盲目覇王による古代インド統一   作:アマエ

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番外「一分でわかる古代インド:人悪の英雄ドゥリーヨダナ」

一分でわかる古代インド:人悪の英雄ドゥリーヨダナ

 

 

盲目覇王の長男にして古代インドの統一国家クルの二代目国王ドゥリーヨダナは、どの角度から彼を見るかで印象が大きく変わる人物である。カースト制度の土台を築いた、人類史の大偉人。戦争史マハーバーラタの悪ガキ集団百王子の長兄にして勇猛な戦士。後世の創作物では読者をときめかせるヒーロー。さらには社会学、政治学、生物学、文化人類学など様々な学術分野で現代に至るまで研究されている。

 

ドゥリーヨダナの総合的な評価は大変輝かしい。しかし彼が人悪の英雄と呼ばれているのも紛れもない事実である。人悪とは、意地が悪く、人をからかうのが上手いことを指す言葉。敵国から悪鬼羅刹あるいは天災と恐れられた父王の苛烈さとは異なる「悪」をドゥリーヨダナも体現していたのだ。

 

最も顕著なのは、百王子が参加した三度の大遠征で幾度も見られた、戦闘時の敵への挑発やアダルマ一歩手前(見方によってはそのもの)の卑怯行為だろう。ドゥリーヨダナ率いる百王子の遊撃部隊はクル王国軍随一の機動力を誇り、戦場を縦横無尽に駆け巡ったとされている。たった百人の部隊が数倍の人数の敵陣を食い破り、罵詈雑言を浴びせながら駆け去っていく。先頭を駆ける長兄の「ジャイ・カウラヴァ(クル族万歳!)」の掛け声は「蹂躙せよ」と同意であった。

 

背後からの襲撃、歩兵隊に対する強襲、逃げる敵の轢殺などなど。アダルマでしかない行為を友軍のサポートと称して堂々と行い、敵味方からそれを咎められると悪ガキのように舌を出して小馬鹿にする。ドゥリーヨダナのこのような悪意あふれる茶目っ気こそが、彼を人悪の英雄たらしめたのかもしれない。

 

史上最高の戦歴を誇る大英雄の父。太陽神の子である高潔な義弟。善の英雄とされる半神の従兄弟達。超越者ぞろいの一族の中で、ドゥリーヨダナは異色を放っている。弟達や親友らと骰子賭博をしたり、ライバルである風神の子ビーマと何かにつけて張り合ったり、大人気ない駄々を捏ねたり屁理屈を言ったりする彼が、人が悪い笑顔が似合うちょっと困った男だったことは想像に易い。人悪の英雄は、人悪のカリスマ持ちでもあったのだろう。

 

ドゥリーヨダナは大変愛情深いことでも知られる。両親や妻子、弟妹達だけでなく、親友のカルナとアシュヴァッターマン(前者は義弟を兼ねる)にも素直な好意を示し、彼らのためならいかなる助力も惜しまなかった。また、カルナがヴリトラとの死闘の果てに命を落とした時には、義弟の遺体を前に嘆き悲しんだとされている。

 

格好いいばかりではない人間性こそがドゥリーヨダナの最大の魅力だ。この合わない者にはまったく合わなさそうな等身大の人物像が堪らないというマハーバーラタファンは多い。

 

ドリタラーシュトラから王位を譲り受けたドゥリーヨダナは、三十年以上にわたりクル王国を繁栄させた。彼の統治から八十年後にランカー島が独立し、それが呼水となって各地の領主が次々と王を名乗ったことでクル王国は統一国家ではなくなる。しかしその後もクル王国ならびにドゥリーヨダナが先導した発展の歩みは止まることなく、インドは南アジアの雄として栄えるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

とある転生者のモノローグ

 

 

俺の息子達がわんぱくすぎる。

 

いや、男の子は元気すぎるぐらいでちょうどいいんだけど、これはちょっと度を過ぎてやしないだろうか。王宮の中庭に棒立ちの俺の体を六歳のおチビちゃんが入れ替わり立ち替わりよじ登っている。気分はジャングルジムだ。たまに落ちそうな子を支えたり、登りやすいように膝や肘を動かしてやっていると、スヨーダナが一番乗りで俺の頭に座った。俺の図体だと頭の大きさも肩の広さも十分あるけど、気をつけないと落としそうだ。

 

「スヨーダナ、俺の髪を掴んでおけ」

 

「はい、父上!」

 

うーん、いいお返事。子供に引っ張られたところで俺の鋼鉄(比喩表現)の頭皮から髪が抜けることはない。少ししたら、肩まで登ってきてるバラーキンかアヨーバーフと交代させないとな。一人三分でも九十九人全員の順番は回ってこなさそうだ。

 

しばらく防衛戦が続いてほぼ寝ずに二十連勤した俺は、ガーンダーリーとヴィドゥラのダブルチームによって休日を与えられた。王様に休日とかありえないんだが、子供達と遊んでいていいならありがたくそうさせてもらうつもりで庭に出たら、こうなった。遠征で不在だったり、防衛戦で城を空けたり、軍議で食事も一緒に取れなかったりと、寂しい思いをさせてしまったみたいだ。奥さんとはベッドに入れる夜はしっかりコミュニケーション()してるんだけどな。

 

「父上ー、ここに座りたいです」

 

「僕はこっち! スハスタもこいよ」

 

「父上の背中ゴッツゴツだ! うわっ、かってえ!」

 

「本当だー、すごーい!」

 

「こうすると壁叩いた時みたいな音がする!」

 

聖徳太子の十倍頑張って息子たちのほぼ同じ声を聞きわける。肩からぶら下がって背中を蹴りまくってるのはドゥフシャーサナだな。まさか他の人相手にはやらんだろうけど、一応注意しておくか。

 

「ドゥフシャーサナ、人を蹴ってはならん。暴力を奮って良いのは敵に対してだけだ」

 

「はーい」

 

大人しくなった次男が背中をよじ登って頭にしがみつく。スヨーダナを引き摺り落とそうとしないのは偉いな。うちの子たちは生まれた時から長男を敬っている。本能なのか? それとも一つの塊から分けたのが関係してるのか。まあ、多少差異はあるけどみんな仲良しだからオールオッケーだ。

 

息子たちがもっとたくさん一度に登れるように両腕を横に伸ばして座れるようにしてやる。長い腕に四人ずつ、両肩に二人ずつ座って、背中に五人しがみつき、大胸筋に乗っかるように四人張り付いている。腹や尻でつっかえている子たちと足に抱っこちゃんしてるのを合わせると四十人とちょっと。まだ半数も触れ合えてないぞ。ハッ、これが子沢山の苦悩ってやつか!

 

そうして二時間ほど大人気のジャングルジムだった俺は、ガーンダーリーとドゥフシャラーと合流して大家族のランチを楽しんだ。百二人が座って食事できる大広間が子供の可愛い声に満たされている。やんちゃ坊主どもが野菜を投げつけ合うのをガーンダーリーが注意してる。直接の立ち振る舞いの教育は専属の教師がいるけど、こうして親が躾するのは大事だもんな。こら、俺の皿に嫌いな香草をせっせと放り込んでるドゥルムカ。好き嫌いしたら大きくなれないぞ。

 

「父上みたいに大きくなれない?」

 

「うむ」

 

「それは嫌だなあ」

 

肩を落として俺の皿から香草を戻した十五男。俺らの会話を聞いていた周りの子らも野菜を食べるペースを上げている。俺みたいになりたいから好き嫌いしないとか、めちゃくちゃ可愛い! お前らは奥さん似だから俺ほどは大きくなれないけど、十分でかくなるって知ってるぞ。たくさん食べてグングン育ってくれ。

 

「旦那様、午後のご予定は?」

 

「子らと過ごす」

 

「ではドゥフシャラーも一緒に遊べるようにお願いいたします」

 

「うむ。ドゥフシャラー、父と何をしたい?」

 

奥さんの隣でお行儀よく鶏肉の煮込みを食べてる一人娘に聞いてみる。ぱあっと嬉しそうな顔になってはちゃめちゃに可愛い。息子たちは世界一可愛いけど、娘も世界一可愛い。これぞ宇宙の真理。アカシック何ちゃらに確かめるまでもない。

 

「お話をしてほしいです。お父様のお話、とっても面白いの」

 

「父上、前に話してくださった帽子を被った船乗りが海の果ての宝を目指す話の続きをお願いします! ドゥフシャラーもあれが好きだったろう?」

 

「はい。強い女の子がいっぱい出てくるのが好きです」

 

「ふっ、よかろう」

 

自慢だが、俺の語りのレパートリーは底なしだ。遥か未来の二次元カルチャーからどれだけでも引っ張ってこれるからな。古代インド風に脚色するのはちょっと骨が折れるが、子供たちのためならなんてことはない。ドゥフシャラーは女性キャラが活躍する話が大好きだ。今度セーラー服の魔法少女の話でもしてあげようかな。ぶってわからせる魔法少女や敵を光墜ちさせる魔法少女でもいい。ただし白い無限湧きする獣、てめーが出てくる話はダメだ。

 

「世界の全てをひとつなぎにした宝物。どのようなものなのかしら」

 

「うぬも続きが気になるか、ガーンダーリー」

 

「うふふ、旦那様のお声を聞いているのが楽しいのです。もちろんお話も素晴らしいですけれど」

 

千里眼にも眩しい美しすぎる微笑みが刺さる、刺さる。ガーンダーリーが俺の声を大好きなのはよーく知ってるけど、こうして口に出されると照れちゃうな。お世辞にも上手い語りじゃないのに、奥さんも子供たちも喜んでくれるのが嬉しいぜ。

 

午後は子供たちが昼寝するまで話してやろう。その後はしばらく奥さんと庭を散歩でもするかなあ。休日万々歳だ。できることなら戦争なんかせずに家族サービスしてたいよ。

 

三日後にはどこぞの阿呆が五万人規模で攻めてくる。今日ぐらいは奥さん子供にベッタリでいさせてくれ。

 




後書き

後世から見たドゥリーヨダナの人物像と覇王一家の楽しい時間でした
遠征で年単位でいなかったり防衛戦で忙しかったり、そうでなくても王様で多忙なので、主人公が家族と過ごせる時間は食事と夜(奥さん限定)ぐらいなのです。
でも時間が許す限り家族にベッタリなので、子供たちはみんなパパ大好きで育ちました。
伝説に残るファミコンは伊達じゃない!

コメント、ブクマ等大変嬉しいです!ありがとうございます!

【2026.2.28まで】 本シリーズについて、今後の更新の需要確認にご協力願います。ここにないネタの希望はメッセージ(コメント欄は不可)でアンケート〆まで受け付けます。パロ・Ifの分岐ルート・番外の続き等、何でもOKですが、レーティングはR15まで(R18は不可)、キャラ死亡はパロかIFのみでお願いします。 ★重要★あくまで需要の確認です。必ず書くとお約束できないことをご了承願います。

  • 長兄以外の百王子から見た父王
  • パーンダヴァの誰かから見た伯父王
  • 敵国から見た盲目覇王
  • 現パロの盲目覇王一家
  • 第4次聖杯戦争の盲目覇王
  • 第5次聖杯戦争の盲目覇王
  • オリジナル聖杯戦争の盲目覇王
  • 百王子やパーンダヴァの子の話(孫世代)
  • ビーマとヒディンバーの話
  • FGOの実在イベントへの参加
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