盲目覇王による古代インド統一   作:アマエ

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注意: 裸の男女がベッドで会話してるシーンがあります。


番外「マハーバーラタより愛を込めて!」3話目

 

 

ドゥリーヨダナの願いによってマハーバーラタ組の家族がカルデアにやってきて早一週間。聖杯の魔力は少しずつ目減りしており、真っ先に退去したドローナに続き、カルナの養父母も消えていった。アディラタとラーダーは懐かしい姿の息子を存分に構い、彼が親しくしているガネーシャ神の依り代の女性と積極的に交流し、最終日は涙を流しながら「息子をよろしくお願いします」と彼女のふくふくした手を握りしめた。なお、そのように接されたガネーシャ神の依り代ことジナコ・カリギリは真っ赤になって滝のような冷や汗を流していたという。

 

そして今朝、子供の姿のラクシュマン・クマラとラクシュマニーが退去した。もともと聖杯の欠片の魔力をわけあっていた彼らは、五歳ぐらいの姿で現れ、両親との時間を満喫してから消えていった。藤丸は子供にべったりだったドゥリーヨダナが落ち込むのではと心配したが、意外にも彼はピンピンしていた。

 

「生前はあやつらの孫の顔まで見たのだ。寂しい気持ちはあるが、ここで懐かしい時間を過ごせて、わし様とーっても満足したぞ!」

 

ドゥリーヨダナは妻の肩を抱いてベタベタしつつそう言った。

 

「そっか。それにしても聖杯の不正使用がこんなに和やかなの初めてだよ」

 

「はっはっは、わし様がマスターに迷惑をかけるわけがなかろう」

 

「ドゥリーヨダナ、胸に手をあててよーく考えて、もう一度言ってくれる?」

 

じと目になったマスターに、人悪の英雄は悪い笑みを浮かべてまた笑った。バーヌマティーは大柄な夫を静かに見上げている。マロンブラウンの豊かな髪がかかった繊細な横顔は、確かにマハーバーラタ三大美女と呼ばれるに値する美しさだ。

 

「ん? どうした、バーヌマティー」

 

「なっ、なんでも、ありましぇ、んんっ、ありません」

 

しかしクル国王妃の静謐は外見だけのものであった。ドゥリーヨダナが身をかがめて顔を覗き込むと、彼女はポポッと赤くなって言葉を噛みまくる。家族だけなら普通に話せるそうだが、今は藤丸の前なのであがっているのだ。

 

「それならよいが。マスター、我らはこれから小町らとお茶会だ。また後でな」

 

「うん、また後で」

 

藤丸は古代インド夫婦が小野小町らロマンス作家(拡大解釈)のお茶会に招かれた経緯を知らない。マハーバーラタは戦争史であり、接点があるように思えなかったのだ。けれどドゥリーヨダナとバーヌマティーの夫婦は日本の少女漫画及びロマンス小説界隈で大変有名であった。

 

旧カリンガ王国の姫バーヌマティーとカリンガを滅ぼしたクル王国の王太子ドゥリーヨダナの恋物語は、1970年代の少女雑誌に「艶めく髪のバーヌマティー」というタイトルで数年間連載された。この作品はドアマットヒロインやおもしれ―女、ドSからの溺愛系、年の差ラブといったジャンルの二次元的先駆者とされており、数十年経っても根強い人気があるのだ。カルデアの図書室にも全巻揃っており、スピンオフの小説やアニメ化のデータ等も充実している。この手のジャンルに染まったサーヴァントたちは、今回のバーヌマティー登場に大いに沸き立ったのだった。

 

実物のバーヌマティーが漫画よりも遥かに美しく、凛とした静謐が似合う(本人は必死に表情を固めて黙っているだけ)女性だったことも、ファンたちの盛り上がりに火をつけていた。

 

「まさか、わし様たちの物語がマスターの国で大人気とはなぁ」

 

「おっきーさんに絵物語を見せてもらったよ。あなたの姿が違いすぎて違和感があったけど、お話は面白かった」

 

「物語のわし様はどんな風なのだ? 当然、最格好いいヒーローであろう?」

 

「細身の美形で気障ったらしくて背景の花や煌めきが目にうるさいの。最初の方は主人公(わたし)に意地悪ばかりする嫌な人。いくつかきっかけがあって溺愛するようになるんだけど、今度は息苦しいぐらい距離が近い」

 

「ロクな男ではないな!? 作者は誰だ、断固として抗議する!」

 

「世界が白紙化しているから今は連絡がつかないと思う。それに、違和感があったのは外見だけ」

 

「ちょーっと待て、わし様がロクな男ではないと!?」

 

「あなたが言ったんでしょ」

 

バーヌマティーはショックを受けた顔の夫をちらりと見やり、繋いだ手の親指で相手を愛おしげに撫でた。彼女が幼くしてクル王国に嫁いだ時、七つ年上のドゥリーヨダナは大変意地悪で、ことあるごとに彼女をからかって泣かせた。真っ赤な顔で子供らしく泣く姿を楽しんでいたのだろう。けれど、たまに本当に傷ついて大泣きした時には、ドゥリーヨダナは慌ててバーヌマティーを抱きしめ、大げさな謝罪とともに花を贈ってくれた。今思えば、アダルマの国から嫁いできて肩身が狭い妻が思い悩まないようにしてくれていたのかもしれない。半分以上はドゥリーヨダナの悪癖だったのだろうが。

 

数年たって男女として結ばれてから、バーヌマティーは泣かなくなった。ドゥリーヨダナのからかいもいつしか鳴りを潜め、毎日髪を梳いてくれる手に甘さが宿った。二人で双子を育て、国を治め、最後まで仲睦まじい幸せな夫婦生活であった。

 

「ねえ、ドゥリーヨダナ。どうして私たち同じ座に登録されなかったのかな」

 

「超人気なスター夫婦といっても少女漫画だからなぁ。いや、抜け道はあるかもしれん。丁度今からキャスター連中に会うし、相談してみるか」

 

「うんっ! 義弟妹たちが羨ましかった。私だってあなたの唯一の妻、同じ霊基に入る資格はあるはず」

 

「……愛いやつめ」

 

珍しくドゥリーヨダナの方が赤くなり、少し会話が途絶える。繋いだ手の温かさにバーヌマティーが柔らかく目を細めたことに、最愛の夫が気づくことはなかった。

 

 

 

✳︎ ✳︎ ✳︎

 

 

 

パーンダヴァの夫婦仲は悪くない。それぞれの兄弟が複数の妻を娶り、多くの子供に恵まれた一般的な古代インドの王族だといえた。兄弟仲は伝説に残るほど良好で、腹違いの子供たちも従兄弟同士入り乱れて仲良く育った。

 

問題があったとすれば、それは五兄弟の共通の妻ドラウパディーと他の妻たちの間のこと。ドラウパディーは絶世の美女であり、実際に十名以上の妻達の中で頭一つ抜きんでた美貌であった。クル王国の同盟国(属国)の王女であることは一人を除いて共通しており、お互いの気位の高さも災いした。さらにドラウパディーは五兄弟全員との間に男子を産んだ。あらゆる要素が重なって、彼女は自身がパーンダヴァの第一の妻であると自負したのだ。

 

妻たちの仲が険悪であることにパーンダヴァの男たちがどうしたかというと、ほとんど何もしなかった。アルジュナ以外の四人はドラウパディーの心が己にないことを知っていたし、アルジュナは三人目の妻であるスバドラーを寵愛していた。王族として育った五兄弟はきちんと妻たちを平等にやさしく扱ったが、心はどうにもならない。ドラウパディーと彼らの間にも大きな溝があったのだ。

 

「お前、ここでもドラウパディーと話さないんだな」

 

「あの女は嫌いです」

 

連日行っている魔力供給にさらに何回かおかわりした後、仰向けに転がったビーマがこぼした一言に彼に跨ったヒディンバーがピシャリと返した。夫の逞しい腹筋を指先で掻くようにしながら、憎々しげに赤目を細める。

 

「ガトートカチャを醜いハゲと言ったこと、死んでも許してません! そういえば、あの時殺さなかった私を偉いってビーマ様たくさん褒めてくれましたね!」

 

ヒディンバーの機嫌はいつも乱高下気味だ。ビーマの前ではほぼ上機嫌だが、羅刹女であるせいか獰猛な怒りや悪魔的な憎しみに引っ張られやすい。特に生前散々な関係であったドラウパディーに関しては、カルデアでもいないものとして完全に無視していた。

 

「あれは俺も許してねえ。大事な妻で息子の母ではあるんだがな」

 

「不愉快なのでアレの話はやめましょう! キスしましょう、キス! チュッ!」

 

「ん……なんかあいつ様子が変なんだよ」

 

「アレの話は嫌です、嫌、いーや!」

 

盛り上がった胸筋をクッションがわりに倒れ込んだ羅刹女に顔中舐め回されながら、ビーマはどうしたもんかと眉を寄せた。ドラウパディーはビーマの妻であるが、彼女の美しさに舞い上がっていたのは最初の数週間だけだった。それに、その頃にはもうヒディンバーに絆され愛してしまっており、彼の関心が共通の妻に向くことはあまりなかった。ドラウパディーは年がわりで五兄弟の妻をしていたため、ビーマは己の番がきた時だけ彼女を閨に迎えていたのだ。妻として大事にしていたが、人としてどうだったかというと、人生の反省点の一つであった。

 

ちゅーっと音を立てて唇を吸っているヒディンバーの背を撫でながら考える。カルデアで再会したドラウパディーは相変わらずであったが、日を追って塞ぎ込み、あからさまに退去を嫌がっていた。アルジュナ(と巻き込まれたアルジュナ・オルタ)が彼女と共にいるのは、少しでも気が晴れればと思ってのことだろう。

 

「ビーマ様?」

 

「ああ、すまん。おかわりするか?」

 

「しますっ!」

 

朝になったらアルジュナたちに相談しよう。場合によっては伯父上にも。そうやって先送りにしたことをビーマが後悔するのは、明け方カルデアにサイレンが鳴り響いた時だった。

 

 

 

✳︎ ✳︎ ✳︎

 

 

 

とある転生者のモノローグ

 

 

明け方に唐突に目が覚めた。

 

何かの虫の知らせだろうか。奥さんと一緒に起きて仲良く身支度して朝ごはんの予定だったのに、手持ち無沙汰になってしまった。腕の中でぐっすりなガーンダーリーを起こさないように、千里眼で時刻と室内の様子を確認する。

 

あ、そろそろガーンダーリーの聖杯の魔力が三分の一を切る。残された時間は二日ぐらいか。ヒディンバーとバーヌマティーも同じぐらいのペースで消耗してたな。ドラウパディーはやや減りが早く、今日にも退去するだろう。

 

ドラウパディー。

 

甥たちの奥さんの中で唯一、ガーンダーリーに生意気な口を聞いた女。あの時は、俺が注意する前にアルジュナが厳しく叱ったから不問にした。その後、公務以外でハスティナープラに近づくことはなかった。多分パーンドゥの耳に入って、俺の前に姿を見せないように取り計らってくれたんだろう。

 

どうしてドラウパディーがカルデアに呼ばれた?

 

ドゥリーヨダナが聖杯を使った時、あの子はスバドラーが来ると思っていたらしい。スバドラーはアルジュナが公務先から駆け落ちみたいに連れてきた三人目の奥さんだ。思い起こすと、アルジュナって真面目な割にそういうとこあったなあ。いい年になってもカルナをライバル視して弓の勝負を持ち掛けてたし、ストレス溜まると腹黒い一面が垣間見えていた。あのクソったれな未来じゃ、性格が災いしてオルタになってしまったんだろうか。カルナの首を飛ばした瞬間のアルジュナは、いつ闇落ちしてもおかしくない顔してた。まあ、あの世界でパーンダヴァが闇落ちしようが関係ない。オルタはカルデアの仲間でもう俺の子(概念)だから別だが。

 

うーん、わからん。こんな時、アカシック何ちゃらが参照できたらよかった。サーヴァントになって一番不便なのは、限定的にしかアレにアクセスできなくなったことだ。セーフモード設定されたみたいに、見れる範囲がめちゃくちゃ狭くなった。千里眼は相変わらずで戦闘に支障ないのが救いだ。

 

ぼうっと考えていると、大音量のアラート音。ガーンダーリーが飛び起きるのと、艦内アナウンスが流れるのは同時だった。緊急アラート。特異点の出現を知らせるものだけど、今回はーー

 

『全スタッフならびにサーヴァントに告ぐ。聖杯保管庫に侵入者あり。繰り返す、聖杯保管庫に侵入者あり。サーヴァントは対応にあたってくれ』

 

目が覚めたのはこれの虫の知らせか! 誰が何をしようとしてるのか、アカシック何ちゃらに聞くまでもない。どうやって聖杯保管庫を開けたのか知らんが、やってくれたな、身内の恥が!!

 

「旦那様、行かれるのですね」

 

「ある意味、俺が招いたことであるからな」

 

「ご武運を。ふふっ、貴方を戦に送り出すのは最後の遠征ぶりですわね」

 

「ふっ、今回はすぐに戻る」

 

やっぱり奥さんに見送られて出陣するのは気が引き締まる。千里眼で見たところうちの連中は全員聖杯保管庫に向かってる。というか、他のサーヴァントは近づけないようにされてるのか? 頭お花畑のくせにわからん小細工をしやがる。

 

いざ開戦だ!

 




後書き

パーンダヴァ共通の妻はぶっちゃけ性格が良くないです。
実は書きたかったのは少女漫画のくだりだったり。
次で終わります。

コメント、ブクマ等大変嬉しいです!ありがとうございます!

【2026.2.28まで】 本シリーズについて、今後の更新の需要確認にご協力願います。ここにないネタの希望はメッセージ(コメント欄は不可)でアンケート〆まで受け付けます。パロ・Ifの分岐ルート・番外の続き等、何でもOKですが、レーティングはR15まで(R18は不可)、キャラ死亡はパロかIFのみでお願いします。 ★重要★あくまで需要の確認です。必ず書くとお約束できないことをご了承願います。

  • 長兄以外の百王子から見た父王
  • パーンダヴァの誰かから見た伯父王
  • 敵国から見た盲目覇王
  • 現パロの盲目覇王一家
  • 第4次聖杯戦争の盲目覇王
  • 第5次聖杯戦争の盲目覇王
  • オリジナル聖杯戦争の盲目覇王
  • 百王子やパーンダヴァの子の話(孫世代)
  • ビーマとヒディンバーの話
  • FGOの実在イベントへの参加
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  • 治安維持部隊長アシュヴァッターマン
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  • 授かりたくないアルジュナの話
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