盲目覇王による古代インド統一   作:アマエ

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カルナはわし様より8歳年上に捏造しています。


4話目

一分でわかる古代インド:盲目覇王ドリタラーシュトラ その7

 

 

盲目覇王ドリタラーシュトラと王妃ガーンダーリーは百人の息子と一人の娘に恵まれた。長男スヨーダナの誕生から一年の間に百人の弟妹たちも壺から出てきたとされている。マハーバーラタにはその後の子育てを熾烈な戦いのように描くコミカルな章があるが、百人近くの乳母たちと百王子と妹の名前や台詞が入り乱れる、読者にとっても戦いのような章であることをここに記しておく。

 

大家族の父になったドリタラーシュトラは戦争の合間に子供たちと触れあった。古代インドの父親像からかけ離れた子煩悩ぶりであったという。後にドゥリーヨダナと共に戦場を駆け、敵軍を蹂躙した百王子。彼らが戦いを恐れぬ猛者に育ったのは、幼い日から巌のような巨漢と転げまわって遊んでいたからかもしれない。なお、末の娘ドゥフシャラーはお転婆であったものの、ごく普通の姫君であったようだ。

 

子供たちが少し育った頃、ドリタラーシュトラは第三次大遠征に出立した。

 

スヨーダナ誕生直後の第二次大遠征から三年。その間に単発の戦争をいくつも起こし、攻めてきた国は防衛戦で叩き潰し、すでに周辺の国は全て取り込まれるか属国となっていた。ヒマラヤ山脈までのインド最北部を制したクル王国は、いまや古代インド全体で見ても大国であり、各国が危機感を覚えるには十分であった。

 

遠方まで赴く軍は総勢五万人。これは第一次遠征の五倍であったが、けして大軍ではなかった。ドリタラーシュトラは進軍速度を重視したため、徴兵による歩兵の増強を行わなかったのだ。彼が重用したのは自身が率いる戦車と騎馬による精鋭部隊と弓兵部隊。精鋭部隊が敵軍の前線を喰い破って引っ掻き回し、本隊が後からやってきて後方の部隊を叩く盲目覇王の戦い方は、現代にいたるまで一般的な戦法ではなく、また彼に付き従う精鋭の練度は再現不能とされている。

 

さて、国王であるドリタラーシュトラは会敵まで戦車で移動するものの、その後は戦車を降りて自ら動き、精鋭部隊が戦いやすいように弓兵隊を潰し、魔術師や妖術師を皆殺しにし、敵側の戦車の車輪を引っぺがして回るのが常であった。個人の武力が特出しすぎていたためだ。

 

この時、敵軍の真っただ中で王のために待機する戦車の御者は、クル王国軍で最も危険なポジションにあったと言えるだろう。

 

王の専属御者アディラタ。労働階級スータでありながら王と共に戦場に赴くことを許された稀有な立場の男は、戦士さながらに勇敢であり、ある程度己の身を守るすべを知っていた。二度の大遠征を共にした御者は、けして使い捨ての部下ではなかった。

 

第三次大遠征においても、当然、王の御者はアディラタが務めるものだと誰もが思っていた。しかし出立当日、馬を引いて戦車の準備をしていたのは、アディラタに似ても似つかない少年であった。

 

白金に輝く髪に幽鬼のような白い肌。空色の鋭い瞳。煌めく大ぶりな耳飾り。サイズが合わない御者の服を身に着けた細すぎる体。どれをとっても場違いな、しかし異様に美しい十歳を少し過ぎた年頃の男子だ。

 

戦車に近づく盲目覇王を恐れることなく見つめるこの子供の名はカルナ。後に施しの英雄と呼ばれ、次代国王ドゥリーヨダナの片腕となる太陽神スーリヤの子であった。

 

 

 

 

 

 

一分でわかる古代インド:盲目覇王ドリタラーシュトラ その8

 

 

施しの英雄カルナは数奇な運命の持ち主だ。彼は太陽神スーリヤと神々を呼び出すマントラを知るヤドゥ族の王女クンティー(後のパーンドゥの妻)の間に生まれた。しかし当時未婚の少女であったクンティーはカルナを育てられないと判断し、川に流してしまう。その彼を拾ったのがクル王家の専属御者アディラタであった。

 

アディラタとその妻ラーダーは子供に恵まれない夫婦であったので、川で拾った不思議な赤ん坊を養子にして大切に育てた。カルナは父神の加護により生まれつき黄金の耳飾りと鎧を身に着けていたが、御者夫婦は気にせず彼を普通の子供のように育てた。

 

養父母のもと貧しくも幸せに育ったカルナ。しかし彼が物心ついた頃に養父アディラタが戦場に赴くようになった。国王の御者として従軍することになったためだ。ドリタラーシュトラの二度の大遠征とそれらの合間の小規模な争いの数々。そのどれにもアディラタは参加し、大きな怪我をせずに帰ってきた。彼は、戦場が恐ろしくないのかと聞く妻子に笑って答えたという。

 

「我が王の近くは、ある意味一番安全なのだ」

 

かくして第三次大遠征が近づき、アディラタとその手伝いをするカルナが戦車と馬の整備に勤しんでいたある日。車輪の交換のため戦車を支えようとしたアディラタが腰を痛めた。通説ではぎっくり腰であったとされている。

 

痛みに呻きながら戦支度を進めようとする養父に、十一歳のカルナは強い眼差しを向けて言った。

 

「父よ、今回の戦はオレが出る。貴方の出る幕はない」

 

施しの英雄カルナは言葉選びが壊滅的であった。これはマハーバーラタが取りまとめられた時代にすでに彼の個性として知られており、伝説のいたるところで注釈が必要な台詞が飛び出す。このアディラタへの言葉は、「貴方は家でゆっくりしているといい」と訳されることが多い。

 

成人さえまだ遠い養子の発言に、アディラタもラーダーも大いに慌てて引き留めた。しかしカルナの決意は固く、出立の朝、彼は動けない父に挨拶をし、自分にしがみついて引きずられる母を優しく引きはがして遠征軍の集合場所へと向かったのだった。

 

盲目覇王ドリタラーシュトラとの初対面で、カルナは王の威容を恐れることなく、自分が養父のかわりに戦車を操ると伝えた。本来であれば、目を合わせての会話は許されない。しかしカルナの無礼を咎めた部下に対し、ドリタラーシュトラは己は盲目なのでそも目は合わないと宥めた。そして、まだ幼い御者の息子に考え直すよう諭した。

 

「戦場は子供が行く場所ではない。うぬは戦を知らぬ」

 

「ならば貴方が教えてくれ。オレは子供だが、大人より強いし戦いを恐れていない。養父母のためにも死ぬ気はない。対峙する敵は打ち倒すのみ。他に知るべきことがあるのか?」

 

ドリタラーシュトラは生意気な子供に怒るでもなく、鋼のような拳を青い瞳の前に掲げて見せた。

 

「では試してみるか。この一撃を避けられなければ置いていく」

 

伝説に語られる覇王の攻撃速度は音速を超える。当然、物語として誇張された表現であるが、当代最強の戦士のパンチはボクシングの世界チャンピオンをも凌駕しただろう。まして剛力無双であるから、風圧だけで吹き飛ばされる威力があったはずだ。

 

カルナはこの挑戦を受け、ドリタラーシュトラは全身から殺気を発しながら白皙めがけて一撃を繰り出した。

 

この時ドリタラーシュトラは寸止めするつもりであっただろう。彼に御者の息子を殺す理由はなく、そもそもこれはカルナを戦場に行かせないための茶番であった。覇王の誤算は、カルナが太陽神の子であり、生まれつき類いまれな戦闘の才能を有していたことだった。

 

カルナは豹のごとき滑らかな動きで巨大な拳を避け、あまつさえ王の背後を取って見せた。恐ろしい殺気も拳圧も彼を怯ませることはできなかった。

 

かくして第三次大遠征には白い子供が従軍することとなり、彼は向こう十年に渡って盲目覇王の御者を務めるのである。

 

 

 

 

 

とある転生者のモノローグ

 

 

百一人の子育ては大戦争より大変だ。乳母のみなさんが食事とおしめの対応をしてくれるし、夜泣きも侍女がある程度どうにかしてくれる。抱っこの手も同様で、俺とガーンダーリーは手伝ってくれるみんなに感謝の毎日だ。

 

子供たちは一年ぐらいで全員壺から生まれてきた。全員が薄紫の髪と白めの肌をしていて、顔形は完全に奥さん似だ。よかったな、約束されし美形の遺伝子だぞ。

 

子育てにあっぷあっぷしながら、時折戦争をしにいったり攻めてくるアホどもを返り討ちにしたり、とても充実している。血まみれた手で我が子を抱くことに葛藤なんてあるわけない。俺が頑張らないと下の女の子以外酷いことになるんだ。パーンドゥの子供たちをあらかじめ始末するのは論外。ユディシュティラもこの間紹介されたビーマもこの先生まれる下三人も、可愛い弟の子供たちなのだ。未来で何をするかなんて、どういう人生をたどるかで変わる。うちの子らが従兄弟たちと仲良く育つことが俺の願いだ。

 

抱っこの番が回ってきた次男ドゥフシャーサナと五十二男カナカーユをそれぞれの腕に抱いて、ゆらゆらと揺らしてやる。ドゥフシャーサナは少し荒っぽい赤ちゃんで、弟に掴み掛かろうとするので二人を少し離すというコツがいる。これがスヨーダナだと弟妹の誰と一緒に抱っこしても頬擦りしようとするし、ドゥフシャラーだと兄たち全員が撫でようとする。みんなまだ赤ちゃんなのに面白いな。

 

「旦那様、そろそろお乳の時間ですわ」

 

「うむ」

 

隣でスタンバイしていた乳母に息子達を渡すと少し寂しい気持ちになった。他の子達はもう授乳のために別室に連れて行かれている。これが寝る前の最後のご飯か。まあ夜中にも一度か二度飲ませてくれるんだけどな。乳母さんチームは本当にすごい。

 

俺とガーンダーリーは日中政務があるため真夜中の対応はしないようヴィドゥラに口すっぱくして言われている。俺は寝不足に影響受けたりしないけど、俺が起き出したら奥さんも絶対起きてくるから、彼女のために安眠を貪ることにしているのだ。

 

百一人も赤ちゃんがいるので、万が一にも今妊娠させないようにガーンダーリーとのイチャイチャを自重している。一緒に寝ているから毎晩が苦行だ。

 

侍女達に着替えさせてもらって夫婦で寝台に横たわる。ガーンダーリーの良い匂いがするグラマラスボディが脇に押し付けられて、本当にものすごい苦行だ。チラリと暗がりの中で見下ろしてやると、美人さんがくすくす笑っていた。

 

「子らがもう少し大きくなるまで待て」

 

「ええ、わかっています。でも口づけぐらいは、ねえ、旦那様」

 

ああ、俺の奥さんは最高に可愛くてえっちでイケナイ女だ。筋肉で盛り上がっている俺の体の上をもぞもぞと這いあがって、ペロリと下唇を舐めてくる。本当にイケナイ女だ。

 

俺は両手で彼女の腰と背中を包み、潰してしまわないよう気をつけて転がった。巨人のような上半身に覆われたガーンダーリーは笑っている。そのままねだられるままにキスした俺はアカシック何ちゃらに助けを求め、心頭滅却できるというヒーリングミュージックを脳内に爆音で流したのだった。

 

 




後書き

カルナとの出会いから従軍までと、えっちなお姉さんであるガーンダーリー妃との一幕。
時間が少し前後してます。
次回もカルナの話の予定。この世界では十一歳から従軍した戦場育ち。でも戦士になるのはまだ先です。

コメント、ブクマ等大変嬉しいです!ありがとうございます!

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  • 長兄以外の百王子から見た父王
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  • 現パロの盲目覇王一家
  • 第4次聖杯戦争の盲目覇王
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  • オリジナル聖杯戦争の盲目覇王
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