盲目覇王による古代インド統一   作:アマエ

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注意:原作と各陣営の顔ぶれが異なります。



番外「盲目覇王in第5次聖杯戦争」2話目

【January 25 / Night】

 

 

下手を打った。悔しい。痛い。こんなところで死にたくない。

 

冬木市で行われる魔術儀式・第五次聖杯戦争に魔術協会の代表として参加するはずだったバゼット・フラガ・マクレミッツは、滞在先であるエーデルフェルト双子館の一室で仰向けに転がっていた。つい先程まで会っていた昔馴染みはとっくに立ち去り、残ったのは左腕を二の腕半ばから失ったバゼットただ一人。自分のサーヴァントだったランサーは奪われてしまった。

 

寒い。暗い。死にたくない。

 

バゼットが冬木にやってきたのは、魔術師としての評価を得るためだ。何年もひたむきに戦い続けて最強の封印指定執行者と呼ばれるまでになっても、彼女は魔術協会内でほとんど評価されておらず、未だ役職なしのまま。結局、協会は血筋や家名を重視するのだと思い知らされた。それでも聖杯を持ち帰れば何かが変わると思い、意気込んでやってきたのに。

 

正当に評価されたい。

 

その思いを最後に、意識が暗がりへと沈んでいった

 

 

 

 

 

 

 

 

【February 2 / Night】

 

夜の校庭でとんでもない非日常を目にしてしまった衛宮士郎は、悪夢の中にいるような朦朧とした状態で家路についた。校舎の廊下で青い男に刺されたのは、おそらく現実だ。制服の左胸に穴が空いているうえに、まだ乾いていない血のシミが広がっているのだから。心臓を刺され、いつの間にか傷が消えた。もしかすると一度死んで生き返ったのかもしれなかった。

 

ぼんやりしている間に衛宮邸に辿り着き、部屋着に着替えて一息つく。少し前からよく顔を出すようになった姉から贈られた深緑色の長袖上下は薄手なのにやたらと暖かい。すごく高級な布地だな、と思考がズレたその瞬間、大音量のアラート音に肩が跳ねた。

 

「イリヤが改良してくれた結界の音っ」

 

もともとこの屋敷には切嗣のものと思しき微弱な結界魔術がかけられていたが、イリヤがテコ入れしてかなり強力にしてくれたのだ。罠の方も、侵入者が死なない程度にしてほしいと士郎が頼み込んだため非殺傷ではあるものの、武装したテロリスト程度では攻略できないレベルである。しかし、それらが破られる破壊音が侵入者が只者ではないことを教えていた。

 

どんどん近づいてきている。それがあの青い男であると、士郎は半ば確信していた。もつれる足を無理やり動かし小走りで庭へと走るが、背後に迫る気配はすぐそこまで来ていた。

 

「うわあああっ」

 

風切り音が聞こえるなり前に飛び出し、地面を転がって開けっぱなしの蔵の中へと逃げ込む。ここはイリヤが用意してくれた最後の砦(パニックルーム)だ。士郎自身がトリガーになっており、中に入ると自ら出ていかない限り他の誰も立ち入ることができない結界が発動する、らしい。今日まで効果を試したことがなく、まさか役立てる日が来るとも思っていなかった。

 

ガァンッと激しい衝突音があがる。弾かれたように目を向けると、青い男が槍を突き出した格好で蔵の入り口近くに立っていた。男は口角を吊りあげ、もう一度結界を刺そうして弾かれる。しかし、二回目の攻撃では槍の切先が少しだけ蔵の内側に入り込むのが見えていた。

 

「へえ、現代の魔術師にしちゃあやるな。これはお前の術か、坊主」

 

男の赤い目が士郎の左胸あたりを見つめる。そこに傷がないことに気付いたらしく、男はさらに笑みを深め、再び槍を構えた。

 

次の攻撃で結界が破られる。治ったばかりの心臓がぎゅうと縮こまる中、士郎は後退り、床に置かれた非常食の缶詰につまずいて尻餅をついた。武器になりそうなものを横目で探すが、あるのは非常用の食糧や医療品ばかりだ。

 

「もう逃げ場はねえぞ。もしかするとお前もマスター候補だったのかもしれないが、運がなかったな」

 

死ぬ。極限の緊張で体感時間が引き延ばされる。右手と、そこから腕を伝って全身が熱くなり、魔力が勝手に引き出されるようだ。こんなところで死にたくないと心が叫んだ瞬間、床から目が眩む光が溢れ出した。結界越しの男が何か言っているが、まるで聞こえない。炸裂した光が収まると一人の人影が現れた。

 

「まあ、マスター、大変な状況のようですね。ご挨拶はまた後ほど。先に敵の対処をいたしましょう」

 

ややハスキーな美声が士郎の耳を撫で、麗しく豊満なシルエットが士郎と槍の男の間に立つ。薄紅色の優雅な民族衣装を身につけた女性であった。華奢な肩や手足は全く強そうではないというのに、あの男と戦うつもりのようだ。

 

「危ないっ! 駄目だ、下がってくれ!」

 

士郎がようやく隅の方に転がっていた箒を手にした時、外からよく知っている声が響いてきた。

 

「どうやら間に合ったようだぞ、マスター! どけっ、無礼者め! 士郎、無事かーーーーっ!?」

 

ドォオオン!!

 

槍の男目がけて長い何かが振り下ろされ、轟音とともに蔵と地面が揺れる。激しく舞い上がった土埃は結界内までは広がらなかったが、庭先が全く見えなくなってしまった。

 

「懐かしい気配に惹かれて参りましたが、あの子が呼ばれていたのですね。外は任せておけば大丈夫でしょう」

 

嬉しそうにそう言った女性が士郎の方を向き、たおやかな右手を差し出す。その手を取って立ち上がりながらよく見ると、彼女は長い薄紫の髪に薄い小麦色の肌をしたアジア系外国人であった。しかも、黒い布の目隠しをしていても隠しきれない恐るべき美貌である。こんな状況でなければ、肉感的な魅力と溢れる色気で赤くなっていたかもしれなかった。

 

「貴方は誰なんだ? あ、いや、そんなことより、助けようとしてくれてありがとうございました」

 

「うふふ、お気になさらないで。マスターを守るのはサーヴァントの務め。我が子が懇意にしている方なら尚更です。改めまして、私はキャスター。名をガーンダーリーと申します。どうぞよしなに」

 

「俺は衛宮士郎。ガーンダーリーさんは」

 

「キャスターとお呼びください、マスター。あの青い殿方に真名を知られたくありません」

 

「そうなのか。じゃあ、キャスターさんは人間なのか? マスターやサーヴァントって何のことだ?」

 

庭から聞こえる破壊音が気になって仕方がないが、まずは目の前のキャスターに気になったことを確認したい。そう思って疑問を口にした士郎に、キャスターは「あら」と小首を傾げた。

 

「マスターは聖杯戦争の参加者ではありませんの?」

 

「聖杯戦争?」

 

いよいよ話が噛み合わず、片方が目隠しをしているにも関わらず見つめあってしまう。そんな二人の沈黙を甲高い少女の声が引き裂いた。

 

「シロウ! シロウ、ランサーを追い払ったわよ! もう安全だから出てきなさーーい!」

 

結界のすぐ外にガラス窓に張り付くようにして立つイリヤスフィール。小さな姉の姿を認めるなり蔵から飛び出した士郎。抱きしめ合う姉弟をよそに、民族衣装姿のわし様(護衛)がキャスターを見るなり「は、母上〜〜〜〜〜っ!?」と絶叫したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

【February 2 / Night】

 

 

居間の机で宿題をしていた桜は、同じく居間にある長椅子で宙を見つめていた男が急に発した笑い声に驚いてシャープペンシルを取り落とした。

 

「ふっ、はははは! これは良い!」

 

寡黙でいつも落ち着いているセイバーが口を開けて笑っている。桜の料理が口にあった時や、過去の聖杯戦争の資料を読み漁っている時の、ちょっと満足げな顔とは全く違う、嬉しくてたまらない様子だ。

 

「セイバー、何か見えたんですか?」

 

「うむ。マスター、今から出るぞ。すぐに用意せよ」

 

「えっ」

 

「そのまま出るのであれば、抱えるぞ」

 

「ま、待って。着替えてきます!」

 

立ち上がった巨漢が腕を伸ばしてきたので、桜は慌てて自室へと向かった。途中ですれ違った祖父に「セイバーと出かけてきます」とだけ言い残す。手早く部屋着から外行きのセーターとロングスカートに着替え、コートを羽織って小走りで居間へと戻れば、セイバーはすでにそこにおらず、玄関で合流することになった。

 

「では参ろう」

 

「はいっ」

 

ブーツを履くなり太い左腕に子供のように抱えられ、これまた子供のように目の前の首にしがみつく。知り合いに見られたら恥ずかしさで死にそうな格好だが、一度セイバーに抱えられて夜の街の視察にでた際、ちゃんと掴まっていなくて大変な目に遭ったのだ。

 

玄関先で跳躍したセイバーの巨躯が、電柱や建物の屋根を静かに蹴って速度をあげていく。風を切って進む男にしがみつきながら、桜は周りの景色が後ろに流れるのを見つめていた。まるで新幹線のようだ。空気の抵抗で少しだけ頬と耳が痛かった。

 

「この方向……まさか先輩の家じゃ」

 

「そうだ。衛宮士郎がサーヴァントを召喚した」

 

桜が見慣れた住宅街に不安を口に出すと、聞き捨てならない言葉が返ってきた。セイバーが第三の目で冬木中を監視していることは知っていたが、そこに士郎が関わるのはあり得ない。桜がよく知る彼は魔術師なんて恐ろしい人種ではないのだ。

 

「そんなはずありません! 先輩は魔術師なんかじゃ」

 

「うぬを巻き込まぬよう隠しておったのだろう。衛宮士郎は魔術師。父親の方は前回の聖杯戦争の生き残りである」

 

「そんな……」

 

桜がショックに沈んでいる間にセイバーが衛宮邸の門の前に降り立つ。そのまま中に入るのかと思いきや、彼は桜を下ろしその背に隠した。大きな体に阻まれて向こう側は見えず、しかし聞こえてきた声で誰と対峙しているのかを悟った。

 

「間桐さん、こんばんは。貴方もマスターに選ばれていたのね。物凄く逞しいサーヴァントで驚いたわ」

 

「遠坂先輩、こんなところで何してるんです?」

 

セイバーの背中から少しだけ顔を出して相手を見る。生き別れた姉はいつも通り凛々しく、赤い私服姿で堂々と立っていた。彼女の傍に立つ眼光が鋭い男の出立ちもあつらえたように赤く、お似合いの主従だ。もしこの場にいるのが桜一人であったなら、そしてここが衛宮邸の前でなければ、いつも通り何も言えなかっただろう。しかし今の彼女は最強の戦士と共にあり、守るべき人の家を背に立っている。相手が誰であっても引く理由がなかった。

 

「へえ、随分強気じゃない。ここ衛宮くんの家よね。貴方こそこんなところで何をしているの? 聖杯戦争の時間にサーヴァントまで連れて、よからぬことを考えてると思われても仕方ないわよ」

 

凛が腰に手を当てて挑発的に言い放つ。臨戦状態の彼女に応じたのは、桜ではなかった。

 

魔術師(メイガス)、我らと一戦交えるつもりか」

 

「そうだと言ったら?」

 

「マスター」

 

「こんな住宅街では駄目です。先輩も、本当は不本意なんじゃないですか?」

 

セイバーからの一言の意味を桜が正しく理解したのは、この場の全員にとって幸運なことであった。ステータスからして暴力の塊のような男がこんな場所で戦えば、被害は家の一軒や二軒に留まらない。

 

いつも節目がちな桜がしっかり目を合わせて問うと、凛も仕方がないといった様子で頷いた。

 

「……そうね。今夜は先約の用事がある。間桐さんとの戦いは、仕切り直してきちんとしましょう」

 

「それでお願いします。私も大事な用事があるので」

 

バチッと一度視線の火花を散らし、少女たちは互いから目を逸らした。そのまま別れると思っていたのはお互い様で、二人ともが衛宮邸の門へと近づいたことで、彼女らは再び睨み合うこととなった。士郎がマスターになったと知る桜は彼を守るため、そうとは知らない凛は同級生の安否を確認するため、どちらも相手を退けようとしているのだ。

 

まさに一触即発というその時ーー

 

「えーい、貴様ら仕掛けてくるのならさっさとせんか! いつまで家の前でぺちゃくちゃ喋っておる! 我らを馬鹿にしているのか!?」

 

目の前の門が勢いよく開かれ、長い棍棒を手にした大男が盛大に文句を垂れたことで、張り詰めていた空気が一気に緩んだ。さらにその男がセイバーを見るなり「ち、父上〜〜〜〜〜っ!?」と絶叫したものだから、割とぐだぐだな雰囲気まで漂ったのだった。

 

 




後書き

アンケートで需要が確認できた盲目覇王in第五次聖杯戦争の続きです。
FGOじゃないのにぐだぐだになったのは、門の内側でスタンバイしててしびれを切らしたわし様のせい。
イリヤを母上にまかせて一人で出てきたので、魔術で外の様子を見るとかできなかったのです。

ランサーとアーチャーは原作通り。
バゼットに関して次回に持ち越し、どうにか全陣営が出揃います。

キャスターのおかげで覇王が他陣営皆殺しにするルートがなくなりました。
わし様は戦士なのでサーヴァント同士なら殺りあう可能性があったけど、奥さんは絶対になし。(わし様も生前ならなし)
何故アルトリアじゃなかったのかは、残ったクラスと士郎の部屋着がヒントです。
①FGOじゃないので、アルトリアは剣以外で召喚されない
②わし様のストールを部屋着(メイド作)に仕立ててプレゼントしていた(魔術的守りのため。イリヤは召喚させる気はなかった)

コメント、ブクマ等大変嬉しいです!ありがとうございます!

【2026.2.28まで】 本シリーズについて、今後の更新の需要確認にご協力願います。ここにないネタの希望はメッセージ(コメント欄は不可)でアンケート〆まで受け付けます。パロ・Ifの分岐ルート・番外の続き等、何でもOKですが、レーティングはR15まで(R18は不可)、キャラ死亡はパロかIFのみでお願いします。 ★重要★あくまで需要の確認です。必ず書くとお約束できないことをご了承願います。

  • 長兄以外の百王子から見た父王
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  • 第4次聖杯戦争の盲目覇王
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