「フレア団以外のみなさん、残念ですが、こんにちは」生き残っちゃったみたいなので、全力で美の追求をしたらこうなった。(どうしてこうなった? 繰り返す。どうしてこうなった!!)美しくなぁぁぁぁぁいい!!!   作:をよよ

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マチエール「ドローン作って(要件)」
F「任せろ。これが破壊の繭と、美しき世界を象徴した究極のソリューションだ(成果物)」
マチエール「なんで背中にハエ生えてんの?」

ポケモンレジェンズZ-A待機。 もしも数年後のミアレシティで、ハンサムハウスの所長になったマチエールと、F(フラダリ)が、デスマーチ寸前のシステム開発ごっこをしていたら……という幻覚です。

▼あらすじ
捜査の効率化のため、マチエールはFに「小型ドローン」の開発を依頼する。 しかし、Fの独自の美学(という名のバグ)により、要件定義はあらぬ方向へ。 数日後、納品されたのはUSUMでプレイヤーをざわつかせた「あの伝説のダサ装備」だった――。

▼注意
キャラ崩壊・独自設定:F氏が残念なメカニックおじさんになっています。
メタフィクション:第四の壁を破壊しています。ネットの評判(ハエ、クソコラ)ネタを含みます。
IT用語の乱用:「美しさ」を非機能要件に含めるPM(プロジェクトマネージャー)が出てきます。

F「ネットでの私の評価(エゴサ結果)が、あんなにも散々だとは……解せぬ」
マチエール「現実見ようよ」


第14話:残念ですが、マチエール、その装備はネットで「ハエ」と呼ばれています

 ハンサムハウスのデスクにて。

 マチエールは手書きのメモ――彼女なりの要望書――を提示し、対面に座る大男、Fことフラダリをじっと見つめていた。  フラダリは持参したタブレット端末に向かい、ピアニストのような優雅な手付きで入力を続けている。

 

「……でね、これが今月の『未解決案件リスト』。最近、通気ダクトとか床下配管を通って逃げる犯人が多いんだよ。もこおに入ってもらうのは危ないし、汚れちゃうでしょ? だから、『狭いところに入って、中の様子を撮影できる小型ドローン』を作ってほしいの」

 

 マチエールの訴えに、Fはふむ、と顎に手をやった。

 

「なるほど。『現状分析(As-Is)』としては、君の大切なパートナーをキツく危険で不潔な環境(3K)に従事させている……というわけか。実に嘆かわしい。その『課題解決(To-Be)』、私が引き受けよう」

 

「助かるよ、おっちゃん! で、要望はシンプルだよ。必要な機能は『暗視カメラ』と『静音移動』。予算はあんまりないから、余計な機能はいらないよ。あと納期はなるべく早くね!」

 

 しかし。  タブレットを操作していたFの指が止まり、その眉間に深い皺が刻まれた。

 

「……マチエール。君の要求仕様書(リクワイアメント)には、致命的な欠陥があるな」

 

「えっ? どこ? 普通だよ?」

 

「『暗視(ナイトビジョン)』……? いささか貧相な『仕様(スペック)』だ。暗闇に潜む悪を暴くならば、コソコソと緑色の画質で覗き見るのではなく、圧倒的な『光』が必要だろう?」

 

「いや、隠れて撮りたいんだから暗視でいいの」

 

 マチエールの正論を、Fは大きく手を振って遮った。

 

「Non! 断じてNonだ! カメラのISO感度を上げるなどという妥協は許さん。ダクト内を真昼のように照らす『百万ルーメンの超高輝度照射機能(フラッシュ・オーバー)』を標準実装しよう。これにより、隠れた埃ひとつ、犯人の毛穴ひとつ見逃さない『8K高解像度撮影』が可能になる」

 

「眩しいわ!! そんなの光らせたら『ここにいまーす!』ってバラしてるようなもんじゃん! 隠密捜査なんだから! バレちゃダメなの!」

 

 チッ、とFが露骨に舌打ちをする。

 

「……隠密性。なるほど、『ステルス機能』か」 「そうそう! 静かに動ければそれで……」

 

「ならば、機体表面にカクレオンの体組織構造を模倣した『光学迷彩装甲』を採用しよう。さらに、敵に見つかった際のリスクヘッジとして、機体から『催眠ガス』と『広域電磁パルス(EMP)』を散布する『自動迎撃システム』も組み込む必要があるな。これで生存率は飛躍的に向上する」

 

 マチエールの背筋に、冷ややかな悪寒が走った。  この男に任せると、いつもこうなる。

 

「……ねえ、それ付けるとドローンはどのくらいの大きさになるの?」

 

「放熱板と薬剤タンク、予備ジェネレーターを含めれば……概ね直径80センチといったところか」

 

「デカいよ!! 通気口の幅はせいぜい20センチだよ!? 入らないじゃん! タイヤみたいな塊がダクトに詰まって終わりだよ!」

 

 するとFは、さも心外だと言わんばかりの顔で言い放った。

 

「ならば通気口を広げればいい。破壊してな」

 

「探偵の仕事じゃなくなる!! もういいから! 機能を削って! ライトもガスもいらないから、とにかく小型化してよ!」

 

 ガタッ、と椅子が音を立てる。  立ち上がったFは、ライオンのような威圧感でマチエールを見下ろした。

 

「……機能を削る? 私に……『美しさ(スペック)』を妥協しろと言うのか?」

 

「美しさとか言ってないじゃん! 小型化のために要らないものを捨ててって言ってるの!」

 

「小型化のために排熱処理を疎かにすれば、機体が熱を持ち、美しい流線型のフォルムが歪んでしまう。いいかマチエール、君は単なる『道具』を求めているようだが、私は『完全な世界の一部』を実装しようとしているのだ」

 

「あのねえ……おっちゃん。あたしが欲しいのは『今日使える道具』なの! そんなゴテゴテした機能をつけて、予算(コスト)も納期(デリバリー)もオーバーしたら意味ないでしょ!? エンジニアなら、QCD(品質・コスト・納期)のバランスを考えてよ!!」

 

 ダンッ!!  Fの拳が机を叩き、タブレットが震えた。

 

「ひっ!?」

 

「愚かな……! マチエール、君は勘違いをしている。『機体が美しいか』『機能が圧倒的であるか』……これらは、重大な非機能要件だ! QCDバランスなどという俗な制約を無視し、Q(クオリティ)優先で取り組もう!」

 

「なんでそうなるのーーっ!! 非機能要件って『可用性』とか『セキュリティ』とかそういう話でしょ!? 『美しさ』とか『圧倒的』とか仕様書に書かないでよ!! そんな要件定義聞いたことないよ!!」

 

 マチエールの悲痛な叫びを無視し、Fは遠い目をして宣言する。

 

「コスト(C)は私が持つ(借金だが)。デリバリー(D)は……そうだな、完成まで3年は待ってもらおう」

 

「探偵事務所つぶれちゃうよ!!!」

 

「安心したまえ。3年後には、君はこのミアレシティの全ての情報を掌握する『神』になれるのだから……」

 

 Fはブツブツと独り言を呟きながら、ふらりと退室してしまった。  残されたマチエールは、天井に向かって吠えるしかなかった。

 

「話を聞けーーーっ!!」

 

 ***

 

 それから数日後のこと。

 ハンサムハウスの玄関前で、マチエールはドアノブをガチャガチャといじり続けていた。だが、開く気配は一向にない。

 

「あーもうっ! 全然回んない! ハンサムさんがケチって安物の錠前なんて使うから、雨で錆びちゃったよ……。これじゃ家に入れないじゃん。ピッキングツール、中にあるのに……」

 

 途方に暮れる少女の背後から、優雅な低音が響いた。

 

「……ふむ。玄関前で立ち往生か。探偵事務所が自ら閉め出されているとは、皮肉な光景(ビュー)だな」

 

「あ、Fのおっちゃん! 笑ってないで助けてよ。……っていうか、頼んでた『ドローン』できた?」

 

「ああ、完璧に仕上がったぞ。君の要望……『暗い場所での視認性』『隠密性』そして『圧倒的な解決力』。それら全てを統合し、私の美学で再構築した『究極の捜査ユニット』だ」

 

 自信満々のFに、マチエールは疑いの目を向ける。

 

「……なんか、嫌な予感がするんだけど。『小型化』できたの? 直径20センチ以下って言ったよね?」

 

「愚問だな。私は考えたのだ。ドローンという『外部端末』に頼るからサイズに制限が出る。ならば、『君自身がドローンになればいい』とな」

 

「は? 何言ってんの?」

 

「さあ、これを受け取りたまえ。私が徹夜で組み上げた、『H0c N0n Es-T Mus-CA Omega(ホク・ノン・エスト・ムスカ・オメガ)』だ!」

 

 Fが恭しく取り出したのは、鮮やかな蛍光オレンジ色の、金属光沢を放つ機械的なバックパックだった。中央には怪しげな動力炉のようなものが埋め込まれている。

 

「デカいよ!!! これランドセルじゃないよね!? 明らかに重機の一部だよね!? あと色が派手! オレンジって一番目立つ色じゃん!」

 

「何を言う。これは警告色だ。自然界において、強者は自らの危険性を誇示することで無駄な争いを避ける。これこそが究極の隠密性(ステルス)……すなわち『敵が恐れをなして逃げるから誰にも見つからない』理論だ」

 

「理論が破綻してるよ!!」

 

「いいから装着したまえ。背負えば分かる。その圧倒的な全能感が」

 

 マチエールは渋々、その重厚なバックパックを背負った。ズシリとした鉛のような重みが、華奢な肩に食い込む。

 

「うぐっ……重い……。これ、中に何入ってんの……?」

 

 Fがニヤリと笑った。

 

「起動スイッチ、オン」

 

 ウィィィィン……。

 

 高まる駆動音と共に、ガシャッ!!! と甲高い音が鳴り響く。

 

「うわっ!?」

 

 マチエールの背中から、収納されていた巨大な3本の機械アームが扇状に展開されたのだ。それぞれの先端からは、禍々しいオレンジ色のエネルギー光が漏れ出し、ブウンブウンと低い唸りを上げ始めている。

 

「素晴らしい……! 適合率100%だ! さらに、この『戦術情報処理バイザー(タクティカル・グラス)』を装着すれば完成だ!」

 

 Fは強引に、マチエールの顔に赤いサングラス状のバイザーを装着させた。視界が一瞬で毒々しい赤色に染まり、謎の文字列(通称:フラダリOS)が高速で流れ落ちていく。

 

「ちょ、前が見えない! 赤い! 世界が赤いよおっちゃん!!」

 

「安心しろ。それは敵の弱点(急所)を自動検索しているのだ。さあマチエール。鏡を見てみたまえ。そこに映るのは、路地裏の探偵ではない。新世界の神にも等しい、美しき執行者の姿だ!」

 

 マチエールは恐る恐る、ショーウィンドウに映る自分の姿を確認した。  そこには、巨大な爪を背負い、赤いバイザーで顔を隠した、どう見ても『特撮番組のラスボス』が立っている。

 

「…………」

 

 その姿は、オレンジ色の巨大な3本アームを背負い、赤いバイザーで顔を覆った、紛れもない『ウルトラサン・ウルトラムーン』終盤のフラダリそのものであった。

 

「……………………」

 

「どうだマチエール。言葉も出ないだろう? この背面の3つのユニットは、カロスを守護する『ジガルデ』、そしてアローラ地方の伝説『日食・月食』を概念的に統合した、神に近いデザイン……」

 

 うっとりと語るFを遮り、震える声が漏れた。

 

「………嘘だ」

 

「ん? 感動で声が震えているのかね?」

 

「嘘だあああ!! 絶対に嘘だあああっ!! なにこれ!? なんであたし、これ着せられてんの!?」

 

「なぜと言われても……それが最強だからだが」

 

 マチエールは地団駄を踏んだ。

 

「とぼけないでよ!! あたし知ってる! 知ってるよこれ!! ネットで見たもん! プレイヤーのみんながザワついたやつじゃん!! それ、『異世界のあんた(USUM)』が最後に着てたヤツじゃん!!」

 

「異世界……? USUM(ユーエスユーエム)……? 君は何の話をしているんだ? 新手の暗号コードかね?」

 

「検索履歴見せてやろうか!? 『フラダリ ハエ』とか『フラダリ クソコラ素材』で検索すると、あんたのその姿が大量に出てくるんだよ!! 『なんで背中にハエ生えてんのw』とか『メカアームの主張が激しすぎるw』って、プレイヤーたちに散々イジられてた、あの伝説のダサ装備じゃん!!!」

 

 ガーン、という効果音が聞こえそうなほど、Fが硬直した。

 

「ダ、ダサい……? ハエ……? クソコラ……? し、心外だな……。これは機能美の頂点(ピーク)であり、選ばれし者だけが纏える『王の装束』なのだが……」

 

「王様はそんな『昆虫』みたいなランドセル背負わないの!! デザインの意図とか高尚な理屈はどうでもいいの!! これ背負ってミアレの街歩いたらどうなると思ってんの!?」

 

「どうなる……? 市民は頭を垂れて蹲(つくば)い、 平伏するだろう」

 

「違うよ!! 『あ、レインボーロケット団だ』って指差されて通報されるんだよ!! 警察(ハンサムさん)に捕まるんだよ!! 探偵の『隠密捜査(ステルス)』どころか、『世界征服の宣言(アピール)』だよ!!」

 

 ムッとした表情で、Fは腕を組む。

 

「マチエール、君はネットの評判に毒されすぎだ。大衆(プレイヤー)の評価など気にするな。重要なのは、これが『強い』という事実だけだ」

 

「強くても嫌なの!! あと、このバイザーのせいで視界が真っ赤なんだけど! 街の景色が全部『終末世界』に見えるんだけど!」

 

「それが『私の見ていた世界』だ。どうだ、美しいだろう? 燃え上がるような赤……」

 

「眼科行ってこい!!!」

 

「まあ待ちたまえ、マチエール。論より証拠(PoC)だ。君は今、『ドアの鍵が開かない』というユースケースで困っているな?」

 

 マチエールはハッとした。

 

「うん。だからピッキングツールとか、潤滑油とかないかって……」

 

「ピッキングなどというちまちました手段は美しくない。それはあくまで『対症療法』だ。鍵が錆びればまた開かなくなる。エンジニアならば、『抜本的な解決(ソリューション)』を目指すべきだろう?」

 

「嫌な予感しかしないんだけど……」

 

「このアームの真価を見れば、君も評価を改めるはずだ。システム・オールグリーン。……起動、アルティメット・ウェポン・モード!」

 

 ブウウウウウン……!!

 

 重低音が空気を震わせる。  背中の3本のアームの先端が展開し、赤黒いエネルギーがバチバチと音を立てて充填され始めた。周囲の空気が帯電してビリビリと震え、近所の犬が一斉に吠え出す。

 

「ちょっと待って!? 何チャージしてんの!? 音がヤバい! それ解錠の音じゃない! 最終兵器の起動音だよ! ここ住宅街だよ!?」

 

「騒ぐな。繊細なコントロールを行う。私の計算では、出力0.02%の『破壊の光』を一点集中照射すれば、ドアノブ周辺の分子結合だけを美しく昇華(蒸発)させることができる。……ターゲット・イン・サイト」

 

「やめて! 蒸発させないで! 賃貸なんだよ! ハンサムさんに怒られるよ!」

 

 Fは聞く耳を持たない。

 

「マチエール、よく聞け。鍵穴などという『レガシーシステム』に頼るから、錆びつき(バグ)や紛失といったトラブルが起きるのだ。ならば、最初からドアに『人が通れる穴』を開けておけばどうだ? 永遠に鍵紛失のリスク(脆弱性)はゼロになる!」

 

「セキュリティホール(物理)を作ってどうすんのよ!!! 泥棒入り放題じゃん!! 鍵かけられない家なんて家じゃないよ!!」

 

「セキュリティだと? 愚かな……。私がこの街にいる限り、私の監視下にあるこの事務所に侵入しようなどという不届き者は、センサーが感知して瞬時に消し炭になる。よって、ドアなどという物理障壁は不要(ノン・ファンクション)なのだよ!!」

 

「あんたが一番のセキュリティリスクなんだよおおお!!! 近所迷惑だからやめて! あ、大家さんが窓から見てる! こっち見てるよ!!」

 

「フン、見物人か。いいだろう、私の美しき『ブレイクスルー』を目に焼き付けるがいい!! 発射(ファイア)!!!」

 

「人の話を聞けえええええっ!!!」

 

 Fの発射合図と共に、背中のアームが臨界点に達する。漏れ出した熱波で、マチエールの前髪がチリチリと焦げ始めた。

 

「熱い熱い熱い!! 髪が焦げてる!! もう限界! 知らないからね!!」

 

 マチエールは驚異的な身体能力を発揮し、エネルギー充填中のバックパック側面にある「緊急パージ(強制解除)」ボタンを拳で殴りつけた。  バシュッ! と留め具が弾け飛び、重厚な機械が背中から外れる。

 

「いらないーーっ!!!」

 

 マチエールは渾身の力で、そのオレンジ色の鉄塊を真上の空へ向かって放り投げた。

 

「あっ、待て! 射線軸が……!」

 

 ドカーーーーン!!!

 

 上空数メートルで「アルティメット・ウェポン・モード」が暴発した。  放たれた破壊光線は幸いにも虚空へ吸い込まれ、ハンサムハウスの上空に、オレンジ色の無駄に美しい花火が咲き乱れる。パラパラと、焼け焦げた部品が雨のように降り注いだ。

 

 焦げた前髪を押さえながら、マチエールは死んだ魚のような目で空を見つめていた。

 

「…………」

 

「……なんだね。出力不足だったか? それとも、花火の色味が気に入らなかったかな?」

 

 のんきに空を見上げるFに、マチエールは低い声で告げた。

 

「……Fのおっちゃん」

 

「次の改善案(アップデート)だが、やはりアームを5本に増やして……」

 

「二度と! その『ハエ装備』を持ってこないで!! あと、その赤いサングラスも禁止! あたしは探偵なの! 特撮の悪役じゃないの!!」

 

「しかしマチエール、機能美というものは……」

 

「うるさい!! 今すぐ家に帰って、タブレット開いて、『フラダリ ハエ』でエゴサーチして!! ネットのみんなが、あんたのその格好を見てどう思ってるか、しっかり現実を見てから出直してきて!!」

 

 ショックで、Fがよろめいた。

 

「解せぬ……。あのフォルムこそ、強さと美しさの象徴であり、アローラの頂点だったはずなのに……。なぜ世界は、これを『ハエ』と呼んで嘲笑うのだ……」

 

「いいから帰って!! あと、この玄関前の焦げ跡、おっちゃんの請求につけとくからね!!」

 

「……承知した。孤独な王には、理解者は不要……ブツブツ……」

 

 Fは肩を落とし、黒焦げになったハエ装備の残骸を寂しげに回収すると、夕日の中をトボトボと歩き去っていった。  その背中は、かつて世界を滅ぼそうとした男とは思えないほど小さく見えた。

 

 ***

 

 それから数十分後。

 ハンサムハウスの前には、一台の軽トラックが停まっていた。

 

「はいよー、鍵の交換じゃな? まったく、手荒な真似をしたもんじゃのう。ドアノブが熱で溶けとるわい」

 

 ラシーヌ工務店のタラゴン爺は、呆れ顔で工具を取り出している。マチエールは乾いた笑い声を漏らした。

 

「あはは……まあ、ちょっと『大きな虫』がぶつかってきちゃって。お爺ちゃん、安くしといてね?」

 

「任せとき! その代わり、今度ウチの孫(カナリィ)の配信見てくれよな! ピヨ☆」

 

 マチエールは、平和に直っていくドアを見ながら、心底願った。

 

(ハンサムさん……早く帰ってきて。この街、変な大人しかいないよ……)

 

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