サトシ君(転生者)の目指せ、ポケモンマスター!! 作:DestinyImpulse
ブレイブアサギ号のミーティングルーム、そこには現在、ライジングボルテッカーズのメンバー全員が集合し中央のテーブルを囲んで座っている。
「しかし、不思議なポケモンだな~」
「今まで、宝石に擬態していたって事?」
皆の視線はテーブルの上に乗る1体の謎のポケモンへと集まっていた。そのポケモンは先日、ガラル鉱山で姿を変えたリコのペンダントであったポケモンである。
「リコは何か知らないの?」
「ううん。おばあちゃんからお守りだって事だけで詳しい事は何も……」
「図鑑にも載ってない…」
「どう思います、“オーキド博士”?」
『うーむ、ワシも初めて見るポケモンじゃ…』
揃って頭を悩ませる中でリーフは連絡機の画面に映るオーキド博士に視線を向ける。ガラルファイヤーや謎のポケモン…それにラクア…自身の保護者でもあるオーキド博士なら知恵を貸してくれるとリーフが連絡を取ったのだ。
「やっぱりホウオウの様な伝説のポケモンなのかな?」
『その可能性は大いにある。しかし、伝説のポケモンは極めて目撃例が少なく、その姿を晒した文献には実物との差異が生じるものじゃ。とにかく、ワシも色々と探ってみよう……ラクアの事も含めての』
しかし、オーキド博士でも目の前のポケモンやラクアに付いては分からないそうだ。
『それにしてもお前さんもサトシに負けず劣らずの報告をしてくれるの〜。漸くクリスタルのイワークの学会レポートが完成したと言うのに、全く年寄りの心臓に悪いわい』
「あ、あははは…忙しいのにありがとう、オーキド博士」
『なに、老後の楽しみの一つじゃよ。フリード君とも話せて楽しかったしの〜!』
「こちらこそ、ポケモン研究の権威であるオーキド博士と話せて勉強になりました」
『うむ、何か分かれば遠慮なく連絡しておくれ。リーフがゲットしたファイヤーに似たポケモンにも興味があるしの』
リーフに取っては実の祖父の様に近しい存在だが、やはり世間的にはポケモン研究の権威として有名な様でフリードも深々と頭を下げていた。そうしてオーキド博士との通信が終わるとリーフは流れる様にガラルファイヤーが収まった古のモンスターボールを見る。
「うんとも、すんとも言わないんだね?」
「うん。でも、あの行動にはきっと意味があるんだよ」
自身にゲットされる様にボールに収まったガラルファイヤー。アレから特に出てくる事もなく静かだが、きっと意味がある行動だったのだとリーフは考えていた。
「よし、ひとまずリコのおばあさんに会いに行こう。リコ、ロイ、リーフ、トウコ、準備だ。後のメンバーは何かあった時の為に待機しててくれ」
ともかく、謎のポケモンの秘密を知るべくペンダントの元の持ち主であるリコの祖母に会いに一同は行動する。鉄道にのりナックルシティに辿り着いたが、この周辺には幾つもの古城がある。しらみ潰しに探しては日が暮れると一同が頭を悩ませると…
「リコ!ゴジョー!」
「あ、お婆ちゃんのイキリンコ!」
リコの祖母のポケモンである、黄色のイキリンコが現れて道案内をしてくれる事に…平原地帯から森へと入りイシヘンジンが守る隠されていた秘密の通路を通れば年季の入った如何にもな古城がリーフ達を待っていた。
「リコー!ゴジョー!」
「おばあちゃーーん!リコです!」
イキリンコが示す事から間違いないとリコが城に向けて大声で呼びかけると古城のテラスから1体のポケモンがリーフたちの前に飛び降りた。
「ワウゥゥゥゥー!!」
「ウインディ?」
「おー、中々強そう」
その正体は、でんせつポケモンのウインディだ。逞しい四肢をしており中々の強さだとリーフとトウコは感じていた。
「ウインディ!久しぶり!」
「ワウ!」
一方でリコが笑みを浮かべて抱きつきウインディも嬉しそうに鳴き声をあげる。如何やらお互いに顔見知りの様だ。すると古城の扉が開き、中から1人の人物が姿を現した。
「見違えたね。リコ」
「おばあちゃん!」
その人物こそが、リコの祖母のダイアナだ。彼女と再会するとリコは笑顔を浮かべ心から嬉しそうな声を出す。そうして祖母と孫の再会をした後に互いに自己紹介をして一同はダイアナに古城の中を案内される。そこはシャンデラ、アップリュー、マシェードなど様々なポケモンが自由に過ごしていた。
「このポケモンたちは皆、ダイアナさんのポケモンなんですか?」
「いや、この子たちは野生のポケモンさ。気に入ったら好きなだけ居て飽きたら出て行く。ここはそんな自由の城なんだよ」
この古城はブレイブアサギ号と同じという事のようだ。ただし、他に人は住んでいない様でダイアナは気楽な一人暮らしを楽しんでいるらしい。
その後、一通り古城の内部を案内されたリーフ達は再び、広間へと戻ってソファーに寛ぎつつ本題に入る。
「すまなかったね。ペンダントを狙う連中が現れた時、直ぐにルッカに連絡したんだ」
「おばあちゃんも狙われたの?」
「あぁ……リコ、ここまでペンダントを送り届けてくれて本当にありがとう」
ダイアナがお礼の言葉を告げるとリーフ達一同は揃って気まずそうに目を逸らす。その反応に疑問に感じたダイアナはペンダントに何かがあったのだと直感的に理解した。
「まさか、なくしちまったのかい!?」
「いや!まさか!違うんだけどね……」
「パァ~ゴ」
リコがなんと説明すればいいのか悩んでいると鞄が突如、開き始め中から例のペンダントであったポケモンが欠伸をしながら顔を出してくる。
「あっ……」
「これは……」
ペンダントであったポケモンはそのまま鞄から出るとテーブルの上に移りダイアナに向かって歩き出す。流石のダイアナも驚いた様子だったが、近づいてきたそのポケモンを抱きかかえ観察し始めると笑顔を見せ始めた。
「おやまぁ……この子、【テラパゴス】みたいだね」
「テラパゴス?」
「リーフ聞いた事ある?」
「テラパゴス……ううん、聞いた事ない」
「あぁ、俺もだ…テラパゴス?」
「この顔、間違いないよ。まさか、あのペンダントが休眠状態のテラパゴスだったとはねぇ」
「休眠状態?それで宝石の姿に?」
「てっきり化石と同じ様な物だと思っていたんだけどね。そうかい。あんたはずっと眠っていたのか。ごめんね。気づいてやれなくて……」
ダイアナはテラパゴスの頭を撫でながら改めて、その全体の姿を細かく観察し始める。
「しかし、記録されている姿と少し違うようだね」
「では、進化前ということですか?」
「それは分からない。私の見た記録だと大きな甲羅のある姿だった筈なんだ」
「なるほど!興味深い」
ポケモン博士としての性なのか謎のポケモンであったテラパゴスの謎が少しずつ判明したことでフリードの好奇心に強い火が付いたようだ。
「それから、私の予想が正しければこの子はルシアスと共に旅をしたポケモンなんだ」
「この子が!?」
「ルシアスのポケモン!?」
「て事はファイヤーやオリーヴァと同じ?」
「かもね…」
やはりペンダントと六英雄…そしてルシアスには何かしらの関わりがあった、好奇心を抑えきる事が出来ず、早く話の続きを促そうとする。
「大変だ!ホゲータが!?」
だが、その瞬間、先程まで話に加わっていなかったロイが突如、大声を上げ割り込んできたことで話は一旦、中断する。
「どうしたの!?」
全員の注目がホゲータに向く。すると突然、ホゲータのお腹からギュゥゥという腹の虫を知らせる音が響いた。
「お腹が減ったみたい……」
「ホゲ〜」
外は夜暗く、確かに腹の虫が鳴っても不思議じゃないだろう。話は食事をしましてからとダイアナは缶詰をテーブル一杯に広げて召し上がれと言ってくれる、リコは少し顔が引き攣っているが、冒険団のフリードや旅をしていたリーフやトウコには、片付けも楽で直ぐに食べられる缶詰はそれ程変わった食事ではない。……ロイ?美味しいなら満々体!
その後、片付けを終えるとダイアナは食後の紅茶を用意し全員に振る舞う。
「さて、そろそろ話の続きをしようか?」
「うん。おばあちゃん、今までの冒険の事教えてくれない?」
「あぁ、一歩踏み出したお前には何もかも話そう。あのペンダント……テラパゴスを見つけたのは私がまだ、お前よりも小さかった頃の事さ……」
ダイアナは過去の事を語り出す。
全ての始まりは、今から何十年も前の事だ。まだ、ダイアナが子供の頃、母親とかくれんぼで遊んでいた時、家の屋根裏部屋で彼女はそこで偶然にも古い鞄を発見した。興味本位でその鞄を開くとその中にはペンダントだけでなく冒険者ルシアスとその仲間達の旅の記録が入っていたそうだ。
「テラパゴスと言う名前と姿もその記録で知ったのさ…」
「だからオーキド博士すら知らないテラパゴスの事を…」
「そうしてルシアスの冒険に心奪われた私は、この記録が本当の事なのかルシアスとは何者なのか知りたかった。だから旅に出たのさ」
ダイアナは当時はガーディだった相棒のウインディと共に世界中を旅しルシアスの手がかりを探した。だが、残念ながらルシアスの痕跡は殆ど見つけられず、今から30年前に諦める事にしたらしい。
「だけどね、今の冒険者としての私があるのは、ルシアスのおかげなのさ」
「……素敵…!」
幼い頃に描いた夢を叶えることは出来なかったのかもしれない。だが、そこまでにしてきた冒険や手に入れた知識や経験は決して無駄ではなかったと後悔の欠片も無く語るダイアナにトウコは人生の先人として目を輝かせた。
「……だけど、数か月前の事だ。古い友人が私の元に訪ねてきた。冒険の協力をしてくれる人を紹介するとね。ただ、彼が現れた時、裏で組織が動いているのが直感で分かったんだ」
「その組織がエクスプローラーズ…!」
「あぁ、そして狙いはペンダント……いや、テラパゴスと言った方がいいな」
「間違いないね。だから、どうにかしてペンダントとリコを守る為に、あんた達に依頼したんだ」
そう言ってダイアナは健全な孫に笑みを浮かべる。事実、ライジングボルテッカーズやリーフとトウコが居なければ恐ろしい事になっていた筈だ。
「ダイアナさん!これ、見てください!」
そんな考えにリコがブルブルと震える傍ら、ロイは鞄に手を突っ込むと中から古のモンスターボールを取り出し、ダイアナの前へと出した。
「これは!?」
「これは、昔、僕のじいちゃんが海岸で拾ってきたものなんですけど、ここから絵本に載っていた黒いレックウザが出てきたんです」
「それに、私達ね。オリーヴァやファイヤーと出会った時、不思議な景色を見たの……根拠の薄い私の勝手な推測なんだけど、もしかしたら、あれはテラパゴスの思い出だったのかも……それから、もう1つ……おばあちゃん、“ラクア”って知ってる?」
「っ!?」
「パーゴ!?」
ラクア、その言葉の意味を尋ねるとダイアナ、そしてテラパゴスまでもが分かりやすく大きな反応を示す。突然のテラパゴスの大声に全員が驚いているとテラパゴスはどこかに向かおうと歩き始める。リコは慌てて扉の前に移動したテラパゴスを確保したが、テラパゴスは明らかにラクアという言葉に反応していた。
「ラクアか……この世界のどこかにあると信じられている所、冒険者ルシアスが目指した楽園、その名はラクア…」
「ルシアスが目指した楽園…!」
「なんか凄そう!」
古の冒険者ルシアスが目指した楽園ラクア、其処には未知なる場所やポケモンがいる可能性が高い…そう考えただけでワクワクするのだろうフリードとトウコは笑みを浮かべていた。
「あんた達に見せたいものがある。取ってくるからここで待っといでくれ」
「見せたいものって?」
「ルシアスの手記さ」
ダイアナはそう言い残すと部屋を後にする。残されたリーフ達はその場に残り、ダイアナが戻ってくるまでの間、得た情報を整理する。
「ルシアスにラクア……凄い話だったね」
「うん!リコのお婆ちゃんもカッコ良かったし!」
「うん、お婆ちゃんイキイキしてた」
「ライジングボルテッカーズ的にも熱い展開だ!」
「楽園ラクア……そこに行けば、コレの事も分かる…のは流石に高望みか」
皆が思い思いの言葉を語る中でトウコは【黒い石】を取り出す。テラパゴスが休眠状態でペンダントに姿を変えていたのなら、これも“何かが姿を変えた”のかも……と考えたが流石にテラパゴスに引きずられ過ぎかと苦笑したその時だ、【黒い石】が青白い光を放ったのだ、まるで何かを知らせようとしてる様に…
「なに…!?」
突然の事に戸惑うトウコにリーフ達。
その直後だ、ポケモン達が何かがこちらに接近してきたことに気づきベランダに到着したその者は空いていた窓から古城内へと入り込む。
「……見つけたぞ」
その者の正体は、ガラル鉱山でも邂逅したアメジオ達、エクスプローラーズだ。アメジオが正面にコニアとジルが側面でポケモンを出し取り囲んでリーフ達を逃さない様に陣取る。
「パゴッ!パーゴ!」
その時だテラパゴスは突如、現れたアメジオに対し何かを叫び続けている。原因不明のその行動に思わず注目していたが、アメジオに向けて歩き始めたテラパゴスを最も近くにいたリコが慌てて止めに掛かる。
「テラパゴス!駄目!」
「テラパゴス……ハンバルが回収しろと指示したポケモンの名前か。そいつを渡してもらうぞ」
「させないよ」
「そうそう、リコ達に手を出すなら私達を倒してからにしてよね!」
アメジオはテラパゴスを睨みつけそう宣言するが、リーフとトウコはアメジオとリコ達の間に入り、いつでも盾となれる様に立ちふさがる。
「ワウゥゥゥゥ!!」
一触即発の空気が漂う中、突然部屋に飛び込んできたのはダイアナのウインディだ。コニアは直ぐにゴルダックに指示を出し、攻撃を仕掛けるがウィンディはジャンプし軽く回避してしまう。
「無事かい?」
「お婆ちゃん!」
ウインディに遅れてダイアナとイキリンコが部屋へと入ってくる。ダイアナは全員の無事を確かめると一瞬、安堵した後にアメジオ達に視線を向けた。
「ウインディ、“かえんほうしゃ”!」
ウインディはソウブレイズに向け、“かえんほうしゃ”を放つ。ソウブレイズは両腕の剣をクロスさせ防御の体勢に入る。効果はいまひとつだが、時間稼ぎには十分だ。
「イキリンコ!頼んだよ」
ダイアナの肩に乗っていたイキリンコは飛び立つと壁に掛けられていた絵画に乗り移る。すると絵画は下にスライドしそれと同時に床が開き地下へと続く隠し通路が現れる。
「隠し通路!本格的ー!」
「だろう?城には昔から城の主が秘密裏に逃げ出せる通路があるんだよ。さぁ逃げるんだ!」
「お、お婆ちゃんは!?」
「忘れ物があるのさ。また後でね」
「心配するなダイアナさんは強い、急ぐぞ!」
リコは一瞬、ダイアナを残していく事に躊躇する様子を見せるが、一流の冒険家であるダイアナなら上手くやると判断したフリードに急かされ、一同はウインディの援護を受けつつ隠し通路へと入り込むとイキリンコはもう一度装置を作動させ隠し通路に続く扉を閉じた。
こうして、長い夜の戦いが幕を開けた。