藤丸が目を覚ました時、寝台の脇に女神がいた。
品よく結いあげられた薄紫の髪。小麦色の滑らかな肌。薄紅色のサリーに包まれたスタイル抜群の肢体。卵形の顔にスッと通った鼻筋、非常に色っぽい口元。黒い目隠しをしているが、それさえ女性の美しさを損なうものではなくむしろ神秘を感じさせた。
少し体がだるいが動かせないほどではない。サーヴァントたちとのパスも万全とはいかないが繋がっている。藤丸はそれだけ確かめて体を起こし、スツールのようなものに姿勢よく座っている女性に声をかけることにした。
「おはようございます」
「おはようございます、カルデアのマスター様」
美しい人は声まで美しいのだ。美男美女揃いのサーヴァントでわかっていたことだが、目隠し美女の少しハスキーな声には惹きつけられる魅力があった。
「私はクル国の王妃ガーンダーリー。キャスターのクラスで現界しています」
「あっ、ドゥリーヨダナのお母さん! はじめまして、藤丸立香です。息子さんにはいつもお世話に、あれ、なってたっけ……いや、ごめんなさい、すごくお世話になってます!」
「ふふっ、大丈夫ですよ。ドゥリーヨダナのことはよくわかっています。あの子がご迷惑をかけるばかりでないならよかったわ」
ころころと笑うガーンダーリー。お淑やかだが社交的な性格のようで、ドゥリーヨダナの人好きがするところは母親似なのだと知った。
「藤丸様、ここは旧クル王国の王都ハスティナープラです。私の夫ドリタラーシュトラがあなた達を連れてきてくれました。ドゥリーヨダナは私が保護し、アルジュナとカルナは自力でたどり着いています。全員合流できたのだとお教えしておきますね」
「良かった、それじゃあみんなはここに? あのドリタラーシュトラ王もですか?」
一番心配していた神性持ちではないドゥリーヨダナと合流できた。さらに最強格のサーヴァントである盲目覇王もいるらしい。そうであればと寝台を降りようとした藤丸を美女のやわい手が押し止めた。
「夫はカルナと共に、この世界に降臨したもう一柱の協力を乞いに行きました。藤丸様は今しばらくここでお休みください。ビーマたちを呼んで参ります」
視界を閉ざしているとは思えないしっかりした動作でガーンダーリーが立ち上がり、部屋の扉へと向かう。藤丸は彼女の背中に問いかけた。
「もう一柱の神様って誰ですか?」
麗しい王妃はわざわざ振り返って応じてくれた。
「汎人類史の人間を依代に降臨せし障害神。マハーバーラタの執筆に関わったとされる学問の神。ガネーシャ神ですわ」
✳︎ ✳︎ ✳︎
藤丸が目覚め、令呪の使用によりドゥリーヨダナの傷が癒えたことで、ハスティナープラに集まったカルデアのサーヴァント達は出撃に向けた準備をはじめた。旧クル国王都の周辺は盲目覇王と王妃がサーヴァントとして召喚されたことで概念的な守りを得ている。しかしその他のインド全土はクンターラの勢力圏であり、空想樹を伐採するには敵地を縦断しなければならないのだ。かつて盲目覇王が行った大遠征をなぞる必要があった。
アシュヴァッターマンとパーンダヴァの二人が地方の神々を削る間に、藤丸とドゥリーヨダナはガーンダーリーと情報のすり合わせを行なっていた。
「クリシュナは人間の動向など気にしません。クンターラ王都プラティシュターナまで彼自ら動くことはないでしょう」
「であれば我らはプラティシュターナまで進撃し、奴を叩けば良いのですか?」
かつて盲目覇王とクル族の長老たちが囲んだ円卓でガーンダーリーがこの時代の情勢を説明する。クリシュナ・ヴィシュヌ王はクンターラ国から動くことなく、人々の信仰心によって続く神の世を統治しているという。しかしドゥリーヨダナの問いに王妃は首を振った。
「いいえ。クリシュナはあらゆる攻撃を受け付けません。我が夫が敗北を期したのもそのためです」
神による統治を人々がすぐに受け入れたわけではない。クル王国が敗北した後、覇権を争う国はいくつもあったが、いずれもクリシュナ一人の前に敗れた。さらにヴィシュヌ神をその身に降ろしたクリシュナはもう誰にも傷つけることができない、神そのものであるという。
「神の力を外付けするとは、卑怯な手を使いおって! 恥ずかしくないのか?!」
「わし様……」
「マスター、何か言ったか?」
「ううん、何でもないです」
人悪の英雄はカルデアのためにあらゆる卑怯な手を使い勝利に貢献してきた男である。藤丸はそれを糾弾する気などさらさらないし、これからも元気に悪知恵を働かせてほしいと思っている。そもそもドリタラーシュトラが勝つためにあらゆる調略を行ったことを棚に上げ、一同は話を進めた。
「じゃあその無敵状態を剥がさないといけないね」
「それは私にお任せください。私はそのために呼ばれたのです」
ガーンダーリーの細い指先が目隠しを少し上にずらす。息子と同じやや垂れた目元を長いまつ毛が縁どっている。閉ざされていた瞼がゆっくり開くと、たおやかな美貌に似つかわしくない泥沼のような昏い赤が現れた。同時に室内を腐臭が満たし、まるで真夏の戦場にいるようであった。
「母上、『それ』はどうしたのですか!?」
ドゥリーヨダナが知る母親の瞳は己と同じ紅紫色だった。それが殺意を煮詰めた魔眼に成り果てているなど、英霊になったからと言うだけでは説明がつかない。
「……ドリタラーシュトラが斃れた後、クル王国軍は全滅しました。誰一人帰っては来なかった。その半年後、クンターラ軍がハスティナープラを囲み、我が国は滅んだの」
「そんな、では母上は」
「クリシュナは攻撃を始める前にクル王族の遺体を全て返してきた。弔う時間ぐらいはあげるよって、親しい友人のような笑顔で。……腐臭漂う布の包みを王宮の庭に並べられて、それを一つ一つ開いて誰なのかを確かめた後、私は呪いに転じたわ。そして、あの男を呪いながら、この身を弔いの炎に焚べたのです」
禍々しい呪いの色が目隠しに覆われ、嘘のように腐臭が消える。ガーンダーリーは形良い唇に微笑みを湛えて言った。
「ユガのことがなければ、何十年かかっても私があの男を呪い殺すつもりでした。でも夫が、貴方たちが来てくれた今、私が全力をもってあの男を神から
藤丸には、王妃の美しい微笑みが泣いているように見えた。彼女はサーヴァントになってなお、ずっと嘆いている。ともすれば復讐者として呼ばれてもいいほどの呪いを抱えているのだと知った。
次のユガは五日後に迫っていた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
【インド異聞帯】盲目覇王と覇を唱えたいスレ【その3】
1:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 0:00:00 ID:13HmmXakGu
これは先日満を期して実装されたFGO第二部第四章「神造永久輪廻ヴィシュヌ・ドウヴァラ・ユガ」、通称インド異聞帯で初登場した星5セイバー・ドリタラーシュトラについて語るスレです。
第四章のストーリーのネタバレ解禁済。未クリアの方はご注意ください。
考察はOK。あらゆるアンチはNG。盲目覇王に敬意を持って書き込んでください。
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130:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 9:45:19 ID:Sb1UlhuviE
最初のスレでだいぶ語られてたけど、やっぱりガーンダーリー様の目ん玉爆発したのショックだった。
131:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 9:51:12 ID:oIrpVUGYNv
>>130
言・い・方!!!!!
132:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 9:55:09 ID:vktWwnTpHE
>>130
お前の発言がショックだわ!
133:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 9:59:26 ID:Z8JeNJelBo
おおう、すまん。
134:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 10:04:50 ID:OzGxlexDqr
もう一度語りたい気持ちはわかる。言い方はさておき!!!
クリシュナとの一回目のバトルでまだ無敵が剥がれてなくて、その後のカットでガーンダーリーが目から血流しながらうずくまってる。この時は単騎出撃のドリタラーシュトラの顔もアップで映る。遠く離れた場所にいるのに夫婦が繋がってるのがわかる名シーンだった。
135:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 10:08:27 ID:riSmxEzMes
バトルアニメーションに切り替わって、諦めずに攻撃する盲目覇王。加勢に入るマハバ組(-カルジナとぐだ)。クリシュナの高笑い(くっそ腹たつ)が入ってこれまでかと思ったところで、クル王族の墓の前に佇むガーンダーリー様のカット。足元に血がぼたぼた流れる中、次のセリフに全俺が泣いた(;´Д⊂)
「旦那様、どうか私に力を……共に戦う力をください!! ヤドゥ族に滅亡あれ!
136:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 10:14:09 ID:ySCWd7dWJ0
あのお淑やかな王妃様が……
137:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 10:17:24 ID:9KA8G6Jpwf
ずっと自分は帰りを待つことしかできないって思ってたんだよな。それがサーヴァントになって、ここ一番ってところで一緒に戦えた。あの絶叫は戦士の叫びだ。
138:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 10:23:10 ID:fSrApJmpbw
>>137
そんな解説されたら泣くじゃん
139:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 10:26:49 ID:aKFwtNDRdB
FGOお馴染みの血しぶきカットの後、クリシュナとドリタラーシュトラのバトルでダメージが通った。個人的にはこっちの覇王のリアクションに泣けた。
「……でかした、ガーンダーリー」
140:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 10:30:00 ID:4ELOQHDPIv
すぐに二回戦になって、奥さんあんなに頑張ったのにそれだけ!?と思った、が!!
141:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 10:35:57 ID:QjwFuEXe5G
ゲージ二つ削った後のやりとりだろ。わかる、わかるぞ。
142:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 10:41:29 ID:UeADhaVEeY
性懲りもなくぺちゃくちゃ自分を正当化するグランド()クソ野郎を盲目覇王が文字通りぶった斬ったやつな。
143:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 10:47:13 ID:abX7GWVdkD
「我が妻がこの刃を貴様に届かせたのだ。死ね、クリシュナ!!」
144:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/24 10:52:41 ID:NyqW3nxGL1
ここだけうぬ呼びじゃないの凄く好き!!!
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655:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 0:58:02 ID:Kb1Av4H0gq
クリシュナを倒して終わりだと思った人ーーー?
656:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:03:19 ID:qNPQL2L21q
はーい
657:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:08:45 ID:CTAreDvLfa
はーい
658:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:12:37 ID:jXGW8lP5aP
(*≧∇≦)ノ ハーイ♪
659:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:17:23 ID:gfVYxcr22E
ノノノ
660:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:23:22 ID:MZ0mC5B2ul
盲目覇王がいい感じで奥さんのところに去っていった後にもう一悶着とか、ペペさんどうにかして!
661:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:27:54 ID:hCzn9ouCu8
ペペさんは敵側だから
662:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:33:09 ID:Sste3BL6zz
手持ちサーヴァントをクリシュナに瞬殺された挙句覇王様と手を組んでクンターラ国への地味な嫌がらせにノリノリだったぺぺさんの話なら俺に任せろ!!
663:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:36:24 ID:HVWnqGkO3v
>>662
説明ご苦労
664:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:42:15 ID:8mT41e2sHm
あの二人の波長が合うとはこのリ○クの目をもってしても云々
665:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:47:28 ID:D5ImT3xXEM
お互い使えるものはなんでも使う秩序・悪な性格で方針が一致した感じ?
666:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:51:51 ID:cGtqSZN7fL
>>665
そうかもしれない。なんだかんだで盲目覇王はペペロンチーノを買ってた
667:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:55:28 ID:rIedE11n6w
協力者だってカルジナと一緒に王宮に送り込んできたのはびっくりした。口調やシルエットでわかってたけどさあ。
668:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 1:58:35 ID:OlY3UxNQE3
オネエさんと覇王がしばらく二人だけで暗躍してたんだろ? しかも姐さん曰く覇王もノリノリだった。
669:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 2:02:30 ID:RwfaWA4Vkn
ノリノリ……?
670:名無しのクル王国軍戦士 2019/6/26 2:07:14 ID:7HzS0hZr8O
話を戻すが、ラスボス戦(仮)の後、カルジナとぐだが空想樹を切ろうとしたら立ち塞がったぺぺさんと死んだはずのサーヴァント。
クリシュナ、お前さっき首チョンパされたじゃん!!
後書き
掲示板と並行インド異聞帯の続きです。
この一話がスローペースだったので、次に続きます。
ガーンダーリーは原典マハバの英霊になった彼女に覇王が負けた世界の同一存在の人格を載せたセルフ複合鯖ですが、原典の記憶はありません。
こっちの世界で呪○廻戦よろしく呪いに転じた人格が強烈すぎてベースを上書きした状態。
クリシュナに遠隔で呪殺宝具を放った時に眼球が破裂、霊核がひび割れ、空想樹が切られた頃に100%を超えた速度で霊基削って走ってきた主人公と抱き合って二人で退去しました。
コメント、ブクマ等大変嬉しいです!ありがとうございます!
【2026.2.28まで】 本シリーズについて、今後の更新の需要確認にご協力願います。ここにないネタの希望はメッセージ(コメント欄は不可)でアンケート〆まで受け付けます。パロ・Ifの分岐ルート・番外の続き等、何でもOKですが、レーティングはR15まで(R18は不可)、キャラ死亡はパロかIFのみでお願いします。 ★重要★あくまで需要の確認です。必ず書くとお約束できないことをご了承願います。
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