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モモトークの通知音で目が覚める。
『にはは!今日は、ユウカ先輩に言われたのでセミナーでお仕事しますよ』
『そうか。頑張れ』
『はい。ユウカ先輩に怒られないように適当にやるんで、そっちも頑張ってください』
時計を見ると、いつも起きる時間より少し早い。朝からコユキのモモトークで起こされたが、丁度いいのでそのまま起きることにする。洗面所に行き顔を洗い眠気を飛ばす。タオルで適当に顔を拭い、鏡に映る自分の顔というか、最近コユキに賭けで負けて一部染められた髪を一房摘まみ指先で弄り回す。何がいいのかコユキのあのピンク色と同じ色に染めたようで最初は違和感しかなかったが、今ではもう見慣れたものだ。しかし、毛先だけがピンク色というのは悪趣味なのではなかろうか。
そういう無駄なこと考えながらキッチンに向かう。今日の朝食は、適当に切ったパンにハムとトマトを挟んだお手軽なサンドウィッチとコンソメスープとホットココア。食べながら今日の予定を確認する。セミナーから仕事を任されたと先輩が言っていたので、今日は一日詰所で缶詰だろうか。
詰所内で班長から連絡事項を受け、仕事に移る。最近、ミレニアム内でセミナーに無断で商売をしている店が増えているという。我々保安部から半分程人員を出して、各店舗や路上販売の人たちを抜き打ち検査をすることになったそうで。私は外されたので詰所内で仕事である。
詰所内で先輩と一緒に仕事をこなす。今回、セミナーに任された仕事は、ミレニアムの生徒情報の確認である。たまにヴェリタスあたりが悪戯で弄るので、定期的にチェックするのだ。まぁ、私たちがやった後に、ユウカ先輩やノア先輩が最終チェックするので心配はないだろうが、サボる口実にはならないのでしっかりとこなす。
今日は比較的平和である。ゲーム開発部が他の部活を襲撃することもなく、エンジニア部の実験で実験棟の壁が消し飛んだくらいである。総じていつものミレニアムの風景だ。
「にはは!暇なので遊びに来ましたよ」
そう言いながら、詰所の扉を力強く開け放ち、真っ直ぐに私に向かって突撃してきたコユキを受け止めて、床に軽く転ばす。
「何するんですか!」
文句をあげながらも、何が楽しいのかニコニコとこちらを見ながら立ち上がる。もうセミナーでの仕事は終わったのだろうか。
「さぁ、一緒に遊びに行きましょう!」
「まだ仕事中だから待ってな」
作業中だった先輩や同僚に軽く頭を下げ、自分が座っていた椅子にコユキを座らせ。奥から空いた椅子を持ってきて隣に座る。
「コユキちゃん。よく来たねーお菓子食べる?」
先輩が親戚のおばちゃんのようなテンションで、詰所で常備しているお菓子をコユキに選ばせている。
「ありがとうございます!いただきますね」
元気よくお礼を言い、いくつかお菓子を手に取り食べ始める。最初は遠慮していたのに随分と慣れたものだ。
「もう終わったのか?」
「私の出来ることなんて大したことじゃないですからね」
もう終わりましたよ、と詰まらなそうに足をブラブラさせるコユキ。またアカウントの復旧やらをやらされたのだろう。退屈な作業だと割と愚痴っているから知っている。ユウカ先輩曰く、「人のためになる仕事」らしいがコユキがそれで納得するわけもなく。よく退屈だの誰でもできることだのと文句を言っている。
「ねー。いつ終わるんですかー」
もそもそとお菓子を頬張りながら、こちらの袖を引くコユキの手を軽く払い、先程コユキにお菓子を渡していた先輩に視線を移す。責任者である先輩は、時計に一瞬視線を走らせ悩まし気に腕を組む。同じように時計を見るが、終わるまではもう少し時間がある。
それまでコユキが大人しくしている保障がないので、このまま拘束するかセミナーに連絡して引き取ってもらうかという選択肢が出る可能性がある。正直、コユキを慰めるのは割と慣れたが、積極的にやりたいとは思わないので平和的に解決したい。
「…仕方ないか。ミツルギちゃんもうあがっていいよ」
「…いいんですか」
名前を呼ばれたため一瞬反応が遅れるが、何とか答える。…いい加減慣れないといけないとは思っているんだが、どうしても自分の名前が苦手だ。どうしても正義実現委員会のツルギ委員長の名前が先に浮かぶので嫌だ。
それを聞いたコユキの顔が、今までの笑顔より何段階か上がったかのような笑顔を浮かべる。今日が台風なら一発で晴れるんじゃないかっていう無駄に綺麗な笑顔だ。
「まぁ仕方ないよ。ここのデータ抜かれても困るし」
「にはは。そんなことしませんよ」
…何か言ってるぞ前科4犯が。
「…すいません。じゃあお疲れ様でした」
「はい、お疲れ様。明日もよろしくね」
挨拶をして、コユキを連れて詰所から出る。いつもより早めに終わってしまったので、どうすべきか考える。このままコユキと遊ぶにしても、どこで遊ぶかな。
「何処いきますか!私は何処でもいいですよ」
「…まぁ適当に歩くか」
コユキは何が楽しいのか、にはには笑いながら私の周りをくるくると踊るように歩く。ただ二人で歩くだけでも楽しいが、何処に行くか。コユキは割と体力がない方なので、あまり遠くまで連れていけないし。
「あ、やっぱりここに居た」
「おーユウカ先輩。何かありました?」
詰所から出て、二人揃って歩いていると後ろかろ声がかかり、振り向くとユウカ先輩がこちらに小走りに向かってくる。はて、何の用だろうかとコユキに視線を走らせるも。コユキも分からないらしく首を捻っている。
「コユキが最近大人しいから、労いの意味も込めて夕食でも一緒にどうかと思ったんだけど」
「にはは。最近いい子ですからね。しっかり褒めてくださいよ」
「調子に乗らないの」
「あ、私。あれがいいです!ユウカ先輩が前に作ってくれたハンバーグ」
「そんなのでいいの?貴方もそれでいい?」
「お願いします」
ユウカ先輩は料理も得意なのだ。きっといいお嫁さんになるだろう。
一つ大きく頷き、頭の中で何を買うべきかリストアップしているのだろう。軽く目を瞑りながら歩き去っていくユウカ先輩に大きく手を振るコユキにつられて小さく手を振る。
「美味しいのお願いしますねー」
コユキの声を背に受けて、力強く拳を空に突き出すユウカ先輩の雄姿に惚れそうになりながら、コユキを伴って外に出る。時間潰しのためにそのまま二人で適当に歩き、目に入った店を物色して回る。それを何度も繰り返していく。
ふと隣を見るとコユキの姿がなく。慌てて後ろを振り向くと 先程通り過ぎた露天商の商品を熱心に見詰めるコユキの姿が目に入る。
「何かいいの見つけた?」
「いやー綺麗だなと思って」
「ありがとなー嬢ちゃん。折角だから何か買ってくれー」
そう軽い調子で言いつつ、ロボット店主はブレスレットやら銃に付けられるアクセサリーやらを見せてくれる。全体的に怪しげな民芸品のようなラインナップだ。
取り敢えず渡された商品を受け取りじっくり眺める。私には全く分からんが綺麗だとは思う。値段も手頃だし先輩方へのお土産にしてもいいだろうか?でも買うならちゃんとした店のがいいのか?
ちらりとコユキに視線を向けると、最初に見ていた物が気に入ったらしく店主に頼んで包んでもらっていた。流石はコユキである。こういう行動力は本当に見習いたいものがある。
「にはは。何買うつもりですか?」
「折角だから先輩方への土産というか、ちょっとしたお礼でもと思ったんだけどなぁ」
どうもしっくりこない。いや、色合いは綺麗なのだ。綺麗なのだが、商品を見ていると、何といったか忘れたが何か不気味な白いペンギンモチーフのものも多い。許可をキチンと取っているのかと思い店主を睨むように見れば。こちらの視線なぞ意に介していないようで胡散臭い笑顔を張り付けたまま営業トークを始めた。
「お嬢さん方は運がいいですよ。今回、ミレニアムに店を出すにあたってセミナーの方々から許可をもらいましてね。そのお礼と言っては何ですが、最近売り上げがいいペロロ関連グッズを増やしまして。是非、お買い上げの程を」
おどけた調子で頭を軽く下げる店主に一言断り、店先を離れる。そのままコユキに店主の話を聞いているように頼み。路地裏に向かいノア先輩に連絡する。
『…はい、どうかしましたか?』
「先輩、ちょっと質問がありまして」
『ユウカちゃんの件ですか?それなら腕によりをかけて作ると張り切ってましたよ』
「そっちも気になりますが、実は怪しげな露天商を見つけまして。本人はセミナーの許可を取っていると」
『…んー。ここ半年でそういう連絡された方は何名もいましたが、その店主さんはどのような方ですか?』
「普通のロボット市民に見えましたが」
そっと通りの端から顔を覗かせ、観察するもコユキと何か話しているらしく。こちらまで楽し気な笑い声が響く。店主の方を見ても特に特徴がないそこら辺を歩いているロボット市民と同じに見える。
『ふむ。何名か候補は浮かびますが、一応許可証を発行しているので、それの確認をお願いできますか?』
電話口からはノア先輩の悩まし気な声が漏れる。まぁ面倒ごと持ち込まれたら、そうもなるわな。
「ありがとうございました。それではまた今夜」
『はい。ユウカちゃん共々楽しみに待っています。怪我には気をつけてくださいね』
ノア先輩にもう一度礼をいい通話を切る。ちらりと路地裏から店先を見ると、コユキが興奮したように叫んでいる。
「あ、戻ってきた。遅いですよ」
「すまん。仕事の電話だ」
「おやまぁ学生さんも大変だ」
ニコニコと微笑む店主に、適当に目に付いた商品を渡し紙袋に詰めてもらい代金を支払う。商品を受け取り、胸に吊るした学生証をひっくり返し保安部のエンブレムを見えるように目の前に持っていくと店主の顔色が変わる。
「お客さんこれは一体どういうおつもりで?」
「簡単な確認です。最近、セミナーに無断で商売をされている方が増えたそうで。許可証か何かお持ちですか?」
「…くっそ!」
そう悪態をつきながら店主は懐に手を伸ばす。それを顔面に蹴りを入れ妨害する。吹っ飛んでいく店主の姿を追いかけるように加速しながら銃を引き抜き。一瞬で店主を追い越し、無防備な腹を踏みつける。その反動で上がった顔面に銃弾をばらまいていく。相手が動かなくなったのを確認し、保安部に連絡を入れる。
「あー先輩。多分、許可証持ってない露天商捕まえたんで後任せていいですか?」
『あらまぁありがと。それじゃあそっちに人出すから拘束して転がしといて』
そう言って部隊を指揮するためだろう通話は切られる。周りを探すと店で使っていただろうロープを見つけ、それで手早く店主を拘束していく。拘束する途中で店主の掌から、私が買ったであろう商品が入った紙袋が転がり、拾い上げてベストのポケットに放り込む。
「何してるんですか突然暴れて!?」
「この店主セミナーに許可もらってない可能性があるんだって」
まだ確認してないけど8割方クロだろうとは思う。普通にいい店ぽいからちゃんと許可とればいいのに。
いや、そういうことしないから大人なのか?
「うえー。そんな悪い人だったんですかこの人」
「多分そうかな」
「にはは。じゃあ私と一緒でユウカ先輩に沢山怒られるんですね」
まぁ私は最近怒られてませんが!と胸を張りこちらを見てくるコユキの額を軽く押して、さっさとミレニアムタワーに足を向ける。慌てたような足音が後ろから続き、コユキの頭がぴょんと隣から飛び出してくる。
「もういい時間だろうからユウカ先輩のとこ行こうか」
「はい。ハンバーグ楽しみです」
二人並んで歩きながら、ポケットの中から紙袋を取り出す。コユキが興味深々といった顔でこちらの手元を見てくるので、見えるように袋を逆さにし商品を掌に転がす。
どうやら髪飾りの一種のようで、中央には何かの鳥が太陽に向かって羽搏く様子が描かれている。結果的に必要もないのに随分と洒落たものを買ってしまった。自分の髪は纏めるほど長くないのだ。
「おー綺麗ですね」
「全く気にせず買ったが、いいもんだな」
「あ、私のも見ますか!」
そう言って袋に手を突っ込みガサゴソいわせながら何かを掴み、こちらに見せてくるコユキ。コユキの掌の中を見ると兎をモチーフにしたブローチ?のようで、大小二匹の兎が仲睦まじい様子で身を寄せ合っているのを稲穂だろう植物が周囲を囲み。上空には満月が浮かんでいる。一目見ただけでも良いものだろうと分かる一品だ。
やっぱちゃんとした許可とった方がいいのではあの店主は?
「で、見ててくださいよ!」
そう言って、ブローチ?をひっくり返しカチャカチャと手元で弄り回すと、先ずは兎が外れ、思わず声をかけるが、止まらず次々と分解していくコユキ。手元でバラバラになったブローチだった物をこちらにスッと差し出してくるコユキに軽く引きながら一つを摘み上げると、後ろ側に凸凹が走っているのを発見し。元からこういう商品だったのだと悟る。
「ね!ね!すごいですよねこれ!」
「ホント凄いなこれ!こんなんあるのか」
「しかもこれカフスボタンにも使えるんですって!」
「マジかよすげえな」
ますます何でちゃんと許可とってないんだあの店主。
「で、ですね。ミツルギちゃんにこれ使って欲しいんですけど」
「…いいの?コユキが買ったやつじゃん」
「にはは。何か送りたくなったんですよ」
「分かった。ありがとな」
そう言い受け取れば、嬉しそうに微笑みながら、こちらに元気よく掌を差し出してくるコユキの姿。
「…何その手?」
「にはは。折角だからさっきの髪飾りくれませんか?」
「えー。折角買ったのにか?…まぁ使わないからいいのかな」
「ですです。で、私の髪をそれで纏めてですね。先輩方をびっくりさせちゃいましょうよ!」
最高の提案である。二人して笑いあい近くにあった椅子にコユキを座らせゆっくりと髪を梳いていく。相変わらず癖っ毛もなく指がするりと通る。大体真っ直ぐになった所で髪を結い上げて買ってきた髪飾りでコユキの髪を留める。それを写真に撮りコユキに見せれば、くすぐったそうに微笑み。こちらに顔を寄せてくる。
「ありがとうございました。先輩方きっとびっくりしますよ」
「よく似合ってるぞコユキ」
「…にはは。ありがとうございます」
照れ臭そうに顔を背けるコユキの後頭部に自分が買った髪飾りが見える。活動的なコユキにはよく似合うことだろう。たまにでいいので使ってもらえればありがたい。
こちらもコユキにもらったボタン類を制服にでも取り付けるとしよう。今日、明日にでも終わるだろうが休日に一気にやった方が気分がいいだろうからそうしよう。そして写真をコユキに送って、また一緒に遊びに行こう。きっと楽しいぞ。
ユウカ先輩に指示されたミレニアムタワーの一室に足を運び、扉を開ける。中から何とも食欲をそそる匂いが立ち込み思わず唾を飲み込む。
ユウカ先輩にノア先輩が準備をしているのを目で追いながら、何か手伝うべきかと悩む。コユキはさっさと席に座りこちらに座るように催促してくる。
ユウカ先輩に目で問いかければ、笑顔で座って待つように言われ。大人しくコユキの隣に腰を下ろす。
殆ど待つことなく準備が整い料理で満たされたテーブルを眺める。デンと正面に置かれた私の顔くらいはありそうな肉厚なハンバーグに、シジミと豆腐の味噌汁。野菜炒めに茶碗にたっぷりと盛られたご飯。何とも食欲が刺激される光景だ。
コユキと共に先輩方にお礼をいえば、照れ臭そうに頬を掻くユウカ先輩にそれを嬉しそうに眺めるノア先輩の姿。
コユキの頭を見てから私の顔を見て、ゆっくりと頷き。何とも嬉しそうに口を開くノア先輩。
「コユキちゃんの髪がいつもと違いますけどミツルギちゃんが?」
「あぁはい。先程電話した件で」
「あぁ分かりました。随分いいお店だったんですね」
「ちょっとノア。私その話知らないんだけど!」
「まぁその話は後にしましょうかユウカちゃん」
「にはは。似合ってますかユウカ先輩?」
そう言って、対面に座るユウカ先輩に見えるようにだろう。その場で立ち上がり、軽く一回転してみせるコユキ。
「危ないから座りなさいコユキ。ちゃんと似合ってるから大丈夫よ」
「はい。可愛いですよコユキちゃん」
「にはは。ありがとうございます」
大人しく座り直しながらこちらに笑顔を向けてくるコユキにピースサインを返し、笑いあう。
「じゃあ、冷める前に食べましょうか」
ユウカ先輩の一言で、4人が手を合わせて。
『『『『いただきます』』』』
多分、本編に絡めないで日常話書いてると思います。
今回の周年ガチャで知らない子が沢山来たのでそっちで何か書くかも。
以下、読まなくてもいい主人公ちゃんのスペック
斎藤 ミツルギ
★1 タンク
好きなこと コユキと遊ぶこと 襲撃の阻止
武器名 保安部正式短機関銃改造型 ブレイクスルー
保安部正式短機関銃をエンジニア部に持ち込み改造した一品
簡単に使えてひたすら頑丈で取り回しがよい名品
自爆装置は外してもらったが財布代わりには使える。