盲目覇王による古代インド統一   作:アマエ

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わし様の影響で、現代インドが現実と異なる状態になっています。
カルナがクラスチェンジしてオリジナル武器と宝具を使います。


番外「カルデア頂上決戦!!~筋肉は世界を制す」2話目

 

 

人悪の英雄ドゥリーヨダナ。彼は人類史に輝く古代インドの統一国家クルに三十年以上の栄華をもたらし、南アジアの経済と文化を大いに発展させた偉人である。息子に王位を譲った後も身分制度の緩和に尽力し、アジア版ノブレスオブリージュの体現と名高いカースト制度の土台を作ったとされる。父ドリタラーシュトラが最強の戦士であるならば、ドゥリーヨダナは未来の数十億人の人生に良い影響をもたらした最高のパイオニアであった。

 

カルデアでのドゥリーヨダナは、マスター藤丸立香のお気に入りのサーヴァントであり、あらゆる資源の回収に貢献する周回組のアタッカーである。毎度同じメンバーで出撃し、同じ動きをなぞり、敵を宝具で殲滅すること一日数十回。時には三桁。ダ・ヴィンチ曰くカルデアに最も物資的に貢献している男。ビーマ曰く、カルデア一出撃に文句を垂れる男でもあるのだが。

 

強くはあるが、第一に統治者であり、他のマハーバーラタの英雄達のように生粋の戦士ではない。バラモン最強のアシュヴァッターマンが古代インドの上澄みであるならば、ドゥリーヨダナ相手なら勝機は十二分ある。それがランスロットが対戦相手に抱いていた予想であった。

 

しかし試合開始から程なくして、彼は己の予想が大きく外れていたと思い知ることになった。

 

「ふん、全身鎧とは卑怯な。強いくせに真面目に防具で身を固めて恥ずかしくないのか?」

 

「その言い分はよくわからないが、貴殿を侮っていたことを謝罪しよう」

 

ランスロットの鎧の右肩のパーツは棍棒の一撃により砕けている。腹と背中にも深い亀裂が入っており、彼は対戦相手の筋力値がA+であることを今更思い出していた。

 

布をたっぷり使った優雅な衣装に胸あてだけをつけた格好のドゥリーヨダナ。薄桃色の美しい衣に隠された両脚が凶器であることも、むき出しの筋肉質な両腕が重たい棍棒を体の延長のように操ることも、すでにわかっている。ランスロットに劣らず女性受けが良さそうな顔には悪い笑みが浮かんでいた。

 

「ふーん? わし様を一目見て最強かつ最格好いい戦士だとわからんとは」

 

紅紫の瞳がすうっと細くなり、形だけの笑みから温度が消える。ドゥリーヨダナが片手で棍棒を回すブォンという音で空気が揺れた。

 

「その目は節穴だな!」

 

速さよりも上手さが際立つ打ち込みをアロンダイトで弾く。目まぐるしく回る棍棒の遠心力を生かした攻撃は一撃一撃が重い。当然、弾いた時の衝撃をお互い感じているが、それさえ次の動きに繋げる二人の技の応酬は死の舞踏のようであった。

 

ランスロットは円卓最高の騎士である。その剣技はアーサー王を凌ぎ、ある聖杯戦争において理性を失ってなお英雄王と渡り合うほどの技量を見せた。その彼をして、ドゥリーヨダナの技術に圧倒されていた。人体を粉砕する威力の棍棒術に、長い手足から繰り出される華麗な徒手空拳。西洋剣の攻撃では再現できない流動体のような滑らかな連撃に舌を巻く。人悪の英雄は、湖の騎士がこれまで対峙したことがないタイプの難敵であった。

 

「それそーれ!」

 

「せいっ、ハッ!」

 

お互いの実力は拮抗している。相手の戦法に慣れ、そろそろ動きの読みも最適化されてきた。であるならば、勝負を決するのは必殺の一撃に他ならない。

 

大きく弾きあって距離が空いた刹那。ランスロットの聖剣が眩い光を放ち、高まった魔力が旋風のように土を巻き上げる。それを見たドゥリーヨダナの足元も魔力を帯び、召喚系の宝具特有の揺らめきが広がった。

 

「輝きは水面の如く、爛々と燃え盛れ──我が聖剣!」

 

「此処にあるは我らが勝利。百の王子が集いて地を駆け吠える!」

 

ぎらつく視線が交差する。観客席からの声援ももはや聞こえない。先に動いたのはドゥリーヨダナであった。

 

「蹂躙せよ、我が最強の軍団よ! 『一から生まれし百王子(ジャイ・カウラヴァ)』!!」

 

フィールドが塗り替えられ、九十九人の屈強な戦士が現れる。古代インド統一戦争で猛威を振るった遊撃部隊が馬上で雄叫びをあげ、宝具発動とともに白馬に跨った長兄に続いて突撃を開始した。迎え打つランスロットも剣を振りかざす。

 

「『縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)』!!」

 

狙うは百王子の先頭を駆けるドゥリーヨダナだ。極光を纏わせたアロンダイトを上段から振り下ろし、蒼い刃の軌跡が相手に直撃した、かのように見えた。

 

切り裂かれたドゥリーヨダナの姿がぶれて百王子の誰かに変わる。馬ごと消えていくその姿の肩越しに別の王子が長兄へと変貌し、戦士の群れがランスロットに襲いかかった。

 

「何っ!? ぐうっ、いかんっ!」

 

「かかったな! わし様と弟達はいまや一心同体。割となんでもありなのだ!」

 

アッハッハッハと高笑いしながら棍棒を振り下す人悪の英雄の姿を最後に、プツリと意識が途切れる。頭を割られて死亡判定になったのだと気づいたのは、フィールドから退去させられた後のことだった。

 

 

 

* * *

 

 

 

「弓?」

 

闘技場に現れた異父兄が見覚えがありすぎる黒い大弓を手にしていた。虚をつかれた猫のような顔をしたアルジュナに、アーチャーにクラスチェンジしたカルナはうっすら口角を上げた。

 

「臆したか、アルジュナ」(今日のために気合いでクラスチェンジしました。生前以来の勝負ですから、お互い全力を出しましょう。まさかアーチャー同士の勝負で怖気付いたりしませんよね?)

 

「肝心な部分をひとつも口に出せていませんよ、カルナ」

 

年が離れたこの兄はいついかなる時も言葉が足りない。血を分けたパーンダヴァより彼を養子にしたアディラタ夫妻やカウラヴァの方が上手くコミュニケーションを取れているのは、とんだ皮肉だ。それでも何十年もの付き合いで、なんとなくカルナが何を言いたいのかを察することができるようになった。今の発言が親愛を込めた挑発であることも、なんとなくわかっていた。

 

「鎧はどうしたのですか?」

 

アーチャーになったカルナは赤黒いクルタと黒いドウティを身につけており、彼の標準装備である黄金の鎧は見当たらない。大ぶりな耳飾りだけが左耳で揺れていた。

 

「剥いだ」

 

「「「「……は?」」」」

 

選手の声はスピーカーで観客にまる聞こえである。カルナが平然と言った一言にほぼ全員の声が重なり、異様に大きく響く。レフリー役のケイローンも声を重ねた一人であったが、彼はすぐさま我に返り、カルナへと問いかけた。

 

「それは、貴方の状態が万全ではないということですか?」

 

「問題ない」(我が王から賜ったこの弓のおかげで傷は癒えています。アルジュナとの対決に手は抜きません)

 

上着の襟元を少しくつろげて鎧を剥いだ傷がないことを示すカルナ。その意図を理解したアルジュナは小さくため息をつき、ケイローンに説明した。

 

「ケイローン殿、兄が言葉たらずで申し訳ありません。彼がもつ『黒き命の弓(カーラ・ダヌーシュ)』は持ち主の傷を癒す力があります。鎧を剥いだ傷は癒えていると言いたいのでしょう」

 

「流石だ、アルジュナ」

 

「お前はきちんと話す努力をしろ! ……こほん、失礼しました」

 

ぐだぐだした空気を消し去るべく、アルジュナも愛用の白弓を呼び出す。英霊として座に登録される際に神々から賜ったアグニ神の弓・ガーンディーヴァだ。愛息子を失った後に授かったシヴァ神の宝具といい、祝福を受けるタイミングがどうもずれている。しかしこの瞬間、カルナと雌雄を決するにはうってつけの武器であった。

 

「それでは両者、構え」

 

カルナの白い指先が矢を挟んで黒い弦にかかる。アルジュナの黒い指先に炎が揺らめき、矢の形をとる。弓手二人の鋭い眼差しが目前の標的を睨みつけた。

 

「はじめっ」

 

掛け声とほぼ同時に放たれた矢がぶつかり、砕け散る。カルナが放つはクル王国の至宝、無限の矢筒が生み出す神秘の矢。対するアルジュナはガーンディーヴァから神の炎を打ち出している。本来の火力は後者が勝るが、互いにサーヴァントである今、威力は同等だ。

 

アーチャー同士の戦いであるにも関わらず、両者がはじめに選んだのは中近接のぶつかり合いであった。超近距離からの射撃に、弓本体による打撃と徒手空拳が入り乱れる。細かな傷など頓着しない二人は、ややあって同時に舌打ちして距離を離した。

 

「崩れよ! 『炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)』!!」

 

アルジュナが放った矢が無数に分かれ、まるで生きているかのような軌道で真白い戦士に襲いかかる。

 

「『梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)』!!」

 

迎え打つカルナの奥義はカルデアの面々が見慣れた視線のビームではなく、放たれた一矢から広がる灼熱地獄であった。核爆弾みたいだと呟いたのは誰だったか。それはアグニの炎を相殺し、円形のフィールドを焦がした。二人の弓兵も多少の火傷を負ったが、カルナの方は弓の力でみるみる治っていく。

 

「悪く思え」(ズルをしているようで気が引けますが、弓の効果はオンオフができないので許してください)

 

「その程度のことが我らの勝負に影響するとでも? ふざけるなよ、カルナ!」

 

アルジュナには、生前墓まで持っていった秘密がいくつもある。完璧であることに疲れる度に湧いてきた邪悪な心もそうだが、成人の儀に乱入してきた真白い男への劣等感にも随分苦しめられていたのだ。流石に人生の後半に差しかかった頃には薄れていたが、カルナの超然とした高潔さには一生手が届かなかった。御者(スータ)の身分から王の養子に迎えられ、盲目覇王に最も近い場所にいた眩しい異父兄。最期は邪竜ヴリトラと神話のような戦いを繰り広げ、自らの命と引き換えにアンガを救った大英雄。それがアルジュナが心から尊敬し、少しだけ憎んでいたカルナという男であった。

 

「む、言葉が足りなかったか」

 

「それを今気にするのか!?」

 

尽きることがない矢が爆撃のようにフィールドに降り注ぐ。炸裂する魔力と土煙で視界はほとんどなく、観客の大半は何が起こっているかわからなかっただろう。それは、もはや弓兵同士の戦いではなく戦略級兵器の対決であった。

 

爆発音が止んだ頃には半神二人ともボロボロで肩で息をしており、それでも戦意は高いままであった。アルジュナの右手に青白い魔力が収束していく。それを見たカルナは羅刹のような笑みを浮かべ、全身から陽炎を立ち昇らせた。

 

「神性領域拡大。空間固定。神罰執行期限設定。全承認……」

 

「偉大なる父神よ、ご照覧あれ! 我が身は日天の化身であれば、この一矢を以て全てを焼き尽くす!」

 

バチバチと神性の魔力が音を立てて喰らい合う。もはや殺気を隠さない兄弟の最後の激突を誰もが息を呑んで待っていた。

 

「シヴァの怒りを以て、汝の命を此処で絶つ……『破壊神の手翳(パーシュパタ)』!」

 

「太陽の輝きをここに! 『紅焔纏いし王星(スーリ・キー・アンク)』!」

 

カルデア頂上決戦の第七戦目。授かりの英雄と施しの英雄の弓兵対決は、宝具の相乗威力による両者消滅という引き分けで幕を下ろしたのだった。

 




後書き

カルデア式天下一武道会の続きです。
書きたかった以下の対戦カードを下手くそなりに書けて満足しました。

①わし様はちゃんと強いし、平然とズル(反則ではない)をする。

②カルナとアルジュナは仲良しな世界でもノリノリでコロシアイをする。
アーチャーカルナが鎧を剥いだのは、それがあるとアルジュナの攻撃が宝具以外通らないから。
わざわざ剥ぐ必要があったのは、生前剥がなかったから英霊としても鎧が体に張り付いているから(FGOでは生前剥ぎ取り済みで宝具演出のとおり着脱式?)
弓カルナの武器と宝具は捏造です。宝具は英霊になってから身につきました。
次回は覇王の戦いに戻ります。

コメント、ブクマ等大変嬉しいです!ありがとうございます!

【2026.2.28まで】 本シリーズについて、今後の更新の需要確認にご協力願います。ここにないネタの希望はメッセージ(コメント欄は不可)でアンケート〆まで受け付けます。パロ・Ifの分岐ルート・番外の続き等、何でもOKですが、レーティングはR15まで(R18は不可)、キャラ死亡はパロかIFのみでお願いします。 ★重要★あくまで需要の確認です。必ず書くとお約束できないことをご了承願います。

  • 長兄以外の百王子から見た父王
  • パーンダヴァの誰かから見た伯父王
  • 敵国から見た盲目覇王
  • 現パロの盲目覇王一家
  • 第4次聖杯戦争の盲目覇王
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  • オリジナル聖杯戦争の盲目覇王
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