その造形師は寿々がれる   作:朝潮

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過去編
第2話


 

 

 

幼い頃からアニメが好きだった。

物心着く前からアンパンのヒーローを見ていたし、幼稚園ではカートゥーン系のアニメにハマっていた記憶がある。

小学校に上がった頃には幼馴染が好きな魔法少女アニメを一緒に見るようになっていた。

 

そんな幼少期を過していた俺は。

幼馴染の2人がアニメなどの娯楽に寛容だった事もあり、アニメ、漫画、ゲームなどのサブカルチャーにどっぷりと浸かっていた。

そのうちに、アニメフィギュアに興味を持ち始めたのは当然の結果とも言えた。

アニメのキャラクターが、まるで現実に現れたかのような姿にハマらない訳がなく。

 

「お。このキャラフィギュア化してたんだ」

 

流し読みしていた情報サイトで見つけた、プライズ景品。

そこに今推しているキャラクターが載っていた。

 

中学生になりお小遣いが増えたこともあり、俺の部屋にはずらりとフィギュアが並んでいた。

そこに新しく、フィギュアをもう一体加える事を決定した。

 

そんなとある日の放課後。

いつも通り、俺は桜ノ宮女子高の前で紗寿叶を待つ。

ちなみに、同じく桜ノ宮に通う小学生の心寿は既に集団下校で家に帰っているはずだ。

 

2人の通う桜ノ宮は、エスカレーター式の有名お嬢様女子高。

他校の男子生徒がいるとそれだけで悪目立ちしてしまう。

じろじろと見られて居心地が悪い。

 

しばらくすると、数人の友人らしき人物と共に紗寿叶が歩いてくる。

こう見ると、やはり周りの生徒と比べると紗寿叶は一回り、2回りくらい背が小さいな。

俺の事を見つけた紗寿叶は、友人に一言二言話して、ついでに撫でられて。

ようやく解放され、顔をほんのりと染めた紗寿叶が歩いてきた。

 

「何話してたんだ?」

「どういう関係か聞かれて、私の……こ、婚約者だって話したわ」

 

気になって聞いてみるとそんな答えが返ってきた。

今すぐこの可愛い子を抱きしめていいですか?

まだ人前だから恥ずかしがるだろうか。

 

紗寿叶の可愛さに悶々としながら2人揃って家路につく。

途中、すっと手が寄ってきて、紗寿叶の行動を理解して手を繋いだ。

周りからは身長差で、恋人というよりは兄妹とでも見られているだろう。

 

「今日はゲーセン行きたいから先帰っててくれ」

「は?」

 

ふんふんと鼻歌でも歌い出しそうなほどご機嫌だった紗寿叶。

駅の前でそう伝えると、紗寿叶が立ち止まった。

手を繋いでいる俺も自然と足を止める。

 

「ねえ。私も行っていいでしょ?」

「……なんで着いて来るんだ?」

「私がいちゃダメなの?」

「いや、そんな事ないけど……」

 

じっとりと向けられた刺すみたいな視線が気になるんですが……

無用なトラブルを呼んでも困るし紗寿叶にはあんまり来て欲しくないのだが。

あまりにぐいぐい来るので仕方なくOKを出した。

将来尻に敷かれる姿が目に浮かぶようだ。

 

プリプリしている紗寿叶を刺激しないように気を付けながら、俺と紗寿叶は連れ添ってゲームセンターへと向かう。

様々な筐体から電子音が鳴り、ゲームセンター独特の不協和音を奏でる。

俺が向かうのは、勿論UFOキャッチャーのコーナーだ。

中に入った景品は様々で、お菓子だったり、ぬいぐるみだったり。

練り歩いて狙いの筐体を見つけた。中にはフィギュアがずらりと並んでいる。

 

「あなた、本当にフィギュア好きよね」

「さじゅも好きなキャラいるでしょ?買わないの?」

「私は……どちらかと言うとおもちゃの方が好きなのよ」

 

そういえば、クリスマスとかに変身アイテムとか貰ってたな。

 

「このキャラが好きなの?」

「今はね」

「やっぱり大きいキャラが好きなのね……」

「ぐ、偶然だって……」

 

俺の狙っているフィギュアの抜群のプロポーションを見て、それと比べたのか自分のおっぱいをぺたぺた触っている。

そりゃあ、推しキャラは大きな胸のお姉さんキャラが多いけど……

アニメの好きなキャラと現実で好きな人とは別じゃんね?

 

しかし悲しませてしまったのも事実。

ここはいい所を見せて好感度を巻き返すしかない!

俺の長年のUFOキャッチャースキルが火を吹くぜ!

 

「さ、さじゅ……金なくなった……」

「はぁ。全く。計画的に使いなさいって言ってるのに」

「頼む!500円だけ貸してくれ!もうちょっとで取れるんだよ!」

「いやよ」

 

数分後。

そこには、財布を空っぽにした俺の姿があった。

そんな馬鹿な……

 

お金の事はしっかりしている紗寿叶。

衝動的に筐体に金を流し続ける俺を見て呆れていた。

何故だ。俺のプランではかっこよくゲットした俺を見て一段と惚れ直されるはずだったのに……

 

「一生のお願い!ここまで動かしたのに人に取られたら無駄になるんだよ!」

「あなたの一生は何回あるのよ……将来家計の管理が大変そうね」

 

紗寿叶はため息をついて、財布から五百円玉を手渡してくれた。

俺はそれを大仰に両手で受け取ってコイン投入口へと入れた。

 

「ありがとうさじゅ……この恩は一生忘れないよ」

「随分と軽い一生ね」

 

 

 

結局俺はその6回でも取れず、諦めきれずに借金を頼んだ。

しかしそこはお金の事はしっかりしている紗寿叶。

追加の融資は却下された。

 

しかし優しい紗寿叶。それだけでは終わらない。

私のお金で私がプレイする、と言って自分でお金を入れて筐体の前に立った。

そして数回の格闘を経て、見事景品のゲットに成功した。

俺の数千円は一体なんだったんだ……

 

「はい。……これが欲しかったんでしょ?」

「さじゅ〜!ありがとう……愛してるよ」

「ちょっ……そんな事人前で言わないでッ」

 

この愛を今すぐに伝えたい。

気持ちに任せて、キスをしようとしたら避けられてしまった。

まるで他人のフリをしたいかのように、ツカツカと離れていく紗寿叶を追いかける。

後ろからチラチラと覗く耳が真っ赤だった。

人前じゃなければ言っていいんですかね。

 

治安が悪いとは思わないが、同率で宇宙一可愛い女の子を1人にさせる訳にはいかない。

いつナンパされるか……いや補導の方か?とにかく絶対に見失うまいと手を握る。

拒否はされなかったので良しとする。

 

せっかく来たんだからついでに、と中学生のデートらしくぶらぶら散策していると。

ふと紗寿叶が足を止めた。

 

「これ……」

 

繋いだ手が離れ、思わずと言った様子でたたたっと駆け出した。

紗寿叶が駆け寄ったのは、ショーウィンドウに飾られた衣装。

 

「お。プリンセスリリィじゃん」

 

幼少の頃。紗寿叶はフラワープリンセス烈!!という魔法少女アニメがお気に入りだった。

所謂ニチアサ枠のアニメで、ヒロインが悪を倒すという王道展開の中に、攻めた設定を幾つも盛り込んでいる。

基本魔法よりも肉弾戦がメインだったり、仲間の妖精枠の口が信じられないほど悪かったり、仲間の闇堕ちがあったり。

子供向けとは思えないほど複雑な人間関係で、終いにはBL要素で婦女子の英才教育をし始めるなど……。

 

放送時期は紗寿叶が将来の夢は魔法少女、なんて言っていたほど昔の話だ。

毎週テレビにかじりついていた小さな紗寿叶の姿が目に浮かぶ。

 

「紗寿叶はリリィ推しだもんな~俺はデイジーのが好きだけど」

 

ただし、声優丹〇桜さんだし、と続くものとする。

ふと値札が目に入る。一、十、百、千……

俺のお小遣い、何ヶ月、何年貯めたら買えるんだよ。

 

「一式だもんな。そりゃ結構するわな」

「買うわ」

「まじか!」

 

お年玉もしっかり管理して、無駄遣いを嫌う紗寿叶にしては大胆な買い物だ。

それだけ欲しいという想いが、堂々としたその目から、声から伝わってくる。

絶対に折れない、っていう力強い意思を感じる。

昔から姉らしく振舞っていた紗寿叶。

こんな紗寿叶、久しぶりに見たな。

 

「ディスプレイの服、あれください」

 

入店後いらっしゃいませと言われるやいなや、ビッと指を差して注文する。

急がなくても無くならないから大丈夫だと言いたくなるような微笑ましい姿だ。

 

「妹さんですか?可愛いですね」

「実は同級生なんです」

 

完全に付き添いの保護者と思われていたのだろう。

!?みたいな顔をされた。

ちゃんと言っておかないと妹に金を出させる兄になってしまう。

結局紗寿叶が財布を開いた時、こいつマジかみたいな顔をされたが。

甲斐性なしですみません……

 

 

 

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