「フレア団以外のみなさん、残念ですが、こんにちは」生き残っちゃったみたいなので、全力で美の追求をしたらこうなった。(どうしてこうなった? 繰り返す。どうしてこうなった!!)美しくなぁぁぁぁぁいい!!! 作:をよよ
記憶を失い、Fとして生きるかつての男と、3000年の旅を終えようとするAZ王。 二人が再開発中のミアレシティを見下ろしながら、過去の「功罪」について語らうお話。
……だけのつもりだったのですが、気付いたらクロワッサンカレーのせいで台無しになる話になっていました。
シリアス9割、ギャグ1割(体感)、情緒の寒暖差で風邪をひきそうな内容ですが、広い心でお楽しみください。
【あらすじ】
全ての事件が解決したミアレシティ。 AZは愛する暴走後のフラエッテと再会し、Fに見守られながら静かに天寿を全うしようとしていた。 かつての破壊者たちが互いを赦し合う、涙なしには語れない感動のフィナーレ。
しかし、昇天しかけたAZの足が止まる。 彼には、どうしても成仏できない「心残り」があった。 それは、ホテル・Zの名物――「クロワッサンカレー」という名の食文化への冒涜についてだった……。
耳をつんざく風切り音と、極寒の成層圏ツアー。
ジガルデ・パーフェクトフォルムに鷲掴みにされたまま、地球を数周するという強引すぎる「空中散歩」の果てに。 Fを乗せた――すでにボロボロになった――黄金の椅子は、ミアレシティを見下ろす郊外の丘の上へ、唐突に、しかし妙に静かに着陸した。
「……ぐ、え……」
ガシャン、という硬質な音と共に、首を締め付けていたギプスが砕け散る。 Fは地面に投げ出された椅子から無様に転げ落ち、四つん這いになって荒い息をついた。かつては最高級の仕立てだったタキシードは風圧でボロ布のようになり、髪は逆立ち、顔面は死人のように蒼白だ。
「はぁ、はぁ……! おい、トランスフォーマー……! 俺を……どこへ……連れて……」
Fが文句を言おうと顔を上げると、そこにはもう巨人の姿はなかった。 代わりに、朝日を浴びて緑色の光の粒子が舞い、一匹のドーベルマンのような姿――ジガルデ・10%フォルム――が、ちょこんと座っていた。
『ワン(来い)』
「……は?」
ジガルデはFのボロボロになったズボンの裾を咥え、グイグイと丘の先端の方へ引っ張っていく。 眼下には、暴走事故から復興しつつあるミアレシティの美しい街並みが広がっていた。東の空から差し込む朝日が、プリズムタワーを神々しく照らし始めている。 あまりの静けさに、Fの怒りは行き場を失い、不思議な透明感が胸に広がっていくのを感じた。
導かれるままに数歩進んだFは、大きな木の下で息を呑んだ。
そこには、三メートル近い巨躯を持つ男――AZ王が、崩れ込むように座り込んでいたからだ。
かつて破壊兵器を起動させ、三千年もの間、彷徨い続けた不死の王。 その巨大な身体は、今は枯れ木のように力を失っていたが、その表情はFが見たこともないほど穏やかだった。彼の大木のような両手の中には、一輪の花を持つ小さなポケモン、フラエッテが抱かれている。
「…………」
Fは、かける言葉を失った。
ジガルデが自分を拉致したのは、ただの気まぐれでも、同志としての勧誘でもなかった。この「終わり」と「始まり」の瞬間に、立ち会わせるためだったのだと悟ったからだ。
朝焼けの風が、王の長い白髪を揺らす。 AZは震える指先で、壊れ物を扱うように、恐る恐るフラエッテの頭を撫でた。
「……戻ってきた。私の、花が」
その声は、三千年の重みを感じさせないほど、幼子のようだった。
「夢、ではないのだな……」
「フラァ……」
フラエッテが小さく鳴き、AZの頬にその身を擦り寄せる。それは、長い長い旅の終わりを告げる、再会の音だった。 安堵の吐息が漏れる一方で、王の表情が苦渋に歪む。
「だが……私は怖ろしい。この温もりを感じる資格が、果たして私にあるのだろうか」
FはAZの背後に静かに近づき、しかし敬意を持って、そっと声をかけた。
「……資格、ですか」
「……三千年だ」
AZは振り返ることもなく、虚空を見つめて語りだす。
「たった一輪の花を蘇らせるために、私は多くの命を奪った。争いを止めるために光を放ち、世界を焼き尽くそうとした。『愛』ゆえの狂気……それが私の生きた証だ」
そしてAZは自嘲気味に空を見上げた。
「若き人よ。お前には見えるか? この醜い身体にまとわりつく、三千年分の罪の泥が。……花は戻ったが、私の魂は汚れたままだ」
FはゆっくりとAZの隣まで歩み寄り、眼下に広がるミアレシティを指差した。
「……私には、泥ではなく、この街の『礎(いしずえ)』が見えます」 「礎……?」 「ええ。あなたが三千年前に放ったその強大な力は、確かに悲劇を生みました。多くの犠牲があったことは事実です」
Fの声は冷静だった。だが、その瞳は次第に潤みを帯びていく。
「ですが、その圧倒的な破壊の記憶があったからこそ、カロスは今日まで『決定的な破滅』を免れてきたとも言えます。人々はその力を恐れ、また利用しようとし……結果として、技術を発展させ、この美しい都市を作り上げました」
「……」
「皮肉な話かもしれません。ですが、これは客観的事実です。あなたが世界を敵に回してでも守りたかった『愛』と、そこから生まれた『技術』が、巡り巡って今、この街で暮らす無数の『人とポケモンの営み』を支えているのです」
Fは、AZの前に跪き、視線の高さを合わせた。
「AZさん。これを『功罪』と呼ぶべきでしょう。罪は決して消えません。ですが……その罪から芽吹き、今こうして目の前で輝いている『功(ひかり)』もまた、否定されるべきではない」
AZは、Fの真っすぐな瞳を見つめた。
「私の罪が……今の世を、生かしていると言うのか?」
「ええ。過去を変えることはできませんが、私たちはその残骸の上に立ち、未来を築くことができます。……あなたが守り抜いたこの世界は、美しい」
その言葉を口にした瞬間だった。
Fの双眸から、自分でも制御できないほどの大粒の涙が溢れ出し、頬を伝い落ちてきた。
「……っ……?」
Fは驚いた。自分の頬に手をやり、濡れた指先を見つめる。
「あれ……? おかしいな……なぜ私は……こんなに泣いているんでしょう……?」
拭っても拭っても、涙が止まらない。
「……悲しくなどないはずなのに……胸が、張り裂けそうだ……」
AZは、Fのその涙を見て、すべてを悟った。Fの記憶が失われていても、彼の魂――かつてのフラダリ――が、AZの救済を通じて自らの罪の重さと、赦しの温かさに震えているのだと。
「……美しい涙だ」
AZもまた、涙を流しながら穏やかに微笑む。
「……お前は……不思議な男だ。その涙を見ていると、まるで私自身の魂まで洗われていくような、そんな安らかな気持ちになる」
「私自身も、不思議なのです。あなたを見ていると……かつての自分が、どうしようもなく救われている気がする。……言葉にできないけれど、ただ、そう感じるのです」
AZは、Fの瞳の奥に、かつて最終兵器を起動させようとした男の魂を見た。だが、そこにもはや狂気はなく、あるのは純粋な慈悲の涙だけだった。
「……ふ、ふふ。そうか……皮肉なものだな。かつて世界を終わらせようとした私が、世界を変えようとするお前に看取られるとは」
AZの身体が、徐々に朝日のような光の粒子になり始める。
「AZさん……?」
「礼を言うぞ、F。……私の三千年は、無駄ではなかったようだ……お前のような男が未来を作るなら、私も安心して眠れる」
AZは最期の力を振り絞り、Fに向かって厳かに告げた。
「さらばだ。新しき、カロスの王よ」
「……『王』、ですか」
Fは涙を拭い、立ち上がって、消えゆくAZに深々と一礼する。
「……私は只の、料理人ですよ。……ですが、約束しましょう。あなたが守り、残してくれたこの世界を、今度は私が美しく保ち続けると」
AZは満足げに頷き、フラエッテと共に光の中へと溶けていく。
「どうか、安らかに……」
すると、不意に。 AZの眉間に深い皺が刻まれた。
周囲の空気が、急激に重くなる。光となり昇天しかけていたAZの足が、ズシッ! と物理的な音を立てて地面に戻った。
「……え?」
涙を拭いながら呆然とするF。
「AZさん? ご昇天……なされないので?」
見れば、先ほどまでの慈愛に満ちた表情は消え失せ、AZは眉間に深い皺を刻んだ鬼の形相になっていた。
「……一つだけ、思い出してしまった……一つだけ。どうしても……あの世へ持っていけぬ『悔い』がある」
「は、はい。何でしょう? 三千年の知恵ですか? それとも王としての心構え……」
「……フラダリよ。我がカロスは……芸術と美食の国。私は三千年間……多くの料理を見てきた。飢饉の泥スープも……王侯の晩餐も……」
「(ゴクリ……)」
「だが……あの日。貴様たちが私のホテルで提供し……あろうことか『星(グリーンスター)』まで取ってしまった……あの『黄色い冒涜』だけは……絶対に赦せん……!」
「……き、黄色い……冒涜……?」
Fの心臓が止まりかけた。
「……そう……あの『クロワッサンカレー』のことだ」
ビクッ、とFの体が跳ねる。
AZの言葉がトリガーとなり、Fの脳裏に、封印したはずの「地獄の記憶(メモリー)」が走馬灯のように駆け巡る。
ガイの買い出し忘れからはじまった、残飯で急ごしらえしたカスレ。カレー粉の誤爆。突き立てられたバゲット。誤魔化すために必死に考え出した無駄に長い料理名。それに陶酔するゲスト。遂にメニュー化されたクロワッサンカレー。そして止めのグリーンスター。
「う。うわぁああああああ!!! 私もだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
Fは頭を抱えて膝から崩れ落ちた。
「分かっている!! 私だってあれを許していない!! だがあれはガイが!! ガイが勝手に!! 誤解なんだぁぁあああ!!」
「言い訳はゆるさん! F! 全て、お前の監督不行き届きだ!」
「うぁああああああああああんんんん!!!!!! 全部、私の監督不行き届きだァァァァァーーッ!!!!」
「そうだ! その通りだ! だがな、Fよ。私が最も許せないのは……」
AZは、Fの胸ぐらを掴む勢いで顔を近づけた。怒声が轟く。
「あの日、厨房の裏でガイが言っていた言葉だ。『カフェオレに浸すのと同じ』だと? カフェオレはな……ミルクだ! バターとミルクは同族、言わば親子だ! だから調和する! だがカレーは他国からの侵略者(スパイス)だ! 繊細なカロスの王族(クロワッサン)を、刺激物の海に沈めてふやかすなど……それは『共存』ではない! 味覚への『侵略』であり『テロル』だ!!」
「ひいいっ!! おっしゃる通りですぅぅぅ!!」
Fは地面に頭を擦り付け、土下座を超えた五体投地を披露した。
「買い出しを忘れたガイ君のミスをカバーしようとして……とんだモンスターを生み出してしまいましたァァァ!!」
「……はぁ、はぁ」
怒りを吐き出し、ようやく落ち着きを取り戻したAZは、冷ややかな目でFを見下ろした。
「わかったら……すぐにメニューから消せ。いや、改良せよ」
「は、はい……! 必ずや……!」
「……まあ、ユカリという女の『バゲットは硬い』という指摘だけは……冒涜的ではあるが一理ある。だが、それを解決する方法が『ふやかす』であるはずがない……Fよ。この答えが見つかるまで……私は絶対に昇天しないからな」
ミアレシティを見下ろす丘の上。吹き抜ける風の音とともに、急に鳥達が囀り出した。 朝日が完全に昇ったのだ。世界を鮮やかに照らし出している。 一方、Fは絶叫と号泣で枯れ果て、地面に伏したまま肩で息をしていた。
「はぁ……はぁ……。申し訳……ありません……。私は、取り返しのつかないことを……」
AZは、先ほどまでの激昂をフッと消し、静かな瞳でFを見下ろした。
「……立て、Fよ」
「え……?」
涙と鼻水、そして少しの血涙でぐしゃぐしゃの顔を上げる。
「許して、いただけるのですか……?」
「いいや。食文化を破壊した罪、万死に値する。……よって私は、お前に『追放』を申し渡す」
「つ、追放……!?」
Fはガバッと起き上がり、顔面蒼白になった。
「そ、そんな……! カロスから出ていけとおっしゃるのですか!? 私はあそこで、ガイ君の試食係としてようやく居場所を……! 記憶のない私が、『ホテルZ』以外でどうやって生きていけば……」
AZは、ゆっくりと首を振り、杖を突き直す。その切っ先は、ミアレシティの遥か向こう、見果てぬ地平線を指し示していた。
「居場所など、探せば無限にある」
「……無限?」
「かつて……私もそうだった。自分の愛したものだけが全てで、それ以外を『不純物』として排除しようとした。自分の理解できる範囲、手の届く範囲だけが世界だと信じ込み、それ以外を焼き払った」
AZの言葉が、Fの失われた記憶の深層――『XY』でフラダリが語った選民思想――を鋭く刺激する。
「……」
言葉が出ない。なぜか胸が締め付けられるように痛む。
AZは、Fの目を見据え、一言一言噛み締めるように告げた。
「世界は、お前が考えているよりも100万倍……いや、それ以上に広い」
「100万倍………」
Fの鼓動が一つ跳んだ。かつて彼が魅入られ、利用し、そして破滅の原因となった力『メガシンカ』。その「メガ」という単位が、今は「可能性の広さ」を示す言葉として胸に響く。
「異なる文化、異なる味、異なる愛……。お前には理解できぬもの、受け入れがたいもの、醜く見えるものもあろう。……だが、それを『汚れ』として切り捨てるのではなく、自らの足で歩き、肌で感じ、飲み下してみよ」
「飲み下す……」
「そうだ。あのふざけたカレーのように、な」
AZは微かに口端を吊り上げた。それは嘲笑ではなく、未熟な若者を見守る親のような笑みだった。
「バターとスパイスが喧嘩し、パンがふやけたあの歪な料理……。かつての私なら、皿ごと叩き割っていたかもしれん……だが、お前が失敗し、ガイという男が悩み、客人が困惑したあの『混沌』もまた、この広い世界の一部だ」
「失敗も……世界の一部……」
「それしか知らぬまま、狭い厨房で一生を終えるには、人の生はあまりに惜しい。……そうは思わんか?」
Fは、ハッとして顔を上げた。 AZの身体が、再び朝日の粒子に溶け始め、今度こそ本当に消えようとしていた。
「ゆけ、Fよ。世界を旅し、お前が真に望む理想を叶えよ。自らの足で稼いだ『体験』だけが、お前の魂を真に満たすのだ」
「AZ王……!」
Fは一歩踏み出した。
AZの姿が半透明になり、風に溶けていく中、最期の言葉が風に乗って届く。
「……うかうかしている暇はないぞ」
「え?」
「三千年なぞ……貴様が思っているほど、長くはないぞ」
その言葉には、永遠の時を生き、待ち続けた男だけが知る、切実な実感が込められていた。 AZの姿は完全に光となり、カロス全土へと散っていく。
「……三千年は、長くない……か」
Fは涙を拭い、立ち尽した。その背中に、もはや迷いはなかった。
「そうですね。……うかうかしていられません……AZさん……あなたの言葉、胸に刻みました。私は行きます。未知なる世界へ……!」
Fは振り返り、住み慣れた『ホテルZ』の方角へ一礼すると、反対側の荒野へと続く道を見据えた。
「ガイ君。……試食係は卒業だ。私はもっと広い世界を見てくるよ」
一陣の風が吹き抜けた。
かつて破壊を望んだ男は、今、未知なる世界への冒険者として最初の一歩を踏み出した。
Fが感極まり、涙を拭ってAZを見送ろうとしたその瞬間である。 AZを包んでいた神々しい純白の光が、突如として変色した。
キュルルッ! ブォン!!
ドギツイ音と共に、空間全体が、目がチカチカするような「蛍光ピンク」に染め上げられたのだ。
「……ん? なんだ、この色は……? 警告色か……?」
Fは即座に身構えた。
光の中心で、昇天しかけていたAZが急ブレーキをかけたように空中で静止している。
「おっと、待て待て。どうした私の『花』よ。……ん? まだ帰りたくない? もう少しカロスでデートしてから帰りたい、だと?」
「フラァ〜〜〜♡」
ハートのエフェクトを撒き散らしながら、フラエッテがAZの巨大な鼻先にスリスリと身を寄せている。 AZの威厳ある王の顔は、一瞬にしてデレデレに溶解していた。
「んもう〜〜♡ 仕方ないなぁ! 三千年ぶりのワガママなんだから! よーしよしよし! いないいない〜〜〜ばぁ♡」
「は?」
Fの思考回路が完全に停止した。
「ほーら、高い高い〜〜!」
AZは身長三メートルの巨体と怪力をフル活用し、手のひらサイズのフラエッテを音速で上下させた。
ヒュンッ! ヒュンッ!
と凄まじい風切り音と共に衝撃波が発生し、辺りの木々をなぎ倒す。危ない事この上ない。
「キャッキャッ♡ フラァイ♡」
「あーっはっは! 見ろF! 私の花がメガ可愛い!!」
「メ、メガ……?」
「世界で一番愛らしいぞ!! 三千年経っても変わらぬ美しさ! いやむしろ熟成されて魅力100万倍だ!! 私の愛のメガシンカは、バトル終了後も解けないぞーーッ!!」
「(な、何を言っているんだこの人は……)」
「フラフラッ、フ〜ラ♡」
フラエッテは『あなたも素敵よ、ア・ゾ・ッ・ト♡』とでも言うように、AZの長い白髪をキャッキャと引っ張って遊んでいる。
「こらこら、くすぐったいぞ♡ ……ん? なんだその目は。キスして欲しいのか? 衆人環視だぞ? Fが見ているぞ?」
「……プイッ」
フラエッテはFの方をチラッと見てから、興味なさそうに顔を背けた。
「おお、嫉妬か! 独身のFへの配慮か! まったくお前は……慈悲深く大胆な花だな……チュッ♡」
特大のリップ音が響き、空間全体にピンク色のオーラとハートマークが乱舞する。Fの視界は、毒々しいほどの愛の色で埋め尽くされた。
「……」
Fは呆然と立ち尽くし、口をあんぐりと開けたままだ。
彼の脳内で、先程の感動的な言葉がリフレインする。
(……待て。さっきの『三千年は長くはない』って……まさか『イチャイチャしていたら一瞬だぞ』という意味だったのか……!? 『世界は広い』って、『二人だけの世界』の話だったのか……!? 私は……とんでもない誤解を……!?)
空中のバカップル空間はさらに加速する。
「さあ行こうハニー! 二度目のハネムーンだ! 最終兵器の跡地でピクニックでもするか! それともミアレのブティックで私の服とお揃いの柄の『花びらカバー』を探すか!?」
「フラァーイ!!」
『賛成ー!! 課金してー!!』と叫ぶフラエッテ。
AZはFに向かってビシッと指を差した。その顔は満面の笑みだ。
「聞いて驚けF!! 私たちはこれからあと三千年はイチャつくからな!! 邪魔するなよ!! あばよ独身!!」
キラーン!
二人はピンク色の閃光となって、猛スピードで地平線の彼方へ飛んでいった。 あとに残されたのは、冷たい風と、舞い上がる砂ぼこりと、そしてFだけ。
「………………」
Fはわなわなと震え出し、両手で頭を抱えた。 さっきまでの感動的な涙は引っ込み、代わりに強烈な胸焼けが襲ってくる。 Fは天を仰いだ。そして、腹の底から声を絞り出した。
「私は一体何を見せつけられたんだァァァァァーーーーッ!!!!!」
Fの悲痛なツッコミが、カロス地方の澄み渡る青空に虚しく響き渡る。 遠くの空で、キラーンとピンク色の星が光った気がした。