僕が剣聖として生きるのは間違っているだろうか 作:ダウナーすこすこてぃっしゅふぉーるど
アストレアレコードと、ラインハルト人気の凄さを感じる。
あと、連載に変えました
はぁ、社畜は辛いンゴねえ。
今日も今日とてパトロール、しかも大雨と来た。
一年経っても未だに眷属一人の弱小ファミリアには厳しい、なんてったって全部俺一人でやってるからね!
しかも休みの日はダンジョンアタック! 毎日夜になったらアストレア様の前で、上裸になって肉体美を見せて興奮するしか楽しみがないぜ。
あらあらうふふって指先で背中つつつーってしてくれるんだぜ、上がるだろ?
最近Lv.とやらが上がったのもあって、周囲の視線が痛くなってきたのも悩みの種。
どうせアイツら俺のこと見て、ぼっちだから一人で経験値独り占めしてるんだぜ。だから早いんだよ、夜も早いんじゃね? プークスクス、とか言ってるに決まってる。
まだワイの龍剣レイドは抜くべき相手が見つかってねえよ! アストレア様に抜け? 抜けるかぁ! いや抜けるけど抜けるかあ! 流石に不敬過ぎんだるぉぉ!?
くそったれ! 誰が夜の
またしても
ははーん、この声は女の子だなぁ?
白馬の騎士よろしく助けてやるぜ! せいぜい惚れてファンクラブ設立でもするんだな! 今なら名誉会長として起用してやんよ!!
「邪魔しやがってっ……死ね」
才能爆盛りスペックで培ったステイタスに物言わせて爆走したら、危機一髪の状況!
よっしゃ、ヒーローよろしくカッコよく登場してやるぜ!
とりあえず、壁ジャンして剣振り下ろそうとしてる男の前に割り込んで――ファっ!? 雨で手が滑って剣抜くの間に合わんのやが!?
うおおおお! なんとかなれえええ! 未来のワイのファンクラブ会員第一号の為に!!
咄嗟に鞘握って前に突き出したら、上手いこと鞘に剣がぶつかって止まった。
若干手がジンジンするぜ、なんだこのおっさん。
割と力のステイタス高くね?? さてはオメー普通のごろつきじゃねえな?
「なんだ、てめぇは――【
その名前で呼ぶんじゃねえ!
なんだよ、
色々教えてくれた先輩の【
先輩は嬉しそうに語ってきてたから、とりあえず温かい目して頷いといたら満足してたけど。
なに? お前にもかっこいい名前がつくさって、痛い名前の間違いだろうが!
てかおっさん近過ぎ! 酒臭いんだよ、酔っ払って剣抜いてんじゃねえ! 抜くならお家に帰って抜きなさい!
とりあえず蹴っ飛ばして、女の子の安否確認したらすっごい美少女。
一人はボロボロで怯えててそれどころじゃないけど、もう一人の方は俺と同じ赤髪と緑色の瞳。
こりゃあ美少女ってやつですぜ。
なんか同じ赤毛だしテレシア枠かもしれん。
いや、でもあの人お婆様だしなあ。流石にお婆様枠ではないな。
ともあれ懐から、ポーションを取り出し渡して振り返ると――――ひぇっ、鬼の形相!?
このおっさん、人殺すあかん顔してる。
俺が前世で、クリスマスにカップル見た時と同じ顔つきや。
「
冴えない顔してるからって、美少女と見つめ合ってるだけで妬いてきてんじゃねえ!
同じレベルだあ!? こちとら、アストレア様にいわれて
うおおおおお!!
見える、見えるぞお!
お前の脂肪蓄えた腹と、酔っ払ったなんちゃって剣術なんてちょろすぎんだわ!
避けて、手刀で剣を落としてそのまま拾って首筋にすぱぁーん!
しかし、ここでスプラッタしたら女の子たちトラウマになりかねんから寸止めね。
格の差分からせる為に、首筋狙ってよく寸止めしてるからそろそろ【
「くそっ……これが天才ってやつかよ!? 気持ちいいか!? てめぇの『正義』振り翳して、人を傷つけるのはよ!!」
お前のこと傷つけてねえから!
傷つけてるのはお前だよバカめ! 何被害者ぶってんだこの野郎!
「なんとか言えよ! 黙ってねぇで! 見下してんのか!? 冒険者になってすぐ
ふぁー! すっごい逆ギレしてきた。
俺も言っちゃうもんね! でも言い過ぎたら、こいつ牢屋から出てきて復讐してきそうで怖いから穏便にいきましょうや。ね?
そんな感じのこと言ってたら、後ろの赤毛の女の子が「は?」 とか言うてるンゴ……はわわ、なんかミスったんか?
いや、もうこのままきたら押し切るぞ!
自己満足上等っ、カッコよく助けて女の子にチヤホヤされたいんや! ラインハルトは、そんな願望ないだろうから表に出さんがワイはチヤホヤされて、何だったらにゃんにゃんもしたいぞー!
おっさんも諦めたらいけない! 俺も気がついたら転生して、人生逆転してるんだから全部巡ってくる!
誤魔化しすぎだぁ?! うっせえ、こんなんパッションで乗り切るしかないやろ! 人狼してる時も、パッションで乗りきって吊られてきた男だ、面構えがこちとら違うんじゃい!!
「……そりゃ、そうだが」
ほらな! パッションが全て解決してくれる! なんとか丸めこめたぞ!
でも、おっさんがまた生まれ変わって今のまんまでも俺は助けられんから勘弁な。
「傷一つ付けずに無力化した奴が言う台詞じゃねぇな」
よっしゃあ、いい感じに終わった!
いやー、助かったぜ。
常時戦場みたいな感じで、ラインハルトも板についてきたからか、最近意識しなくても言動がラインハルトっぽくなってきたお陰だわマジで。
アストレア様には随分前に気を抜いてて声を掛けられた時に、ファっ!? て言ったの聞かれてたんやがな。
その後、笑って見られてただけなんが怖いぜ。
神様には嘘は見抜かれるかも知れんけど、心は見抜かれないからね。
心見抜かれたら終わり過ぎる。
あー、疲れた。
とりあえず上手いこといったし、早く帰ってアストレア様に
とかなんとか考えながら、おっさん憲兵に引き渡したら、ムショから出たら一杯やろうや。とか別れ際に言われた。
なんなの?
いっぱい
いっぱいヤりあおうや、なのか。
いくら俺の顔がいいからって、流石に。
お断りですって、やんわり断ったら笑いながら憲兵に連れてかれてた。二度と出てくんじゃねえぞ、こちとらやっかみ受けてるんだからケツまで狙われたら溜まったもんじゃねえ!
「……あの」
おっさんの姿が見えなくなるまで、その背を睨みつけてたら急に赤毛の子から喋りかけられた。
出来るだけ王子様スマイルを意識して振り返って、返事をする。
「……そのことじゃなくて。それに、私……家族とは、離れたから」
すっっごいバッドコミュニケーションしたっぽい。
本当にすまん。
このままじゃラインハルトガールズの第一人者がががが!
「まだ……お礼を言えてなかったと思って。助けてくれて、ありがとう」
いける、これ流れでいけるでしかし!
ワイの名前広めてクレメンス!
あと、うちの女神様もな!
「……なんて名前の神様なの?」
アストレア様って言うんだよ!
正義と秩序って言ってるけど、あれ最早豊穣だろ。どこかが良く実ってますね、とかそんなん言えんけども。
何回か逢った事あるデメテル様とかと一緒じゃん!
アストレア様のたわわに惹かれました!
あれがロキなら唾吐いてたかもしれん。
壁だし何考えてるか壁だしよく分からんし。
いつも勧誘してくるけど怖いし、フィンもニコニコしてるけど何考えてっかわかんねーし、ガレスは酒呑ましに来ようとするし、リヴェリア様は美しい! たわわではないけど、顔がつよつよすぎて、是非とも名誉会長になってくれませんか? 他のエルフたち怖過ぎるのだけとめてもろて。
とか何とか濁して言ったら、目の前で女の子が目を見開いて、
「私も、そこに入りたい!」
ワイそこまで好感度あげた覚えないんやが????
ファンクラブ会員一号やと思ったら、
「だから……貴方みたいな人がいる神様――いいえ、アストレア様の眷属になって、『正義』を探したい!」
ワイの正義なんて可愛いは正義、あとたわわでえちえちだったら正義だけどいけそう?
「そういえば、名前を聞いてなかったわ!」
お、おう。もうこれ止まらんやつや。
入れんかっても文句だけは言うなよ。
しかし、孤児だったからって、まさか家名貰えるとは思わなんだなー。
顔とかがそっくりだと、後付け設定みたいに全部おんなじになるん?
龍剣レイドはそれとなく聴いたら、ないっぽいけど。
「ラインハルト! じゃあ、ラインハルト
お婆様枠やと思ってたら、もしかして俺がテレシアの兄枠だったオチなんかこれ。
まあ、いっか。
雨も気がついたら晴れて気分もいいし。
アリーゼの笑顔も超可愛いし、万事OKてことで!
でも、ファミリア入れんくても文句は言うなよな!
あと、近付き過ぎないでね! ストーカーだとしてもファンだとしても、顔がいいの自覚して! ドキドキするから!
◇◇◇
「――ねえねえ、アストレア様」
ふと、アリーゼが問いかけた。
「どうしてラインハルトお兄様には、
アリーゼがアストレア・ファミリアに加わって、数日が経った頃のことだった。
当の話題の人物――ラインハルトは、この日は日課の
そのため、まだ眷属になったばかりのアリーゼと、主神であるアストレアは
とはいえ、アリーゼは一応ダンジョンに関する座学の合間である。
メインの勉強は三十分ほどで集中力が尽き、気づけば雑談に移行してから、もう一時間が経っていた。
「あらあら……これはまた、随分と急に聴いてくるのね」
くすり、と。
慈愛を湛えた微笑を浮かべて、アストレアは言う。
「隠すことでもないから、構わないのだけれど」
栗毛色の髪を揺らし、どこから話そうかしら、と小首を傾げる。
一つひとつの所作に宿るのは、気品。
正義と秩序を司る女神であるがゆえに、その立ち居振る舞いすべてが、清らかで、優しく、正しい。
まだ入団して間もないというのに、アリーゼはこの場所に迎え入れられたことを、心の底からありがたいと思っていた。
もちろん――その縁を繋いでくれた、ラインハルトにも。
だからこそ、アリーゼは彼のことをもっと知りたかった。
「そういえば……貴女には、まだ話していなかったわね」
アストレアはカップを細い指で持ち上げ、紅茶を一口含んで唇を潤す。
「ラインハルトと、初めて出逢った頃のこと」
「……?」
アリーゼが身を乗り出す。
「ラインハルトはね」
一瞬、言葉を選ぶように間を置いて。
「
「―――へっ!? ど、奴隷!?」
思わず、声が裏返った。
「とはいえ、彼を取り扱おうとしていた商会は、すぐにガネーシャ・ファミリアに潰されたのだけれどね」
「ラインハルトお兄様が……? あんなに言葉遣いも所作も綺麗なのに……奴隷だったなんて信じられない」
「ふふ。言葉遣いは元々綺麗だったわ」
アストレアは穏やかに言う。
「今の立ち居振る舞いは、私の眷属になってから身につけたものよ」
「はへぇ……」
アリーゼは感嘆の息を漏らす。
アストレアはカップを机に戻し、星空を閉じ込めたような深い藍色の瞳を、どこか懐かしそうに細めた。
「かろうじて“服”と呼べるかどうか、というボロ布を身に纏っていてね。出逢った時は……あの綺麗な赤毛も、汚れてくすんでいたわ」
「……想像、できない」
「でもね」
アストレアは、静かに続ける。
「唯一、あの時から変わらないものがあるの。いいえ――あの頃より、もっと輝いているもの」
不意に、問いが投げかけられた。
「アリーゼ。何だと思う?」
「え……」
アリーゼは首を傾げ、目を閉じる。
数瞬の沈黙の後、
「……っ!」
緑の瞳が、はっと見開かれる。
「正義の心だと思うわ!」
勢いよく言い切る。
「私の町には、アストレア様みたいな神様もいなかったし、ラインハルトお兄様みたいな『正しさ』を持った人もいなかったもの!」
「あらあら……」
うふふ、とアストレアは声を漏らして笑う。
とても嬉しそうに――けれど、ゆっくりと首を横に振った。
「それも、間違いではないわ。でも……残念。違うの」
「えっ……?」
確信すら抱いていたアリーゼは、思わず言葉を失う。
「もっと、強く輝いていたのは――」
アストレアは、静かに告げた。
「――彼の目よ。ラインハルトの、瞳」
二人の脳裏に、自然と彼の姿が浮かぶ。
右腕に
整えられた、やや朱を帯びた赤毛。
その隙間から覗く双眸は――アストレアが夜を閉じ込めた藍ならば、彼は昼を閉じ込めた蒼穹。
「ラインハルトお兄様の目……宝石みたいで、すっごく綺麗だもの!」
「ええ」
アストレアは、優しく頷く。
「あの目を見た瞬間に思ったの――ああ、この子を初めての眷属にしたい、と」
そして。
それは、間違いではなかった。
心の中でそう呟き、アストレアは微笑んだ。
「……っ」
その笑顔を見た瞬間、アリーゼは言葉を失った。
あまりにも眩しくて。
あまりにも、あたたかくて。
もし下界に降りる前、神々が偶像として崇められていた時代があるのなら――きっと、アストレアのような
それほどまでに、慈愛に満ちた、とても綺麗な笑顔だった。
◇◇◇
アストレアとラインハルトが出逢った一年前――――。
最後の一撃が終わった瞬間、路地に張りつめていた空気が、ふっと緩んだ。
剣は振り抜かれていない。
喉元で止められた刃が、暴漢の命だけでなく、暴力そのものを封じている。
崩れ落ち怯えた男は、今や来るはずのない死の恐怖に意識を飛ばしていた。
赤毛の少年は、終息したのを感じとり、静かに剣を引いた。
そこに、勝利を誇る素振りはない。
息を荒げることもなく、ただ終わったことを受け入れるような仕草。
少年は周囲を見渡した。
人質以外に、傷ついた人間はいないか。
怯えて身を竦めている者はいないか。
敵ではなく、場そのものを気遣う視線。
その光景を、少し離れた場所から見つめていたアストレアは、動けずにいた。
ただ目を奪われていた。
力は確かだった。
剣技も。
判断も。
同年代とは思えないほど研ぎ澄まされている。
だが、それ以上に彼女の胸を打ったのは――――剣を振るった後に残る感情だった。
そこに憎しみも、優越も、自己陶酔もない。
あるのは、
これ以上、誰も傷つかなくていい。
静かな安堵だけ。
――ああ。
アストレアは、その瞬間に悟ったのだ。
この少年は、正義を騙らないだろう。
そして、正義から目を逸らさないのだと。
アストレアは、自然と歩み出ていた。
石畳を踏む足音が、少年の耳に届く。
彼は即座に振り返り、アストレアの姿を正面から捉えた。
アストレアの星空を押し込めた藍色の瞳と交錯する蒼穹を閉じ込めたような碧眼。
疲労はあれど、曇りのない視線。
アストレアは、柔らかく微笑んで問いかける。
「――ねえ、貴方の名前を教えて」
一瞬の間。
少年は迷うことなく、答えた。
「……ラインハルトです」
それは、飾りのない名だった。
誇示も卑下もない、ただの事実としての響き。
「家名はあるかしら?」
その問いに、少年――ラインハルトの視線がわずかに揺れる。
そして、静かに首を横に振った。
「ありません」
その言葉に、悲壮はない。
受け入れてきた現実だからこその、淡々とした声音。
アストレアは、静かに頷いた。
「そう……なら、私が与えましょう」
ラインハルトの瞳が、わずかに見開かれる。
アストレアが一歩近づき、その視線を真っ直ぐに受け止めた。
「剣を振るう者でありながら、剣に溺れない。貴方の在り方には、“剣”の意味がふさわしい」
穏やかで、しかし揺るぎない声で告げる。
「“ヴァン”――剣を意味する名よ」
それは力を誇る称号ではない。
背負う覚悟としての刃。
ラインハルトの胸に、温かな熱が灯る。
「そして、もう一つ」
アストレアの声が、ほんの少しだけ優しくなる。
「あなたは、これから私の眷属となる。私、正義と秩序を司る神――アストレアの」
世界が、静まったように感じられた。
「だから、姓を与えるわ」
それは命令ではなく、選定。
神が人を認める、厳粛な瞬間。
まるで英雄譚の一説。
神託を受ける勇者の様な、そんな瞬間。
「貴方の名前は、ラインハルト・ヴァン・アストレア」
名は完成する。
「ラインハルト―――私と
そんな問いかけに、ただただラインハルトは目を見開いて、呆然とする。
「――嫌、かしら」
まるで恋心を抱く町娘の様に、少しばかりの不安と一緒にアストレアは言葉を吐いた。
「とんでもありません」
その不安も束の間。
ラインハルトは、ゆっくりと息を吐いた。
そして。
「これも――運命の導きです」
ラインハルトは初めて小さく――それでも確かな笑みを浮かべた。
「これより僕は、アストレア様の眷属です」
その笑顔は、アストレアでさえ思わず見惚れる様な、それはとても綺麗な笑顔だった。
ラインハルト・ヴァン・アストレア。
この瞬間から、それは力あるものに奪われる名ではない。
ただ、呼ばれるだけの名でもない。
生き方として背負う名を、この日、彼は得た。
その姿を見て、アストレアは確信する。
――あぁ。この選択は、きっと正しかった。
◇◇◇
「―――……私と、戦ってください」
なんやこの金髪美幼女!?
日間記念で急ぎ執筆。
もしかしたらどっかで加筆するかも。
あと、もうちょっとしたらアストレアレコード時間まで行く予定
モチベのために感想・評価お待ちしております。
幕間が描く話(各副題は活動報告にあり)
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豊穣祭
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剣聖の受難
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アストレア・ファミリア 剣術指南
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ロキ・ファミリア × 剣聖
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