要注意!! 原作の生存キャラが死亡します。
とある転生者のモノローグ
俺のマスターが気狂いだった件。いや、本当に切嗣は頭がおかしい。恒久的な世界平和を叶えたいのも、そのために妻を犠牲にするのも、さっぱり理解できない。なんなら宇宙人相手のが分かり合えると思う。
俺だって平和や平穏が好きだし、初めから家族とまったり暮らせる世界なら万々歳だった。俺が古代インドにもたらした百年の繁栄の中で生まれて死んだ人たちは、人類史全体で見てもウルトララッキーだったと思う。でも、あの平和は億単位の人死にの果てに勝ち取ったもので、俺という圧倒的な暴力装置がいたからこそ人々は安心して平和に暮らせたんだ。実際、ひ孫の代で武力に重きを置かなくなった途端、辺境の領が反乱を起こし、どんどん独立していった。人間のそういうところは古代も現代も変わらないんだろう。
全ての争いをなくすなんて、全人類を根本から変えないと無理。人類史上もっとも戦争した俺が自信をもって言ってやる。人間も弱肉強食の摂理の中で生きてるんだ。あらゆる資源を奪い合い、食らいあってきた。一人以上居合わせた時点で闘争の可能性が生じる。そういう生物だ。
切嗣はこの現実を受け入れられない夢見る気狂いだ。正直つきあってられん。でもこの聖杯戦争に限っちゃ俺の同盟者なんだよなぁ。脳みそをちょこっと刺して物言わぬ
アインツベルン城は市街地から離れていて、誰かが攻めてきてもすぐにわかる。戦争の仕上げをじっくり練るのに良い場所だ。夜まで紅茶でも飲んでゆっくりするかな。呼び出したアルジュナにはバリバリ働いてもらうが!
「伯父上、行って参ります」
「うむ」
アルジュナにはアサシンのマスターこと言峰綺礼を始末してもらう。白昼堂々サーヴァント()が襲ってくるとは遠坂時臣も言峰親子も思ってないだろう。ナクラは目立ちすぎたので、交代できて都合が良かった。人選も良い。
アルジュナは性格上、汚れ仕事に向いてないけど、いざという時の殺意の高さは俺以上だ。悍ましい未来じゃ、屁理屈クソ野郎ことクリシュナと一緒にあらゆるアダルマを正当化して俺の子供たち(カルナを含む)を死に至らしめた。現実のあの子は、俺のやり方を間近で見てるうちに暗黒面が大人しくなったがな。俺が息を吸うようにズルも反則もするのを見て気が楽になったんだろう。
さて、まったり一人作戦会議しつつ、甥っ子の仕事っぷりを千里眼で見守るとしよう。俺は城主部屋の長椅子に座り、ティーカップ片手に市中を見つめた。
言峰綺礼は聖杯戦争から敗退したふりで父親の仕事を手伝っている。聖堂を清掃したり、祈りや相談に訪れる人たちを迎えたりしているわけだ。アサシンは町中に散らばったままで、何人も張り付いてるわけでもない。父親は監督役だからキャスターとライダーが脱落したことを知ってるはずなんだが、ホームグラウンドで油断してるのか?
千里眼の先でアルジュナが通りを堂々と歩いている。アサシンがいないルートを念話でナビしてやってるので安心だ。ナクラ用にあつらえたロングコートとスーツがそのまま着れたので、いい感じに街に溶け込んでいる。洋装がめっちゃ似合ってるな。おお、若い女性がチラチラ見てる。そいつ奥さんが四人いるから、逆ナンはやめた方がいいですよー。
そんなこんなで冬木教会前のなだらかな坂道に辿りつく。屋根の上にアサシンが一体いたが、アルジュナは俺が教えるなり神速のヘッドショットで倒した。気配遮断してる相手は見えないはずなのに凄え! しかも周りに人がいたのに全然気づかれないとは、我が甥ながら器用だ。
坂のてっぺんでベビーストローラーを押しながら小さい子の手を引いている奥さんがアルジュナに「こんにちは」と声をかけた。教徒同士だと思っているようだ。好青年風の受け答えをしたアルジュナが教会の扉を開いてあげて、奥さんの後ろについて中へと入っていく。彼らを穏やかな笑顔で迎える言峰父。こいつは武術の達人だが魔術はからっきしで、アルジュナがサーヴァント()だと気づいている節はない。
アルジュナ、言峰綺礼が来るぞ。まだ気づかれてない。あと五秒で脇のドアから聖堂に入ってくる。お前から見て言峰の左斜め三歩後ろにアサシンが一体ついてる。いけるか?
(お任せください)
直前まで人間並みに気配を小さくしていたアルジュナが、綺礼がやってきた瞬間、その擬態を脱ぎ捨てる。
「まさか、サーヴァントかっ」
言峰親子はそれなりの反射速度で距離を取ろうとし、一体だけのアサシンが投げナイフを投擲しかけるが、どちらも遅い。アルジュナの手に白い弓が現れ、一度に放った三本の矢がアサシン1/80の霊格と言峰綺礼の額と心臓を貫いた。息子が倒れはじめて、やっと言峰父の拳がアルジュナに迫るも、いくら強くても古代インドの大英雄に敵うはずもなく、至近距離から目ん玉を貫かれて転がった。
この間、一秒とちょっと。敵性存在がいなくなったことを確認したアルジュナが弓矢をエーテルに返して教会を出るまで、さらに一秒。三秒弱の素晴らしい仕事だ。
気づいたら神父親子が死体になっていた教徒の皆さんには悪いことをしたが、これでも穏便に片をつけたのだ。教会の外まで聞こえる悲鳴とどよめきを背にアルジュナが颯爽と坂を降りていく。良くやったぞ、これで残るは一騎だけだ。
アルジュナが戻ってきたら今夜の打ち合わせをしないとな。ホテルに戻るのは夕方以降だ。一瞬の戦闘が堪えたらしい切嗣はベッドで虫の息だけど、まあ、死ぬことはないだろ。やばかったら令呪を魔力に還元しろって言ってある。セーフだ、セーフ。
……アイリスフィールの成れの果てを見て心痛で死ぬとか、ないよな?
✳︎ ✳︎ ✳︎
聖杯戦争に参加することになり望んでいた以上の英霊を召喚した時、遠坂時臣は己の勝利を確信した。英雄王ギルガメッシュを最強の状態であるアーチャー枠で喚んだのだから、その自信は的外れなものではなかった筈だ。しかし今、リビングルームのテレビから流れるニュースを見る時臣は、血の気のない顔で膝の上の両手を握り合わせていた。
男性アナウンサーが落ち着いた声で冬木教会で起きた殺人事件について話している。白昼の人が集まる教会で起きた恐ろしい事件。その犯人が誰かなど、目撃者の証言を聞くまでもなかった。
「馬鹿な、言峰神父は監督役だぞ! アサシンの生存がバレたのだとしても、あのような人の目がある場所で二人を殺すとはっ」
「ふはっ、随分と勝利に貪欲な雑種ではないか! まだ二日目だと言うのに、我以外を平らげるとはやりおる! ふふはははっ」
部屋に一人だと思っていた男は、突然声をかけられて肩を跳ねさせた。そして壁際で腕を組んで笑っているサーヴァントを認め、苦々しく言った。
「王よ、笑い事ではありません。このような、神秘の存在を明るみに出しかねない輩を野放しにできない」
「急かずとも、向こうからやってくるであろうよ」
輝く真紅の瞳を細めて英雄王が嗤う。そして、その言葉は的を得ていた。
午後十時。由緒ある遠坂家の魔術に守られた邸宅は、昨晩に続いての襲撃に見舞われた。敷地が広いとはいえ住宅街の中にある屋敷を躊躇なく襲ったのは、巌のような男であった。昨晩ドックエリアに現れた美貌のセイバーではない。マスターを伴わず現れた巨漢は、黒いシャルワニとドーティを身に纏っており、その手には黒鉄の大剣。白茶色の瞳は焦点が合わず、どこか遠くへ向いていた。
広い庭先に立った時臣は、相手の姿からある大英雄を思い当たり、背筋が冷たくなる思いでその名を口をした。
「盲目覇王、ドリタラーシュトラ」
大剣の一撃を『
「あの魔貌は替え玉であったか。貴様を人類史上最強と呼ぶ痴れ者もいるようだが、姑息な雑種には過ぎた二つ名よな!」
「戦場に言葉は不要。死ね、ギルガメッシュ」
ドリタラーシュトラの低い声を追い越すように巨躯がギルガメッシュの目前に迫る。一拍遅れてドーンという轟音が空気を揺らし、隠蔽の魔術がなければ広く響いていただろう。盲目覇王の攻撃は音速を超える。伝説に語られるそれは、時臣の目では追えなかった。
ギルガメッシュの周りに黄金の揺らぎがいくつも現れ、宝具が雨あられと撃ち出される。さして距離が空いていないというのに、ドリタラーシュトラは飛来するそれらを弾き、避け、時に手足で逸らしながら、無傷で攻撃を続けていた。ありし日に敵から天災と呼ばれた男は、その猛攻で英雄王の余裕を剥がし、舌打ちさせる。それほどに純粋な戦士としての技量は盲目覇王が圧倒していた。
「離れよ雑種、不敬であるぞ!」
「オオッ!!」
英雄王がインファイトをさせないことで拮抗を保っている二人。その危ういバランスは、ドリタラーシュトラが短剣一本をあえて避けずに踏み込み、左腕を貫かれながらギルガメッシュを切り裂いたことで崩れたかのように見えた。
「令呪を持って命ずる! ギルガメッシュ王よ、全快せよ!」
マスターの介入により、ギルガメッシュの傷が癒えていく。対するドリタラーシュトラは左腕に深々と短剣が刺さっている。時臣がホッと内心息をついたその時。
「『
暗い空から落ちてきた滅びの光が、その命を屋敷ごと飲み込んだのだった。
✳︎ ✳︎ ✳︎
ビジネスホテルの小さなベッドの上で、切嗣は妻の骸を抱きながらか細いを息を繰りかえす。ショック死した時の蘇生役として呼んだ舞弥がベッドの端に座り、彼女が脈を測るために触れている右手には二角の令呪が刻まれていた。
「カヒュッ、はぁッ、はっ……」
「切嗣、もう一角使用してください。このままでは」
「まだ、だ。アーチャーは、消えてない」
アルジュナが宝具を使用する直前に令呪を消費したことで、どうにか死を免れた。ドリタラーシュトラの計画通り、遠坂時臣は死亡。しかしギルガメッシュは消えず、未だ攻撃を続けている。もう一発宝具を撃たせる必要があるかもしれないのだ。
アイリスフィールの冷たい肩口に額を押しつけ、切嗣はひたすら待った。戦いの妨げになるため念話は繋げない。宝具が必要な場合のみ、セイバーから声がかかるのだ。奔流のように奪われていく魔力が収まるまで、つまり戦闘が終了するまで待つしかなかった。
「終わったよ、舞弥。セイバーが勝った。聖杯は僕らのものだ」
「き、切嗣……」
勝利の喜びは感じなかった。ただ、舞弥の震え声が気になって顔を上げ。腕の中のアイリスフィールと目が合った。
後書き
第四次戦争ことFate/Zeroの続きです。
聖杯くんがこんにちはして不穏なラストですが、次で終わります。
ギルガメッシュ戦の顛末も次回にて。
ウェイバーの時といい、主人公は相手の隙につけ入りすぎですね。
なお、ギルガメッシュを頂上決戦時のモード/レッドにできなかったのは、切嗣が死なないように出力を下げているから(メタ寄りで盛り込めなかった)
伏兵アルジュナは伯父上が戦ってる間、気配を殺して屋根の上に伏せてましたw
コメント、ブクマ等大変嬉しいです!ありがとうございます!
【2026.2.28まで】 本シリーズについて、今後の更新の需要確認にご協力願います。ここにないネタの希望はメッセージ(コメント欄は不可)でアンケート〆まで受け付けます。パロ・Ifの分岐ルート・番外の続き等、何でもOKですが、レーティングはR15まで(R18は不可)、キャラ死亡はパロかIFのみでお願いします。 ★重要★あくまで需要の確認です。必ず書くとお約束できないことをご了承願います。
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