盲目覇王による古代インド統一   作:アマエ

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8話目

一分でわかる古代インド:盲目覇王ドリタラーシュトラ その15

 

 

百王子とパーンダヴァの上三人が成人を迎え、カルナが国王の養子となってからしばらくして、第五次大遠征の準備が始まった。今回から戦争に参加することになるクル王家の王子らは、ドリタラーシュトラの勧めでカルナ並びに精鋭部隊の面々との模擬戦を繰り返し、戦場での心構えや注意点を学んだ。百王子を一部隊として率いることになるドゥリーヨダナは、カルナから父王の活躍を聞いてまだ見ぬ戦場に思いを馳せていた。

 

第五次大遠征の最終目標は中央インドのヴィダルバ王国を落とすことであった。この国はパーンドゥの妻クンティーの一族であるヤドゥ族の本拠地であり、彼女の実家スラセーナ国とは比べ物にならない大国である。親族の繋がりがあることから宰相ヴィドゥラが先に同盟という名の属国化の打診をしたが、にべもなく断られていた。

 

息子と甥をほぼ全員従軍させるにあたり、盲目覇王は一つ保険をかけた。すなわち王子らには精鋭部隊の後詰として見取り稽古のようなことをさせ、最前線の戦闘にはあまり関わらせないつもりでいたのだ。このことはカルナと精鋭部隊、ビーシュマら長老陣に共有され、一部から過保護ではないかと苦言がありつつも受け入れられた。

 

出立の日、百王子らは母ガーンダーリーと末妹ドゥフシャラーに見送られ、意気揚々と馬を走らせた。ユディシュティラ、ビーマ、アルジュナの三名もクンティーと言葉を交わしてから父の戦車に乗り込んだ。この時、百王子が戦車を使わなかったのは、道中でも連携の練習をするためだったと言われている。

 

この先の戦場で百王子は凶悪な遊撃部隊として恐れられることになる。長兄ドゥリーヨダナの指揮のもと、九十九人の弟たちが群体のような滑らかな動きで襲いかかるのだ。敵にとって悪夢のようなこの連携は、百王子の神秘的な生まれとドゥリーヨダナの掛け声から「ジャイ・カウラヴァ(一から生まれし百王子)」と呼ばれた。

 

百王子のいっそ異様な連携力は、一つの肉塊から分たれた彼らの特異性によるものだったのかもしれない。マハーバーラタはこの点についてほとんど触れていないが、一卵性の多生児や生体クローン、蟻や蜂といった群をなす昆虫の研究において百王子の名が出ることは少なくないのである。

 

話が逸れてしまったが、盲目覇王が率いる総勢十万の軍勢は一年半の大遠征でヴィダルバを含む八カ国と対峙することになる。次回は十代の王子らの初陣ーー強者スダーマンが統治するダサルナ国との合戦に焦点を当てることにしよう。

 

 

 

 

 

一分でわかる古代インド:盲目覇王ドリタラーシュトラ その16

 

 

ダサルナ国王スダーマンは剛腕で知られ、山のような大男であったとされる。クル王国軍が国境に迫った時、ダサルナ軍はすでに迎撃の陣を組んでおり、スダーマンも総大将として戦場に出張っていた。

 

この頃には盲目覇王と精鋭部隊による特攻はインド全土に知れ渡っており、スダーマンは最前列の兵たちに大槍と大楯を持たせて突撃に備えるよう命じていた。この対策は、一見完璧であった。

 

第五次大遠征においてドリタラーシュトラの御者は十数年ぶりにアディラタが務めることになった。カルナが面目上とはいえ王の養子になり、戦士階級の仲間入りをしたためだ。アディラタは愛する養い子の栄達に涙を流して喜び、王の御者として再び戦場を駆ける覚悟を決めた。なお、カルナがしきりに御者台の養父を気にしたため、覇王はこの遠征における彼の配置を戦車の近くにしたという。

 

アディラタとカルナの決定的な違いは御者本人の戦闘力であった。自衛程度の戦闘能力しかないアディラタが戦車を直に敵軍にぶつけることは無謀でしかなく、ドリタラーシュトラは常より遠くで戦車を降りて敵の前線を攻めることになった。御者の交代という偶然により、ダサルナ軍は盲目覇王の単騎突撃まで少しの猶予を得ることができたのだ。

 

突進力を欠いてぶつかった覇王と精鋭部隊だったが、個々の能力によって敵軍の前線を引っ掻き回すのは変わらなかった。何より、今回は精鋭部隊よりさらに機動力が高い新兵らが参加していた。ドゥリーヨダナ率いる百王子部隊である。

 

「兄弟たちよ、蹂躙せよ! ジャイ・カウラヴァ(クル族万歳)!!」

 

声変わりですっかり低くなったドゥリーヨダナの大声が戦場に響く。続いて同じ声の雄叫びが大音響で轟き、百頭の馬に騎乗した王子らが一体となってダサルナ軍前線の横っ腹に食い込んだ。馬上から金属の棍棒で敵を殴打しながら駆け抜けていく百王子。彼らの独断による突撃を第三の目で捉えたドリタラーシュトラは、戦闘中であるにも関わらず厳しい眉を緩めて笑ったという。

 

ダサルナ国との合戦で活躍したのはカウラヴァの王子たちだけではない。戦闘の後半、強者スダーマンの前に立ったのは盲目覇王ではなく、恐るべき男(ビーマ)と名付けられた彼の甥であった。スダーマンはビーマさえ見下ろす巨漢であり、二人の膂力は拮抗していたとされる。勝負を分けたのは、技巧派の従兄弟と日々打ち合うことで磨かれた棍棒術だった。ビーマは相手の大ぶりな攻撃を巧みに受け流し、返す一撃で分厚い頭蓋を砕いたのだ。

 

ユディシュティラとアルジュナもパーンドゥの指揮のもと戦果をあげたが、ここでは割愛する。次代のクル王家を担う若者たちの初戦は華々しい勝利で終わったのだ。

 

 

 

 

 

 

とある転生者のモノローグ

 

 

その場の勢いでよその家のお子さんを取り上げてしまった。

 

カルナが御前試合に乱入してきてパニクったなんて言い訳にもならん。胸糞悪い未来で似たようなことになってたじゃん! それに王は常に冷静じゃないといけないのに、俺って奴はーーーっ!! 内心頭を抱えてゴロゴロしている俺の前には、平伏するアディラタと奥さんのラーダー、王族の装いに着替えさせられたカルナがいる。唯一の救いは、三人とも怒っても泣いてもいないことだ。いや、奥さんは泣いてるな。頭を下げてても千里眼で見えてしまった。

 

本当に俺の馬鹿! カルナを戦士に取り立てるのは、前に敵国の王様を討ち取ったご褒美にアンガあたりの領主に任命すればいいって考えただろうが。なんでこうなっちゃうかな。この場に来る前にヴィドゥラにしこたま苦言されたし、ガーンダーリーは怒ってなかったけど「こういうことは先に相談してくださいね」って言われてしまった。そうだよな、俺の養子ならガーンダーリーの子でもあるんだ。あーあー俺ってほんとバカ!

 

「面をあげて楽にせよ」

 

この部屋には俺とアディラタたちしかいない。ヴィドゥラが立ち合いたがっていたが俺が断った。今から少しの間、俺は王じゃなくなる。そんなところを見せられない。

 

恐る恐る体を起こした御者夫婦の前に膝をつく。カルナがこれ以上ないほど目をかっぴらいて見ているが、今は無視だ。同じように目が溢れそうなアディラタたちの震える息が聞こえる。俺はアディラタの手を取り、それに額を擦り付けるようにして首を垂れた。

 

「すまぬ、アディラタ。うぬらの子を奪ってしまった」

 

「そんなっ!! 陛下、どうか、どうか謝らないでください! 私たちは嬉しいのです。貴方様がカルナを認め、戦士として王子と競うことさえできるようにしてくださった。それだけで私たちはっ」

 

「私からも発言をお許しください」

 

涙声のラーダーのお願いにすぐさま頷いた。

 

「許す。何なりと申せ」

 

「ありがとうございます。国王陛下、私たちはカルナが戦士になりたがっていることを知っていました。でもどうにもしてあげられなかった。本当に情けない親でした」

 

「母よ、そんなことはない!」

 

「カルナ、いや、カルナ様どうか好きに話させてやってください」

 

「父よ、何故……」

 

うーわーカルナまで泣きそうだ。いきなりお父さんに他人行儀に話されたら当然だよな。すまん、本当にすまん!

 

「アディラタ、ラーダー。これからもカルナに親として接してやってくれ。俺が誰にも文句は言わせん」

 

「よ、よろしいのですか?」

 

「よい」

 

うーん、そろそろヴィドゥラが痺れを切らしてやってきそうだ。もっと謝りたいけど、王様に戻る時間だ。俺がゆっくり立ち上がると、跪いたままの二人の視線が上がった。カルナは物言いたげだが、彼は言葉選びが下手っぴなので正しい言葉がわからないのかもしれない。

 

「すまぬ。これ以上時間が取れん」

 

「いいえ、私たちには過分なお心遣いです。陛下、カルナのこと心より御礼申し上げます」

 

後ろ髪引かれながら部屋を出ようというところでカルナの涼しい声が追ってきた。

 

「王よ、これからは貴方も父と呼ぶべきか」

 

「うぬの好きにせよ」

 

「では、これまで通り呼ばせてもらおう。貴方は俺の第三の父になったが、その前に主君である」

 

「それでよい。うぬの住まいは王宮に部屋を用意させる。案内を待て」

 

「承知した」

 

短い受け答えをして廊下に出る。案の定、そこには難しい顔をしたヴィドゥラとパーンドゥ、それにビーシュマ伯父上が待っていた。今日の息子たちの健闘を褒めたりガーンダーリーと子らの成長を喜ぶのは、何時間後になるだろう。仕方ない、俺が撒いた種だ。今は甘んじて説教を聞き流すことにしよう。

 




後書き

第五次大遠征の始まりと御前試合の後の一幕でした。
百王子の特攻はわし様の宝具のアレです。まだ十五歳なので見た目は少し違います。
ビーマは原典でもダサルナ国を侵略してスダーマンと戦いました。原典では殺さず自分の部下にしましたが。
次回は引き続き第五次大遠征です。わし様と最新の弟(概念)ことカルナの話とか。

コメント、ブクマ等大変嬉しいです!ありがとうございます!

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  • 長兄以外の百王子から見た父王
  • パーンダヴァの誰かから見た伯父王
  • 敵国から見た盲目覇王
  • 現パロの盲目覇王一家
  • 第4次聖杯戦争の盲目覇王
  • 第5次聖杯戦争の盲目覇王
  • オリジナル聖杯戦争の盲目覇王
  • 百王子やパーンダヴァの子の話(孫世代)
  • ビーマとヒディンバーの話
  • FGOの実在イベントへの参加
  • マハバ三大美女に関する掲示板
  • 人類史上最強に関する掲示板
  • 治安維持部隊長アシュヴァッターマン
  • ビーシュマやドローナの掘り下げ
  • クンティーとカルナの話
  • パーンダヴァ長兄()カルナの話
  • 授かりたくないアルジュナの話
  • ビーマの料理関係の話
  • 戦場の殺伐としたエピソード
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