「……はは、静かだな」
俺は瓦礫の隙間から見える、赤黒く染まった空を見上げて乾いた笑いをもらした。
25回目の試行。ようやく手に入れた、誰も死んでいない静寂だ。
「お兄さん……、おてて、あったかいね」
隣に座るリンが、俺の大きな手を両手で包み込むように握りしめていた。
まだ8歳くらいの彼女の掌は小さくて、少しだけ埃の匂いがした。
隣ではアキラが、俺の膝を枕にして泥のように眠っている。小さな肩が規則正しく上下するのを見て、ようやく俺の心臓の鼓動も落ち着きを取り戻していった。
「……ねえ。あなたは、どうして私たちを助けてくれたの?」
反対側に座っていた雅が、膝を抱えたまま、吸い込まれるような瞳で俺を見つめてきた。
母親を失った直後の彼女の瞳には、まだ深い絶望の影が張り付いている。けれど、その奥には俺という「異物」への強い好奇心と、縋るような熱が混ざっていた。
「……どうしてだろうな。放っておけなかった。それだけだよ」
「うそ。貴方の動きは、ただの『放っておけない』なんて理由でできるものじゃない。……まるで、これから起こることのすべてを知っているみたいだった」
幼いながらも鋭い感性を持つ彼女の言葉に、俺の背筋が冷たく凍りつく。
知っているどころじゃない。俺はこの数時間の中で、お前が死ぬところを、この子たちが泣き叫ぶところを、何度も、何度も、網膜が焼き切れるほど見てきたんだ。
「……勘が鋭いんだよ、俺は。雅、お前は強い子だ。いつか、俺なんかの助けがいらなくなるくらい、強くなる。だから今は、少しだけ俺を頼ればいい」
俺は空いている方の手で、雅の頭を優しく撫でた。
雅は一瞬だけ驚いたように目を見開いたが、拒むことはしなかった。それどころか、子猫が体温を求めるように、俺の手のひらに自分の頭をそっと押し付けてきた。
「……ちゃんと、そばにいてくれる?」
「ああ。約束だ」
その言葉が、残酷な嘘になるかもしれないと知りながら、俺は微笑んだ。
リンが俺の腕に頬を寄せ、雅が俺の手の温もりを噛み締める。
血の臭いと崩壊に満ちた絶望の街。けれど、この狭い瓦礫の隙間だけは、世界で一番優しい時間が流れていた。
どれくらい経っただろうか。
遠くから、重々しいローターの回転音が聞こえてきた。治安維持局の救助ヘリだ。
俺たちが身を寄せていた瓦礫の隙間に、サーチライトの眩い光が差し込む。
「……助かったんだね、お兄さん」
リンが俺の腕に顔を埋め、震える声で呟いた。
俺はその小さな肩を抱き寄せ、ようやく「このループが本当に終わったこと」を実感した。 25回死んで、ようやく手にした朝日が、崩壊した街並みを白々と照らしていく。
「生存者を確認! 負傷者3名、および……無傷の男性1名です!」
駆け寄ってきた救助隊員たちが、慌ただしく子供たちを保護していく。
雅は「星見家」の息がかかった特務隊によって、半ば強引に別の車両へと誘導されていった。
「待って、あのお兄さんは……!」
雅が振り返り、必死にこちらへ手を伸ばす。 彼女の瞳には、母親を失った絶望だけではなく、地獄から自分を引っ張り上げた俺への、執着にも似た光が宿っていた。
「雅、大丈夫だ。また会える。……今は、休みを」
俺は力なく笑って手を振った。
次に、リンとアキラの番だ。二人は俺から離れるのをひどく嫌がり、救助隊員の制止を振り切って俺の服を掴んで離さない。
「お兄さんも一緒じゃなきゃ、行かない!」
「……ああ、後で行くよ。まずは傷の手当てをしてもらうんだ」
俺は二人の手を優しく解き、隊員に預けた。
「あぁ...良かった......」
二人の姿が救急車両の中に消えていくのを見届けた瞬間、俺の視界が急激に暗転した。
膝から崩れ落ち、冷たい地面に顔を伏せる。 痛覚はリセットされているはずなのに、脳はまだ「死の瞬間の衝撃」を反芻し続けている。
内臓をかき回されるような吐き気と、骨が軋む幻聴。
「おい、大丈夫か!? 君もすぐに病院へ……」
駆け寄る隊員の声を遠くに聞きながら、俺は意識を手放した。
これでいい。彼らが生きているなら、俺の死の記憶なんて、ただの安い代償だ。
誰とのストーリーを書いたらいいでふかね(選択肢にないキャラは私の妄想が乏しいために入っておりません。ご要望あれば教えてください)
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対ホロウ特別行動部第六課
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