リセット・ホロウ 〜死に損ないの観測者〜   作:くりぢゅん

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繰り返される絶望の果てに

 

 

「っひゅ...ぅ...げほっ...ひゅ......!」

 

喉の奥まで冷気が一気に流れ込み、肺がひっくり返るような衝撃に襲われた。生きてる。俺は今、空気を吸っている。

その事実を確認するためだけに、俺は自分の喉元を、爪が食い込むほど強く、何度も何度も掻き毟った。

 

肺が冷たい空気を一気に吸い込み、俺は跳ねるように上体を起こした。

視界に飛び込んできたのは、あの、見飽きたはずの薄暗い路地裏。

手元には、血に汚れた鉄パイプ。

 

「……え?」

 

声が震えた。

俺は、倒したはずだ。あの未知の怪物を。

雅を助け、リンとアキラを安全な場所へ連れ出したはずだ。

なのに、なぜ。

 

「……まじかよ。……嘘だろ」

 

膝の震えが止まらない。

救った。間違いなく、救ったんだ。あそこで終わるはずだったんだ。

なのに、また「雅が死ぬ直前」まで戻されている。

セーブ地点が更新されていない。

あんなに死んで、あんなに苦労して、やっと辿り着いた「あの結末」さえ、この力は『最善』とは認めなかったというのか。

 

「……ふざけるな。ふざけるなよ!!」

 

俺は誰にともなく叫び、壁を殴りつけた。拳から血が滲むが、そんな痛み、これまでに味わった「死」に比べれば塵に等しい。

俺の意志に関係なく、この呪いは俺に「さらに先の完璧」を求めている。

 

(……やるしかないのか。また、あいつと。……今度は、もっと早く、もっと完璧に)

 

立ち上がる足取りは重い。だが、心の中の炎は、絶望の深さに比例してどす黒く燃え上がっていた。

 

 

12度目のループ。

俺は、まるでビデオを早送りするかのような動きで怪物を翻弄した。

攻撃を予見し、無駄を削ぎ落とし、最短距離でコアを粉砕。

雅が驚く間も与えず、俺は二人の子供を抱き上げた。

 

「……そこは崩れる。こっちだ!!」

 

さっき、俺を押し潰した瓦礫。その落下タイミングを俺は知っている。

落下する石材の隙間を、流れるようにすり抜ける。

陥没穴が開く瞬間、俺はすでにその縁を飛び越え、さらにその先の、さっきの俺が辿り着けなかった「安全なルート」を突き進んでいた。

 

しかし、その先で待っていたのは、地下道に潜んでいた小型エーテリアスの大群だった。

子供たちを庇いながらでは、鉄パイプ一本では限界がある。

俺は、リンの目の前で、十数体の化け物に身体中を食い破られた。

 

 

 

……ドクン。

13度目のループ。

路地裏。

俺はもう、何も言わなかった。

ただ、静かに立ち上がり、パイプを拾う。

感情を殺す。心を石にする。

一回死ぬたびに、俺は「人間」を削ぎ落とし、この地獄を突破するための「刃」へと変わっていく。

 

14度目、15度目……。

ビルの崩壊を逆利用してエーテリアスの群れを埋め立て、ガスの充満したエリアを風向きを計算して駆け抜ける。

子供たちが吸い込む塵の量さえ最小限に抑え、雅が不安を感じる暇もないほど、鮮やかな手際で地獄の迷宮を攻略していく。

 

そして、25度目のループ。

俺は、月明かりが差し込む瓦礫の丘の上に立っていた。

背後には、傷一つ負っていない星見雅。

腕の中には、恐怖で泣く暇さえ与えられなかったリンとアキラ。

周囲は静まり返り、遠くでホロウの鳴動が響くだけ。

俺は、そっと子供たちを地面に下ろした。

全身を、形容しがたい疲労感が包み込む。だが、それ以上に重い緊張が、俺の心臓を締め付けていた。

 

(……今度は。今度はどうだ)

 

心臓の鼓動が耳元でうるさい。

また、どこからか瓦礫が飛んできて、俺を殺すのか?

あるいは、地表が割れて、俺を引きずり戻すのか?

数秒。数十秒。

永遠にも感じられる静寂の後。

 

……カチリ。

 

脳の奥で、何かが噛み合う音がした。

全身を縛り付けていた、あの不気味な停滞感が霧散していく。

路地裏にあった「起点」が消え、今、この月光の下に、新しい「確定した過去」が刻まれた感覚。

 

「……あ、あはは……。やっと、か……」

 

俺は、膝から地面に崩れ落ちた。

路地裏に戻されない。死に戻らない。

その事実だけで、俺の目からは、今まで枯れていたはずの涙が溢れ出した。

 

「……お兄さん? 大丈夫?」

 

アキラが、不思議そうに俺を見上げている。

その瞳には、恐怖ではなく、自分たちを救ってくれた「英雄」を見るような純粋な光が宿っていた。

雅が、信じられないものを見るような目で、俺を見つめている。

 

「あなた……何者なの?動き、判断……。達人でも、あんな芸当は……」

「……ただの、通りすがりの……ビデオ屋ですよ……」

 

俺は血の味しかしない口の中で、力なく笑った。

25回死んで、ようやく手に入れた「次の秒」。

だが、俺はまだ気づいていなかった。

この「100%の最善」を求め続ける呪縛が、俺の精神を、どれほど深い歪みへと追いやっていくのかを。

俺の掌は、まだ砕かれた時の感触を、焼かれた時の熱を、食い千切られた時の痛みを、生々しく記憶して震え続けていた。

 

 

 




口調がムズイ

誰とのストーリーを書いたらいいでふかね(選択肢にないキャラは私の妄想が乏しいために入っておりません。ご要望あれば教えてください)

  • イヴリン&アストラ
  • 朱鳶さん
  • 儀玄師匠
  • 福福先輩
  • ルーシー
  • シード
  • 雅課長
  • エレン
  • 邪兎屋
  • カリュドーンの子
  • ヴィクトリア家政
  • 対ホロウ特別行動部第六課
  • 雲嶽山
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