鋼鉄の街の日常:偽りの安らぎ
「カラン……」
重厚な木製ドアを開けると、カウベルの乾いた音が店内に響いた。
ビデオ屋『Random Play』の扉。かつては日常への入り口だったはずのその開き戸は、今、レンを外の世界へと送り出す唯一の「檻の門」となっていた。
レンは一度だけ振り返り、カウンターの奥で端末を見つめるリンとアキラに視線を投げた。リンは無言で、自分の首元を指差す。
『忘れないで、あなたの鼓動は私が握っているんだから』
言葉にしなくても、彼女の澱んだ瞳がそう告げていた。
レンは自分の首を締め付ける黒いチョーカーを指でなぞり、重い扉を引いて表へと出た。
それから数日間、レンは白祇重工の現場に通い詰めた。
最初は先行調査のエージェントとして一線を引いていたが、気づけば彼は、この荒っぽくも温かい「家族」の欠かせない一部になりつつあった。
「おっ、レン! ちょうどいいところに来たね」
白衣の裾をたなびかせ、グレース・ハワードが顔を上げる。彼女は重機のピストンを磨きながら、まるで恋人に語りかけるような恍惚とした表情を浮かべていた。
「見て、この子のオイルの純度。完璧な循環だ。ねえレン、君もこの拍動を感じてみない? 知ってる? 機械は嘘をつかないの。正しく接すれば、必ず最高のパフォーマンスで応えてくれる……人間よりもずっと素直だよ」
「……あはは。グレース、ほどほどにね。機械が照れちゃうよ」
レンが苦笑しながら答えると、グレースは「あら、この子たちは褒められるのが好きなのよ?」と楽しげに笑った。
彼女にとってレンは、自分の「可愛い子たち」の機嫌を瞬時に見抜く、不思議な共鳴者(シンパサイザー)のように映っていた。
「おい、グレース! 自分の世界に入るんじゃねえ! あたしたちの仕事が遅れてるんだぞ!」
巨大なハンマーを肩に担ぎ、ドラム缶の上で足を組んでいたクレタ・ベロボーグが怒鳴る。彼女はレンを一瞥すると、少しだけ気恥ずかしそうに視線を逸らした。
「……レン。あんたもだ。グレースのペースに乗せられるなよ。あたしは白祇重工の社長だ。現場の規律を乱す奴は、たとえヘルプでも容赦しねえからな!」
そう言いながらも、クレタはレンに、自分が飲んでいたものと同じエナジードリンクを無造作に放り投げた。
「ほら、さっさと飲んで動け! 足手まといになったら、そのチョーカーごとハンマーで叩き直してやるんだから!」
「……ありがとう、社長。役に立てるよう頑張るよ」
レンが受け取ると、背後から大型のドリルを担いだアンドーが豪快に肩を叩いてきた。
「ははは! 社長は照れてるだけだ、気にするな兄弟! ほら、次のエリアの溶接は俺たちがやる。レン、お前は資材の搬入を頼むぜ。お前が配置してくれると、後の作業がめちゃくちゃスムーズなんだよな!」
「アンドー、あまりレン殿に甘えるな。……だが、確かに彼の効率的な配置は、コスト削減に大きく寄与している。算盤の数字が喜んでいることは確かだ」
ベンの冷静な賞賛も加わり、現場には笑顔が溢れた。レンは彼らと一緒に泥にまみれ、昼休みには工事現場の隅で安っぽい弁当を分け合った。
クレタが自分のハンマー自慢をし、アンドーが過去の武勇伝を語り、グレースが機械の美学を説く。
その輪の中にいる時だけは、レンは「301回の死」を忘れることができた。
だが、そんな穏やかな時間も、首元のチョーカーが微かに振動するたびに現実に引き戻される。
『……レン、今。クレタさんに笑いかけたでしょ。心拍数が8拍上がった。……どうして? 現場の状況に関係ないこと、しないでって言ったよね?』
インカムから届くリンの声。それは、彼がどれだけ新しい家族と絆を深めても、自分は「自由」ではないことを表すものだった。しかし、同時に安堵感も得ている自分がいた。リンの管理が精神を安定させているのかもしれない。
数日間の平和な作業を経て、現場の信頼関係は最高潮に達していた。
「レン、今回の依頼が終わったら、みんなで飲みに行こうぜ! 社長のおごりでな!」
「ちょっとアンドー! 勝手に決めるな! ……まあ、レンがどうしてもって言うなら、考えてあげなくもないけど……」
そんなクレタの「あたし」らしい不器用な誘いを受けた直後だった。
第4工区の深部から、獣の咆哮のような、不気味な金属の軋み音が響き渡った。
レンの網膜に、ノイズ混じりの「未来図」が走り抜ける。
(……来る。……平穏は、ここまでだ)
重機たちが一斉に異様な震動を始め、グレースの悲鳴が静寂を切り裂いた。
レンが持つ「死に戻り」は、単なる便利なタイムリープではありません。
1. 【亡者の残像(アフターイメージ)】(パッシブ能力)
死を繰り返すたびに、レンの瞳の中に刻まれていく数字。
• 現象: 命を落として時間が巻き戻るたび、瞳の奥に「死亡回数」がカウントされる。現在の数字は 【301】。
• 代償: 死の感触はリセットされず、すべてレンの精神に蓄積される。さらに、巻き戻った世界には「存在しないはずの因果の歪み」が残留し、それをプロキシが検知したことで、今回の「監禁・監視」へと繋がった。
• 外見の変化: 数字が増えるほど、髪は白さを増し、瞳の輝きは失われていく。
2. 【不透明な未来図(フラッシュバック)】
膨大な「死の経験値」の果てに手に入れた、一種の予知能力。
• 現象: 過去のループで起きた出来事や、因果の流れから導き出される「最悪の結末」が、断片的なビジョンとして脳裏に明滅する。
• 欠陥: 「何が起こるか結末」は見えるが、「いつ、どこで、何が原因で(過程)」起こるかが分からない。
• 例:「自分が死ぬ」ビジョンは見えても、それが何のせいなのかが判別できない。
• リスク: 未来を知っているがゆえに、「下手に動いて別の悲劇を引き起こすこと」を極端に恐れるようになり、初見の事態に対して行動が遅れるという致命的な弱点を抱えている。
(てな感じですかね)
<私の意見>
「未来がわかっているのに、なぜ助けられないの?」という疑問への答えは、この『不透明さ』と、リンたちによる『監視(チョーカー)』にあります。
レンは、リンたちとの「二度と死なない」という約束を守りつつ、不完全な予知の霧を晴らすために、あえて「確信を得るための死」を選ばなければならない。その矛盾と絶望が、見どころですかね!
誰とのストーリーを書いたらいいでふかね(選択肢にないキャラは私の妄想が乏しいために入っておりません。ご要望あれば教えてください)
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