邪悪な羊飼い〜TRPG的世界にて次は好きに生きる〜   作:紅シャッケ

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身の丈にあった立ち回り

再び季節が巡りこの地域においては割と温暖になってきた(元々が寒冷地のようなので前世の夏ほどの暑さはない)今日この頃。

 

私は前からまた少し年月が経ち、今年でおよそ5歳程になった。

さすがに5年も経つともうこの世界のことに関して色々と慣れてきており前と比べると言語を操るのが達者になりかなり上手になったもので、少し前まで受験生のように必死こいて周りにおいてかれないように学習していたのが懐かしい過去のようにも思える。

 

まあこの世界で赤子で身近で関わってる奴などほぼいないため気にしようがないが……。

 

さて、この世界に慣れてきたと言っても別に特段何かが変わったことはない。

相変わらず職業固有スキルの発動の仕方はあまりわかっていないし、ステータスにある魔力など一切合切わかっていない。

5歳にしてなぜか行き詰まっているというよくわからない状況である。

 

しかし自分に成長がなくても周りは自然と変わっていくものである。と、いうのも私に弟ができたようなのだ。

 

弟は私より3つ程下で私の時とは異なり父も母も随分と手を焼いている。そのおかげと言ってもアレだが必然的に私の自由時間が増えて家の外に出られるようになったのだ!

 

甕に貯められた水を覗き込む

今世の髪色は母から引き継いで薄い上品な金色だ。

…正直前世では髪を染めるのは傷めるし粋がっているように見えて敬遠していたが…こうして体験してみると悪くない気分だな。

 

ふむ、それにしてもまだ子供だが我ながら顔立ちは悪くないのではないだろうか。

愛嬌があり、男前とは言い難いがそれでも整っている。

まあ人付き合いの方法がわからなければ良いものを持っていてもそれを活かす術がないため顔が良かろうとあまり意味の無いことだな。

 

そんなことを考えながら農作業でついた汚れなどを洗い落としていく。

 

農作業…別に農民になったわけでも無いし、深い意図があってやっているわけでは無いが。ただ、あるだろう?親が何かのきっかけで家庭菜園に目覚めるやつ。

うちの親もその衝動から逃れることなく家庭菜園を作り放ったらかしにしていたのだが…この世界では小学校や幼稚園に時間が取られる訳でもなく、誰かと遊んでいる訳でもないため手持ち無沙汰手を出してみたというわけである。

 

こういう割と何でもないことをやろうとしてしまうのは生来からの小物性分だからだろうか……まあこの事も経験点にしっかりなっているからよしとしておこう…っと、とりあえずこれで今日のノルマは達成としよう。

 

上着を着て帰えろ……うん?

何やら聞き馴染みのない声がするぞ?

 

家から漏れ出す音の中に聞き慣れない声があることに気がつく。

どうやら土いじりに熱中しすぎていたようだ。

誰か客人だろうか?

 

「母様ー、誰かお客様でしょうか?」

 

「よーーちゃーん?ママはお友達と遊んで来るのでよーちゃんも好きに遊んでていいからねー?」

 

……よーちゃん、ね

自分に求められている立ち振る舞いというものは分かっているが、前世に既に母が居た身の上からこの母親を素直に同年代の奴らと同じママ!と実子であるかのような言葉遣いで呼ぶのはさすがにかなり抵抗があるものだ。いや実子ではあるのだが。

というかそれ以前にこの母親は、妙な言語化できない圧力の様なものがありなぜだか意識的でなく自然と丁寧語が口から出てしまうのだ。

これが独身貴族と家族を築いた者との差だというのか…

 

家の中を覗いて見ると案の定母親を含めた妙齢の女性たちが集まって何やら会話を楽しんでいる。

 

なるほど、前世から変わらない母親特有の集まって話し合ったり、テニスをやったりするアレか。そういえば転生当初はそういう出来事を全く見なかったが、もう多少は目を離しておいても良い年齢だからだろうな。

 

「まあまあまあ、いいじゃないですかうちの子にもその丁寧さを分けてやって欲しいくらいですわ」

 

「確かに手は全くといって掛かってないですけど親心としてはもう少し…今日なんて私の洗い物を手伝ってくれたんですよ?この頃の子ならもっと遊んでいるのが普通なのに…」

 

「考えすぎじゃありませんかしら?うちの子なんて……」

 

私は知っている。この状態の中突っ込むと母親同士の会話に巻き込まれて肩身が狭く何もできない状態が続いたり、猫可愛がり(男的には避けたいような)をされてロクなことがないと。

 

「分かりましたー、近場で遊んでいるので母様も楽しんでくださいねー」

取り敢えずあの母親たちの会合に巻き込まれるのは避けたいからここは母親のいう通り素直に退散するか。

 

 

 

 

午後に家で休みつつ経験点稼ぎというプランが崩れてしまった。

…というか聴覚強化のスキル【蝙蝠の耳】を取っていたから聞こえたが、やはり若干母親から違和感的なものを感じ取られていることがわかってしまった。

 

母親も疑いという視点はないだろうが、周りの人間との成長の違いに若干違和感を持っているようだ。

この母親は幸い早熟だと捉えてくれてよかったが……怪しまれるような行動はこれ以上は避けるべきだな。

 

といっても同世代の他のヤツと交流なんてしていないためどう動くのが正解なのだろうか……はぁ。

 

とりあえず丁寧な言葉使いもできるだけ避けるべきだろうか。僕、俺…うーん憂鬱でしかないない。

こういう時はスキルの事でも考えて気晴らしでもしようじゃないか。

 

「なーなー」

 

職業固有スキルや魔力関連は一切進展はなかったがこれでも前よりかは幾分か成長はしているのだ。

といっても生活をサポートする程度で必要以上にポイントを使わないようにだが。

 

前までは要求ポイントの高い【思考力強化】とかそ出てる方針を立てていたが最近は取得するための要求ポイントが低くても効果がいいというコスパのいいスキルなどを探して取得をしている。

 

今は肉体に直接的に影響する【蝙蝠の耳】や【猫の目】などを取っているのだが…

この【猫の目】というスキル、なかなかの曲者である。

 

スキル名から大体察することができるだろうが夜目がきくスキルで夜親が火を消した後でもやりたいことをできるという【睡眠耐性】と親和性のあるスキルでこれがなかなか役に立ち…

 

「なぁー?」

 

まあそれでもアルコール除菌などといった手段がない世界で食中毒にかかりづらくなるという素晴らしい性能を発揮する必須級の【悪食】と比べれば、ッ!?

 

「なぁ!お前名前なー?」

 

「う、え?あっハイ、ヨハネと申しますが……」

 

「おー、じゃあお前ヨンな?行くなー?」

 

………?

 

「よ、ヨン?」

 

…考え事がてら村中をぶらぶらしていたらよくわからない子供に捕まってしまった。

 

自分より一回り…それも人生1周分年齢の小さい人間に呼び捨てされる日がまさか来ようとは前の世界でも思っていなかったが…

 

「というか…な?え? い、行くってどこに?」

 

「んー?遊び行こうな〜?な?な〜?」

 

うーんこの歳の子の考えることわからないわ…

 

「あ、、うん。行く行けたら行くから引っ張らないで」

 

「ん〜?遊ぶな〜?」

 

俺の心からの言葉を右から左へ流す子供。

コイツ…社会を知らないのか?行けたら行くは行きたくないの意思表示だぞ…。

 

「あ〜、もう分かったから本当に…遊んでやるから。お前名前は?」

 

この感覚久しぶりだな…子供特有の人の話を全く聞かないで動き出すこの感じ。

 

 

 

非常に面倒臭いこと極まりないが…丁度いい

母親のこともあるのでここらで人間関係を構築してコイツから健全なコドモの在り方というものを学んで安心させてやろうではないか。

 

一緒に遊んでやるのも子供の仕事のうちか。

 

「ゥランシュ」

 

「ええ?ランス?えらく一丁前な名前を付けてもらっているじゃあないか」

 

何よりこのガキ相手だと気を遣って敬語が出る心配もないのがすごく良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初対面でいきなり家に招待するのはどうかと思うが…」

ずっと手を引いていたからどこに行こうとしているのだろうと思っていたが、どうやらランスの行き先は家だったらしい。

 

周りにランス以外の声は聞こえない。どうやら両親とも出かけているらしい。

 

父親の方は仕事として母親は…ああ、恐らくあの母親達の集まりの中の1人にいたのか。

 

そんな事を考えているとランスは家の裏方二回り物置?のようになっている場所に入り、おもむろに何かを物色し始めた。

 

生活用品に…これはおもちゃか…?

 

鈍い光を放っている石、使い古されて所々欠けている椀、編みかけなのかぐちゃぐちゃに絡まった紐の塊。

お粗末すぎる上どう遊ぶのかも分からないような代物だ…。この世界に娯楽はないのか?

 

これはあれだろうか?異世界転生特有のリバーシ無双とやらが始まってしまうのか!?

……いやよっぽど金に困らないとやらないだろうし作った人への冒涜じゃないだろうか?

 

…まあ異世界転生というものの存在が僕によって実証された訳だし他の人も同じように転生してきて同じことを考え実践した人がいるとかそんなのがいいオチだろ、うん。

 

「これなー!遊ぶかー?」

 

「…」

 

………………………………………………………………うん。

 

「んあー」

しまった、表情に出てしまっていたのか。

 

「あ!そうかー、これなー!」

 

「棒て」

流石に突っ込まざるおえないぞ

……?というか何故わざわざ棒を家に…

 

「んー、これなー、外出てなー。これ持ってなー!」

 

 

 

 

 

周りに物のない開けた場所に棒を持った男が2人。

 

しかもご丁寧なことにその棒は出っ張りが削られて振ったり突いたりするのに使いやすくなっている。

 

「あー、なるほど」

 

ガキもガキだが悪ガキかよこいつ危ねえだろうが…いや子供の思考回路的にはこんなもんなのだろうか?……いやそれでも普通が親は止めたりするだろうに。

それともこの世界には幼い頃からチャンバラをやらせる習慣でもあるのだろうか。

やはりそういう何かを振り回すことが日常に馴染むほどには危険な世界だということもあるのかねぇ。

 

………………………………うん、まあ…子供相手にやるのってどうなの?とかもしもの時は?とか

色々考えるべきことはあるが普段からこういう遊びをしているっぽいし怪我をさせないように立ち回れば…まあいいか。

経験点集めとしても上々だし。取り敢えずこの世界に来て初めての戦闘ということで…いっちょ揉んでやりますか。

 

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