

そう言うと、マキマは再び私に向かってほほ笑んだ。

そんな彼女から向けられる感情が何なのかは分からない。ただ、なぜだか胸のあたりにジワリと何かが広がった気がして、思わず下を向いて彼女の視線から逃れようとしてしまった。

 

「れ、礼を言う必要は無いわ。私はただ、利用できそうだと思ったから、あなたの話に乗っただけで……。」

「それで十分だよ。そのために、私たちがいるんだから。」

 

その直後、頭の上にサラリと撫でつける温かい手の感触を感じた。

それはマキマに頭を撫でられているのだと気づいた瞬間、上手く声が出せなくなってしまった。

 

「あ、ちょ、っと……ん……」

「……あっ、ごめん!嫌だったかな?ごめんね、つい手が伸びちゃって!」

 

マキマは小さく肩を跳ね上げて、ひどく取り乱しながら慌てて手を引っ込めた。

 

(あ……)

 

離れていくマキマの手に視線が吸い寄せられる。その瞬間、この身が凍り付くような寒さを感じた気がして、咄嗟に彼女の手を捕まえた。

 

「!」

「……子供扱いはしてほしくない。でも、別に嫌じゃ、ないわ。」

「そ、そっか。それならよかった……。」

 

(私は一体、何を言っているの……。)

 

思わず口を突いて出た言葉は、自分でも予想だにしていないものだった。そのせいで上手く表情を取り繕えている気がしなくて、顔を正面から背けてしまう。

だけど、マキマの手を捕まえたままだった私の手が温もりに包まれたのに気づいて、私は顔を上げた。

 

「ねえ、暁美さん。」

「何かしら。」

「暁美さんのこと、ほむらちゃんって呼んでもいいかな?」

「……えぇ、構わないわ。私のことは好きに呼んでちょうだい。」

「_!……うん、ありがとう、ほむらちゃん。」

 

マキマはそう言って、また嬉しそうに目元を緩めた。

 

……本当に、よくわからないわ。あなたのこと。……こっちの調子まで狂ってしまう。

でも、まあ、こういうのも悪くはないかもしれないわね。

 

 

 

「よし!それじゃあもういい時間だし、ご飯食べちゃおっか!ほら、好きなの頼んでいいよ。私がお金出してあげるから!」

「え……い、いいわ。私は別に……。」

「遠慮しなくていいよ!君たち子どもは美味しいものたくさん食べて、大きくならないといけないんだから!」

「こ、子供扱いはやめてって言ったでしょ!」

「あ、私カレーにしよかな。ほむらちゃんは何食べたい?」

「話を聞きなさいよ!!」

 

 

 

……………………

………………

…………

……




マキマメモ その3

暁美ほむらと話し合いが無事にできたこと、「やめるつもりはない」と言っておきながら気にしていた「ほむらちゃん」呼びが許されたこと、一緒に晩御飯を食べれたことなどなどの理由で密かに舞い上がっていた。

後々、彼女が”先生”と慕う男から”瘴気漏れ”の件についてみっちりしごかれることは完全に忘れていた。


※若干キャラ崩壊とか、会話に無理矢理感があるように見えるかな~と個人的に思いはしたのですが、僕の執筆能力ではこれが精一杯でした。
皆さんは解釈違いの方とか、大丈夫ですかね........?
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