「うわぁああ!?誰か助けてくださーい!?」
学校からの帰り道、路地裏から悲鳴とも嘆願ともつかない謎の声が響いてきた。
ここミレニアムは、他の自治区と比べれば治安はいい方ではあるが、やっぱりこういう騒ぎはどうしても起こる。どうせ放っておいても、ミレニアムに常駐している警備ロボやらが対処するだろうし、騒ぎが大きくなれば噂になっているC&Cとかが出るのだろうか。まだ実物をみていないので見てみたい。
やはり最近、ニュースで連邦生徒会長失踪とかやっていたので、その影響だろうか?確かそのあと犯罪率か何かがバカ程上がったとか。流石はキヴォトスだぜ。
馬鹿なことを考えていたら、段々と騒ぎが大きくなり、派手に爆音までし始めたので何となく野次馬根性が沸き、路地裏に足を進める。
ひょいっと軽い気持ちで路地裏を覗くと、何かえらく派手なピンク色が飛び込んできたので慌てて身を躱す。突撃の勢いで地面と仲良くなっているピンク色を視界に一瞬収め、路地裏に向きなおる。あのピンク色のお相手はヘルメット団だったようで3人ほどが、こちらに顔が見えないがニヤニヤとした雰囲気を出しながら歩いてくる。
「何見てんだ。見世物じゃねえぞ」
ヘルメット団の1人が、こちらに向かって犬でも追い払うように手を振ってきたので、軽く足を引いて場所を開けながら相手の装備を確認する。3人とも標準的な武器しか持っていないように見える。後は精々爆発物の類だけだろうか?
さて、どうするか。正直あのピンク色を助ける理由が、現状私には無いのだ。ここで下手に暴れて怒られても馬鹿らしいし。次の行動を考えていたら、ドンっとヘルメット団に肩をぶつけられた。
「おっと。すまねぇな。当たっちまっだぁ!?」
喧嘩を売ってきた相手にはきっちりお礼をするべし。肩をぶつけてきたヘルメット団に一瞬で距離を詰め、ヘルメットのバイザー部分に掌底を叩き込む。一瞬で意識を失ったのか、倒れこむ身体をすり抜け。隣にいたもう1人に向かって全弾叩き込み意識を刈り取る。狼狽しながらも何とか銃をこちらに向ける最後の1人に向かって、弾がなくなった愛銃を投げ付ける。…今日は使う予定がなかったので弾を余り入れてないのだ。
「…ンなのありか!?」
慌てて銃を避けようと、無理に身体を捻ったヘルメット団の胴体に足刀を放ち、吹き飛ばされた勢いで壁にめり込んだヘルメット団は出来の悪い壁画に代わる。
全員の無力化を確認し、放り投げた愛銃を拾い上げてホルスターに仕舞いこみ。何故かこちらを満面の笑みで見詰めるピンク色に視線を投げる。
「にはは。助けてくれてありがとうございます!」
何とも気の抜けた笑い方をするピンク色から一旦視線を外し、地面に寝そべっているヘルメット団を適当に路地裏に放り込んでいく。
「カツアゲに遭いそうになったのに元気なもんだな」
こちらに無防備に近付いてくるピンク色に手を振って答えながら、これからどうすべきかを考える。正直、この前も暴れて怒られたばかりなので、ヴァルキューレに通報はしたくないのだ。
「おーあったあった。意外に持ってますねー」
そう言いながら、さも当然のようにゴソゴソとヘルメット団の財布の中身を回収していくピンク色。
…滅茶苦茶図太いなこの女。
「にはは。それじゃあ一緒にご飯でも食べにいきましょう」
さも当然のようにこちらの腕を掴み、さっさと歩いていくピンク色と一緒にその場を後にする。
…警戒心とかないのだろうかこの子。
途中から、一緒に歩きながら軽く事情を聞くに。帰り際にヘルメット団を見つけて、何を思ったか声を掛けられてホイホイと着いていったそうで。それで当然のようにカツアゲされてるところに私が来て何とかなったと。にへらと笑いながらお礼を言うピンク色。
頭が目立ちすぎてよく見ていなかったが、どうやら私と同じミレニアム生だったみたいで、しかも、私と同じ1年生だというのが分かり学校の話である程度盛り上がる。助かったからお礼に奢ってくれるというので、近所のファミレスを目指す。そのまま近場のファミレスに着き、席に案内されるなり。
「にはは。改めて、助けてくれてありがとうございました」
そう言って深々と頭を下げ、こちらに感謝を伝えてくるのを適当に頷いて流す。助けるつもりなぞ欠片も無かったのだ。相手がわざと肩をぶつけてきて瞬間沸騰して暴れただけなので、まっすぐに礼を言われると非常に気まずい。
こちらの雰囲気を察してか、それとももう興味がないのか。さっさとメニュー表を広げ楽し気に眺めていくピンク色。
「そういえばまだ自己紹介してなかったですね。私、黒崎コユキっていいます。よろしくお願いします」
そう言ってまた、にははと笑いながらもう注文は決まったのだろう。こちらにメニュー表を渡してくる。それを受け取り、適当に流し見る。腹も減ってないし時間も時間なので頼んでもドリンクとポテトぐらいだろうか。
「私のことは一般人Aくらいに思ってくれていいよ」
多分、もう関わらないだろうし。学校が同じと分かってもミレニアムは恐ろしいほどに広いし。全校生徒合わせて確か数万人とかだったはずだから。会う可能性は大分低いだろう。
注文も決まったので、店員を呼ぼうと手を挙げようとしたら、慌てたようにこちらに勢いよく身体を寄せてくるコユキ。口を開く瞬間に軽く額を押すと大人しく座り直し、額を抑えながらどこか不貞腐れた顔のコユキに向かい口を開く。
「…何?」
ちょっとびっくりしたので、非難がましく見れば。コユキは唇を尖らせて不満を表す。
「折角だから名前教えてくださいよ」
割と傷付いた顔を浮かべるコユキに舌打ちをしつつ、こちらに不安そうに近寄ってくる店員に注文をする。それにつられてか、慌てて注文するコユキを見ながら、妙な女に捕まったと内心溜息をつく。いや、名前が嫌いなわけではないのだ。あまりいい思い出がないだけで。
これが、私とコユキの出会いで。腐れ縁の始まりだった。
私こと黒崎コユキには、とても大切な友達がいます。彼女は、私が何かすれば必ず駆け付けてくれて、一緒にユウカ先輩やノア先輩、ネル先輩。その他の迷惑をかけた人達に一緒に謝ってくれて。私が反省部屋に入れられた時には、自分も忙しいのに必ず毎日来てお話をしてくれます。彼女のお陰で私はまだセミナーをクビにならずに済んでいると思っています。なんせ彼女のお陰で何となくロックを破るのは悪いことだということを理解したのだから。
つらつらと今からここに来てくれる大切な人を待ちながら、手持ち無沙汰に髪を弄る。前まではピンク色一色だった自分の髪色。セミナーに入ることに決まってから、折角だからと髪を染めることにして二人で私に似合う色を話し合い。最終的には彼女の決めた色で染めることにして、髪をある程度染めた後にツーショットを撮った写真は私の大事な宝物だ。
「…にはは。やっと来てくれた」
今回やったことは、セミナーの名義で債権を大量に無断発行してカジノで無意味に使いまくることだ。理由?こういうバカみたいな騒ぎが起これば、彼女は必ず来てくれる。最近、保安部の活動が忙しくて会えていなかったのだ。可愛い悪戯だと思って諦めてもらおう。
ゴールデンフリース号の船上で待っていると複数の足音が響き、こちらに向かってネル先輩の怒声が響いてきて、一瞬身体が震える。が、その直ぐ後ろから響く慣れ親しんだ足音を聞いて心が跳ねる。今度は、どれくらい反省部屋に入れられるだろうか。これだけのことをしたのだ、この前より長い方がいい。この前持ち込んだボードゲームも全部は遊べていないのだ。一緒にやればきっと楽しいだろう。
「コユキ!」
C&Cの先輩方と先生?だろう大人の人と一緒に来てくれた私の友達が、真っ先に私の名前を呼んでくれる。知らず知らずのうちに頬が緩むのが自分でも分かり、私はこんなにも我儘だったのかと驚く。
私を囲むように展開されたC&Cの先輩方を軽く見回し、やっと来てくれた待ち人に視線を向ける。ネル先輩が理由がどうとか罪悪感がどうとか言ってきているが、適当に答えながら口を開く。だって今回のことは騒ぎを起こして、私の大事な友達を呼ぶことが目的であって、それ以上のことは何もないのだ。罪悪感なんて湧く訳がない。
「にはは!待ってましたよ」
嬉しくて涙で視界が滲んできたのを気合で堰き止め、渾身の笑顔で迎えうつ。負けて反省部屋に入れられるのは確定だろうけど、ただで負けるつもりはないので全力で抵抗するつもりだ。
「今回は派手にやったなぁコユキ」
「ええ!きっと沢山怒られますね!!」
呆れたように溜息をつきながら、それでいて楽しそうに武器を構える彼女。保安部に入ることが決まった時にエンジニア部に頼んで一新した装備をこちらに向けてくる。何故か銃にBluetooth機能を付けられたり、自爆装置が入っていると説明されて、顎が落ちんばかりに驚いていた彼女は見物だった。しっかりと写真を撮っているので、たまに見て笑っているのは私の秘密だ。
ついに限界が来て涙が流れ落ちるのも構わずに笑顔で応じて、銃を構えながら周りをしっかりと見据えると。それに合わせてネル先輩たちも銃を構え、大きな溜息を吐きながらも先生の指示の下、戦闘が開始される。
…まぁあっという間に負けて反省部屋に入れられたんですけどね!
「さぁ、一緒に遊びましょう!」
反省部屋にネル先輩の手で放り込まれ、部屋の隅に置いてあるボードゲームの準備を始めた私に溜息をつきながらも付き合ってくれるネル先輩に、慣れたように場所を確保する私の友人。いつもの私の行動をニコニコと近くで見守っているノア先輩とそれを見て一瞬で青筋を浮かべたユウカ先輩。
「…今度は負けねえからな!」
そう言いつつ駒を並べるのを手伝ってくれるネル先輩。ノア先輩も慣れたもので軽食の類を準備するためだろう足早に部屋を出てく。
「ちゃんと反省しなさいコユキ!」
ユウカ先輩の怒声が響き、私の、そして私の大切な人たちの笑い声が反省部屋に響く。
ああ。幸せだなぁ。
コユキの攻略wiki見て、こいつ実はお労しい子なんじゃと思って、何となく倫理観があって、大体いつも一緒にいてくれる友達を生やした話です。
主人公ちゃんの名前決めずに書き出して、決まらなかったのでそのまま投稿してます。決まったら変えるのでそのままにしておいてください