邪悪な羊飼い〜TRPG的世界にて次は好きに生きる〜   作:紅シャッケ

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本当に趣味で自分で楽しむため書いてるため拙い文ですが、それでも気にせず楽しんでいただければ幸いです。
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再誕

ポツ…ポツ…

雨が頬を伝って地面に落ちる感覚だけがある

 

あれ…私は何をしていたのだったか…

いつも通りある程度の仕事して

テキトーに見繕った本を買って

これから読むはずだったのに

 

体から何か生温いものが流れ出ている

それに妙に寒い…ここは…

 

目を開く

 

あ……視界が赤い

 

これ……は

 

はねられたのか?

 

意識した途端全身が軋み痛み出す

 

誰をかばったわけでもない

ごくごく普通の誰にでも起こり得る致命的失敗(ファンブル)を引いただけ

 

植物のような浮き沈みのない人生だった

これが変わることを嫌い選択を拒否した結果だというのだろうか…

 

ああ、もしあの時ああしていれば…

もし選択することのできる強さを持っていれば……そんなことばかりだ

 

 

視界にも耳にもはもはや自分を轢いた相手も騒ぎ立てている周りのことも入ってきてはいなかった

 

滴る雨はまるで命を奪っていくかのよう

 

頭の中に残っていたのは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全身がなにか細長いものに触られているような気色の悪い感覚

ゴロゴロと絶えず耳鳴りがして頭が割れるようだ

 

そんな最低な状態の中…いや()()()()に接触したから最低の状態になったのか…

 

 

前の人生では私には何もなかった

ありとあらゆる才能が凡

どれだけ頑張っても一番になることはない

かといって最下位になることもないような凡庸で中途半端

それほど頭も良くなく、かといって能天気でいられるほどの頭の悪さでもない

何かをやる情熱も耐える忍耐も無い…

 

目的を持たず、意味を持たず、ただ生きる(死んでいない)だけの人生にどれだけの意味がある?

 

もう一度チャンスをくれるというならどのような存在であってもいい

 

その手触れられる度に自身中核を成すものが変わっていくのを感じる

あまりの不快感から声が漏れ出そうになったが声の出し方を忘れてしまったかのように声が出ず耐え難い苦痛のみ残る…だが今はそれすら良い

 

賽が振られて全てが決まる

 

その”意思”に従い自身が…再定義されていく

 

ああっ、きっと次の人生は素晴らしいものになるだろう

 

私の心は感謝と信仰で埋め尽くされていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い…何も見えない

全身が熱く何かに締め上げられている感覚だけがある

 

 

自分が何とか今どこなのかとか本当にもっと考えるべきことがあるような気がする……なんだっただろうか……

 

なぜだかわからないが思考が妙にふわふわして纏まらない

 

色々と自分を超越したものに触れた後あとだからだろうか、それとも今不快感の中にあるからだろうか、深い孤独感とともにそういった一切合切をまとめて不思議と叫びたい気分が湧き上がってくる

 

ここだ!誰がいないのか?

私はここにいるんだ!

 

孤独感なんて覚えるのはいつぶりだっただろうか。家族を亡くして以来ずっと一人で過ごしてきてそんなものとっくになくなってきたと思っていた

 

自らの死のときでさえ感じなかった感情が強烈に襲ってくる

 

そんな時間が無限のように感じられていた…

瞬間視界に光が開ける

 

何も見えない、聞こえない、思考ですらまともに回らない

だけど一つだけ全身全霊でわかることがある

私は今確かにこの世界に生まれてきたのだと

二度目の再誕の産声を力一杯上げながらそう感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一の獣は…王の………の象徴………二の獣は………の預言者……人を騙し誤った方向へ導く……の獣……」

 

どうやら私は最近流行りの異世界転生というものをしたらしい。

 

今母親が話しているものはどうやらこの世界の神話?といえばいいのだろうか。おとぎ話のようなものを聞かされている。

 

言語学習の一環だろうか?前の世界で使われている言葉と照らし合わせて分かる言葉はまだ理解できるがその分なまじ理解できない言語の部分の学習が少々難しく感じる……。

 

普通こういった読み聞かせの類は絵本を用いて行うのが前の世界での主流ではあったが、どうやらこの家にはそんな高尚なものは存在していないようだ。

 

まだ名前もあまりわからない親のしている格好は羊毛や綿などを使用した結構な厚着をしていて、よく見ると同じ服を何度も着回しているせいで服の端どころほつれているところが多々ある事がわかる。

これらのことから分かる通りにあまり裕福な家族ではないことが伺える。

 

割と意識の安定してきたここ一年間見てきてずっと似たような格好であったことを推察するに一年中寒い地帯である比較的標高の高い土地なのではないだろうか。

と、言ってもそれ以前はあまり意識がなかったため確かなことは言えない。

 

私がこの世界で再び生を受けたのはおそらく3年と少し前ぐらいと思われる…がというのもどうやら私の魂?

精神の核とも言って良いものがこの体に入っていったわけなのだがどうにも意識が安定せず……簡単に言うと高性能なソフトウェアを低スペックなハードウェアで動かそうとしていたので処理落ちのような状態が続いていたのだ。

それに加えて子供特有の眠気のせいであるスキルを取る時期までは意識がない状態が殆どだったのだ。

 

食べて、寝て、起きて頭がスッキリしたと思ったら意識が落ちる。

そんなことを繰り返し続けているせいで何かをやる時間を取られてまともに行動すらできず、現在言語学習が遅れている原因の一端もそこにある。

 

さて赤子の皺のない小さい脳でどうやって成人男性並の思考力が賄えるのだろうか。

まあ普通に考えて無理であろう。

 

しかしいくら2歳に成長したからって急激に思考力を補ってくれるわけではない。

ここでこの問題を解決してくれたのがこのキャラクターシートである。

・名前

ヨハネ

・職業:邪悪な羊飼い

・基礎ステータス

筋力  :不可

耐久力 :不可

走力  :不可

精神力 :佳良

魔力  :可

知力  :並

技術力 :不可

・特殊ステータス

SIZ   :8  (敏捷性の補正と筋力との合計でダメージボーナスの増減)

APP   :14  (商談や言いくるめする際の補正値)

EDU   :9 (物事に対する知識や経験の量)

 

正気度

 

・職業固有スキル

【贖罪の山羊】(スケープゴート)

自らへのダメージを自身の保有する無垢の羊(ピュアシープ)に転写する

【邪悪羊召喚】(コールイビルシープ)

魔力と正気度を犠牲にして無垢の羊(ピュアシープ)を召喚する。また生贄をもとに更に強力なモノを召喚可能とする

・一般スキル

【精神汚染耐性】:秀逸

【苦痛耐性】  :秀逸

【睡眠耐性】  :平凡

【思考力強化】 :平凡

・特殊スキル

【悪童】 周りにいる人間と比べて悪の道に突き進めば進むほど経験点を入手を増大させる

 

 

・加護

豊穣神(シュブ=ニグラース)の加護

 

 

うん……通知表かな?可とか不可とか…異世界転生してこういうステータスって普通に数値で表されるもんじゃないのかな?

 

というかこの感じが割と既視感がある気がする。

表示の仕方が普通のRPGのそれではない。

 

これは…紙、ペン、賽子によって行われる一風変わったボードゲーム……そう!TRPGのものである。

 

生前、現実世界に友達が居なかった自分はこれを好んでよくネット上で友達とやっていたものだ。

この遊戯はあらゆる行動における結果の判定を賽子にて行う。

そうして冒険をして、様々な物語を達成し、手に入れた経験点で自らの好みにキャラクターを成長させ冒険するといった遊びである。

 

自由度が高く非常に面白いことを記憶しているが、その一方で自分の運命ですら賽の目によって決定づけられるという…現実に適応すると割と狂った遊びだな。

 

何故そんなことになっているかは一旦置いておいて、更に加護の欄を見てみるととても見過ごせない事実が一つ。

 

シュブ=ニグーラス

確かラヴクラフトという怪奇小説家によって作られてきたクトゥルフ神話における地母神に分類される邪神で……

そして確かモチーフが何かの宗教の悪魔だった…はず?

 

 

正直そこまで詳しくは覚えていないがTRPGや後にその設定を元に作られた小説などでよく名前を聞いていたので少しは覚えている。

 

TRPG用語だが産地直葬……神と人間の格の違いが精神崩壊を引き起こして意識が混濁したままに選ばされた職業はよりにもよって邪神信仰系の職業(クラス)の邪悪な羊飼い。

 

そしてステータスに刻まれた豊穣神加護。

 

どうやら私はかの神の手により使徒として異世界転生させられたらしい。

さながらTRPGにおいて冒険をする探索者のように。

 

正直普通なら恨み言の一つも言いたくなるような傍若無人…神っぷりだが不思議と怒りは湧いてこないものだ。

これは精神的にすでに屈服させられているのか…それとも使徒にされた影響なのか…。

 

まあだが正直普通の異世界転生をするよりか慣れているこういう風な転生のほうが楽しそうでとても自分向きだな。

 

それにそもそもなんで私がそんなものに選ばれたかすら神の考えることなど理解できないが……こうして私、ヨハネが生まれたというわけだ。

 

さて、話を戻そうか。

()()()()に気付いた生後間もない私は右も左もわからぬ状態から約一年前このステータスに気付き必死に経験点を稼いでスキル【思考力強化】を取りついに2歳半程度の脳みそで満足に思考まで漕ぎ着けたというわけである。

 

スキルについては…まあ大体の人間はわかるだろう。

一般スキルは経験点を消費して手にいれる技能で、職業固有スキルはその名の通り自らの就く職業固有の能力である。

 

というわけで一般スキルに分類されている【思考力強化】を取るため私は様々なことを体験して学び、経験点を溜めてきたわけだがこのスキルを取るにあたって一つ問題があった。

 

というのもこのスキル、必要経験点の量が馬鹿なのかな?と疑うほど高いのである。

…いや、確かに思考というものは全ての行動を支える元になる。そう考えたらまあ妥当ではあるのだろうが。

 

そこで【思考力強化】を取る経験点を集めるのに役立ったスキルが【睡眠耐性】と【悪童】である。

 

【睡眠耐性】は分かりやすく眠くなりにくくなるスキルだ。

これは…まあ本当は転生当初としては”処理落ち”が続く原因が子供特有の眠気だけだからと勘違いしてとったスキルだったが、結果的に使える活動時間を増やすことで経験点回収に役に立ったからよしとすることにしよう。

 

そして肝心なのは【悪童】だ。

一応悪い行為をすればするだけ経験点が入りやすくなるボーナスがつくというスキルということは分かっているが…正直このスキルはいまだに発動条件があまり分かっていない。

 

”悪い事”の定義はなんだろうか。世間一般の普通とされている道徳的価値観に基づくものだろうか?それとも自分の価値観に基づいたものであるのだろうか。

 

菓子パン一つ買うのにも数十分かけて考える優柔不断さを持つ自分でも、なぜ倍率や定義すら分からず不安定なスキルを取ったのかわからない。TRPGにおいてスキルを取るということは自らの生き方、ビルドを決めること。何一つ無駄にしていい経験点などないのだ。

 

確かに経験点を獲得できるスキルは貴重だし邪悪な羊飼いとの相乗効果(シナジー)もありそうだ。

しかし、不安定な要素はできるだけ排除してビルドを組むのが私のプレイスタイルだったし少なくとも探せばもっといいスキルがあるかもしれない。

 

…これに関しては完全に直感だ。このスキルを取れと()()が囁いてきている気がする……。

 

まあだがこのスキルをとってからただでさえ経験点の入りが多い幼少期をを考慮しても少なくとも1.5倍程は。

 

自分の価値観では別に悪いことの一つもしていないので釈然としないが……赤子の間から夜更かししていることが悪いとでも判定されているのだろうか?…もしそうなら自分でいうのもアレだが随分可愛らしい悪だな……いや、確実に成長に悪影響が出るという点でも悪いとも言えるだろうか?

 

とにかく一先ずはこのスキルをとって成功だった…としよう。

 

 

次に職業固有スキルだ。

と、言ってもこれはぶっちゃけどう起動するのかがわからない。耐性系統のスキルや【悪童】といったスキルは発動が自動のため何もしなくても良いんだけれどね。ぶっちゃけ【邪悪羊召喚】とかどうすればいいのだろうか。なんだろう、魔法って言えばいいのか?

よく異世界転生主人公では赤子の頃に魔力を感じて無双!…とかはあるが。そもそも見えないもの、無いものをどうして感じられようか。

 

というわけで固有スキルは放置としよう。

 

 

最後に【苦痛耐性】と【精神汚染耐性】は経験点を使っていなかったのだが勝手に生えてた。

いや…経験で技能が習得するとかはわかるが……うん。

 

……なんでだろうね?

 

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