盲目覇王による古代インド統一   作:アマエ

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番外「カルデア頂上決戦!!~筋肉は世界を制す」1話目

 

 

はじまりは太陽王の思いつきだった。

 

カルデアで月に二回開催されている「王の宴」は参加者が固定されておらず、その時気が向いた者が酒や肴片手にやってくるタイプの支配者階級限定の集いである。会場は主催者・神王(ファラオ)オジマンディアスが住まうシミュレータ内の王宮。豪奢かつ高貴さあふれる白亜の会場で、様々な地域と時代の王族らが好き好きに語らい、食事や社交を楽しむだけでなく、一夜の恋や白熱した立ち合いさえ繰り広げるカオスな空間であった。

 

その夜は、マハーバーラタ組と呼ばれる古代インドの英雄たちが珍しく全員揃って顔を見せた。アシュヴァッターマンは主君であるドゥリーヨダナの従者枠での参加である。

 

「一族同伴とは珍しいではないか、人悪の!」

 

「たまたま全員の都合がついたのだ。父上が初めて参加されるので、ちょうど良かった」

 

美しい噴水の近くに陣取ったクル王族一行をオジマンディアスが迎える。マハーバーラタの英雄たちはドゥリーヨダナが召喚されるまでこの宴とは無縁であった。はじめに来たアシュヴァッターマンは対象外、王族である異父兄弟三人は興味を示さず、並行世界からやってきたアルジュナ・オルタは言わずもがな。対して、生粋の王であるドゥリーヨダナは召喚直後から社交を重んじ、可能な限り参加していた。今回は盲目覇王ドリタラーシュトラの初参加であるため、一族全員でやってきたのだった。

 

「神王オジマンディアス、此度の招待に感謝する」

 

「ふはははっ、只人の身で人理にその名を轟かせる覇王よ、よくぞ来た! 太陽たる余の威光に目が眩まぬとは、不遜、不敬! だが赦す!」

 

オジマンディアスの独特のテンションと自然体の天空(うえ)から目線に、ドリタラーシュトラは僅かに口元を緩める。無口な男はその後の社交を息子に任せ、アシュヴァッターマンが広げた上等な敷布に腰を下ろした。

 

ビーマ手製のオードブルを給仕役のオートマタ(のような何か)に預け、フランスの王妃が持ち込んだらしいワインを貰う。思い出話やカルデアでの話を肴にグラスに口をつける面々を巌のような男が見えない目で見守っていた。

 

しばらくして空気中の酒精が深まった頃、会場の一角からやいやいと囃し立てる野太い声が聞こえてきた。王の宴では余興がわりの立ち合いやちょっとした殴り合いが珍しくもない。今回もそれだろうと言うドゥリーヨダナに納得した面々だったが、盛大な破壊音と小さな子供の悲鳴にすぐさま立ち上がった。

 

時間にして一秒足らずのことだったろう。

 

集まってくるサーヴァントたちの上を飛んで騒動の中心に降り立ったカルナとビーマ。戦士の優れた動体視力には、尻もちをついた格好の中国の小さな女王(厳密には違う)と彼女の上へと倒れてくるスフィンクスの像がスローモーションのように映った。童女のすぐ近くには殴り合いの途中らしい益荒男たち。彼らは「しまった」という顔でお互いの胸倉から手を放し像へと伸ばそうとしていた。

 

間に合わない。誰もがそう思ったのだ。

 

空気を割る轟音とともに黒衣の巨躯がスフィンクス像の横に現れるまでは。

 

音速を超えて飛び込んだ盲目覇王が像の下面に右腕を差し込む。すると数トンはあるであろう石像が童女ー武則天ーの頭部すれすれで止まり、会場はしんと静まり返った。

 

「娘、大事ないか」

 

割れそうに低い声が、思いのほか優しく武則天に問いかける。押し潰されそうになっていた彼女とて戦場に立つサーヴァントだ。石像の影から這い出し、小鹿のような不安定な足で立ち上がる。その間、赤紫の大きな瞳は自分を助けたドリタラーシュトラを凝視していた。

 

「う、うむ、妾は無事じゃ。きさ、こほん、そなたは古代インドの王であったな。よくぞ妾を助けた、褒めてつかわす!」

 

子供らしい上擦った声。それを聞いて白茶の目を細めた男は、ゆっくりと石像を床に降ろす。手のひらを引き抜いた際の数センチの落下で、ズーンと重苦しい音と共に床が揺れた。

 

「すまん!!」

 

「無事でよかった!!」

 

スフィンクス像を倒してしまった男たちが小さな少女に平謝りしはじめると、再び会場はざわめきに包まれた。甲高い声が怒りを浴びせるのもその中に紛れ、終わりよければといった風にそれぞれ酒と談笑へと戻っていく。ドリタラーシュトラも近くに来ていたカルナとビーマを伴い、噴水の方へと向かう。

 

「盲目の、良い見世物であったぞ!」

 

「つまらん雑種かと思っていたが、その天与の肉体はなかなか良い。座れ、同席を許す」

 

「オジマンディアス王、ギルガメッシュ王」

 

マハーバーラタ組が陣取っていた場所には、オジマンディアスとアーチャーのギルガメッシュが酒器片手に寛いでいた。彼らの対応をするドゥリーヨダナは良くできた王の笑みを浮かべている。年季が入った人好きがする表情だが、彼を良く知るインド勢には内心イラッとしているのが丸わかりであった。二人のアルジュナが兄(概念)のやや後ろで静かに肴を摘まんでいるのは、面倒な相手の対応を丸投げしたからだろう。その隣ではアシュヴァッターマンが青筋を立てて唇を結んでいる。口を開くなと目で命じられたことが明白な我慢の顔であった。

 

ドリタラーシュトラに対する発言にカウラヴァ三人の気配が瞬時に剣呑になる。正面のドゥリーヨダナの変貌ぶりにギルガメッシュが小さく口角を上げ、それを見たアシュヴァッターマンが拳を握り込んだ。パーンダヴァも氷の無表情になっており、カルナに至っては普段の怜悧を通り越して絶対零度であった。まさに一触即発。

 

「酒の誘いならば喜んで受けよう」

 

対して、盲目覇王は穏やかであった。巌のような巨躯が優雅に敷布に腰を下ろし、流れるような自然さで酒器を手にする。その動きは虎が気まぐれに獲物の近くで眠る様に似ていた。

 

「うぬらは向こうで飲んでおれ」

 

ドリタラーシュトラの一言で、臨戦状態にあったクル王国の英雄たちは噴水の逆側へと移動する。さながら従軍中の戦士の様に、言われたとおり酒やつまみに手を伸ばし、しかし必ず誰かの視線が家長へと向けられていた。

 

機嫌よさげなオジマンディアスと愉しげなギルガメッシュ。藤丸が見たらダブル役満だと頭を抱えるであろう二人を前に、ドリタラーシュトラは上等なワインに口をつける。合わない視線のかわりに千里眼が正面衝突したことで英雄王と盲目覇王が声をあげて笑い、場の空気が一気に緩んだ。そこに太陽王が娯楽が足りないと口にしたことで、唐突にあるイベントが降って湧いたのであった。

 

第一回カルデア頂上決戦。

 

話を聞いた戦闘好きのサーヴァントが一斉に開催を希望したことで済し崩しに承認された、職員と設備泣かせの大イベントの幕開けであった。

 

 

 

 

 

 

 

とある転生者のモノローグ

 

 

何がどうしてこうなった。

 

オジマンディアスが最近平和すぎてつまらないと言ったから、皆で鍛錬すればいいじゃんと返しただけなのに、ギルガメッシュがどうせなら最強を決めようぜ!(我が最強だと証明するぜ)と言い出して、あれよあれよとマスターとカルデア全体が巻き込まれ今日に至った。

 

何がどうしてこうなった!? 俺エントリーした覚えないんですけど!?

 

ローマの闘技場をイメージした円形フィールドの真ん中で、俺はアルジュナ・オルタと対峙している。低い高度でふよふよ浮かんでいるオルタは魔力を漲らせてやる気満々だ。いつも俺を「とうさま」と呼んで猫ちゃんのように甘えてくる子が、アルジュナがカルナに向けるような目をしている。もちろんクソったれな未来のような殺気立った視線ではないが、戦意は高い。まさか優勝トロフィーがわりの聖杯に釣られたんだろうか。

 

「うぬと立ち会うのは初めてであるな」

 

「とうさま、全力でお相手します」

 

うーん、めちゃくちゃやる気。オルタとは何度もバスター編成で一緒してるが、バーサーカーで火力全振りなうえにガッツ持ちの超優秀なサーヴァントだ。もとがアルジュナなので戦闘の勘も良い。惜しむらくは長い間、戦士ではなく唯一神やってたせいで「錆びついている」ことか。サーヴァントになって大幅弱体化したらしいし……本人が気づいてるか知らんけど、うちの子の中じゃ一番弱いんだよなあ。

 

あーもう仕方ない、俺も腹を括ろう。カルデア式天下一武〇会はエンタメ系イベントだ。参加者はクラス相性が無効化され、全員最大強化の状態に調整されている。戦争じゃないし死んでも生き返れる。戦争も殺しも好きじゃないが、前向きな切磋琢磨は大好物だ。一回戦から家族とぶつかるとは思ってなかったがな!

 

レフリーを務めるのはケンタウロスの賢者さん。確か古代ギリシャのみんなの先生、ケイローンだ。公正な人っぽいのでお任せしておこう。

 

「両者、構え」

 

試合形式なので俺とオルタは3メートルほど離れて立っている。俺は師がいなかったし弟達と訓練することもなかったから、こういうのは新鮮だ。弓が得意なパーンドゥと戦士教育を受けなかったヴィドゥラじゃ組み手の相手も務まらなかった。息子たちや甥っ子たちに稽古をつけた時も主に実戦形式だったしな。

 

抜き身の剣をやや前に構え、深呼吸を一つ。日常生活を送るためのリミッターを外し、全身を戦いに最適の状態に持っていく。仮初の心臓がうるさいぐらい強く脈打ち、脳から指先まで神経が研ぎ済まされていく。千里眼も万全だ。

 

「はじめっ」

 

ケイローンのよく通る声が聞こえるなりオルタが動いた。色とりどりの星みたいな魔力の塊が流星のように俺に殺到する。これどういう仕組みなんだ?

 

綺麗だし面白いけど、これなら剣で弾くまでもない。俺は小幅のステップで惑星もどきを避けつつ、高度をあげたオルタの真下まで一足で飛び込んだ。

 

相手がどれぐらい柔らかいのか、これまで見てきた戦闘からシミュレートして力を調整し、細っこい足首を掴む。逃げようとしても無駄! ちょっと痛いぞ、歯ぁ食いしばれ!

 

「ぬんっ!」

 

「あっ……ガッ!!」

 

ぶおんと風を切る音をたててオルタを振り回し、三回地面に叩きつけた。これで殺す必要はないから追撃はしない。戦場だったら即頭踏みつぶすんだけどな。

 

多分これで終わりだ。土煙の向こうでオルタが呻いている。後頭部を三回強打したうえに背骨と肋骨がほとんど折れ、肺と心臓が凹んだ筈だ。俺が掴んでる右足は股関節と膝関節が脱臼してる。ちょっとやりすぎたか?

 

「ま、だっ……」

 

おっと、根性あるな! 捕まったままだってのに魔力の星をぶん回して当ててきた。二つ胸に直撃して、我慢してもよかったがあえて手を放して下がってやった。追撃の魔力の矢が眉間を狙ってきたので剣で弾く。血を吐きながら浮き上がるオルタは俄然やる気だ。

 

「その意気や良し」

 

負けん気が強いのはアルジュナと同じかあ。男の子はそうじゃないと! どうせ降参しないだろうから、死亡判定(シミュレータから退去)まで付き合ってやるさ。この戦いから学べるように、動きの悪いところばかり突いていく。殴られ、蹴られ、青痣を増やしながらも順応してるのがとっても偉い。

 

最後に捨て身の特攻と見せかけて後ろから尻尾で刺してきたのは凄く良かった。俺が千里眼持ちじゃなかったら大逆転だったな。ギリギリで避けたせいでオルタ自身の胸に刺さって死亡判定になってしまったのは申し訳なかった。勝者宣言されてフィールドを出たあと、全回復済みのアルジュナ・オルタが宙で丸まって拗ねていたのが可愛くて、癖っ毛をくしゃくしゃに撫でてやった。

 

次の対戦カードは俺の自慢の長男と円卓最強の騎士だ。生前戦ったことがないタイプの相手だな。アシュヴァッターマンは連中とよく模擬戦してるみたいだが、ドゥリーヨダナはビーマかカウラヴァとばかりやり合ってるから初見だろう。まあ、あちらさんも古代インドの棍棒使い相手は初めてだろうけど。

 

目にもの見せてやれ、ドゥリーヨダナ!! 父さん力一杯応援するぞ!!

 




後書き

天下一武道会タイプのトーナメント制一対一戦闘イベントです。
死んでもシミュレータ内から退去するだけで体は元通り。
宝具の出力はシミュレータの限界値以下に抑えられてます。
全部で5話あります。

作者の独断と偏見で対戦カードを用意しました。異論は全面的に認めます。
なお、異聞帯の王アルジュナ・オルタとの殺し合いなら盲目覇王も全力でやったことでしょう。

以下の対戦カードもあります。

ドゥリーヨダナ対ランスロット(剣)
アルジュナ対カルナ(弓)

アシュヴァッターマンとビーマの対戦はふわっとナレーションだけの予定です。

コメント、ブクマ等大変嬉しいです!ありがとうございます!

【2026.2.28まで】 本シリーズについて、今後の更新の需要確認にご協力願います。ここにないネタの希望はメッセージ(コメント欄は不可)でアンケート〆まで受け付けます。パロ・Ifの分岐ルート・番外の続き等、何でもOKですが、レーティングはR15まで(R18は不可)、キャラ死亡はパロかIFのみでお願いします。 ★重要★あくまで需要の確認です。必ず書くとお約束できないことをご了承願います。

  • 長兄以外の百王子から見た父王
  • パーンダヴァの誰かから見た伯父王
  • 敵国から見た盲目覇王
  • 現パロの盲目覇王一家
  • 第4次聖杯戦争の盲目覇王
  • 第5次聖杯戦争の盲目覇王
  • オリジナル聖杯戦争の盲目覇王
  • 百王子やパーンダヴァの子の話(孫世代)
  • ビーマとヒディンバーの話
  • FGOの実在イベントへの参加
  • マハバ三大美女に関する掲示板
  • 人類史上最強に関する掲示板
  • 治安維持部隊長アシュヴァッターマン
  • ビーシュマやドローナの掘り下げ
  • クンティーとカルナの話
  • パーンダヴァ長兄()カルナの話
  • 授かりたくないアルジュナの話
  • ビーマの料理関係の話
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