奥さんに会いたい盲目覇王が息子を唆した結果、トンチキイベントが勃発しました。
オリキャラ多数。うっすらカルジナ。やや色っぽい夫婦の触れ合いがあります。
2025年冬イベント「マハーバーラタより愛を込めて!」
カルデアには様々な国と時代の英霊が集う。古代であったり近代であったり、とうに滅んだ文明出身であったり、未来や並行世界といった手が届かない場所から呼ばれた者もいる。有事以外は霊基保管室で眠ることを選ぶ者、シミュレータ内に住む者、カルデア内でスタッフや他の英霊との交流を楽しむ者など暮らし方も様々だ。
数百のバラエティー豊かすぎる英霊の中にあって、古代インド出身・クル王国ゆかりの面々は強烈な存在感があった。
クル国王弟パーンドゥの子、怪力無双の風神ヴァーユの子ビーマと神々に祝福されし至高の弓兵アルジュナ。
並行世界から召喚された、全ての神を取り込み唯一神になったというアルジュナの別側面、アルジュナ・オルタ
バラモン最強の戦士にして憤怒の化身、シヴァ神とヤマ神の
戦場育ちの戦闘の天才、古代インド最高峰の戦士と名高い太陽神スーリヤの子カルナ。
クル国王太子として統一戦争に参加し、即位後は国をさらなる栄華に導いた、人悪の英雄ドゥリーヨダナ。
そして古代インド最強の戦士、盲目覇王ドリタラーシュトラ。人類最強ランキングで常にトップスリーに名を連ねる常勝無敗の大英雄。
戦争史マハーバーラタに登場する英雄たちは全員がトップサーヴァントであり、マスター藤丸立香のもとあらゆる戦場で活躍している。その中でも周回と呼ばれる資源収集のための長時間出撃で重宝されているのがドゥリーヨダナだ。ほぼ固定された編成で朝から夕方まで出撃することが珍しくない周回組。彼はそのアタッカーを務めているのである。
「つ、疲れた……」
「百周以上するなんて、信じられない……」
「なんだなんだ、もう歩けんのか? 弱音を吐く元気があるならまだいけるであろう。ほーれ頑張れ頑張れ」
ヘロヘロになっているアルトリア・キャスターと徐福の傍を薄紫髪の大男が悠々と追い越していく。背中にマスターを乗せて歩く姿は、とても3桁の宝具を打ったとは思えない。流石に髪のセットは崩れており、腰につけた飾りの花が一つ取れているが、まだまだ元気そうだ。
「ドゥリーヨダナ凄いご機嫌だね。限界突破が楽しみなの?」
「そのとおり! 楽しみで楽しみで、わし様昨晩はなかなか寝付けなかったのだ」
「そんなに喜んでくれると聖杯の使い甲斐があるなあ。今回で上限120だよね。おめでとう、最大値に一番のりだよ。種火が十分ないから強化は待ってもらうけど」
「よいよい、種火は飽きた。ずっと先で構わん」
疲労困憊のマスターを背負っているドゥリーヨダナは稀に見るぐらいご機嫌だ。喜怒哀楽がはっきりしていて良く言えば自分に大変な素直な男であるので、上機嫌になることは珍しくない。しかし肩越しに見た甘やかな横顔は本当に嬉しそうで、藤丸もつられて笑顔になってしまった。
この時、どうしてそんなに嬉しいのか聞いておけばトンチキイベントは起こらなかったのだろうか。後から振り返って考えたカルデア最後のマスターは、イチャイチャを繰り広げる古代インドの夫婦達を前に遠い目をするのだった。
* * *
始まりはドゥリーヨダナが強化用の聖杯をもって駆け去ったことだった。敏捷Dとは思えない走りでスタコラサッサと消えてしまった彼に藤丸もマシュもダ・ヴィンチも呆気に取られ、新所長の「聖杯盗まれてないかね!?」というツッコミで慌てて後を追った。
カルデア内はモニタリングしているから逃げ場がない。ドゥリーヨダナもずっと逃げる気はなかったようで、父であるドリタラーシュトラの部屋でアルジュナ二人に追い詰められた姿で発見された。その場には部屋の主である盲目覇王もおり、長身の男四人が集まって圧が凄いことになっていた。
アルジュナ達は臨戦状態だ。対するドゥリーヨダナは聖杯を両手に抱いて機嫌良さげ。息子と甥たちが対峙しているというのに、ドリタラーシュトラは自然体で特注の椅子に腰かけている。一応三人を気にかけて千里眼を向けているが介入する気はなさそうだ。
「ドゥリーヨダナ、貴方その聖杯を勝手に使うつもりですね? マスターに迷惑をかけるというのなら、従兄弟といえど容赦はしない」
「私欲は悪……」
「悪ではない! アルジュナ、お前にも良い思いをさせてやるから今回は見逃せ! 感激の涙を流しながらわし様に感謝せよ!」
ふははははっと高笑いするドゥリーヨダナの手の中で聖杯が形を変え、七つの雫型の欠片になる。分たれても純粋な魔力リソースであり願望器の機能を残したそれを、人悪の英雄は宙に放り投げた。
「聖杯よ、我らの家族に会わせてくれーーーーー!!」
カッと眩い光が部屋を満たす。弧を描いて落下する聖杯の雫達。近くに落ちてきた一つに思わず手を伸ばしたアルジュナは、広がった光に体ごと包まれ、その中から現れた人影を反射的に受け止めた。それは暖かく、柔らかく、懐かしい香水の香りがした。
「やったーーー!! やりましたぞ、父上!!」
魔力の残滓で白んだままの室内でドゥリーヨダナの大歓声があがる。アルジュナは何が起きているのか理解できず、しかし両腕で抱えた人影がみじろいだことで、思考が現実に追いついた。
「アルジュナ! 凄いわもう一度貴方に会えるなんて!」
恐ろしく美しい女が至近距離で見上げてきている。黒く艶めく髪に深い褐色の肌、そして射干玉の瞳。アルジュナ自身にも通じる、古代インドで美しいとされた要素を詰め込んだような女である。アルジュナは彼女をとても良く知っていた。
「ドラウパディー、どうしてここに」
「そんなことどうでもいいじゃない! ああ、嬉しいわ。愛しい貴方、もっと抱きしめて!」
生前と変わらない妻に抱きつかれながらアルジュナは彼女の肩越しに室内の様子を目に入れた。ドゥリーヨダナが華奢な女を正面から抱きしめて熱烈に口付けている。女は後ろ姿しか見えないが、腰まで伸びた艶やかなマロンブラウンの髪は彼女の代名詞であった。艶めく髪のバーヌマティー。ドゥリーヨダナの唯一の妻であった。さらに、長身の男の両足にはこれまた見覚えがありすぎる男女の子供が抱きついていた。生前に初老になった彼らを知っているため違和感が拭えない。
ドラウパディーが全身を寄せてくる中、アルジュナはもうひとつ確認するべく視線を動かした。ドゥリーヨダナのあけすけな願いから、少なくとももう一人現れていることを確信していた。
「久しいな、ガーンダーリー」
「ええ、本当に」
旦那様、と濡れたような美しい声が囁く。品よく結われた薄紫の髪と小麦色の肌の女が、巌のような男の左膝に身を預けて厳しい顔に触れている。黒い絹布の目隠しをしている彼女が、女神に例えられた己の妻に勝るとも劣らない美貌の持ち主であることをアルジュナは知っていた。
「な、何事!? わし様何してくれちゃったのー!?」
戸口でマスターが頭を抱えている。怒っているのではなく、トンチキなイベントの始まりに頭痛を覚えているのだろう。なにせカルデアではこういうことがたまによく起きる。廊下の先も騒々しくなっており、アルジュナは遠い目をしてしまった。
隣で宙にふよふよ浮かんだアルジュナ・オルタが、いつか妻であったはずの女と同じ顔の別個体を覗き込んで「誰?」と首を傾げていた。
* * *
その女が現れた時、夕食時間が過ぎた食堂は人がまばらで、キッチン組は片付けを始めていた。
長身で力強い体つきをした、尖り耳の美女である。ざんばらな黒髪を細い金の飾りでまとめ、鮮やかな青のサリーを纏った姿は凛々しく野性的。裂けた口元から牙をのぞかせる人外の女は赤い瞳で食堂を見回し、やがて目当ての人物を見つけたことで雰囲気を一変させた。
「ビィィーマ様ああああぁ!!」
「んなっ、ヒディンバー!?」
キッチン奥の男めがけて飛び出した女は、見た目通りの身体能力でカウンターを飛び越え、耳まで裂けた笑顔でぶつかっていく。並みの英霊であれば後ろのオーブンに激突していたことだろう。幸いそうはならず、ビーマは少したたらを踏みつつも相手の勢いを殺して抱き留めた。
「お前サーヴァント、じゃねーな。どうやって……いや、んなことより、よく来たな! 会いたかったぜ!」
「私も、私もっ、すっごくすっごくすっごく会いたかったです! ビーマ様、ビーマ様、ビーマ様!!」
女の名はヒディンバー。人喰い羅刹として討伐された兄を二つ折りにしたビーマに一目惚れした、押しかけ女房の羅刹女であった。
パーンダヴァの第一の妻はドラウパディーと思われがちだが、ビーマの第一夫人はヒディンバーである。並行世界では共に暮らすことがかなわなかった二人だが、盲目覇王に祝福されて固く結ばれ、ヒディンバーはビーマを看取った後も息子ガトートカチャと共にクル王国を長く見守ったとされている。
狼のような美女が興奮しすぎた小型犬さながらに夫の顔を嘗め回す。顔中べたべたにされたビーマは幸せそうに笑いながら彼女の顎を掴み、喰らいつくように口づけた。
カルデアのキッチンが食堂から丸見えであることなどどちらの頭にもない。しかし両手両足を巻き付けてきた妻の臀部をビーマが掴んだところで、呆気に取られていたエミヤが咳ばらいをし、ブーディカが大きく手を打ち鳴らした。食堂側では酒が入って盛り上がったケルト組が盛大に囃し立てていた。
「ビーマ、もう上がっていい。部屋に戻る前に、奥方が突然現れた理由を確認するべきだと思うが」
「おう、悪いな二人とも、今日ばかりは甘えさせてもらうぜ。理由、理由なあ……なんとなく想像つくが」
けして華奢でも小さくもない羅刹女を片腕に抱いて、ビーマは少し遠い目をした。己が原因になるようなことに全く心当たりはなく、しかし妻に会いたいと強く願いそうな人物には心当たりがありすぎた。
「ちょっと伯父上のところに」
言いかけた男はカウンター越しに近づいてきたよく知る気配に言葉を途切れさせた。他のキッチン組も食堂にいる面々も、目を大きくしてその白い人物を見つめている。
「違うのか」(不思議なことが起きたので他の皆の様子を見に来ました。ビーマは奥方が現れたのですね。私は養父母が現れただけでなく、こんな風になってしまいました。我々の何が違うのでしょうか)
「多分言いてぇことが一割も伝わってねえぞ、カルナ。やっぱり何か起きてやがるな。伯父上のところ行くぞ。アディラタたちも来いよ」
同じクル王族(片方は養子だが)でランサーの英霊でもある父違いの兄。空色の瞳が見上げてくる距離が普段よりやや遠く、某神の依り代いわくもやしのような体つきがさらに細くなっている。ランサーのカルナは二十そこそこに見える三十半ばの姿だが、今は十代半ばのようだ。黄金の鎧の上に御者の上着を羽織っている。涼しい顔をしているが、内心穏やかではないだろう。
カルナの後ろには初老の御者夫婦が気圧された風に佇んでいる。英霊どころか戦士でもない二人がどうしてカルデアに現れたのか。ヒディンバーは羅刹の身体能力と幻術の才があるため、英霊になれる可能性はゼロではない。しかしアディラタとラーダーは完全にゼロだ。カルナのもとに只人の養父母が現れたことで、ますますビーマの想像は確信に近づいていた。
「へえ、カルナや伯父上様もいるんだ。ビーマ様っ、ここは不思議なところですね!」
「その辺もちゃんと説明する。ほら、降ろすぞ」
「はーい!」
ヒディンバーは降ろされるなり夫の腕に抱き着き、ビーマもそれが当たり前といった様子で歩き出した。何せこの夫婦、ヒディンバーがいきなりインドラプラスタの領主館に現れ、猛アタックの末にビーマが絆され、国王の許しを得て結婚した後もずっとこの調子であった。子供が生まれても、孫が生まれても、ビーマが寿命で天に昇るまで関係は変わらず。アルジュナなどは「兄ちゃんよく疲れませんね」と呆れていたという。
聖杯の七つの欠片。ドゥリーヨダナの願いによって現れたマハーバーラタの登場人物たち。霊基がライダーになり姿が変わったカルナ。もしかすると巻き込まれているアシュヴァッターマン。インドの英雄たちを中心としたトンチキな出来事はかくして幕を開けたのだった。
後書き
マハバ組の家族再会系トンチキイベント話。全4話。
本家FGOのイベントよりずっと小規模で平和()です。
マハーバーラタ三大美女は以下三人。
ガーンダーリー→エキゾチックな肉感的美女、お淑やかで大変えっちなお姉さま、公では目隠し着用
バーヌマティー→艶めくロングの清楚系美人、実はあがり症で上手におしゃべりできない
ドラウパディー→古代インド的美の化身、全体的に黒い、アルジュナ限定スイーツ脳
なお、ビーマの第一夫人は羅刹女ヒディンバーです。
ヒディンバー→長身筋肉質な狼系美人、超肉食系押しかけ女房、ビーマの前ではハイテンション
コメント、ブクマ等大変嬉しいです!ありがとうございます!
【2026.2.28まで】 本シリーズについて、今後の更新の需要確認にご協力願います。ここにないネタの希望はメッセージ(コメント欄は不可)でアンケート〆まで受け付けます。パロ・Ifの分岐ルート・番外の続き等、何でもOKですが、レーティングはR15まで(R18は不可)、キャラ死亡はパロかIFのみでお願いします。 ★重要★あくまで需要の確認です。必ず書くとお約束できないことをご了承願います。
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第5次聖杯戦争の盲目覇王
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オリジナル聖杯戦争の盲目覇王
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百王子やパーンダヴァの子の話(孫世代)
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ビーマとヒディンバーの話
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FGOの実在イベントへの参加
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マハバ三大美女に関する掲示板
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人類史上最強に関する掲示板
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治安維持部隊長アシュヴァッターマン
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ビーシュマやドローナの掘り下げ
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クンティーとカルナの話
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パーンダヴァ長兄()カルナの話
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授かりたくないアルジュナの話
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ビーマの料理関係の話
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